御手洗潔対シャーロック・ホームズ (創元推理文庫 M つ 5-1)
- 東京創元社 (2008年7月1日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (423ページ)
- / ISBN・EAN: 9784488479015
感想・レビュー・書評
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御手洗潔も柄刀一も好きなんですが、う〜ん。
面白くないわけでは無いのですが、やっぱり御手洗は島田荘司が書くのが一番だな、と思います。
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御手洗も石岡君も社交性が増してるなあとは思いつつ楽しめましたが最後の往復書簡に全て持っていかれました。ズルい!(笑)
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「青の広間の御手洗」
「シリウスの雫」
「緋色の紛糾」
「ボヘミアンの秋分」
「巨人幻想」
「青の広間の御手洗」を読んだ時は、こういう人情系?の話もあるかなあ、という感想だったが、「シリウスの雫」の真相で現れるヴィジョンに驚き。こういう神秘性を帯びたようなスケールの真相は久しぶりで面白かった。それからはとても楽しみながら読むことができた。
収録作の極め付けは「巨人幻想」。初っ端から濃霧の中を巨大な人影が進むのを目撃する石岡くん。足跡のように続いている大きなくぼみや窓の外に見える巨大な顔など、幻想的な謎が登場し、盛り上げてくれる。
謎をいかに神秘的に魅せるか。文体は硬いけれど、上手く演出できていると思う。
真相のスケールも満足。
「緋色の紛糾」で、ホームズの代名詞とも言える観察と知識により導かれた推論が登場するが、そのあとのワトスンの一連の思考がヒドイw
「なんという見事な変装!」
もはやワトスンはわざととしか思えない(笑)
このノリで完全にギャグ一本のを読みたいかも。 -
退屈で中々読み終わらず、何度も投げそうになった。下手な平仮名使いは本当に勘弁して欲しい。御手洗ものの脳科学の話は悪くなかったとはいえ、彼は地位や権威でものの見方が偏る人間にあんなに優しくしないと思うけれど。
こんなものかと読み始めた残りが惨憺たるものだった。 -
三割増しくらいで優しい御手洗さん。「巨人幻想」のホームズが腹立つ。
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3
御手洗潔パスティーシュ2作 + ホームズ・パロディ2作 + 両者の共演1作。
御手洗ものはオリジナルをよく踏襲しており、また渾身の資料調べの賜物か能科学の蘊蓄も圧倒的で、雰囲気は抜群。特に「青の広間の御手洗」は、御手洗の優しいたくらみに満ちたエピソードで、実際にありそうなイイ話。
ただ不思議なもので、意図的にオリジナルの文体に似せているような節はあるものの、柄刀らしい平坦でのっぺりとした筆致が全く隠れていないところが、良くも悪くも作家の個性というものだろうか。もっとも、島田荘司独特の躍動するリズム感を持ちつつも流れるような表現が簡単に模倣できるなら、とっくに自作に取り入れているだろうが。
ホームズものは、中途半端なホームズごっこ的な趣向で正直微妙な出来。それぞれ単独で見れば、舞台が現在の日本である必然性も薄弱(一応ネタには絡ませているが)。
ただ、こうして1冊になると、共演作の内容との兼ね合いから連作短編集的意味合いを見出すことも出来るので、そこは何とかこじつけたなという感はある。
その共演作は、柄刀らしいプロットでかつ上手く両者を絡ませた好編。さりげなく『漱石と倫敦ミイラ殺人事件』を絡ませたところも高ポイント。
傑作なのが巻末の島田荘司作「石岡和己対ジョン・H・ワトスン」なのだが、本編を読まずにこれだけ読んでもあまり楽しめないのがミソか。 -
内容を思い出すための忘備録ブログとして利用しているので
http://noir.velvet.jp/T/Tukato/mitaraivshomuzu.html さんが
上手にまとめていらしたのを、引用させて頂きます。
***** 以下全部、上記サイトより拝借 ******
短編4つと中編1つの作品集です。
『青の広間の御手洗』
御手洗と石岡がノ―ベル賞受賞式典において、ひとりの老人の考え方を変えるというお話。
脳の病気について詳しく述べています。
本家御手洗もこういうこと言いそうです。
さすが実力派の書くパスティーシュはスゴイです(笑)
『シリウスの雫』
反重力の里と呼ばれるイギリスのある町にある変わった石の遺跡。
その遺跡には地面に上るような階段が・・・。
そして翌日、遺跡から地面に頭をつけあぐらをかいたまま逆立ちしてような姿勢で発見される老人の遺体。
しかも其の体は紫のペンキで塗られていた。
そのそばで誰かに頭を殴られ昏倒していた石岡に老人殺害の容疑がかかる。
老人を殺したのは石岡か?そうでないならば一体だれが?なんのために?
よくできたお話です。
トリックもミステリらしいし。御手洗らしいです。
この作品は(上の作品も)他の本にて既出の作品なので、島田氏の作品を残さず読んでいる方なら既読の作品だと思います。
『緋色の紛糾』
これは日本によみがえった(?)ホームズとワトスンの冒険譚。
勿論タイトルは『緋色の研究』のもじりですね(笑)
それに島田氏の作品を好まれる方ならご存知でしょうが、氏は『漱石と倫敦ミイラ殺人事件』という夏目漱石とホームズ達が出会う話を書かれています。
その話の雰囲気に似ています。
本家のホームズとはちょっと違う感じですね。お笑い?
