魔導の福音 (創元推理文庫)

著者 :
  • 東京創元社
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本棚登録 : 137
感想 : 15
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  • Amazon.co.jp ・本 (403ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784488537036

作品紹介・あらすじ

エルミーヌの王都にある王立学院で学んでいたカレンスは、父危篤の知らせを受け急ぎ故郷に帰った。五年前、仲のよかった妹が魔物棲みだとわかり若い命を散らしたとき、守ってやることもできず、逃げるように都に向かったのだ。久しぶりの故郷。だがいまわの際の父が彼に託したのは、余りに重い秘密だった。魔導が禁忌とされてきた北の大国エルミーヌを舞台に、偏見や因習と闘い新たな道を切り開く青年の姿を描く『魔導の系譜』続編。

感想・レビュー・書評

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  • 1のラバルタではなく、エルミーヌという国のストーリー。
    レオン、ゼクスももちろん出てくるけど、本筋の主人公はまた別の人物。
    エルミーヌでは魔術を使える人々を魔物棲みとして処刑していた。ラバルタが幸せに見えてしまうようなこの国で希望を追い求める人たちの話。

  • 図書館で。
    前回とは違った主人公。魔法を使える者は幼いうちに殺される国の話。学校生活辺りは楽しかったけど、女性が男性に身体能力で勝るのは結構大変そう。とは思うけどファンタジー世界だから男性・女性の筋量差とかあまりないのかもしれない。

    個人的には魔法使い=殺される・寝たきり状態にされるというしきたりがある国で、そういう文化を知っている妹が、何故兄を恨むのかがわからない。良い悪いは別として、例えば現状の医療では治せない未知のウィルスに罹患した患者を隔離する、もしくは殺戮する、となった時にウィルス罹患者が抵抗するのはもっともな話だけど、家族を恨むだろうか?まぁ、その処置を決めた父親や理解の無い母親を恨むのは分かるけど。でも子供だった兄に何ができたとも思えないし、兄がお前を何が何でも守ってやるとか約束してたら話は別だけど、何故怒りの矛先が兄に行くのかなあ?妹ちゃんだって自分の能力の暴力性も把握した訳だし。まぁ恨む対象が無いとやってられないって気持ちはあったかもしれないけど。

    主人公の親友の女の子は中々面白いキャラだなと思いました。前作の主役二人は…まぁあの二人でなくても良かったような気もするけどそれはそれか。

  • 登場人物が、結局なにもしていない、というところが多くてうーん、な感じ。前作の登場人物は必要かなあ……?

  • おっと…
    LGBTをネタにしたのは失敗だったのではないかな。
    この題材は現実にあるものであり、Lだけでも数冊書ける複雑で繊細な話。
    それをサブキャラで片手間に扱うのは相当チャレンジングでリスキー。
    そして残念ながら、マジョリティが持つステレオタイプなレズビアン像から抜け出せていない。

    これは苦笑いする当事者の人がいてもおかしくないかも (好意的なのは伝わるから、怒りはしないだろうけれど…)

    前作もディスクレシアについて余り作中に生かせてなかったし、現実の社会問題を無理に入れなくてもいいのでは。
    ファンタジーの中でのみ成立する差別問題を扱うことで、かえって現実への普遍的な風刺となるだろう。

  • 前作『魔導の系譜』が一組の師弟の成長と絆のお話なら、今作は友情と愛のお話。
    時系列が被っているので版元の宣伝ツイートではどちらから読んでも問題なし、となっているけれど、解説で1巻の盛大なネタバレがあるので刊行順に読む方が安心だと思う。

    前作の舞台ラバルタでも魔道士は差別の対象だったけれど、今作ではラバルタ以外の国も描かれて、そこでも形は違えど差別は存在することが描かれる。エルミーヌのそれはラバルタにおける苛烈とはまた違ったエグさがあって背筋が冷える……。

    今作の主人公カレンスは前作のゼクスと違って恵まれた才能や力はなく、直接差別的な視線を向けられる対象でもない。可愛がっていた妹が魔物棲みと発覚した途端、その兆候に気付いていたにもかかわらず庇うことも行く末を見守ることもせず逃げてしまい、それを仕方がないと思うような弱い人間。だから差別対象とされている存在に直接的な害意はなくとも、間接的にはひどく傷つけているし、そのことに気づきもしない。こう書くと彼がとても酷い人間に見えてしまうけれど、一読者たる自分の現実世界での振る舞いを振り返れば彼を責めることはとても出来ない。それは現実社会における差別に無関心だった頃の自分の姿そのものだから。
    このシリーズはファンタジーの世界を描いているけれど、社会の中の差別の有り様については現実社会と変わるところはないように思う。

