トマシーナ (創元推理文庫)

  • 東京創元社
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感想 : 50
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  • Amazon.co.jp ・本 (382ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784488560010

感想・レビュー・書評

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  • 河合隼雄さんの『猫だましい』で紹介されていた小説だったので読みましたが『猫だましい』にはあらすじが結末まで書かれているのですが、内容をほとんど忘れていたので、楽しんで読むことができました。
    本当に、奇跡ともいえる感動的な結末でした。
    もし、結末を先に知ってしまった方は忘れてから読まれるのをお勧めします。

    場所はスコットランドの片田舎の町。
    主な登場人物は、タイトルになっている牝猫のトマシーナ。
    ポール・ギャリコは本当に猫の習性をよく知っていると思いました。ところどころで、以前にうちで暮らしていた猫のことを思い出して、涙ぐみそうになりました。

    トマシーナはメアリ・ルーにとても可愛がられている飼い猫です。
    トマシーナはメアリ・ルーの溺愛ぶりに少々辟易しているものの、猫らしく、気高く暮らしています。
    トマシーナは大冒険をすることになります。

    そしてトマシーナの飼い主である7歳の少女メアリ・ルー。母親は亡くなっていません。
    メアリ・ルーの父で獣医師のアンドリュー・マクデューイ氏。
    <赤毛の魔女>と呼ばれ森にすんでいて、動物の世話をしている女性ローリ・マグレガー。
    トマシーナというタイトルですが、主人公はマクデューイ氏です。このお話はマクデューイ氏が心の葛藤をして変化していくお話です。

    泣かされるのはメアリ・ルーが父親の次に好きだったはずのトマシーナが父の手によって安楽死させられそうになり「トマシーナを眠らせたりなんかしたら、あたしはもう一生、二度と父さんと口をきかないから」と言って本当に父親とひとことも口をきかなくなってしまうところ。
    そして、重篤な病気になり昏睡状態に陥ります。
    愛するトマシーナと引き裂かれた少女の心は永久に命の灯とともに消えてしまうのかと思いはらはらしました。

    このお話のポイントとなる<魔女>と呼ばれるローリの慈愛に満ちた優しさは天使のようでした。
    そしてトマシーナの気高い心は少女のことを忘れていなかったのです。

    • りまのさん
      まことさん
      大好きな本なので、思わずコメントしてしまいました。
      結末が、最高に良い!ですよね!!
      まことさん
      大好きな本なので、思わずコメントしてしまいました。
      結末が、最高に良い!ですよね!!
      2021/01/25
    • まことさん
      りまのさん。
      結末は、本当に奇跡ですよね!
      最高によかったです。
      私も、大好きな本になりました!
      りまのさん。
      結末は、本当に奇跡ですよね!
      最高によかったです。
      私も、大好きな本になりました!
      2021/01/25
  • 表紙の猫のイラストが可愛らしいですが、書店の猫の日コーナーでは見かけたことがないですね…
    というわけで、まったく期待していなかったのですが、とても素晴らしい物語でした。

    片田舎に獣医が娘と二人で住んでいました。娘は、亡き母の代わりに、どこに行くにも猫の「トマシーナ」を連れ歩くほど溺愛していましたが、それに対して父親は動物に愛情も関心も抱きません。さらに、神を全く信じていないだけならまだしも、友人が牧師なのに神を恨みさえしています。

    ある時、猫の異変に気付いた娘は、父親なら治してくれると信じて待合室へ。しかし、動物の感染症で妻を亡くした父親は、固く禁じていた来院に激昂します。そこへ追い打ちをかけるように盲導犬の急患がきて、一人暮らしの老人の目を救うことに執心し、猫をろくに診察せずに安楽死させてしまいます。

    落胆した娘は、仲間とともに葬儀を行い、森の中に墓標を立てて心を閉ざします。しかし、その葬儀の様子は、森に住む「魔女」と呼ばれる女性が見守っていて…という話。

    安楽死などの生死の問題や、キリスト教に限らず神との関わり方など、ちょっとした哲学的な話しもあります。しかし、いろんな伏線を回収したラストは、途中のハラハラした展開も相まって、とても心温まるものでした。

    また、最初はどうしようもない父親が、周りの人たちとの関わりの中で、少しづつ優しさと愛情とは何かを、自分の中に芽生えさせていく様子は、ある意味この動物嫌いの獣医の成長物語でもあったんだなと感慨深かったです。

    追記:
    話しの繋がりは無いみたいですが、機会があれば著者の別の小説『ジェニィ』も読んでみたいと思いました。

  • 一匹のネコトマシーナの不思議な不思議な物語。途中トマシーナは安楽死させられてしまうが代わりに古代エジプトのねこのかみバスト・ラーが登場し物語を引っ張ってゆく。。。一組の父娘が救われる場面はほっとされる。ネコ好きにもそうでないヒトにもオススメ!

