10月はたそがれの国 (創元SF文庫) (創元推理文庫 612-2)

  • 東京創元社
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感想 : 97
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  • Amazon.co.jp ・本 (496ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784488612023

感想・レビュー・書評

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  • 『歌おう、感電するほどの喜びを!』(早川書房)のあとがきで、萩尾望都先生が本書の名前を挙げておられたので、気になっていました。

    レイ・ブラッドベリの初期の作品を収めた短編集。
    19編の作品が収録されています。

    ほとんどの物語がぞくりとする後味を残していくのですが、「二階の下宿人」はぞくりの種類が全然ちがって嫌でも印象に残っています。
    伏線がきれいに回収された気持ちよさと、少年の無垢であるがゆえの残酷さのギャップにもくらくら。

    「びっくり箱」の主人公の少年が置かれた異常な環境が、だんだん明らかになってきたときの肌が泡立つ感じ。
    「下水道」でマンホールの向こう側の世界のことを陶酔したように語る妹の不気味さ。
    ぞくりとする話が多い中で「アンクル・エナー」のような、ほぅっと安心のため息が出るような作品もあったりして、すっかり"SFの抒情詩人"に魅せられてしまいました。

    ジョー・マグナイニの挿絵がすばらしく物語に合っているのです。
    たくさんの線で細かく描き込まれた絵には不穏な気配が付きまとい、目が吸い寄せられるような危うい魅力があります。
    読後に改めて眺めると、物語の余韻が一段と高まりました。

    • 111108さん
      すずめさん こんにちは

      ブラッドベリいいですよね。
      この本は10代の頃の私のバイブル的存在でした。タイトルからやられました!
      ジョー・マグ...
      すずめさん こんにちは

      ブラッドベリいいですよね。
      この本は10代の頃の私のバイブル的存在でした。タイトルからやられました!
      ジョー・マグナイニの挿絵も物悲しい雰囲気で大好きです。
      萩尾望都先生も名前をあげられてたんですね。『歌おう〜』は未読だったのでさっそく読みたいと思います。ありがとうございます♪
      2021/08/28
    • すずめさん
      111108さん、こんにちは!
      コメントありがとうございます。

      タイトル、すてきですよね。10代で本書に出会えたのはとてもうらやまし...
      111108さん、こんにちは!
      コメントありがとうございます。

      タイトル、すてきですよね。10代で本書に出会えたのはとてもうらやましいです!ブラッドベリ、これまで読みたいなと思いつつも読めていなかった作家なので、これから積極的に読んでいきたいです。
      『歌おう~』もよかったのでぜひ!私は「明日の子供」という短編が好みでした。
      2021/08/29
    • 111108さん
      すずめさん お返事ありがとうございます!

      「明日の子供」読んでみたいです♪
      すずめさん お返事ありがとうございます!

      「明日の子供」読んでみたいです♪
      2021/08/29
  • 「みずうみ」一度読んだら記憶に残る名作。砂の城を作って遊んだ二人。少年は大人になり溺死した少女は永遠に少女のまま。美しく残酷な話。

  • ブラッドベリの初期の作品集。子供の頃の気持ちやノスタルジックな感情を巧みに描く作家。初期の作品は無垢という肯定的な意味だけでなく残酷さも併せ持った暗い側面も多量に含まれています。「使者」、「壜」、「みみずうみ」なんて大傑作!毎年秋になると読みたくなるリストの入ったな。

  • またこの国に足を踏み入れてしまった。
    十月とは暦ではなく、ある地域を指し示す言葉。永久に眠る者が住まう土地でもいいし、永遠に解けない謎と明かされない秘密が埋まる場所としてもいい。吹き荒ぶ風は過去からの呼び声であり命の叫びだ。行き交う人たちの湖みたいな、鏡みたいな瞳を覗きこむと身の内に眠っていた魔物が目を覚ましてしまう。そのままでは此岸に戻ることができないので、影なき深き思慕と執着をひとつふたつ葬り、たそがれの国を後にする。

    何度読んでも『みずうみ』と『下水道』が好きだなと思う。
    不可侵の澱んだ水底を想う。

  • 10月なので。ゾクッとしました。挿絵も独特。
    「小さな殺人者」「群集」「びっくり箱」「大鎌」「風」が好きです。
    「ダッドリー・ストーンの不思議な死」はじんわり良かった。こういう死は小説家の死という感じです。

  • あ~もうホントどれも大好き!最高に面白かったです!!

    ブラッドベリは過去に「華氏451度」しか読んだ事がなかったけれど、
    今回この「10月はたそがれの国」を読んで、一気にファンになりました。
    不気味でゾッとするようなお話が多く、怪奇好きにはたまらない。

    特に好みだった作品は、、、
    毎晩≪鏡の迷路≫に駆け込んでいく姿が印象的だった「こびと」
    幼い頃に死んだ少女は…美しく哀しさに満ちた「みずうみ」
    身体の弱い少年のために、忠犬が持ってくるものは…「使者」
    思わず赤ん坊が怖くなる!ダミアンを思い出す「小さな殺人者」
    事故が起こるといつも同じ野次馬が駆け寄ってくる事に気付く「群衆」
    閉ざされた世界の向こうは?館に住む少年の視点から描いた「びっくり箱」
    ある家族が死んだ老人から譲り受けた麦畑の秘密を描いた「大鎌」

    ちょっとブラッドベリにはまりそうな予感です。
    でも昨年亡くなったのでしたね……新しい作品が読めないのは残念ですが、
    幸い著作が多いようなので、大事に大事に読んでいこうと思います。

