沈黙の書 (創元推理文庫)

著者 :
  • 東京創元社
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本棚登録 : 278
感想 : 15
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  • Amazon.co.jp ・本 (368ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784488525071

作品紹介・あらすじ

火の時代、絶望の時代が近づいている。戦が始まる。おだやかな日々は吹き払われ、人々は踏み潰される。予言者が火の時代と呼んだそのさなか、いまだ無垢である〈風森村〉に、〈風の息子〉は生をうけた。彼が笑えばそよ風が吹き、泣けば小さなつむじ風が渦を巻いた。だが〈長い影の男〉がやってきたときすべてが変わった。人気ファンタジー〈オーリエラントの魔道師〉シリーズ。コンスル帝国創世記の激動期を描く、シリーズ最初の物語。

感想・レビュー・書評

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  • とても楽しみに待っていた作品なのに、集中できていなかったのかなんなのか、どのように感想を書いたらいいのかわからずに戸惑っている。もしかしたら、これまで読んだシリーズのなかでいちばん地味と言えるかもしれない。ただ、地味だからおもしろくないわけではない。この物語を通して著者が提示して見せたものには、簡単には飲みこめない奥行きがあると感じられた。また、コンスル帝国の建国以前の話ということもあり、登場するひとびとの素朴さも際立つ。その無垢さ純粋さがこの小説の静けさを作り、祈りのような佇まいになったのかもしれない。
    (冒頭に“戸惑っている”と書きはしたが、ぐわりと込み上げる衝動になんど涙目になったことか。この物語の主人公は、その純粋さゆえに利用されなぶられ打ちのめされるのに、しかしおのれが背負った宿命を手放さぬたくましい生命。彼を追い立て、もり立て、立ち向かわんと駆り立てるもの、希望を見出だしたものが何だったのか。それをいっしょに見つけられたような気がして幸せだった。)

  • オーリエラントの魔道師シリーズの第六作。

    コンスル帝国が生まれるずっと前、
    オーリエラントがオーリエラントとなった頃のお話。

    生まれながらにして風や雨や月を動かす純粋な子供たちが、
    騙され連れ去られ裏切られるのは、
    なぜか他の物語よりもつらいものがあった。

    それと、
    「北の蛮族」がどうも受け入れられなかった。
    片や家畜をもち、畑を耕し、言葉を操る人間たちに対して、
    それらを知らない持たない蛮族が同時に存在している世界に
    違和感があるというか。
    ファンタジーなので何でもあり、と言えば、ありなのだが、
    人間よりも体も大きく、力も強い「蛮族」の姿に、
    ホモ・サピエンスと同時代を生きていたネンデルタール人を重ねているのかもしれない。
    その頃は、ホモ・サピエンスも大してしゃべれていなかったというか、
    大した違いはなかったはず。

    著者のあとがきに、
    他人のために何かをすることに喜びを感じるのが
    ホモ・サピエンスの本質だ、ということとが書かれていたが、
    少なくとも、他の個体とのつながりが重要であり、
    それは、より小さく弱かった私たちが
    集団としてしか生き残れなかった結果なのだと思う。

    それは喜びであり、ときには悲しい宿命でもある。

  • なるほど「whole land」が語源か。そしてここにも大地に囚われた竜。ただこちらは良く喋る…。シリーズの時系列で言うと最初期だが魔道師自体はすでに存在し、そして<闇>の元となる存在もすでにある。まあ<闇>なんてものは人間が存在を始めた時から共にあるんだろうな。シリーズの中でもよりファンタジー色が強く、神話の世界を覗いているようだった。

  • 読むのを忘れていた模様。
    ここから色々始まったのか… そして国の名前の付け方が面白かった。なるほど、そういう言葉遊びからできているんだ、みたいな。

    ヒアルシュはなんて言うのか不運な人だなぁ。
    良心や良識が無ければもっとラクに生きられたのだろうか…なんて考えてしまう。それを失ってはオシマイではありますが。とは言え自分は間違ってないと信じて戦いを続ける方が、本当は恐ろしい存在のように思ったりします。

    最新作(だと思う)で年表を付けてくれるようになったのがありがたかったです。

  • この方の本はいつも女性キャラに疑問を抱いてしまうのだが(女性作家の割に結構男性目線に感じるので)、これは素直に心に入ってきた。面白かった。

  • 第6弾でシリーズ始まりの書

  • 読了すると、この厚みの本にこれだけの内容が!?と改めてびっくり。面白い!!! 乾石智子氏、個人的に今イチオシです。

  • 今までのシリーズでは、一番好きかも。
    大好きな、ドラゴンが出てきたから?(笑)
    それも含め、物語性が強いからなのかも。伝説、という感じがする。

    個人的には、海賊王が好き。
    かっこよすぎる。

  • 「風の息子」とか「雨の娘」とか人の名前を開いているところがなんといっても好い。ネイティブならこんなふうに名前が脳裡に響くのだろうか、という印象。世界観がよく出ている。

  •  言葉という文化の力がテーマ、だと終盤になってやっとわかった。でも、分からなくても引き込まれるストーリーの力は変わらずで楽しめる。
     これまでの物語に多かれ少なかれ関わってきた、コンスル帝国の建国前夜の時代。
     故郷から連れ出され、破壊や裏切りや従属の苦しみを舐め尽くし、絶望に絡め取られそうになりながらも、意志と原体験を頼りに踏みとどまって前を向こうともがく「風の息子」の話。暗い部分が多いけれど、「雨の娘」と「三日月の望み」が再会してからの流れがいいなぁ。
     全体的にちょっと説明過多というか、オーリエラントの存在理由について言葉を尽くしすぎている印象も受けた。主張が強すぎるというか。まぁ言葉は文化であり発展の基礎だというのはその通りなんだけれども。

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著者プロフィール

山形県生まれ。山形大学卒業。1999年、教育総研ファンタジー大賞を受賞。『夜の写本師』からはじまる〈オーリエラントの魔道師〉シリーズをはじめ、緻密かつスケールの大きい物語世界を生み出すハイ・ファンタジーの書き手として、読者から絶大な支持を集める。他の著書に「紐結びの魔道師」3部作(東京創元社)、『竜鏡の占人 リオランの鏡』(角川文庫)、『闇の虹水晶』(創元推理文庫)など。

「2019年 『炎のタペストリー』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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