夜の写本師 (創元推理文庫)

著者 :
  • 東京創元社
3.99
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感想 : 171
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  • Amazon.co.jp ・本 (350ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784488525026

感想・レビュー・書評

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  •  予想以上に壮大なファンタジーでした。読み終えた時には最近味わったことのない重厚な感じで心が一杯に。

     物語の面白さだけなら星5つですが、少しわかりにくい描写が何箇所かあったので(カリュドウが闇に染まった時の見た目の変化とか)、星4つにしました。

     魔道師に対抗するために、魔道師になるのではなく、魔法を操る「夜の写本師」となる、というのが面白い着想。綺麗な飾り文字で書かれた書物に魔法が宿っているという設定は魅力的です。

     カリュドウは夜の写本師としてアンジストと戦ったけど、その後は魔道師になったようですね。

  • 面白い、んだけど、だけど。
    なにかが引っかかるのか、どうにも世界に入り込めず、なかなか最後まで読めなかった。
    設定も構成も面白いはずなのに、文章が好みに合わないのか、とにかく進まない。
    うーん、続きのシリーズはどうしようかなぁ。

  • タイトルに惹かれて購入~。ど派手で容赦のない魔法の顕現や何種類もの魔術の手法や修行についての詳細な描写が面白くて、どんどん読み進められました。
    物語では主人公のカリュドウと三人の魔女、そして大魔道師アンジストの千年にわたる宿命が明らかにされていきます。
    「書物の魔法」…本そのものやページの紙片や書かれた文章が魔力を持つなんて、とても魅力的ですね。

  • 久々にファンタジーらしい、ハイファンタイジーを読んだような気がした。文化風土が違うから無理なんだろうなと思っていたタニス・リー的なファンタジーを日本人が書けるようになったんやなぁ。

    井辻朱美が解説2本を掲載するぐらいの気合の入れよう、それに合いふさわしいボディのしっかりした内容。

    写本と魔術の関わりとか、ところどころ疑問符付くところもあるし、途中で人間関係(特に生まれ変わりの因果関係)が分かりづらい難点はあるものの、冒頭の登場人物紹介を都度見開けば思い出すレベル。

    ボディがしっかりしてる分、ボーッと読んでると置いてかれる感じがあるので、読むのに少々の集中力が必要だけど、しっかり読めば読んだ分の手ごたえは感じられる。この作者このシリーズ要注目だなこりゃ。

  • ファンタジーを読んで幸せだと思うのは「そうそう!こんなのが読みたかったの!」と、感じる時だと思うのです。千年にも及ぶ復讐と呪い。主人公は男性でありながら、女性性を強く感じました。月、闇、海は女性の持つ力。それを欲した魔道師アンジストに育ての親と幼なじみを殺されたカリュドウ。三人の魔女の因縁も絡み壮大な物語でした。けっこうグロい描写もあったので、正統派にみせて実はダークファンタジーかも。ラストがすごく好きでした。復讐の跡にもたらされるのは新たに踏み出される一歩。それが、赦しだと感じられたからです。

  • 果てしれぬ輪廻。大いなる許し。

    すべてを奪われ、復讐のために何度となく転生を果たす女魔道師たちの暗い望みは、女でも魔道師でもない者の手で、また復讐という形でもなく果たされた。

    そうして、その壮大な歴史の輪廻の予兆が暗示されて物語は終わる。

    しかしそこにはもはや忌まわしさはない。
    女を女として敬い、男がただの男として振舞う新しい時代には、もはやすべてを手に入れようとすることでしか癒されぬ孤独を抱えた者は存在しない。

    互いを支え、互いを信じることの価値を知った世界では、もはや紫水晶を分かつ存在も生まれないだろう。

    まだ生きることの喜びを知らぬままにその肉体を滅ぼした、たった一人の子どもが新たに生き直すための輪廻。そう信じたい。


    闇、獣、人形、そして書物。それぞれの儀式に使うものは異なってはいても、どの魔道師が操る魔法も、呪文を唱えることでしかその力は生まれない。

    しかし写本師の魔法ならぬ魔法は、文字そのもの。そうして魔道師の力に対抗できる唯一のもの。

    この設定は、言葉を仕事にしている私を魅了した。語られる言葉と綴られる言葉。男と女。この偉大なファンタジーにおいて拮抗するものとして語られた存在は、いずれも互いの力を奪いあうことなく、それぞれがそれぞれの存在のままであり続けることで最も素晴らしい力をこの世界に生み出すのではないだろうか。

