ラヴクラフト全集〈6〉 (創元推理文庫) (創元推理文庫 523-6)

  • 東京創元社
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  • Amazon.co.jp ・本 (354ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784488523060

作品紹介・あらすじ

ランドルフ・カーターを主人公とする一連の作品、および、それと関連する初期のダンセイニ風掌編を収録。猫を愛する読者なら快哉を叫ぶ佳編「ウルタールの猫」、神々の姿を窺わんとする賢者の不敵な企てを描く「蕃神」、巨匠が遺した最大の冒険小説「未知なるカダスを夢に求めて」等全9編

収録作品
「白い帆船」 「ウルタールの猫」 「蕃神」 「セレファイス」 「ランドルフ・カーターの陳述」 「名状しがたいもの」 「銀の鍵」 「銀の鍵の門を越えて」 「未知なるカダスを夢に求めて」

感想・レビュー・書評

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  • 全集⑤巻まで続けて読んでおきながら、
    その後スルーした⑥巻を今頃。
    ジーン・ウルフ『書架の探偵』読後、猛烈に気になり始めたので。
    理由は↑これ↑をお読みの方には何となくおわかりいただけるかと。
    春日武彦先生の書評エッセイ集『無意味なものと不気味なもの』で
    「ランドルフ・カーターの陳述」ネタばれレビューを読んで
    敬遠していたのだけれども、猛烈に実地確認したくなったので。
    内容はランドルフ・カーター・シリーズとも呼ぶべき
    一連の中短編と、その魁となった初期作品。
    面白かったのは下記の二編。

    ■ランドルフ・カーターの陳述(1919年)
     行方不明になった友人ハーリイ・ウォーランについて
     問い質され、経緯を語る青年ランドルフ・カーター。
     無線機で会話しつつ、
     墓地の下の奥深くへ侵入した友人が見たものとは。

    ■銀の鍵の門を越えて(1933年)
     エドガー・ホフマン・プライスの習作に
     ラヴクラフトが大幅に手を加えて
     仕上げたという「銀の鍵」後日談。
     失踪したランドルフ・カーターの財産相続人たちの会議。
     当惑する列席者をよそに、
     ランドルフの現況を滔々と語るチャンドラプトラ師だったが……。
     時間は不動で終わりも始まりもなく、
     過去・現在・未来はすべて同時にあり、
     ランドルフ・カーターは
     窮極にして永遠なる彼自身の一局面として
     あらゆる時代に遍在する――という考え方が興味深い。

  •  6巻は、後に「ドリーム・サイクル」と呼ばれる世界観に統合されるものを舞台やネタにした作品を収録。
     そして、クトゥルフ神話とドリーム・サイクルの世界観を統合した、前期ラヴクラフト神話の集大成とも言うべきファンタジー大作『未知なるカダスを夢に求めて』。夢の世界で苦しみながらも自由に大冒険を繰り広げるというヤングアダルト的なその内容は、ラヴクラフトの当時の状況を知ると、以前の苦境から解放されたであろう彼の心境を表していると、どうしても勘ぐってしまう。

    【アザトース、異形の神の幼生、下級の異形の神たち(蕃神)、バステト、ノーデンス、ニャルラトホテプ(暗黒のファラオ)、ロビグス】
    《ズーグ族、ノフ=ケー(グノフケー)、夜鬼(ナイトゴーント)、食屍鬼(グール)、ドール、ガグ、ガスト、月棲獣(ムーン=ビースト)(蟇じみた月の生物)、シャンタク鳥、飛行するポリプ、レンの男、レンのクモ》

    (収録されている一編、邦題の『蕃神』は端的に言うと「渡来神」。原題の『The Other Gods』を直訳すると「(他の、もう一つの、向こう側の、過去の、)神々」。素直に受け取るなら外なる神、または旧支配者を指すと思われるが、正体はやはり這い寄る混沌とその下につく存在なのか。)

