なんでもない一日 (シャーリイ・ジャクスン短編集) (創元推理文庫)

  • 東京創元社
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  • Amazon.co.jp ・本 (411ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784488583040

作品紹介・あらすじ

家に出没するネズミを退治するため、罠を買うようにと妻に命じた夫が目にする光景とは……ぞっとする終幕が待ち受ける「ネズミ」。謎の追跡者から逃れようと都市を彷徨う女の姿を描く、美しい悪夢の結晶のごとき一編「逢瀬」。犯罪実話風の発端から、思わぬ方向へと話がねじれる「行方不明の少女」など、悪意と妄念、恐怖と哄笑が彩る23編にエッセイ5編を付す。本邦初訳作多数。訳者あとがき=市田泉

感想・レビュー・書評

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  • 著者初読み。面白かった本の解説(何の本だったか失念)に「シャーリイ・ジャクスンのよう」とあり読みたくて。予想通り面白くとても好み。この短編集では本流の悪夢的な話だけでなく、家庭生活を題材した作品などいろんな味を楽しめた。

  • シャーリィ・ジャクスンの死後に見つかった、未発表・未収録原稿から選りすぐった短編集。
    時代が変わっても変わらぬもの…それは人の悪意。小さな意地悪、ささやかがゆえにどこに刺さったか見つけづらいけど確実に心を蝕んでくる悪意を描かせたらピカイチですなー。
    そんな顔とはうらはらに、楽しい子育てエッセイもあったりして、意外な発見。楽しみました。

  • これは珍しくあったかい話だな、と思ってると突き落とされたりするので気が抜けない。

  • 恐怖とユーモアをドライな筆致で表現した短編集です。人間の底知れぬ悪意を感じる作品が多く、後味の悪さと奇妙さがクセになります。「ネズミ」は支配的な妻とネズミを巡る話。恐ろしさを感じる一方で謎も残るラストが良いですね。

  • このモヤッとした読後感がくせになる。
    強烈な悪意ではなく“匂わせる”程度のものだからこそ余計に恐い。
    夫婦の関係を扱ったものが多く「よき妻」「ネズミ」「アンダースン夫人」などはうすら寒いものを感じさせる。
    エッセイもなかなか強烈。
    作品だと思って読んでたらまさかの実話。

  • 切れがある人物描写が素晴らしい。
    人間の嫌な内面を描く作品もあれば、『レディとの旅』のようなほろ苦くずっと心に残りそうな作品もあった。
    いわゆるどんでん返しなどもあったりして、作者の懐の深さかうかがえる。
    『なんでもない日にピーナッツを持って』や『城の主』『メルヴィル夫人の買い物』のように最後まで展開がわからないものも多く、楽しめた。
    『悪の可能性』は人間の邪悪さと、そこからの結果がなかなかぞっとするものがあった。
    そういえばこの作品群の中には意地悪なおばあさんがよく出てきましたね。
    『おつらいときには』でも、悩んでいる人の相談に乗りたいのではなくて悩んでる人が自分を求めた=自分の手紙で救われたという、偽善どころか自己の承認欲求を満たすためだけに手紙を送るおばあさんが出てくる。
    ブラックユーモアに溢れつつも人間のいやらしさがよく出ている人物が多かった。
    そしてそういう悪意の中でも、純粋な心のうちに巣食う悪というのだろうか。
    『インディアンはテントで暮らす』のような雪崩れ込むようなコントも面白く冴えている。
    後半は著者ジャクスン自身のエッセイになっており、これがまた鋭い人物描写の元に軽快に描いていてクスりと笑える内容になっている。

    怖かったり、あたたかかったり、読む前に想定しなかったいろんな感想を持つことができました。

  • 生前未発表作品を含む23短篇とエッセイ5篇、純度の高い毒を少しずつ堪能できて楽しい。
    「スミス夫人の蜜月」では、夫人の狂気を増量したヴァージョン2がより不気味。
    好みは、町のみんなを親しく知っていて、庭の薔薇がご自慢という、誰が見ても善良だが退屈な老婦人を描いた「悪の可能性」。老嬢の天真爛漫さと底知れない虚無にのけぞる。
    こうして、幽霊なんかが出てこなくても、人の心の得体のしれなさだけで十分ホラーは成立すると思い知るが、幽霊譚「家」のまた怖いこと。
    他にユーモアをきかせた作品も入っていて、一人旅の坊やがワルい女の道連れとなる「レディとの旅」が秀逸。
    また、育児の奮闘を描いた愉快なエッセイを今回初めて読むことが出来たのも良かった。悪童に手を焼いた作者は、
    「片手鍋に蓋をしながら、鍋に入ってるのがスパイク・ローランドの首だったらよかったのに」と思った、なんて具合にさらりと凄いことが書いてある。

  •  アメリカの作家シャーリイ・ジャクスン(1919-1965)の、死後刊行された作品集から抜粋し翻訳されたもの。
     初めて読む作家で、ホラー短編集だと思って読み始めたのだが当てが外れた。ホラーっぽいものはごくわずかで、大半はジャンルがよく分からず、ちょっと辛口なブラック・ユーモアものが多い。
     ごく短い小説ばかりだがどうもオチがすっきりせず、読後「なにこれ?」と戸惑うものが多いので、最初はそれでひどくがっかりした。しかし、文章は悪くない。スムーズに読めてしまうので、その都度また何となく読んでしまうのだった。
     筆力はそれなりにある作家のようなので、もうちょっと有名らしい長編小説も読んでおきたい。

  • あらすじに載っている短編より、他のが面白いかも。
    インディアンはテントで暮らす、みたいなケラケラ笑えるようなのも書いてたんだ!と発見できてよかった。 上の娘さんがお爺ちゃんから習った「赤ちゃんは下水管を流れていった(水差しで湯浴みさせればよかったのに)」とかいう歌、気になりすぎる。

  • 終わらない悪夢にうなされるような23の短編でした。
    ‪人々の内なる悪意を集めたら何通りもの結末があり、日々どこかでそれが繰り返されている不穏さ。‬
    理由なき善意があるなら理由なき悪意だってきっとあるのだ…。
    ‪最後に掲載されている子育てエッセイも、ヤンチャ盛りの子を持つ親の苦労が窺えてある意味で恐ろしい…‬

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