ようこそ授賞式の夕べに (成風堂書店事件メモ(邂逅編)) (創元推理文庫)

著者 :
  • 東京創元社
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  • Amazon.co.jp ・本 (297ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784488487065

作品紹介・あらすじ

書店員がその年一番売りたい本を選ぶ書店大賞。今夜はその授賞式。杏子と多絵は初めての参加に華やいだ気分でいっぱいだ。二人が働く成風堂に、福岡の書店員、花乃が訪れる。書店大賞の事務局に届いたFAXの謎を解いて欲しいというのだ。一方、明林書房の営業部に勤める智紀も授賞式の準備に大忙し。しかし真柴から呼び出され、書店大賞実行委員長から、同じく不審なFAXについて相談を受ける。授賞式の開始は午後七時。無事に幕は上がるのか?! 〈成風堂書店事件メモ〉×〈出版社営業・井辻智紀の業務日誌〉、両シリーズのキャラクターが勢ぞろい。書店員の最も忙しい一日を描く、本格書店ミステリ。

感想・レビュー・書評

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  • 「成風堂書店事件メモ」の4冊目。
    今回は、本屋、じゃなくて、書店大賞の授賞式の1日を描いた長編。
    なんと〈井辻智紀の業務日誌〉シリーズの面々も大挙登場。

    書店大賞事務局に届いた不穏なFAXを巡って、福岡の書店員・花乃ちゃんに頼られる杏子さん多絵ちゃんに、真柴を介して事務局長直々に相談が持ち込まれた井辻くんや「マドンナの笑顔を守る会」の面々が右往左往。
    二つのグループがそれぞれ始めた捜査は、途中からは互いに入り乱れ、やがて一つに収斂する。
    不穏なFAXやブックカバーの謎に、授賞式における覆面作家の存在や順位の改ざん疑惑など、犯人いわく『クモの糸みたいに張りめぐらせた』策謀はややこしくて、やはりこのシリーズは短編集のほうが良いかななどと思っていたら、最後になって飛梅ならぬ飛松伝説が姿を成しこの一日が過去の出来事を洗い流して、本を愛し売る人たちに対する温かい眼差しの佳い話になった。
    真相に辿り着いた多絵ちゃんは凛々しくて、彼女を護ろうとした井辻くんも格好良かった。「守る会」の面々はいつもの通り暑苦しかったが、それぞれに持ち味全開ではあった。

    話の中では、書店、じゃなくて、実際は本屋大賞か、の功罪が丁寧に語られており、私は本屋さんて泣ける話が好きなのねくらいしか思っていなかったので、なるほど色んな人がいて様々な視点があるのだと興味深かった。

  • 書店大賞の授賞式の1日を時間単位で本屋大賞ではなく書店大賞としているのは、書店ミステリの誇張、或いはリンクなのだろうか。(と、細かいことが気になる)

    書店大賞授賞式の朝、成風堂の「書店の杏子と多絵の元に福岡の「はちまん書店」の佐々木花乃が訪ねてきた。飛梅書店から書店大賞実行委員会に送付されてくるFAX。

    『だれが「本」を殺すのか』犯人は君たちの中にいる 飛梅書店

    金沢にある飛梅書店は八年前に店長が書店大賞の当日に亡くなり、閉店をしている。なぜ、このタイミングでこの奇怪なFAXを誰が何の目的で送付されてきたのかを明らかにして解決をしたいと言う。

    今回も長編。本当は長編の方が好みではあるのだが、前回の「晩夏に捧ぐ」よりどちらかと言うとその前の短編集「配達赤ずきん」、「サイン会はいかが」が印象的だったので、どんなもだろうと思いながら、また、まだ読んでいない「出版社営業・井辻智紀の業務日誌」とのコラボだったこともあり、テンション低めに読み始める。(だったら、井辻智紀のシリーズが届くのを待てばいいのに、なんて言われながら…)
    テンション低めからでも、本作は短編のほんわか感は、残しながらもちゃんとミステリ小説になっていたこともあり、楽しくは読めたものの、覆面作家の謎、奇怪FAXの謎、深町の謎の繋がり感が少し細く感じ、やっぱり短編の展開の方が好みであると考察する。
    でも、井辻智紀を読んでいたらもっとテンション高めから開始できたかもしれないので、もしかしたら、もっとハマったかもしれないとも思う。