  • 白い帆船★3
     楽園を目指した灯台守。この結末は、今いる世界こそが楽園であるという示唆なのか。

    ウルタールの猫★3
     HPLは猫好きだったのかしらん。ウルタールという地名は、この後の話でも出て来る。

    蕃神★3
     思い上がった賢人バルザイ。神の怒りに触れる展開は素直すぎるほど。

    セレファイス★2
     夢の中で楽園に行くというパターンが新鮮味がなく。

    ランドルフ・カーターの陳述★3
     墓から入っていった地下にいる友人と電話で会話するシチュエーションは不気味。

    名状しがたいもの★3
     モンスターよりも、夜が更けるまで怪奇話を墓石の上でし続けた彼らが怖い。

    銀の鍵★3
     これは重要アイテムですね~。銀の鍵。時間を超えてとある秘密の部屋に入れるようです。

    銀の鍵の門を超えて★4
     今までのHPLの小説の中で一番壮大で、わくわくして面白かった。ここまで次元や宇宙を超越した描写はなかなかない。これまでの短編の話のエッセンスの記憶を時々刺激されることもあいまって、ここまで読み続けてきた甲斐があったと言えるだろう。

    未知なるカダスを夢に求めて★2
     今までの話の集大成!読み始めはなるほど、そういう企みだったのか!と感心したが…。長いよ。長すぎる。もう長すぎてうんざり。結局、カーターは何しに行ったんだ?

  • "ウルタールの猫"や"ランドルフ・カーターの陳述"は分かりやすい話だったが、他の短編はイマイチ話に入り込めなかった。
    "銀の鍵"と"銀の鍵の門を超えて"は割と面白かった。しかし、"未知なるカダスを夢に求めて"では"ウルタールの猫"や"審神"など、序盤の短編と関連した話が出てきたのは面白かったものの、如何せん話が長く、途中で飽きてきた。

    <第一の門>
    見る角度によってぼんやりと色の変わる、何か金属でできた大きな球体らしきものを<導くもの>が前にさしだすと、低い音だという印象を半ば与えるものがあたりに広がりゆき、何らかのリズムの間隔、何らかの強弱がつきはじめた。
    「全身を覆い隠す<異形のもの>が、六角形の台座で詠唱しながら体を揺らした」p126

    <窮極の門>
    強烈な恐怖をおぼえながら一瞬のうちに、自分がひとりの人間ではなく、多数の人間であることを知ったのである。

  •  第6巻はラヴクラフトの分身であるランドルフ・カーター(名前からも連想できる)に関する短編が収録されている。「名状しがたいもの」などラヴクラフト読者にはおなじみの単語がそのままタイトルに使われているのだが、原著でも「Unnamable」となっており、この何とも読みにくい古風な文体は日英に関係ないものであることがうかがえる。ラヴクラフトの世界を忠実に再現しようとする翻訳者の苦労がしのばれる。ラヴクラフトが生前作家として大成功をおさめられなかったのもこの古風で読みにくい文体にあるのかもしれない。また現代のようなライトノベルがもてはやされる時代でもなかったことも原因として挙げられるのかもしれない。

     ラヴクラフトは怪奇小説作家として有名であるがSF作家としても十分な実力を持っていると思う。ラヴクラフト独特の宇宙論は読者に深淵な哲学的思考を促さずにはおかない。


  • なんか、スッカスッカの脳内空間に
    薬液付けた指をソロリソロリとねじ込まれていく感じだ
    しかも抵抗出来ない。
    堪能せよ、無限地獄を。

  • 2020.4.9読了。描写がイマイチよく分からない神話存在が原作だとどんななのか知りたくて読んだが、なるほど分からん。もう自己解釈でいいや。でもねちっこい装飾的な描写は大いに参考になった。今後の創作に反映するぞ。猫集会を見てたのは少年期のアタルだったのか。そしてウルタールの法を作ったのはバルザイだったんだな。猫の描写細かいというかなんというか猫贔屓が凄い。特に「未知なるカダス〜」での猫贔屓は凄い。均整のとれた健やかな猫の姿がまさに眼福とか…なんかもう凄いな。黒猫飼ってたのか。出てくる黒猫のモデルはみんなこの黒猫らしい。というかドリームランドの猫は隊を組むし階級はあれどあくまで四足歩行の猫なんだな。人側が猫語を話す描写はあったけど猫側は人語喋る描写無かったな?そしてラストにまで堂々と登場だ。知ってる神話存在が出てくるとワクワクする。原作のニャル様はこういう口調なのか!元ボストンの画家で今は夢の国で食屍鬼に成り果てたリチャード・ピックマンという存在を知った時、あの絵を描いたのこいつじゃないか?と思ってしまった。そういう事にしよう。黒人は夢の国でも奴隷なんだな。他の巻にも興味が出てきたから機会を作って読みたい。

