ガストン・ルルーの恐怖夜話 (創元推理文庫)

  • 東京創元社
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  • Amazon.co.jp ・本 (254ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784488530013

感想・レビュー・書評

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  • 『オペラ座の怪人』で有名なガストン・ルルーによる、「こわい話」の作品集です。とは言っても超自然の恐怖を描いたものは少なく、解説にもあるように奇譚(あるいは綺譚)と呼ぶ方が当たっているようです。
     「胸像たちの晩餐」から「恐怖の館」までは、ツーロンのカフェに集まった海の男たちが自分の体験談を語るという設定になっています。この手の小説の古典的なやり方でしょう。

    ・「金の斧」
     これにはミステリ小説風の味わいもあります。読む人によっては「なぁんだ」となるかもしれません。
    ・「胸像たちの晩餐」
     文字通り「悪夢のような」晩餐の様子を描いた、鬼気迫る作品です。
    ・「ビロードの首飾りの女」
     これが1番こわい作品でした。サスペンスにもあふれています。
    ・「ヴァンサン=ヴァンサンぼうやのクリスマス」
     何だこれは? となりますが、最後に落ちが待っていました。しかしあまり成功したとは思えません。
    ・「ノトランプ」
     これもミステリと言ってもいい内容です。小説の完成度という点から見れば、これが1番でしょう。
    ・「恐怖の館」
     真相がはっきりと語られておらず、どちらにでも解釈ができる困った話です。
    ・「火の文字」
     この作品集では唯一、超自然の存在が登場します。その使い方がいいと思いました。
    ・「蝋人形館」
     手っ取り早く言えば「肝試し」の話です。それにしても何とも妙な物語です。

  • フランスのこわいはなし


     洋風怪談集を開いてみて、「ほんとうにあった怖いはなし」をやり出すのは、何も日本人に限ったことではないような気がしてきました。
    『恐怖夜話』は、フレンチミステリの巨匠ガストン・ルルーが最も活躍していた時期に著した、オムニバス形式の恐怖話集です★ 陸にあがった海の男たちが、みなそれぞれに奇談怪談を持ち寄って、テーブルを囲むという趣向。

     船乗りたちはその手の経験にこと欠きません。船長が自分の片腕がなくなった理由と実体験を明かせば、「第四の許婚」だったという男は、非の打ちどころのない美しい娘ノトランプと結婚した者が、必ず謎の死を遂げたことを語り出します……。寄り合いの場はカフェテラス(……という響きがちょっと可愛い★ パブでビール一杯ひっかけながら、とかじゃないんですね)。ギロチンや蝋人形などの、ヨーロピアンテイストあふれる小道具も満載です!

     どこか芝居がかった文章に、当時売れっ子作家だったルルーのサービス精神と稚気を垣間見る思いです。代表作『黄色い部屋の謎』ではもっと大仰で芝居がかった書き方だったことや、『オペラ座の怪人』は芝居がかっているだけではなく、実際お芝居に関わる話だったことなども思い出されます。
     殺到する原稿依頼に骨身を削って応じ続け、自分が書いたものの向こうにはそれを受け取ってくれる人がいると確信していた、人気作家の姿を想いました。作品の趣向はかわっても、人を驚かせることで楽しませるという路線に変更はなかったのですね☆

     1920年代に出たこの短編集は、怖くてもどこかに隙が残っています。怖いは怖いんだけど、現代の、行くところまで行き着いた過激な怪奇物になれてしまった人は、ゆるいと感じるかもしれない。でも、「怖い」ことがただ直截的に表現されるよりも、「怖い」の周りにふわっと空気を含んだような、こういうレトロな怪談集のほうが、私は肌に合うようです★