まぁ現代の日本に甦ってる時点で無茶な設定なのですが(笑)
馬車で走ったらいかんでしょ(笑)
それにホームズの推理のっけから外れてるし(笑)
またそれをワトスンが盲目的に信じるし。
おかしいです。
お話は密室殺人の謎。
これはちゃんとミステリしてます。
『ボヘミアンの秋分』
これも言わずと知れた『ボヘミアの醜聞』のもじり。
出てくるのは愛鈴・アドラー(笑)
アイリーン・アドラーのもじりですね。
そしてお話自体が、『ボヘミアの醜聞』にある意味忠実。
愛鈴の家に忍び込む手口も、挨拶も。
しかし、この愛鈴の館の中で殺人事件勃発。
果たして犯人はだれか?と言う謎が・・・。
知っていれば違いがおかしいですね♪
『巨人幻想』
ワトスン博士が残した未発表の手記を求めてイギリスへやってきた御手洗と石岡。
その手記を求める動機となったのは夏目漱石とホームズが知り合いだったという情報をつかんだから。
島田氏の『漱石と倫敦ミイラ殺人事件』でね。
そしてそこで出会う濃霧の中をさ迷い歩く巨人。
ニューライル大学の学長の孫ピートが誘拐され、さらには窓から目撃される巨人の顔。
屋敷の風車塔に住む変わり者の叔父マニング。
巨人に殴られたように凹んだ風車塔の中で、ナイフで刺されたマニングが見つかる。
そして外には身元不明の男の死体が一つ。
これらの殺人事件と誘拐事件、そして巨人の謎を御手洗とホームズの名探偵がしのぎを削って謎を解く!
結構面白かったです。
巨人モチーフばかりですが、面白いです。
ホームズとワトスンの存在はちょっと不思議ではありますが、その辺をあまり気にせず読みましょう(笑)
本の最後に島田氏の解説(?)が。
石岡が柄刀氏に書いた手紙とワトスンが柄刀氏に書いた手紙、そして石岡とワトスンの往復書簡がかかれています。
この最後の往復書簡がどんどん低レベルになっていっておかしいです(笑)
言葉だけはお互い丁寧なのに・・・。
御手洗ファンとホームズファンに捧げるミステリですね!
まぁ無茶な設定ではありますが、それも愛嬌と言うことで(笑) -
贅沢な一冊。
世界の探偵小説の巨人・シャーロック・ホームズ。
日本の新本格ミステリの巨人・御手洗潔。
このふたりの共演。
それを、柄刀一が見事に描く。
カレーが大好物で。
肉の中では牛よりも鶏よりも豚が好きな僕が。
カツカレーを食べるときに幸せを感じるように。
両者が好きなミステリファンならば、この作品は大好物になるだろう。
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小学生の時。
学校で先生がとりまとめて本を買う、という企画があり。
ほとんどの児童は別に興味もなかったようなのだけど、クラスの中でも1/3くらいが、リストの中から好きな本を選んで、注文していた。
僕は当時、マンガは読むけど別に小説はそんなに読まない子どもだったにもかかわらず、なぜか、そのリストにあった、『シャーロック・ホームズ』に心惹かれ、親に頼んで購入。
まだらの紐、赤毛連盟など、有名どころが6編ほど、児童向けの抄訳としてまとめられたもの。
どこの出版社のものだったかも覚えていないけど、何度も繰り返し読んだ記憶はある。
少年期の僕にとって、ホームズは間違いなく小説の中のヒーローでした。
キン肉マンや聖闘士星矢、キャプテン翼と同じく、同等の、ヒーロー。
そして、時は経って新本格ブームの頃。
綾辻行人の出現でにわかに活気づいたミステリ小説の中で、抜群の安定感を誇ったのは、日本の新本格の始祖とも言えるゴッド・オブ・ミステリー、島田荘司の描く、奇想天外で大胆なトリックと、読むものの度肝を抜く謎解き、そして、それらを魅力的に語る名探偵、御手洗潔の物語。
ここに、数年ぶり(約10年)に、ホームズの再来、生き写しを、僕は見た。
名探偵かくあるべし。
「奇人?変人?だからなに?」(クレイジー・モンキー『特攻野郎Aチーム』)
道徳にしばられ法律を遵守するのではなく、己の中での信念と知的好奇心の赴くままに、謎に取り組むふたりの名探偵。
シャーロック・ホームズと、御手洗潔。
このふたりの共演は、どうしたって心がワクワクしてしまう。
そして、その期待は、見事に裏切られることなく、叶えられた。
テイストとしてはユーモアミステリに分類されるのかもしれないし、単純にパスティーシュとも言えるのかもしれない。
「青の広間の御手洗」で、止めどない涙を感じ。
「シリウスの雫」で、島田荘司的大胆な仕掛けに度肝を抜かれ。
「緋色の紛糾」で、今なお息づくホームズの楽しさを味わい。
「ボヘミアンの秋分」で、見事なまでのパロディに心から笑い。
「巨人幻想」で、その見事さに脱帽する。
これぞ、まさしくエンターテインメント。
そして、おまけの「石岡和己対ジョン・H・ワトスン」で、ゴッド・オブ・ミステリのさすがの筆致に舌を巻く。
まるで、極上のフルコースを味わい尽くしたかのような感覚。
ミステリ好きならば、是非押さえておきたい逸品です。 -
どうやらこれは何かのパロディ、というか、2次創作みたいなものだ、と
気が付いたのは、結構読んでから、でした。
やることなす事、なんだかホームズとワトソンのやり取りのような短編が2本。
それからホームズとワトソンが何故か現代に存在する2本。
最後は2組が一緒に居るという…。
最後には、登場人物を元々創った人物が、あとがきめいた文通を。
最初の方は大人で紳士だったのに、話が互いの『友人』の事になった途端
子供のように相手をののしりだしたのが…w
推理もそうですが、一体全体、どうしてこうなったのか。
さっぱり分からない不思議現象でしたが、言われてみて納得。
巨人、いるといいですw