  • すごく深い話なんだけど、動物虐待のシーンがつらすぎて(つд⊂)なんかもう最近、そういう事する奴は同じ目に遭って地獄に墜ちろって心底思う(´;ω;`)神様、ちゃんと見てるのか。

  • 河合隼雄『猫だましい』でこの作品を知りました。トマシーナという猫の運命と、この猫をめぐる人々の物語です。猫の1人語りの部分がチャーミングで、表現の端々に猫への愛情を感じます。ストーリーもドラマに満ちており、本当に夢中になって、涙ぐみながら、ハラハラしながら最後まで読みました。

  • 2013年8月20日
    「ジェニイ」のポール・ギャリコ氏の猫ファンタジー。
    個人的には、ジェニイよりも好きだった。

  • 綺麗に最後、収まるところに収まったという印象が強く、とても面白かったです。
    1人の人間の内面が変わっていく様がとても繊細に描かれ、後半に進むにつれ緊迫感が増していくのであっという間に読んでしまいました。
    トマシーナおかえりと声をかけたいです!

  • タリタ・クミ!
    その言葉に覚えがあったとはいえ、このように使われるとは。
    最後あたり、きっと大丈夫だろうと思いつつも泣きながらページをめくって、鼻水をぐずぐず言わせていた。
    物語と優しさと愛とを信仰と神様に結びつける書き手。
    ポール・ギャリコ大好き、大好き、大好き。

  • 本書の存在を知ったのは、今から約半年前。

    『猫だましい』を読んだ時だった。

    結果としては、『ジェニィ』を読了してから
    本書を読み始めてよかったと思っている。

    トマシーナからみると、ジェニィは大叔母にあたる。

    ジェニィといい、トマシーナといい、ウィッティントンといい、
    自分の冒険やご先祖の冒険を語る猫は、
    自分の血筋をしっかりと知っていて、それを誇りに思っているようだ。

    『ジェニィ』は、猫になったピーターの目線で語られていたが、
    この『トマシーナ』は、若干引いた三人称語りの部分と、
    猫のトマシーナが語るところとがある。

    しかも、語り手であるはずのトマシーナが途中で死んでしまい、
    その後、自分をエジプトで神とあがめられたバスト・ラーの生まれ変わりと語る
    タリタという猫が語り手にもなったりする。

    トマシーナの親しみ深さとていねいさを併せ持ったような語り口とタリタの気位の高い語り口、
    そして、どちらの一人称語りでもなく、カメラを引いて抑えた形で、
    登場人物たちのそれぞれの語りを聞かせていく三人称。

    この視点の交代がちっとも不自然ではなく流れるように展開していくのが本書なのだ。

    この自然な転換は、扉の物語の要約にも現れている。

      あたしはトマシーナ。

      毛色こそちがえ、大叔母のジェニィに生きうつしと言われる猫。

      あたしもまたジェニィのように、めったにない冒険を経験したの。

      自分が殺されたことから始まる、不可思議な出来事を……。

      スコットランドの片田舎で獣医を開業するマクデューイ氏。

      動物に愛情も感心も抱かない彼は、ひとり娘メアリ・ルーが可愛がっていた
      トマシーナの病気に手を打とうともせず、安楽死を選ぶ。

      それを機に心を閉ざすメアリ・ルー。

      町はずれに動物たちと暮らし、《魔女》と呼ばれるローリとの出会いが、
      頑なな父と孤独な娘を変えていく。

      ふたりに愛が戻る日はいつ?

    『ジェニィ』は、猫になったことを通して成長していくピーターと
    それを見守るジェニィの物語に集約することができるが、
    『トマシーナ』は、登場人物、登場猫が増える分、様々な読み方ができる。

    トマシーナの目線で見たマクデューイとメアリ・ルーの生活。
    猫目線で見る女の子の描写の的確なこと。
    女の子と猫が似ているというのも、わかる。

    タリタが語る、エジプト時代の猫の話。
    『猫だましい』にもあったような猫と人間のかかわりの歴史が垣間見られる。

    スコットランドという土地の文化も色濃く反映されている。
    トマシーナを子ども達が弔うシーンが出てくるが、
    それはスコットランド風の見送り方なのだ。

    マクデューイとローリの関係は、恋愛的側面もあるが、
    現代西洋医学や科学と科学だけでは割り切れないものの対比としても見られる。

    牧師のアンガス・ペディは、お互いを若い頃から知る親友同士であるが、
    神について語る職業を選んだペディに対し、
    マクデューイは過去の出来事の影響もあり、
    神を信じる気持ちは失ってしまっている。