    事件解決までが1日と言うのが映画なら面白いのだが、小説となると間延び感がある。井辻智紀との関係が本当にこんなものなのだろうかとか、犯人の江口があまり頭が良さそうに感じないこととか、犯人が江口であること自体にも、また深町の悩みや多絵が花乃に飛梅書店の元バイトかを小平に聞いて欲しいと言ったことなど、ところどころ『あれ?』とか『ふぅぅん…』と、気になるところはある。

    毎回書店に関する描写があるが、本作は本屋大賞のことであったので先月の本屋大賞を回想しタイミング的にその裏舞台に新たな関心、知識を持てたと思うことができた。

  • 本格書店ミステリ「成風堂シリーズ」第4弾。
    しかも今回は邂逅編ということで、同一作者の「出版社営業・井辻智紀の業務日誌」シリーズとのクロスオーバー作品となっている。
    私は後者のシリーズは未読だけれど、とくに不便はなく最後まで楽しく読むことができた。

    邂逅編と銘打つに相応しく、この事件は本当に団体戦で乗り切ったなという印象だった。もちろん肝心なところでの頼みは本屋探偵・多絵ちゃんの鋭い洞察力と推理力だったけれど、それを裏付けるのに出版社営業チームの活躍も欠かせなかったので。
    お互いの捜査を邪魔することなく、けれども必要なことはきっちり押さえてパズルを埋めていく…偶然というか、奇跡にも近い見事な連係プレー(?)が功を奏した結果だったんだなと思う。

    本件最大の鍵を握っていた人物については、私なりに少し思うところがあった。
    自分が過去にやったことっていうのは、やはりいつまでも付いて回るものなんだなぁと。それがたとえ既に解決済みのことであっても、きちんと償いをして誰かに赦されたことであっても…。
    結局は自分の中で決着をつける以外に、過去から解放されることはないのかもしれないなと思った。
    だけど、頑張っている人は報われてほしい。誰か、その人が頑張っている“今”をちゃんと見ててあげてほしい。――いち読者のそんな願いを叶えてくれたわけではないのだろうけど、結末はそんな思いを少しだけ汲んでくれたような気がして、ホッとした。

  • 春先になると書店員はソワソワし始めます。1年に1度のお祭りが近付いてくるからです。そのお祭りの名前は『本屋大賞』。本屋に行く事は無くても『本屋大賞』という存在を知っている方も多いのではないでしょうか。実際、大賞受賞作はロングセラーとなる場合が多いです。

    本屋や書店員に興味を持って頂く機会が増えたのか、書店を舞台にした作品も増えてきました。
    今回お勧めするのは書店員が選ぶ『書店大賞』事務局に送られてきた脅迫状をめぐり、本屋の謎なら見事に解き明かす名探偵書店員や出版社営業マンたちが大活躍!な1冊です。物語の大事な要素のとある書店員の遺言?の真相に何故気付かなかったんだ、自分! 思わずあーっ!と叫びました。

    著者の大崎梢さんはご自身も書店員だった事もあり、現場目線なのも唸ります。またこの物語には大崎ファンにはたまらない理由があるのです。書店員名探偵が登場する「成風堂書店シリーズ」と「ひつじ君」と呼ばれる営業マン、2つのシリーズがコラボしているのです! これはたまらん。

    『書店大賞』が認知されていく事の弊害、という辛さも。華やかに見えるかもしれませんが実は実行委員会のメンバーは手弁当、ボランティアで通常勤務の傍ら準備を進めているんですよ。その辺りの内情は是非解説をお読み下さいませ。
    本屋大賞を身近に感じて頂く1冊です。

