ラヴクラフト全集 (4) (創元推理文庫 (523‐4)) (創元推理文庫 523-4)

  • 東京創元社
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  • Amazon.co.jp ・本 (345ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784488523046

作品紹介・あらすじ

ヒマラヤすら圧する未知の大山脈が連なる南極大陸。その禁断の地を舞台に、著者独自の科学志向を結実させた超大作「狂気の山脈にて」をはじめ、中期の傑作「宇宙からの色」「ピックマンのモデル」「冷気」や、初期の作品「眠りの壁の彼方」「故アーサー・ジャーミンとその家系に関する事実」「彼方より」の全7篇に、エッセイ1篇を収録。

収録作品
「狂気の山脈にて」 「宇宙からの色」 「ピックマンのモデル」 「冷気」 「眠りの壁の彼方」 「故アーサー・ジャーミンとその家系に関する事実」 「彼方より」

感想・レビュー・書評

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  • 今作では、“冷気“、“彼方より“が読みやすい作品で、それぞれの落ちが印象的だった。
    しかし、“宇宙からの色“の方がインパクトがあり、SFでよくある隕石落下からの、実は有害なものが潜んでいたという話。なぜ井戸の水を飲み続けるのか、もうその時点でお終いだったのか。
    屋根裏に閉じ込めるのはそうゆう時代なのだろうなと、読んでいる最中は自然に受け入れていたが、2人目からは、いや、もうおかしいだろうと。徐々に家族が明らかに落ちぶれていく様が面白い。
    異常なことが増えていくのに、誰も改善への行動をとらず、淡々と異常さが増していく。
    発光や肥大する、見たことも無い植物たちの様子など、前巻の“時間からの影“を思い出す。今作は結局全て短期間で灰になる上に、井戸には脅威が潜んでいるので前作のように平和的では無いが笑
    “狂気山脈にて“はTRPGシナリオで有名だが、アニメ映画も制作中らしく、楽しみ。
    <旧支配者>、ショゴス、白色変種のペンギン、ネクロノミコン。
    「テケリ・リ!テケリ・リ!」

    行為ではなく雰囲気が、怪奇小説に最も必要なものなのです。〜最大の力点は微妙な暗示に置かれるべきですーーp319資料:怪奇小説の執筆について

  • 媒介、夢に。身近な場所や未知の地にも現れる恐怖の存在。
    宇宙からの色・・・始まりは隕石。妖しい色彩に浸食されたモノたち。
    眠りの壁の彼方・・・眠りの中に現れる壮絶な風景は記憶か?
    故アーサー・ジャーミンとその家系に関する事実・・・祖先の秘密。
    冷気・・・冷気を求めるあの男の正体は?そして、その死。
    彼方より・・・機械に触発された未知の感覚器官で観た無限の果て。
    ピックマンのモデル・・・画家が描いた醜悪な生き物は実在するのか?
    狂気の山脈にて・・・南極探検隊が到達した未知の山脈で見たモノ。
    資料:怪奇小説の執筆について・・・ラブクラフト自身の考察。
    不可解な存在、憑かれた人々、そして異形の存在。
    観てはいけない。出会ってはいけない。
    でも好奇心に導かれ、行き着く先にあるのは、悍ましい恐怖。
    ホラーに宇宙の未知なる存在を加味した効果が効いた作品、多し。
    「狂気の山脈にて」は長編でラブクラフトらしさ炸裂の作品。
    執筆の1931年頃は飛行機による探検や南極大陸の調査が盛んに
    行われるようになった時期でもあり、まだ未知な場所であったのも
    事実。当時としての情報から、創造豊かに南極探検を描き、
    飛行機や無線をうまく利用して物語を進行しています。
    じわじわと正体を現してくる恐怖感。驚愕の古代建築物への侵入。
    そして、ネクロノミコン!
    冒険&SF&ファンタジー、ホラーが混在しています。
    それにしても、目の無いペンギンは怖いなぁ。

  • ①宇宙からの色
     荒地を見張る老人が語った、かつてそこに住んでいた家族に起きた悲劇とは――
     非知的生命体による侵略物。映画で例えると『遊星からの物体X』とか『ブロブ』とか。こういう恐怖は時代を問わず通じる。

    ②眠りの壁の彼方
     精神病院に強制入院させられた、殺人を犯した男。二重人格を思わせる発作を起こす男にわたしは興味をひかれ、ある試みを実行すると――
     ラヴクラフトが初めて宇宙的恐怖をテーマにした作品で、確かに、後に生まれる神話に連なる作品の「原型」と思わせる内容。

    ③故アーサー・ジャーミンとその家系に関する事実
     突如、焼身自殺を遂げた学者、アーサー・ジャーミン。彼がそのような暴挙に走った原因とは――
     遺伝をテーマにしたゴシックホラー。ラヴクラフトの当時の状況を踏まえると、こういう作品を書いたのもさもありなん、と言ったところか。