    カレンスが仕方がないと思いながら、もしくは無自覚のうちに傷つけた妹や友人は、当然のことながら彼や己を取り巻く社会を酷く恨んでいる。侮蔑し、殺意すら抱き、カレンスが成長し自らの仕打ちに気付く頃にはその暗くて深い溝は決定的なものとなっていて、とても埋められるような生半なものではなくなっている。
    でもカレンスには自らの行いを直視して、許されなくても彼らの傍にありたいという意思があった。これがとても尊いことだと思う。カレンスだけでなく事の次第を知った際のナタリアの潔い謝罪もすごい。そんな行動をとれることを尊敬する。
    そしてカレンスに傷つけられた妹や友人は、彼の仕打ちを許せない、裏切りだと感じながらも、彼を愛していた心を捨てることが出来ない。
    ここがこの話の好きなポイントだなと思う。一度は罪を犯すほどの暗い澱に囚われて、聖人君子みたいに全て水に流してまた仲良くしましょうなんてとても言えない。長年抱え続けた許しがたさや怒りの感情はそう簡単に忘れられるものじゃない。けれどそれと同時に愛することだってやめられない。そんな感情抱えたことのない私には想像もつかないけれど、相反するものを同時に抱えるのはとても苦しいことだろう。けれど救いでもあるのだろうな。笑顔なんて見せてやるものかと思いながらリーンベルが僅かに微笑んで見せるラストシーンに胸を打たれた。

    ところでカレンスの事にばかり触れたけれど、表紙に出てくるもうひとりの主人公(?)アニエスが読んでいて大変気持ちの良い人物で一気に好きになってしまった。彼女は文句なしに作中一番格好良い人物だと思う。
    彼女自身がなくしたいと願う差別については話の傍流なのか今作ではなにも進展がなかったけれど、頁の外側で少しずつ社会の有り様が変わっていくようにと願う。

  • シリーズその2

  • 魔法の存在を認めていない国の話。不思議な力を持つものは異端というところは前の国と同じですが、今回は神の元へ返すという名目で処分されてしまうというなかなかヘビーな国。そんな国で少し田舎に住んでる少年が、大きい町で勉強が出来ることに。嬉しいのもつかの間、妹が異端者と判明。後悔する選択をしたことで、苦悩の中、学校へ。家に戻ったあとはある事実がわかってもう今回の主人公は白髪になるかハゲるのではというくらい苦労に苛まれます。ある意味で罰だったのか。気持ちを改めて問題を解決し最後はわだかまりも少し解消。嫌な終わり方ではなく、続きもあるようなので気になります。

  • シリーズ2作目ではあるものの、前作とは主人公が違う。さらに時期も前作の何年後ではなく被せている。前作の登場人物も出てくるが、今作の登場人物もキャラクターが際立っており、人物の整理が必要になる。
    ストーリーは根底にあるのは前作同様に成長ストーリー。貴族の若者が外に出て友を得て故郷に帰り困難を乗り越え成長する。この作品の中で魔法は便利なテクノロジーと同等だが使える者は天賦の才能を必要とする。そして周囲からは疎まれ妬まれる。ここまで魔法使いが虐げられるファンタジーも珍しい。
    まだ続いてるようなので楽しみとする。

  • 「魔導の系譜」の2作目。
    他国では魔導師として教育される素質を持った人々が「魔物棲み」と呼ばれ処分される国の、貴族として生まれ育ち魔物棲みの妹を失った青年と、魔物棲みとして薬漬けにされていないものとされていた少女の話。

    「魔導」を冠したシリーズだが、描かれているのは魔導ではなく、魔導という力のある世界の人間。
    前作から感情や情景の表現が一気に増えたように思う。でもネチネチしてないのが良い。

  • この2作目も感動的だし、世界観も広がりを見せて凄く良かった。青春の学園生活描写があるので、1作目より鬱々とした重苦しさが薄まった分、軽快に読めた。でも深く考えさせられるテーマは健在。

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