叛逆航路 (創元SF文庫)

制作 : 渡邊 利道 
  • 東京創元社
3.55
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本棚登録 : 475
感想 : 55
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  • Amazon.co.jp ・本 (496ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784488758011

作品紹介・あらすじ

ヒューゴー賞、ネビュラ賞、ローカス賞、アーサー・C・クラーク賞、英国SF協会賞、英国幻想文学大賞、キッチーズ賞の7冠獲得
二千年にわたり宇宙戦艦のAIだったブレクは、自らの人格を四千人の人体に転写した生体兵器〈属躰〉を操り、諸惑星の侵略に携わってきた。だが最後の任務中、陰謀により艦も大切な人も失う。ただ一人の属躰となって生き延びたブレクは復讐を誓い、極寒の辺境惑星に降り立つ……『ニューロマンサー』を超えるヒューゴー賞・ネビュラ賞・ローカス賞などデビュー長編7冠、本格宇宙SFのニュー・スタンダード登場!

感想・レビュー・書評

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  • 英米7冠制覇、というなかなか凄い肩書きのSF小説。
    原題Ancillary Justiceは、本著の用語を用いて直訳すると「属躰の正義」になるんでしょうが、「従属する正義」にも読めるのは本著の展開を示しているようにも。
    あと、「属躰」ってなんだ?となると思いますが、本著を読む前に巻末の「付録 アンシラリー用語解説」を読んでおくと良いのかもしれません。

    邦題&表紙を見た感じでは、SF艦隊戦なのかな?と思っていたので、地に足のついた展開はちょいと肩透かしを喰らった感がありました。
    実はそれもあって、そこまで本著に引き込まれた感覚もないのですが、面白いと思ったのは「属躰」の設定・描写や、本著ラドチ世界の「男女の性別を一切区別しない文化」で、これは小説という活字ならではのやり方だと思います。
    特に後者は、映像化されたら何の面白味もない風景になっちゃうはずなんですが、軽く脳がバグる感覚というか、結局この登場人物は男性なの?女性なの?と迷わされるというのが新鮮でした。現代におけるダイバーシティとかDE&Iとかの行き着く先はここなのかもしれませんが、どうなんですかね。ディストピアっぽいし。。

    さて、本著を読了して感じたこと。
    本著の「属躰」なのですが、これはAIと言って良いんでしょうか?性格は人間っぽいような気もしつつ、ただ表情に感情はあまり出ないと。描写の問題なのかもしれませんが、わかるようなわからないような。。
    あと、これだけの技術を持っている舞台設定からすると、皇帝があーなるというのはまぁそりゃそうかという感想になる訳で、これはつまり、地位とか富とかを手に入れるとあーなると。。
    万能感はあるんでしょうが、いやあんまり偉くはなりたくないモンですね(笑

    続編を読むかはちょっと悩むところですが、主人公ブレクやセイヴァーデンにはちょっぴり感情移入した感じもあって、さてどうするか...。

  • なんとも骨太なSF作品。難解な設定、難解な会話、難解なストーリー展開など、途中リタイアしそうになるも、なんだか不思議な魅力というか、先が気になってしまい、じりじりと気を取り直して読み進めていくと、いつの間にか読まずにいられなくなると言いますか。これ、映画にしたら、確実に超駄作になる可能性大でしょうが、小説だからこそ成り立つ世界観の醍醐味を味わえる作品と思います。

  • 古本屋でみつけて読み始めたらとまらなくなって、シリーズ3部作を一気に読んだ。

    主人公ブレクは巨大戦艦”トーレンの正義”のAI(人工知能)で、何千体もある”属躰”のひとつ。
     物語は宇宙の僻地、極寒の雪原に全裸の人間が倒れているのをブレクが発見するところからはじまる。死んでいるかと思われた”彼女”は、かすかに息をしていた。そしてブレクは気づく。彼女はかつて私を操艦していていた、副官のセイヴァーデンであることを…


     この作品、設定がややめんどくさい。

     まず、登場人物に性別がない(実際はあるんだろうけど、性別の概念がないので代名詞は全て”彼女”) 
     さらにわかりにくいのが、主人公が戦艦のAI(人工知能)だということ。主人公のブレクは何千体といる(いた)AIの属躰のひとりであり、生き残っているラストの1体。属躰というのは植民した星の住人の体だけ借りて、脳はAIに換えられた体のこと。だからブレクも体はもとは、どこかの占領された星の住民。AIはいくらでも自分のコピーをつくれるので、”属躰”は何千体も存在する。しかも様々な地域や時代に存在した属躰の記憶と戦艦の記憶が、ブレクの視点として語られるので、それがどこなのか、過去なのか現在なのかすらわかりにくい。

     ブレクは物語のはじめから何かの武器を探している。その武器を探しているうちに辺境の地にまで流れ着き、セイヴァーデンを発見するのだが、なんでそんなことをしているのかがだいぶ後になるまでわからない。後々、それは皇帝を殺すことのできる唯一の武器だとわかる(つまりブレクは皇帝を殺そうとしている)

     以上の3点を押さえておくと、わかりにくさも解消され物語に没入できる。

     戦艦同士のバトルとかはなので、地味な印象も受ける。しかしブレクが皇帝アナーンダを追い詰めるまでのシリアスな描写の連続は、スパイ映画のような緊迫感がある。静かに、でも着実にターゲットとの距離を縮めていく。