  •  薔薇の眠りを越え、いざ窮極の門へと至らん。

     やっと銀の鍵の元ネタまで来ました。ランドルフ・カーターが登場する話をまとめてある一冊。FGOのアビーちゃんは、ランドルフの持ってた銀の鍵がひとの形をとったもの、って認識でいいんすかね。
     「白い帆船」「ウルタールの猫」「蕃審」「セレファイス」「ランドルフ・カーターの陳述」「名状しがたいもの」「銀の鍵」「銀の鍵の門を越えて」「未知なるカダスを夢に求めて」の九作。銀の門の鍵が中編、カダスが長編で、あとは短いです。ぽつぽつ世界が繋がってる感じ。
     ラヴクラフトが猫好きってのはどこかの解説に書いてあったけど、ほんとに好きなんだね。猫最強じゃん。思わず膝の上にいる黒猫なでなでしながら読んじゃうじゃん。
     カダスがなんかほかのと違った感じで、きちんと冒険してるなぁ、と。まあ夢の国の話だけど。クラネス王が目覚めることができなかったのは、戻る身体がもうなかったからだけど、ランドルフには残ってたってことか。食屍鬼さんとか夜鬼さんたちがどうなったのか気になります。見た目があれなだけで、あの子らが死んじゃうのはかわいそうだなぁ。あと、最後、ニャルさま何しに現れたのか、いまいちよくわかんなかったです。ニャルさまが言ってたことは事実なの? 地球の神々を連れ戻してもニャルさまとしては問題なかったのかな。カーターを罠にかけようと道を教えて、教えた先に困難を用意したけど、カーターがそれを乗り越えてしまったから、ラスト神々に八つ当たりしたってことですかね。それとも普通にカダスを留守にしてた神様たちを怒ったの?
     抜粋。「未知なるカダスを夢に求めて」より。


    「ヘイ、アア=シャンタ、ナイグ。旅立つがよい。地球の神々を未知なるカダスの住処におくりかえし、二度とふたたび千なる異形のわれに出会わぬことを宇宙に祈るがよい。さらばだ、ランドルフ・カーター。このことは忘れるでないぞ。われこそは這い寄る混沌、ナイアルラトホテップなれば」


     「ヘイ、アア=シャンタ、ナイグ」の意味が分からない。

  • ランドルフ・カーターを主役とする一連の物語が集められた一作。恐怖小説というよりは冒険譚のようなものもあるけれど。やはり根底にはわけのわからない恐怖があります。
    お気に入りは「ウルタールの猫」。猫好き万歳。おそらく一般的な視点ではこれは怖い話なのかなあ、と思いますが。そうは思わないのが猫好き。そりゃ猫を殺していいわけがないって! ちなみに壮大な冒険譚「未知なるカダスを夢に求めて」にもこの猫たちが登場するので、ついついにやけてしまいます。ラヴクラフト、本当に猫好きなんだなあ。
    恐怖を感じた作品ということでは、「ランドルフ・カーターの陳述」がお気に入り。ラストの一文が……怖い!

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著者プロフィール

米国で、怪奇小説・幻想小説の先駆者の一人として知られる小説家(1890年~1937年)。生前は無名に近かったが、死後、一連の小説作品が「クトゥルフ神話」として体系化され、広く知られる存在となった。スティーブン・キングなどにも愛読され、「宇宙的恐怖(コズミック・ホラー)」とも呼ばれるその世界観は、多くのクリエイターに影響を与えている。

「2020年 『クトゥルフ神話~ラヴクラフト傑作選4 時からの影』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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