  • 『オペラ座の怪人』『黄色い部屋の謎』で知られるガストン・ルルーの怪奇小説短篇集。『船乗りが自分の体験した恐怖体験を語る』という設定の連作と、単発の短篇が収録されている。
    『恐怖夜話』と銘打たれているが、基本的には最後に合理的な解決がなされるミステリ的構造を持っており、大衆小説で名を成しただけあってどれも上手い。
    恐怖というよりは老女の切ない運命を描いた『金の斧』、アメリカン・ホラーを思わせるサイコな『胸像たちの晩餐』、全8編中最もミステリ寄りな『ノトランプ』、ちょっとした悪戯心が皮肉な結末を迎える『蠟人形館』……と、1冊の短篇集でこれだけ印象に残る作品が多いのはちょっと記憶にない。

  • なかなかおどろおどろしい短編が8編。
    内、連作5編。

    短文で煽ってくる描写で、臨場感アップ。
    ブラックユーモアのオチもあり。

    単に怪奇と言うよりも、伏線の入ったミステリーなど、時代感と併せて楽しめた。

  • 陰惨で不気味な物語をミステリ仕立てにして、合理的解釈をつけてはいるものの(1話除く)、怪談よりは奇談、奇譚といったところか。残酷趣味というか時代がかってはいるが、英米の古典怪奇小説とは違うフレンチ風恐怖小説のテイスト。

    詳しくはこちらに。
    http://rene-tennis.blog.so-net.ne.jp/2012-04-09

  • 「オペラ座の怪人」の作者として知られるガストン・ルルーの怪奇小説を集めた短編集。
    主に、過去に恐怖体験をした者が友人に向けてその体験を語る、という形で物語は構成されていて、確かに語り口は恐怖感をあおるものではあるけど、どこか聞き手に対する信頼を感じさせるものがあり、ただただ怖いだけではないところが面白かったです。
    単純に恐怖を描くだけでは、きっと退屈なものになってしまう。

    芸術的だと感じる作品でした。

  • 『オペラ座の怪人』の著者、ガストン・ルルーの短編集。

    ――――――
    オチがあるので話のまとまりが良いです。
    派手ではありませんが、日常に潜む「時空の歪み」に足を踏み入れてしまったかのような感覚を味わえる奇譚が揃っています。

  • 4~5人の老船乗りの語らいと『火の文字』がお気に入り。
    ガストン・ルルーはオペラ座の怪人を読んだことがあるけれど、こちらの短編の方が読みやすかったです。あちらは大仰な言い回しが多いからかな~。

  • 『ビロードの首飾りの女』
    想像するだに怖い復讐譚。ビロードの首飾りの理由。なんにせよ生きている人間が一番怖いという話。
    『ヴァンサン=ヴァンサン坊やのクリスマス』
    あまりに怖い結末に失笑。それが一番、別の意味で恐怖だよねぇ。
    『ノトランプ』
    美しい両家の娘が名乗りをあげた12人の男たちの筆頭から順番に結婚していく話。
    古典ミステリの基礎を築いたルルーだけあってオチがある。
    左ページラスト1行で締めくくった話が多くて
    切れよく投げ出された感があってよかった。
    怪奇モノというか怪奇ぽい事件の話。

    船乗りたちが怪談話を語り合っている短編が面白い。

  • 王道を行く純然たる怖いお話、短編8作。
    どれも趣向が違っており、背筋にゾクゾクッといい感じに悪寒が走ります。

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著者プロフィール

Gaston Leroux(1868-1927)
パリ生まれ。「最後の連載小説家」と称されるベル・エポック期の人気作家。大学卒業後弁護士となるが、まもなくジャーナリストに転身。1894年、《ル・マタン》紙に入社し司法記者となり、のちにこの日刊紙の名物記者となる。評判を呼んだ『黄色い部屋の謎』(1907年)を発表した年にル・マタン社を辞し、小説家として独り立ちする。〈ルールタビーユ〉〈シェリ=ビビ〉シリーズの他、『オペラ座の怪人』(1910年)、『バラオー』(1911年)等のヒット作がある。その作品の多くは、演劇、映画、ミュージカル、BDなど、多岐にわたって翻案されている。

「2022年 『シェリ=ビビの最初の冒険』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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