  • ブラッドベリの初期作品の短編19作品。

    「つぎの番」
    死とミイラの国。アメリカからはメキシコはこんな風に映るんだなぁ。

    「骨」
    ぞくぞくしました。良かった( *´艸`)

    「壜」
    人の目は見えるものに自分が見たいものを映し出す。

    「みずうみ」
    ジュブナイル。

    「熱気のうちで」
    「ちょうど九十二度のところに、刺激感受性の頂点がある。この温度になると、あらゆるものがいらだちのタネになり」(P207)
    華氏92度=摂氏33度、だそうで。クーラーが要る温度かな。

    「群集」
    これは今でもよく書かれそうな題材。

    「大鎌」
    個人的ベスト。10月に読むのにちょうどいい作品。

    「ある老母の話」
    おばあちゃん強い。

    「ダッドリー・ストーンのふしぎな死」
    作家の苦悩と承認欲求。この一冊の最後を締めくくるのにふさわしい作品。

    10月に読みたい本、というテーマで考えたときに必ず思い浮かぶ本をやっと読むことができました。原題は"THE OCTOVER COUNTRY"すなわち「10月の国」とそのものずばりなんですね。訳が素晴らしいなぁ。内容もハロウィンの季節に読むのにぴったりでした。

    創元SF文庫、「SF」と銘打っているもののホラーとファンタジーも感じられ、昔のSFは21世紀から見ると泥臭さもあり昔の人が考える「SF」を読むのはノスタルジーを掻き立てられてすごく好きです。今の時代の人間はもう書けないかもしれないものがそこにある気がします。

    ブラッドベリは『たんぽぽのお酒』が大好きなわりに全然読み進めていなかったので読めて感無量です。

  • ちいさいころから宇宙はブラッドベリと萩尾先生に習ってきたのにもう読めなくなるなんてつらい
    またちがう宇宙でも出会いたい ときどき会うとお話ししてくれる遠い親戚のおじいちゃんみたいにだいすきだった
    地下室・十月・火星・ポー・すてきな箱のなかの宇宙のおじいちゃん

  • 短編集。面白かったの一言につきます。
    明るい話から、嫌な気持ちになる話、ホラーまで網羅され、どの話も一筋縄じゃない。覚えておきたいので一話ずつメモ。

    こびと
    短編に人間の嫌なところをぎゅっと濃縮している描写、気分が悪くてとってもいいです。

    次の番
    内容は重いのにラストの描写はなぜこんなにスッキリしているのか不思議なくらいスッキリでクセになります。

    マチスのポーカーチップの日
    バズりやインスタ映えに正義を持つ人の話。幸せならいいのかも......?と感じさせます。

    骨 
    骨の存在に違和感を感じた男。どうなる......?とページをめくり、わー!で終わる。SF的。読んだ後自分の体を触ると違和感を感じ始めそうです。

    壜 
    下界の人間を見る神のような視点になれます。

    みずうみ 
    ひたすらに美しい話。

    使者 
    犬は忠実。読み終えて、犬の名前って......と、もう一回楽しめる。

    熱気のうちで
    「殺人事件というやつは、華氏92度の時に起こるのがいちばん多い」の一文が大層好きです。この一文だけで熱気を感じる。

    小さな殺人者
    「人には言いづらいけど好きな話」リストに仲間入り。赤ちゃんが怖くなります。

    群衆 
    交通事故の現場にいつも同じ人がいて......ラストは色んな取り方ができますね。

    びっくり箱 
    1回じゃわからない。2回読みたくなる。
    「死ぬというのはなんてすてきなことだろう!」

    大鎌
    美しい稲刈りが、こんなに悲しいものになるとは。

    アンクルエナー 
    この本で1番いい話。休憩にもってこいです。

    風 
    強い風が吹いた時、何かが起こっているのかもしれないと妄想が広がりそう。

    2階の下宿人 
    何てことない描写なのに明らかに不穏な時、内臓がボコボコ動いているような気持ち悪い感じになるのですが、そうなります。

    ある老婆の話 
    クッソ強いババアの話。

    下水道 
    妹の話の描写が綺麗。「女がほんとうに美しくなるのは、死んだ時よ」でオフィーリアを思い出しました。

    集会 
    繊細な魔物少年が集会を過ごす話。
    「この世はわれわれにとって死んでいる」「いちばん少ない生き方をする者が、いちばん豊富に生きることになる。価値が少ないなんて考えるんじゃないよ」のセリフがいい。

    ダッドリーストーンのふしぎな死
    毛色の違う自己啓発のような話。素晴らしい人は何が起きても素晴らしいと感じられるのかもしれません。

  • 色々な死に纏わる話。

    短編集。

    こびと、壜、熱気のうちで、大鎌、風、ダッドリー・ストーンのふしぎな死が特に面白かった。

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著者プロフィール

1920年、アメリカ、イリノイ州生まれ。少年時代から魔術や芝居、コミックの世界に夢中になる。のちに、SFや幻想的手法をつかった短篇を次々に発表し、世界中の読者を魅了する。米国ナショナルブックアウォード(2000年)ほか多くの栄誉ある文芸賞を受賞。2012年他界。主な作品に『火星年代記』『華氏451度』『たんぽぽのお酒』『何かが道をやってくる』など。

「2015年 『たんぽぽのお酒 戯曲版』 で使われていた紹介文から引用しています。」

レイ・ブラッドベリの作品

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