- Amazon.co.jp ・本 (346ページ)
- / ISBN・EAN: 9784488696207
作品紹介・あらすじ
時間理論を応用してつくられた超高速移動機の内部に亀裂が発見された。そこからは別の時間、別の世界が覗き見られるという…。ときに西暦2080年、世界は人口爆発に苦しめられていた。避妊薬は無料となり、売春も法的に認可されている。史上初の黒人大統領候補ブリスキンは、かつて夢見られ今は放棄された惑星殖民計画の再開を宣言するが…。ディック中期の長編、本邦初訳。
感想・レビュー・書評
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2013年4月7日のブログより。
http://jqut.blog98.fc2.com/blog-entry-1770.html
フィリップ・K・ディックは、1982年、私が大学生の時に亡くなりました。社会学部を卒業する際の卒論のタイトルが「日本SF史」であるくらいSF好きで、SF小説を読み漁っていた頃です。ディック作品は、ハヤカワSF文庫、創元SF文庫からも多数発刊されていましたが、1987年に幕を下ろしたサンリオSF文庫から21冊と大量発刊されています。なかなか新刊本で購入る資金力がなかった高校生・大学生時代は、古本屋を歩いて、見つけ次第、購入していました。
既に30年以上前に亡くなった作家ですから、新刊本というものを読むことはできません。でも、海外作家については未訳本というものが少なからずあり、ディック本も没後に細々と未訳本が発刊されています。そして、ごくわずかですが未だに未訳のままの作品が残っています。
長らく未訳本でいたということですから、必ずしも評価が高くなかった作品なのだろうと想像が容易につきます。しかし、ディック作品には強烈な固定客が多数いますから、出せば出したでそこそこは売れるだろうとも想像がつきます。そんなこともあり、忘れかけた頃に、新たな未訳本が世の中に出て、私たちファンを楽しませてくれるというのが、もう30年間も続いています。
未訳本だけでなく、ディックの短編が没後に次々と映画化されています。
「マイノリティ・レポート」「ペイチェック 消された記憶」「スキャナーダークリー」「NEXT」「アジャストメント」「クローン」「スクリーマーズ」、そして昨年リメイクされた「トータルリコール」。まだまだ私たちはディックの新しい世界を味わうことができるのです。
さて、本作品ですが、人口爆発に悩む近未来の世界。生活ができない人々はコールド・スリープを選択して凍民となり、いずれくる他惑星への移住が叶う世界を待っています。そんな中で、異世界との時空の切れ目が見つかります。まさにタイトルとおりの「空間亀裂」が現れるわけです。アメリカ大統領選におけるメディア戦略合戦、著名医師のスキャンダル、未だ残る人種差別、人工冬眠と臓器移植、売春人工衛星、北京原人とのコンタクト、惑星のテラフォーミング、といった具合に、あれやこれやとエピソードやSF的ガジェットが投げ込まれます。チープ感に溢れ、箱庭的ご都合主義が満載ではありますが、久しぶりに読む「新作」、いにしえのSFのテイストに満ち溢れ、けして駄作でも問題作でもありません。1ページ1ページを愛おしく読み終えることができました。 -
ディック自身で駄作認定してる作品ほぼ好みな人向け
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とにかくなんかもうめちゃくちゃ色々な要素が詰め込まれているなと感じました笑 ところどころ不気味な雰囲気で、楽しかったです。
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図書館で借りた。作者も認める失敗作らしいが、難しいことを考えずに心地よく読み飛ばせるから、これはこれでおもしろい。牧眞司が解説で「とびきりの怪作」と評していて、まったくそのとおりだと思った。
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なかなか読みやすく仕上がっているが内容はかなりぶっとびである!人口過密の地球、凍民、平行世界への移住、娼館衛生、魔法の使える北京原人(!)なんかのパロかいなと思えるような悪ふざけと、色濃く残る人種差別。しかし原人さんはそんなに恐怖なのかしら。そこが解せなかったわ。王道コミックSFという感じ。ディックこれで何作目になるかよく覚えてないけど、うーんやっぱり最初に薦める一冊は電気羊になるのかなぁ。。毎回良くも悪くも期待を裏切ってくれるんでまた他も読む。
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異次元世界に移民することで人口問題を解決するっていうのは何ともご都合主義だと思ったが、そこそこ面白かった。凍民、修理屋や娼婦が出てきたりするところがブレードランナーの世界観に似ているとも思った。パルプフィクションで全体的に読みやすい文章だったので気軽に読める小説です。
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2016年11月18日読了。転送マシンの不具合から空間に発生した亀裂の先に地球と同等の広大な空間があることを発見されたことにより、初の黒人大統領候補ジムや機器製造会社、娼館経営者らの思惑が入り乱れる…。ディックの長編SF、既読感があったのは短編を拡張した長編だからのよう。後書きにある通り多数の人物が入り乱れとっちらかった印象のある作品だが、登場人物の妙なあきらめムードや異常に強引な展開など、突っ込みどころ溢れるというか、決して傑作ではないが何となく心に残る。コルズ、コナプトなど当たり前のように繰り出されるディックの造語もいつも通りで楽しい。
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まさにアイディア勝負な作品。ディックらしさが出てるといえば出てる。
でもやっぱり個人的には、ディックは短編の方が面白いな、とw