- Amazon.co.jp ・本 (347ページ)
- / ISBN・EAN: 9784488619022
作品紹介・あらすじ
正直な話、読み返すたびに驚かされる。もっと臆面もなく喜びを表現できるように、これが他人の作品だったら、と思うくらいなのだ-著者お気に入りの中編「ここに、そしてイーゼルに」を劈頭に、ヒューゴー/ネビュラ両賞受賞の表題作、地球を追われた少年少女の成長譚「箱」、トイレット・ペイパーに端を発するSF法螺話「"ない"のだった-本当だ!」や、古式ゆかしい教えを今に伝える「フレミス伯父さん」など、全十二編を収録。
感想・レビュー・書評
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作者の経歴の中では後期(~末期)に位置する中短編集。
原典は『Sturgeon Is Alive and Well...』(1971年)で、
この本は最初の邦題『スタージョンは健在なり』の改題版。
思索の中でルドヴィゴ・アリオストの長編叙事詩
『狂えるオルランド』の物語と戯れ、
傍目には奇怪な行動を取り続ける画家が、
スランプを脱却するまでの心の動きをグネグネと綴った中編
「ここに、そしてイーゼルに」(1954年)+短編11編。
ヒューゴー賞、ネビュラ賞を受賞した表題作
「時間のかかる彫刻」 (1970年)は、
盆栽も人間の精神も、完成までには紆余曲折、
まるで時間のかかる彫刻作品のようなもの――
という話なのだが、
過去いくつかスタージョン作品を堪能してきて初めて
「ウッ」とたじろいでしまった。
テーマには頷けるが、盆栽を、よりよい形に導くことと、
病気になって不安に襲われる女性を
快方に向かわせることが同列に語られていて、
男が気に入った女を更に
自分好みのタイプに仕立て上げようとするかのような雰囲気に
モラハラの匂いを感じてゲンナリしたのだった。
サイコホラー漫画、
円山みやこ「葉隠しの家」【※】を連想したからかも――
というのは言い過ぎかもしれないが(笑)。
【※】実際に起きた誘拐監禁事件がモチーフで、
少女を意のままにしようとする犯人と、
見て見ぬフリを決め込む母親が
盆栽の枝ぶりを矯正する様子が描かれる。
https://booklog.jp/users/fukagawanatsumi/archives/1/4883793109
それはさておき、
スタージョンにとって四番目の「運命の人」の存在が
よくも悪くも随所に見え隠れ。
女が男あるいは子供たちのために自己犠牲を払う話からは、
作者が惚れた女性に様々な――過分な――
期待を寄せていたのではないかと思わされ、
その点にも少々「何だかなぁ」と。
面白かったのは、本当は嫌なのに離れられない、
過去の因縁に縛られた
歪んだ友情を描いた「ジョーイの面倒をみて」(1971年)。
これは共依存か……。 -
初スタージョン。『ここに、そしてイーゼルに』以外は割とすんなり読めた。『ここに、・・・』は、悪ふざけが過ぎると思った。やりたいこと全部やっちゃいました感たっぷりの作品だった。個人的には『箱』『ジョリー、食い違う』『人の心が見抜けた女』がお気に入り。全体的にSF色は薄いが、ついつい読みいってしまう何かがあった。
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短編集
サンリオ文庫の『スタージョンは健在なり』の改題 -
シオドア・スタージョンの全12編からなる中・短編集。個人的に良かったのは、次の3作品。
・「ここに、そしてイーゼルに」
・「箱」
・「フレミス伯父さん」
「人の心が見抜けた女」と「ジョリー、食い違う」は後味がかなり悪いので要注意……。 -
どの短編にも、キラリと光るアイデアが必ずひとつはある。それと人間への暖かい眼差しが。
Sturgeon is alive and well ! やっぱりスタージョンは素晴らしい。 -
「箱」と「〈ない〉のだった―本当だ!」は、そこそこ好みかな。少し読むのにつかれた。
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こんなに優しいひとだっけ
ほっこりする短編集 -
泉若林
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サンリオSF文庫の『スタージョンは健在なり』を改題復刊したもの。
中篇『ここに、そしてイーゼルに』が凄かった。