楽園への疾走 (創元SF文庫 ハ 2-12)

  • 東京創元社
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感想 : 16
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  • Amazon.co.jp ・本 (376ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784488629137
#SF

感想・レビュー・書評

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  • ちょっと熱入りすぎな環境保護活動家、の、皮をかぶったバーバラのサイコパスっぷりがやばい、、ちょっと理解を超えている。。それでも彼女に特別な感情を持ち続ける主人公。バラードにとって女ってどんな存在だったんだろ。。「ハイライズ」「太陽の帝国」に続いてバラード作品3作目だけど、戦争体験が彼にとってどれだけ強い影響を及ぼしたのかと改めて感じてしまう。

  • いやいやいやいや、怖い怖い、気色悪い。
    バラードの代表作「ハイ・ライズ」に通ずる人間の内面の怖さ、気色悪さを前面に押し出した作品ではありますが、「ハイ・ライズ」の方がまだ登場人物の心情をある程度まで理解できた気がします。この作品は登場人物に全く感情移入できず、それが一周してきてマゾヒスティックな快感を生み出しているという奇妙な傑作。非常に読む人を選びますね。

    アホウドリを守ることが目的だったはずのドクター・バーバラの活動は、第三者には全く理解不可能な理由でどんどん変質してゆき、保護するはずの野生動物たちを食料として食い散らかし、最終的にはコロニーに踏みとどまっていたメンバーをも自身の手で大量虐殺する、という大惨劇へと展開します。
    この過程でのドクター・バーバラの思考の支離滅裂さといったら、バラードはどうやってこのプロットを思いついたのだろうと不思議になるぐらい独創的です。ここに多少なりとも一貫性があれば、もうちょっと違う印象の作品になったのかもしれません。

    物語という表現手法において、悪や不道徳や狂気を描くのは、何ら問題ではありません。問題ではありませんが、そこには読者を圧倒的にねじ伏せて納得させるぐらいの「美学」が必要だと、鴨は思っています。この作品で描かれているドクター・バーバラの狂気は、残念ながら「美学」を感じることが出来ませんでした。
    そんなドクター・バーバラに、単なる性的オブセッションを感じただけで最後まで付き合ってしまうニールの心性も、鴨にはイマイチ理解できず。男ってそこまで単純な生き物ですかねぇ・・・ヽ( ´ー`)ノ他の登場人物もしかりで、どこか地に足の着いていない浮遊感が作品全体に漂っています。まぁ、それがバラード作品の特徴でもあるわけですが。

    そんなわけで、とても万人にお勧めできる作品ではないのですが、ハマる人にはたまらない作品だと思います。さすがバラード、と言うべきか。

  • 訳者も書いているように、『夢幻会社』と同系統の作品のため、バラード初心者には全くオススメできない1冊。読み始めたときと読み終わったときの印象がここまで違う作品も珍しい。熱心に環境保護を謳う女医と、彼女に惹かれる少年が他の仲間と共に1つの島を絶滅危惧種のユートピアにしていくのだが、途中から雲行きが怪しくなってくる。読んでいて不快になる描写が多々あるが、とにかく先が気になってぐいぐい読ませられる。果たしてドクター・バーバラの求めるユートピアとはどのようなものだったのか。彼女の狂気はもちろん恐ろしいが、全てを分かっていながら彼女に付き従い、認められたいと願うニールも恐ろしい。

  • [ 内容 ]
    「アホウドリを救え!いますぐ核実験をやめろ!」
    少年ニールはタヒチ沖に浮かぶ島へ向かうデモに参加していた。
    運動の中心となる四十代の女医、ドクター・バーバラに惹きつけられたのだ。
    初めは普通の環境保護運動だった。
    だが、島に居すわった彼らに世界中の注目が集まったときから、なにかが狂いはじめた。
    楽園の果てに見いだされたものは?
    現代の予言者バラードの問題作。

    [ 目次 ]


    [ 問題提起 ]


    [ 結論 ]


    [ コメント ]


    [ 読了した日 ]

  • 最初うんざりする程退屈だった。欧米人って何でこう環境保護が好きなんだろ。日本人にはちょっと理解し難い執着。そしてアホのような主人公の少年。わざと低能な人たちの群像劇で、環境保護主義をヒハンしてんのか知らん、と思った。がしかし後半、異常な女性優位主義の話に変わってゆき、ティプトリーを連想した。最後は狂気に満ちた小さな島のディストピアもので、雰囲気がガラリと変わって終わり。

  • ユートピアがディストピアに変貌する様を描いた小説。
    環境保護運動がカルト化していく様子が不気味でしょうがない。

  • 元々自己を正当化する価値観を持って
    狂気を孕んだ指導者による、崇高な理念を始まりとした活動が
    狂気の色を濃くしながら、他人が染まっていく
    ユートピア建設がディストピアへ移りゆく物語。
    少々蝿の王のテイスト。

    詐欺的な動機ではなく生まれた新興宗教とその教祖が
    怪しげで狂ったカルト宗教に変わっていく過程
    信者が妄信する様子もこの本からよめるような気がする。

    狂気に翻弄され狂気に染まっていく様、自分を認められたくて
    狂気を受容する様もあり、気味の悪さが付きまとう。

  • そう言えば持ってたけど登録忘れてましたシリーズ。
    ・・・SFか? これ・・・

    何となく、バラード一個くらい読んでみるかと適当にタイトル買いしたのですが、これが、また、ねえ。胸糞の悪さは天下一品。それゆえに、逆に忘れられない作品ともなりました。
    「自然保護区」とは何だったのか。

  • タイトルと表紙にひかれ購入。「買わねば」と強く私に思わせるオーラが激しくでていたらしく、気がつけばなぜか2冊購入していた…気を取り直して感想を。スリリングな話ではあるけれど、これがSFだといえるのかどうか。読みながら「葦と百合(奥泉光)」と「蠅の王(ゴールディング)」を連想することがしばしば。

  •  バラードさん、4月20日に亡くなってしまいました。一人ニューウェーブ運動を続けていたのに残念です。 40代の女医バーバラに引き付けられ、彼女が中心となる環境保護運動に巻き込まれる16歳のニール。タヒチ沖の島の核実験反対運動のはずが、徐々に捻じ曲がっていき・・・バラードにかかると南の楽園も、腐った魚と鳥が匂う浜辺、錆びた鉄塔と照りつける日差しという風景が切り取られる。「自然保護区」は何を象徴しているのか? 昔の破滅3部作ほどシュールな感じではないのですが、それでも十分バラード。抽象画家ダリの絵を文字にした感じとでもいうのでしょうか。面白い訳ではないのですが、心に引っかかります。何かメッセージを読み取るというより、何を感じたのか、その時々の自分の内部を見るのを楽しんでいます。今回は僕自身が南国へ疾走する寸前の浮かれた状況なので、頭が冷やされた感じでちょーどよい。

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