    少しずつ、本当に少しずつ噛み締めながら読み終えました。上質の物語です。

  • これは…すごいものを読んでしまった。
    コンパクトながらしっかりしたストーリーもさることながらその描写力、設定にびっくりした。
    モモとか、なんだろう、そういう児童文学のファンタジーを大人用に昇華させたような読み味がすばらしいです。この、世界にぐいぐい持っていく力は小野不由美レベルかもしれません。

    あらすじを書くと、どこからがネタバレになるのか悩むが、一言で表すと「復讐」だ。
    主人公カリュドゥは月石を右手に、左手に黒曜石、そして口の中には真珠を持って生まれてきた。この三つの品には大きな意味があるのだが、そのために母からも気味悪く思われ魔道師エイリャに育てられる。小さな田舎の村で膨大な書物と、いろんなことを教えてくれる育ての親に囲まれて成長するが、ある日、エズキウムの国の魔道師長アンジストが現れカリュドゥの目の前で幼馴染のフィンとともにエイリャを無残に殺してしまった。カリュドゥはアンジストに復讐するため、魔道師の修行をしようとエイリャの遺言であるパドゥキアに向かうことにする。そこで師匠のガエルクのもとで修行を積むが、ある事件により、魔術とは別の力を知る。そして「紙に触れるだけで」殺してしまうことも出来るという「夜の写本師」を目指し、アンジストの暗殺を試みるが、実はアンジストとカリュドゥには知られざる因縁があった。その因縁とはなにか、カリュドゥの生まれながらに持っていた三つの品との関係はなんなんのか…。

    とにかく面白いです。
    細かな描写がまた美しいんです。
    繊細なレースを編むような、丁寧な始まりで、話が大きく動き出すまではむしろ描写の美しさばかりを見てしまいます。丁寧に、ゆっくり読みたい。
    そして魔術や、カリュドゥが使う写本師の戦いの描写もすごい。残酷な描写も見られますが、この世界での「魔術」というものは明るさだけではない、闇も苦しみも恨みもあっての魔術なんだ、ということなのでしょう。ちょっと怖いです。
    最後はなんとなく切ないけどすてきな終わり方で、悲しくないのに泣きそうでした。

    映像化して欲しいようなしてほしくないような。

    井辻朱美さんの解説もいいです。
    魔法を扱ったファンタジーの代表作を挙げながら、この作品の良さを再認識させてくれます。

    シリーズ物の1巻とのことなので続きも追いかけたいです。
    ただ文庫化されたのはまだこの作品だけのようなので、ハードカバーで続編を読むかは悩み中です!

  • 魔法を扱う魔道師と魔力を持つ本を作る写本師がいる世界での復讐劇の話。まず小説の世界観が好きですぐ入り込んだ、闇に入り込んだみたいな暗さが良い。読んでる最中何回息を呑んだやろと思うくらい都度都度話の行方が気になりすぎた。

  • いつの間にやらこの世界観に没入してしまっていた。徐々に引き込まれていった。ずっと読んでいたいような感じがした。終わってしまったのが寂しかった。魔法の種類や仕組みなどもおもしろかった。

  • 第72回アワヒニビブリオバトル「【往路】お正月だよ!ビブリオバトル」第6ゲームで紹介された本です。チャンプ本。
    2021.01.02

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著者プロフィール

山形県生まれ。山形大学卒業。1999年、教育総研ファンタジー大賞を受賞。『夜の写本師』からはじまる〈オーリエラントの魔道師〉シリーズをはじめ、緻密かつスケールの大きい物語世界を生み出すハイ・ファンタジーの書き手として、読者から絶大な支持を集める。他の著書に「紐結びの魔道師」3部作(東京創元社)、『竜鏡の占人 リオランの鏡』(角川文庫)、『闇の虹水晶』(創元推理文庫)など。

「2019年 『炎のタペストリー』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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