ラヴクラフト全集〈別巻 下〉 (創元推理文庫) (創元推理文庫 F ラ 1-9)

  • 東京創元社
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感想 : 8
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  • Amazon.co.jp ・本 (396ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784488523091

作品紹介・あらすじ

ラヴクラフトが添削や共作を手がけた作品を、執筆年代順に別巻2冊に収録。

感想・レビュー・書評

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  •  上巻に引き続きラヴクラフトによる添削、代作、共作が収録されている。作品は執筆年代順に収録されており時間が経過するにつれてラヴクラフト色が薄くなっていくような気がした。ラヴクラフトにしては珍しくディストピアSFも収録されておりそこそこ楽しめた。

     ラヴクラフトの文章は読みにくいとの批判をよく耳にするが、これは我々が小説を読むやり方にも原因があると思われる。現代はあらゆる行為が昭和時代の1.2倍速で進むため、小説も必然的に読み飛ばし、流し読みにならざるを得ない。不気味な雰囲気を醸し出すためには時間をかけて読む必要がある。映画も小説もゆっくり鑑賞しなければ楽しめないものはがあることを肝に銘ずるべきだ。

  • 『石の男』
     友人が消息を絶った地で、非常に精緻な犬と人の石像が発見される。彼が彫刻家であったことから、その報を知ったわたしとベンはその地へと赴くと、更に二体の石像を発見して――
    (犯人が相手を殺害する手段として「石化」を用いるのだが、魔術の行使でも神話生物の召喚でもなく、化学(もちろん虚構)の力でタンパク質を石化する薬品を調合するというマッド・サイエンティストもの。このネタ、「神話生物の仕業と見せかけて」というミスディレクションでTRPGに使えそう。)

    『羽のある死神』
     南アフリカのホテルで変死体が発見される。遺された日記に記されていた殺人計画と、その後に起きた悍ましい顛末とは――
    (完全犯罪の手段として用いられる生物が明らかに神話生物っぽいのだが、TRPGのルルブやモンストには掲載されていない。追加されるなら、攻撃が当たると毎ターンごとにCONを削られる毒持ちタイプか。)

    『博物館の恐怖』
     ジョーンズは悪趣味な博物館の主人の不興を買ってしまい、猟奇的またはグロテスクな作品が展示される博物館の中で一晩を過ごすことになってしまう。なんとか心を落ち着けて耐え忍ぼうとするジョーンズに襲いかかってきたものとは――
    (登場人物が神話生物をたわごと――フィクションと認識しているという、メタフィクショナルでセルフパロディな内容になっているのが異色で、かつクトゥルフ神話的ホラー作品として成立しているのが面白い。浅黒い肌の助手なんか明らかに「這い寄る混沌」っぽいし。あと「次元をさまようもの」の正体は、原作がっかり神話生物ランキングでベスト3に入ると思う。)

    『永劫より』
     不審死を遂げたボストンの博物館館長が遺した手記。そこには、博物館に持ち込まれたミイラと、その後に起きた変死事件の真相が綴られていた。一体、博物館の中で何が起こったのか――
    (その姿を見たものは石になってしまう、しかも石化するのは表面のみのため、内側にある体液や臓器、そして脳は半永久的に生き続ける生き地獄を味わわされるという、神話としてはオーソドックスだが、恐ろしく悍ましい神話生物を主軸とした物語。)

    『アロンゾウ・タイパーの日記』
     オカルト研究家のアロンゾウ・タイパーが失踪する。後に発見された彼の日記には、生前に訪れた、忌まわしい屋敷の調査記録が記されていた――
    (『ダゴン』や『ダニッチの怪』や『インスマスの影』などをかけ合わせたような、ラヴクラフトへのオマージュを思わせる内容。はたして、彼を連れ去ったのは千匹の仔を孕みし山羊か、それとも――)

  • 別巻の下。
    上と同じく、ラヴクラフトがリライトした作品を収録。また、各作品と著者についての解説も下巻に纏められている。
    好みもあるので一概には言えないが、全体的に下巻収録の短編の方が面白かったように思う。

  • 初めての献本
    そして初めてのラヴクラフト・・・と思ったら別巻にはラヴクラフトが添削・代作した作品しか載っていないらしい
    少しがっかりしつつも読む

    文体がくどくて始めは読みづらさを感じるが慣れてくれば問題なくなった
    でも最後の「夜の海」に関しては文体・内容ともにつまらなかった
    あとがきによるとラヴクラフトはほとんど手を加えていないらしく「詩情豊かな文体を尊重した」とあるが、僕にはそれが合わなかったようだ

    形式はラヴクラフトが添削・代作した短編集で全11篇掲載
    それぞれの作品の経緯についてはあとがきを参照すれば分かる

    印象的だったのは「永劫より」「山の木」「アロンゾウ・タイパーの日記」の3作
    どれも黒魔術というか、共通した作中作が頻出している
    それは、例えば「エイボンの書」や「ネクロノミコン」、「無名祭祀書」などのことなんだけど、それらが人類誕生以前の歴史の存在を物語っており、それらの存在は忌むべきものとして捉えられている

    「クトゥルー神話」というものを著者が創造したものということは知っていたけど、その内容が上記の様な人類誕生以前の歴史を思わせるものであるということは、初めて知った

    今までラヴクラフトというと幻想的な空恐ろしい物語を書く人だというイメージがあったけど、具体的にどう恐ろしいか、ということが本作を読むことでその輪郭が分かった
    それは本作で良く出てくる「宇宙的恐怖」という言葉に集約されると思う
    人類にとって全く未知であり、かつ断片的な情報はすべて小説世界の常識の中ではすべておぞましいものを指示しているが故に、とてつもない恐怖を持たざるを得ないという、そういった「恐怖」を扱っている

    そういった世界を扱った作品が面白かったことを考えるとラヴクラフト自身の作品はもしかしたら結構好きかも知れない
    今度図書館で借りよう

  • 別巻下の読みどころ
    神話色の強い『永劫より』


    『ラヴクラフト全集』の読みどころ
    1930年代のパルプフィクション・ホラーの中から生まれ、みじかい活動期間でありながら、多数のフォロワーを今なお生み出しつづけている。
    ラヴクラフトの面白さを、ぜひ知ってもらいたく選びました。
    今すぐにでも彼の小説のガジェットを使って彼のフォロワーとなることができるのも、ハマリこめる理由の一つ。

    初心者には特に、短編かつラヴクラフトらしい『ダゴン』がオススメ。

  • これで、ラヴクラフト全集は、終了です。
    途中から(たしか2巻から)、編集方針が変わったりして、若干、全体を見まわしたときに、まとまりが悪いところもあるのですが。まあ、いいか、マニアではないので(笑)

    えーと、この別巻は、上下巻ということで、2巻続けて読んでいたのですが、ちょっとつらかったです。
    ホラーって、ちょこちょこと短編を読む分には嫌いではないのですが、こう同じトーンの話が連続で続くとねぇ。ということで、下巻は、かなりいい加減なとばし読みでした。

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