     若干ネタばれ気味にはなるけど、かつて皇帝に命ぜられたある重大事件のことでブレクは怒っており、そのため皇帝への復讐を果たそうとしているのだが、皇帝もまた複雑な設定で、ブレク同様、たくさん存在している。どの皇帝が本物?というのもおかしくて、全部ほんもの。絶対君主が分裂してあっちこっちで勝手な指令を出すので、ストーリーがまた複雑になっていく。その縦横無尽に張られた蜘蛛の巣の網目をかいくぐって、ターゲットを追い詰めるその展開は、日本人好みの仇討ち劇だ。

     ラストは宇宙空間での派手なアクションが。
     
     うお~、すげぇ、映像化してほしい。

     娯楽作品の様々な要素が詰め込まれた作品で、数々の賞を受賞したことも頷ける快作だ。

  • はぐれAIの物語

    邦題『叛逆航路』とはえらく昭和の香りのするタイトルだが、原題は〈Ancillary(隷属する)Justice (正義)〉と、随分と意味深。

    物語は「ラドチ」という専制国家が広く銀河を支配している時代で、中世ヨーロッパの様な閉塞感漂うスペースオペラファンタジー???

    主人公のAIはなぜ身分を隠し「ヒト」として辺境の星を彷徨ってるのか……

    相棒?のセイヴァーデンの存在が、物語のちょとしたスパイスとなっている。

    後半になって、やっと民族、習慣、宗教、社会情勢などの世界観?に慣れてくる。

    たしかに面白い。三部作、さあどうするか……。

  • 「デビュー長編にしてヒューゴー賞・ネビュラ賞・ローカス賞など『ニューロマンサー』を超える英米7冠、本格宇宙SFのニュー・スタンダード!!!」

    惜しみない称賛が際立つ本書は、アン・レッキーの長篇「叛逆航路」です。前文に加え、アーサー・C・クラーク賞、英国SF協会賞、英国幻想文学大賞、キッチーズ賞を受賞。翻訳版では日本の星雲賞(海外部門)も受賞しているようです。良くも悪くも「数多くの賞を受賞した作品」というレッテルを背負ってしまった本書。往々にしてこういう作品は期待値が大きくふれすぎて、案外微妙な印象に終わることが多いのですが…

    しかし、本書。なかなかどうしておもしろい。
    原題は「ANCILLARY」。この単語は「協力者、召使」あるいは「付属品」の意味を持つようで、本書では「属躰」と訳されます。この言葉が本書のキーワードのひとつで、解説の言葉を借りると「宇宙戦艦のAIを、戦闘用に改造を施した人体に上書きダウンロードした生体兵器」を指しています。宇宙戦艦のAIは、戦艦を支配するだけでなく、多くの属躰を管理下におきます。多くの属躰から得られた情報をAIは認識し、属躰もまたそれを共有するのです。このようにAIは属躰から様々な情報を得ることが出来ますが、こういった「ひとつの出来事を様々な視点から切り取る描写」は、本書を特徴付けるところがあって、なかなか刺激的です。
    属躰に加えて、本書の世界観も魅力のひとつです。強力な専制国家ラドチが宇宙を併呑する世界を舞台に描かれる独自で綿密な世界観。その力の入れようは、解説の後に「付録 アンシラリー用語解説」が収録されるほどです。

    さて、宇宙戦艦のAIにありながら、ある事件を経て、たったひとり生き延びた属躰「ブレク」が本書の主人公。ブレクが紡ぐ過去の記憶と、進行する現在の出来事。ふたつの世界が結ぶとき、物語は大きな展開を迎えます。それまでのどちらかというと単調な(しかし、たしかな波乱を予期させる)展開もあってか、ここから食い入るように読み進めることができました。
    ただ、独自の世界観がもたらす設定(例えば、ラドチは性別を意識しないため、すべて「彼女」と呼称する)に加え、最終的に誰が味方で誰が敵なのか、ぼやかして進行される展開には、結構混乱させられました。まあ、それも含めておもしろいのですが。

  • たくさん賞をとった作品ということで読んでみました。AI視点の語りなんですが、人の代名詞が全員”彼女”となっていて、最初女性をイメージしていたら男だったりで混乱。性別の区別をしない世界という設定はなかなか入りにくいですね。?

  • 正統SFで、世界観がしっかりしていて、引き込まれた。Ancillaryという概念が面白い。個体差がある多視点の同一人格AIって、クローンで意思共有するより有事に強そう。感情共有、監視ができて、操作できないのか?とか、AIと人との境目はどこか?とか疑問も色々あるけど、個人内の葛藤が大きなスケールになったときに、というのが面白かった。

  • 後半一気だったが、イメージがサッパり??
    用語集少なすぎ。

  • 鉄の皮膚に触り体温も思考が奪われる。

  • どうにもこの世界観をとらえられない。こういうSFを読むのには若さと体力がいると痛感。アンシラリーという概念やジェンダーの区別がない世界、併呑という考え方など、すんなり理解できないし、脳内でのビジュアル化が難しい。そのうえ、思わせぶりな展開がづっと続いて、主人公の動機や何を目指しているのか、過去何があったのかが、なかなかわからない。読み進めるにはかなりの忍耐が必要。ようやく最後まで読んだが、結論もあまり面白くない。

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