    ④冷気
     どうしてわたしが冷気をそんなにも恐れているのか、って? あんなことを体験すれば、誰だってこうなるさ――
     マッド・サイエンティストによる生きている死者の話。設定を少しいじれば、現代を舞台にしたホラーでも通用しそう。

    ⑤彼方より
     二ヶ月半の時を経て再会した友人は、別人のように醜く痩せさらばえていた。友人が言う「彼方」より来たる存在とは――
     これも「異界への干渉」という点で、後に生まれる神話に連なる作品の「原型」を思わせる内容。

    ⑥ピックマンのモデル
     なぜわたしがピックマンと絶交したのかって? それはな――
     体験者の話を直に聴かされているような会話体の体裁。虚実の境が曖昧にさせるような展開は実話系怪談にも通じる。

    ⑦狂気の山脈にて
     次の南極探検計画を中止させたいために、前責任者が語った、南極での忌まわしい体験とは――
     美しいグロテスクと言うのか、単純なホラーではない所がこの物語の面白さ。ギレルモ・デル・トロ監督が映像化を目指すのもわかる。旧支配者を、未来で冷凍睡眠から目覚めた我々に置き換えれば、その恐怖や悲哀に共感できるだろうか。
     『アウトサイダー』もそうだが、知性ある怪物をただのモンスターとして描写しないのは、ラヴクラフトが最期まで抱いていた「孤独」に由来するものだろうか。

  • 久しぶりにラブクラフト全集の続き。これは当たりの巻。

    訳者による解説にも書かれているが、「ピックマンのモデル」以外は、科学的な話というか、分析がキーとなる話になっており、出てくる物質の名前が古いのを除いて、全く現代でも通用するような話ばかりだ。

    名作「インスマウスの影」を彷彿とさせつつ、得体のしれない謎の物質(生物?)の恐怖「宇宙からの色」、何故か体を冷やし続けないといけない「冷気」と、南極に氷漬けになっていた宇宙からの生物をめぐる「狂気の山脈にて」そして超名作で怪談風の「ピックマンのモデル」など、硬い文章ながら、読書なれしていない人でもゆっくり読めば映画のように脳内で映像化されてくるはず。

    3巻が地味な印象だっただけに、この4巻はさらに素晴らしく感じる。ホラーというよりも、SFとして読んでも面白い。

    なお、ラブクラフトの作品は、書き出しは訳がわからないことが多いので、最初の3~4ページは2回位読むのがコツ。本書に収められた作品も例にもれない。

  •  ラヴクラフトの文章が読みにくいのは不気味さを最大限に引き出すため。付録として怪奇小説の創作の仕方が掲載されている。

  • 1985年以降購入して読んだが、詳細は覚えていない。
    これまで聞いたことがないような擬音のカタカナ、”ほのめかす”という普段使わない訳、不気味な話には惹きつけられた。
    また読みたい。(2021.9.7)
    ※売却済み

  • 270

  • 第5回(古典ビブリオバトル)

  •  気づくと狂う。

     四冊目。「宇宙からの色」「眠りの壁の彼方」「故アーサー・ジャーミンとその家系に関する事実」「冷気」「彼方より」「ピックマンのモデル」「狂気の山脈にて」の七編。狂気山脈が長めで他は短編。さっくり読める。クトゥルフっぽいのは「宇宙からの色」と「狂気の山脈にて」かな。「眠りの~」「彼方より」もちょっとそれっぽい。
     基本おぞましいものに触れた人物が狂うのって「気づくから」なんだよな。気づくことができないほど愚鈍であれば逆に助かってる。大きくSAN値が減ったとき、アイデアロールに成功してしまうと発狂っていうTRPGのルール、めちゃくちゃうまくできてるな、って感心しました。気づいちゃうから狂う。
     「冷気」と「彼方より」がさっくりよめて、ほどよくぐろくて怖くて好きです。
     あとようやく読めた、「狂気の山脈にて」。一番ひどくぐちゃぐちゃにされてたのってやっぱりレイクですかね。何度も「気の毒なレイク」って言い方されてたから、そうかなって。作中の〈旧支配者〉には名前は付けられてないのかな。クルウルウの末裔とはまた別の存在なんだよね。〈旧支配者〉が恐れてたらしい山脈は、要するに外なる神と関係あったってことかな? ヨグ=ソトースの名前が出てきたからそうだと思うんだけど、要するに、古代の宇宙からの飛来者(旧支配者)が何パターンもいて、その彼らですら恐れるよりおぞましく、存在の深淵に触れるだけで発狂してしまうような何か(外なる神)がいるってことでよいか。
     抜粋。「狂気の山脈にて」


    このはるかな菫色の連なりこそ、禁断の土地の恐るべき山脈以外の何ものでもなかったからだ――地球で最も高く、地球の邪悪のすべての焦点になっている山脈なのだ。


     テケリ・リ! テケリ・リ!

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