    彼らは神に対する主義は異なり、語れば議論にもなるが、
    基本的には親友同士で、
    その議論は非常にユーモアに溢れたやりとりで展開されていく。

    神学から死にいたるまでさまざまなことに造詣が深いペディが、
    愛について語るところは特に印象に残っている。

    「ひとりの女性を愛するということは、
    その姿をいっそう神秘的に演出する夜の闇や輝く星、
    その髪を温めかぐわしい香りを漂わせる陽光やそよ風をも
    同時に愛することになるのだ」
    からはじまり、実に1ページに渡り、
    ~を愛するなら~を愛さずにはいられないはずだと語っていく。

    そんなペディとの友情だけは続いているマクデューイだが、
    彼は深く深く葛藤している存在である。

    本当は人間の医者になりたかった夢を父親の動物病院を継がなければ
    医学を学ばせないという圧力によりつぶされた経験がある。

    父親との関係は修復できず、
    夢を失ったことで神を信じる気持をも失った。

    さらに、動物の病気がうつってしまったことが原因で
    自分の妻を亡くしてしまい、なおさら、自分の仕事が愛せないし、
    神などいないという気持ちが強くなる。

    妻を失い、同時に、娘の母親も失ってしまったのだ。

    彼は、自分の仕事は愛せなかったが、娘は愛していたから、
    トマシーナを安楽死させる前は、母親不在ながらも
    なんとか良い関係ではいたのだ。

    トマシーナの安楽死にまつわるエピソードは、
    マクデューイの医者としての尊厳をゆるがす出来事と同時に起こる。

    その日交通事故で瀕死の怪我を負った盲導犬が担ぎ込まれていた。

    その手術のときに、具合が悪くなったトマシーナを連れて
    メアリ・ルーは診察室にやってきていたのだ。

    妻が動物の病気がうつって亡くなっていたため、
    マクデューイはメアリ・ルーが診察室に来ることを禁じていた。

    また、人間のために働く盲導犬の手術の最中だったこともあり、
    すぐにトマシーナの安楽死を助手のウィリーに命じたのだった。

    盲導犬は手術のかいがあり救うことができた。

    ところが、その報告を盲導犬の持ち主にしにいったところ、
    ご老体だった持ち主は、事故に巻き込まれたショックに
    耐え切れずに亡くなっていたのだった。

    このことは大きな影を落とす。

    犬は生かしたのに、人は死んでしまった。

    犬を見ていたときに、自分は猫をちゃんと見なかったのではないか。

    いや、自分は、娘が自分よりも心を開いていると思える猫に嫉妬をしていたから、
    猫を簡単に安楽死させる道を選んだのかと彼は苦悩する。

    トマシーナの安楽死のあと、メアリ・ルーは、父親に心を閉ざし、
    自分の中で父親を抹殺することで、自分の心も体も壊していく。

    まさに現代の心の病である。

    マクデューイは、頑固な自分に生き写しの性格を持つ娘と自分の関係の中に、
    かつての自分と父親を見たことだろう。

    マクデューイはローリが自らの伴侶となり、
    メアリ・ルーの失った母親にもなってくれること、
    彼女の病を癒すことを期待するのだが・・・。

    本書は、1957年に描かれながらも、
    50年後の今にも通用するような様々な現代的なテーマを
    ファンタジー的な要素で包み込んだ作品であるといえよう。

    本書で救いをもたらしたものがなんであったのか。

    それは現代的なテーマに対する答えも示唆しているようでならない。

    • 猫丸(nyancomaru)さん
      「現代的なテーマに対する答えも示唆している」
      今は、もっと切実なんでしょうね。。。
      「現代的なテーマに対する答えも示唆している」
      今は、もっと切実なんでしょうね。。。
      2012/09/24
  • 最初読み始めて、トマシーナが死んだのを読んだ時、これを貸してくれた会社の子をぶん殴ってやろうかと思ったけど、最後まで読んで大団円で、ぶん殴らなくて良かった(笑

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著者プロフィール

1897年、ニューヨーク生まれ。コロンビア大学卒。デイリー・ニューズ社でスポーツ編集者、コラムニスト、編集長補佐として活躍。退社後、英デボンシャーのサルコムの丘で家を買い、グレートデーン犬と23匹の猫と暮らす。1941年に第二次世界大戦を題材とした『スノーグース』が世界的なベストセラーとなる。1944年にアメリカ軍の従軍記者に。その後モナコで暮らし、海釣りを愛した。生涯40冊以上の本を書いたが、そのうち4冊がミセス・ハリスの物語だった。1976年没。

「2023年 『ミセス・ハリス、ニューヨークへ行く』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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