  • 実在する賞をモデルにした、ミステリー。
    今回は2つのシリーズを混在させ両方から謎解きがはじまる。

    書店大賞の説明では実際にそうなのかもと思わされる節も。
    書店員さんのこの賞への思入れもわかるけれど、覆面作家さんの思いもわかる。

    現実の本屋大賞に関心のある方や携わる方は特に楽しめる1冊。
    短篇のほうが読みやすいかもと改めて思った。

  • ずっと読み続けている大崎さんのシリーズ。
    大好きな2つのシリーズが合体した!

    私たちも毎年楽しみにしている本屋大賞が
    そのやむにやまれず生まれた経緯も
    その知名度ゆえにはからずも抱えてしまう
    闇や着てしまう汚名も含めて 真の姿で
    描かれていることは疑いようもない。

    多くの言葉で感想を述べるのはやめて
    私の現在の真情を話そうと思う。

    私の学生時代は、名が知れて給料のよい
    流行りの大企業に入社することが「就職」
    であり、「人生」だった。
    その仕事のありようや、それに関わる人
    たちの熱情など知る機会もなかった。

    出版社に編集で入り、広告部でも働いた
    私は、明らかに本の作り手の側の人間で
    あったのに…何も知らずにそこにいた。

    今の私があの頃の私なら 情熱を持って
    書店員になろうと思う。大好きな本を
    人に勧めたい。本のある世界を守りたい。

  • このシリーズはわりと好きだけど、今回はちょっと低調な気がした。本屋大賞を個人的には試みとしては評価もするし、書店員の熱意も充分にわかるけれども、自分はその人たちのお勧めに反応できないというか、以前大賞作品を読んでかなりがっかりしたので、人に勧めることの難しさをしみじみ痛感した。だから共感できなかったのかな。

  • 明らかに本屋大賞を意識していることが分かる文学賞にまつわる事件を書店員チームと出版社の営業チームが協力して解決する話。
    本屋大賞に対する心無い批判も恐れることなく取り上げつつ、本を愛する人たちの想いを評価した良い作品でした。
    若者もYouTubeばかり見ていないで、もっと本を読んで欲しいです。

  • もうすぐそこに授賞式が控えているというのに、なかなか話がつながらなくてハラハラドキドキした。でも多恵ちゃんの自信ありげな態度はなかなか堂に入ってる感じで名探偵の面目躍如というべきなんだろう。
    「背表紙は歌う」で直接対面はないようなことを書いていたけど、うまいこと引き合わせたものだと思うし、新たなる展開も今後期待できるように思えてきた。

  • 「書店大賞」事務局に届いた不穏な内容のファックス。
    その謎を、福岡から授賞式のために上京した書店員の佐々木花乃の依頼で、成風堂書店の杏子と多絵が解き明かす。

    今回は、出版社の営業、井辻智紀、真柴たちも関わり、同じ謎が立体的に解き明かされていく。
    大がかりな仕掛けが楽しい。
    ただ、福岡、金沢、北関東、都内各所と駆け回り、人も書店員、書店大賞事務局関係者、マスコミ、出版社関係とたくさん出てくるので、読むほうも結構大変かも。

    「書店大賞」は、あの有名な賞が思われてならない。
    フィクションだから、と思いつつ、やはりいろんな意見、特に批判とかも受けるんだな、と興味深い。

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著者プロフィール

大崎梢
東京都生まれ。書店勤務を経て、二〇〇六年『配達あかずきん』でデビュー。主な著書に『片耳うさぎ』『夏のくじら』『スノーフレーク』『プリティが多すぎる』『クローバー・レイン』『めぐりんと私。』『バスクル新宿』など。また編著書に『大崎梢リクエスト! 本屋さんのアンソロジー』がある。

「2022年 『ここだけのお金の使いかた』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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