星群艦隊 (創元SF文庫)

  • 東京創元社
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  • Amazon.co.jp ・本 (452ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784488758035

作品紹介・あらすじ

戦火はいよいよアソエクの星系に及ぶ。無人のはずの隣接星系に潜む謎の艦、圧倒的な力を持つ不可解な異星種族プレスジャー、そして分裂したラドチの絶対的支配者――立ちはだかる数多の難題を前に、ブレクは贖罪の決意を胸に秘めて戦いつづける。ヒューゴー賞、ネビュラ賞、星雲賞など驚異の全世界12冠を達成し、本格宇宙SFの歴史を塗り替えた《叛逆航路》三部作、堂々完結! ブレクの過去を描く前日譚の短編も特別収録。

感想・レビュー・書評

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  • あなたが、まだ前の2作を読んでいないのなら、そこから始めることをお勧めします。
    きっと<叛逆航路>シリーズは、三部作というより超長編SF小説なのでしょう。
    「素晴らしい想像力をお持ちの方」以外は、ぜひ順番に読んで。

    さて、三部作最終話『星群艦隊』。
    派手目なアクションシーンも加わり、ラドチ皇帝アナーンダとの対決はいよいよクライマックスの盛り上がりをみせる。
    さらに前作で謎だったゲートの向こうに潜む影が、徐々に明らかに……。
    特にこの編で、人の話の中だけではなく「通訳士」という実態で登場する「蛮族(エイリアン)プレスジャー」の存在が、ものすごく重要になる。
    プレスジャーとの条約は「人類は意義ある非人類を殺さない⇔プレスジャーは人類を殺さない」というもの。
    「通訳士」は、常に人類の文化や文明などを観察し、条約履行状況を報告しているようだ。
    終盤で皇帝が通訳士に「AIや属躰は私(人類)が作った所有物であって、非人類ではない」と主張すると「すべての人類は人類自身から作られているのに、どう違うのか?」と反論される(この時代、人の誕生はすべて人工授精で皇帝自身はすべてクローン、でも哲学的には自然出産も含めてもいいかも)。そのとき、絶対であったはずの皇帝がプレスジャーを前にひれ伏すのか……。

    異なる者の存在に対する「畏怖」と「嫌悪」から「排除しようとする感情」、これらを乗り越えないと<共存する社会>は生まれ得ない。

    「書きたい事がなければ物書きではない、面白くなければ小説家ではない(と誰かが言っていた?)」……面白かった。

  • 3部作なのは事前に知っていた(オビにも書いてある)ので、拡げた大風呂敷をどう回収するのかに興味があった。
    結果としては、回収しない(;皇帝の争いにオチは付けない)という終わり方になっていた。

    同様の世界観で新作が出ているのを知っているし3部作も後ろに行くほど面白くなっていったのだが、
    それでも1巻がひどい出来だったという印象が強い(単独で買っていたらその後を買わないぐらい)ので、次回作を買うかは微妙なところ。

  • ゼイアト通訳士のおかげで一気に面白くなった。慣れてきたせいもあるかもしれないけど、三部作の中でこの巻が一番好き。

  • 叛逆航路」シリーズ完結編。

     前作で明らかになった巨大な陰謀。それは最強国家プレスジャーとの間で結ばれた停戦合意が破棄されるほど危険な行為だった。

     プレスジャーはとても強い。ということをなんとなく匂わせてくるが、どれくらい強いのか、どんな宇宙人なのか、は実はよくわからない。無敵の皇帝アマーンダを倒せる唯一の武器を造れるほどの科学力なので、皇帝もプレスジャーのことを最も恐れている。まともに戦えば100%負けるいうことは過去の戦いから明らかだったから、停戦条約を結んだのだけれど、プレスジャーがなんでその申し出に乗っかったのかは実はわからない。価値判断の基準がそもそも違うようだ。まあ宇宙人だから、地球人の読者には想像もできない理由なのだろう。

     そのよくわからないプレスジャーから派遣された通訳が、これまた奇妙な人(借り物の体なのでプレスジャーの姿ではない)で、話が通じてるんだかないんだか、わからなくて面白い。一貫してシリアスな物語の中で、この通訳だけ異質でトリックスター的な活躍をする。筒井康隆の短編でもこんな感じの異星人同士で言語での意思の疎通が難しい、みたいな話があったな、と思い出した。この通訳を主人公にしてスピンオフ書いて欲しいってくらい面白い。

     ラストは華々しくラドチ(皇帝アマーンダが支配する星間国家)とプレスジャーの宇宙全面戦争か!?と期待したが、そうはならず。

     まあ、この結末もありだけど。プレスジャーのことが気になってしょうがない。

     このシリーズとは別の作品も刊行が始まっているようだけど、同じ世界観なのかな?

     また読んでみよう。

  • 叛逆航路の主人公、艦隊AIの属躰の最後の生き残りであるブレク。一作目で宿敵の皇帝と対峙した彼だが、分裂した皇帝によって艦隊司令官に任命され、かつて大切に思っていた人物の妹がいる星域アソエクに赴く。そこでの複雑な権力闘争に巻き込まれながら、虐げられている人々を救うべく活躍するのが二作目の亡霊星域。三作目の今作で、アソエクを守るべく分裂した皇帝との最後の戦いに臨むのだが、正直話の流れはどうでもよい。ブレクの生きるラドチの歴史や文化が綿密に描かれているのが純粋に楽しいし、艦船AIやアソエクの星を周回するステーションを管理するAIが、ブレクにそそのかされて徐々に自らの意志や感情を露わにしていく状況にワクワクする。この世界を舞台にした作品をもっと読んでみたい。

  • AIがどのように考え、感じ取っているかの描写が繊細。派手なアクションは無かったものの、徐々に解き明かされる世界観が綿密に構築されていて楽しかったです。最後の短編も、なるほどねぇ〜。

  • このシリーズはテーマが、AIに感情を持たせるとどうなるか?っていうのが一つと、三人称がすべて「彼女」になったらどうなるか?っていうのが一つの、ちょっと独特の本だ。

    特に後者は最初はとまどったが、慣れてくると快感になってくる。

    要は、自分の想像力が試されるのだ。

    明らかにSEXしているカップルが出てくるのだが、男/女なのか、男/男なのか、女/女なのか、全然説明がない。しょうがないので、一応男/女で想像して読み進めてきたんだが、そのうちにどうでもよくなってきた。

    読みながら、ジェンダーレスとはどういうことか学んでいるような気がしてくる。私自身は男尊女卑とか、女性が虐げられているとか、男性の方が女性より優遇されているとか、実社会においてそれほど感じてないのだが、こうも小説を読みながらなぜ自分は登場人物が男か女かこだわるのかつきつけられると、結局自分もジェンダーレスではなかったのだなと感じて新鮮な気持ちになった。この本において、男女の別は重要ではない。

    主人公ブレクだって、男か女か、結局最後まで説明がなかった。

    ブレクはAIのインターフェースみたいなものだ。

    戦艦のAIは、奴隷や死刑囚(はたまた、罪のない市民)を改造して属躰(アンシラリー)と呼ばれる人型の筐体にし、それを何十体も作って艦船の艦長に奉仕する。

    ブレクの戦艦<トーレンの正義>本体は、暴君によって破壊された。ブレクは属躰の生き残りだ。

    ブレクの魅力は、たくさんある。戦艦のくせに、歌が好きだ。そして、とっても思いやりがある。だから、男か女か、そんなことはどうでもよくなってくる。


    そもそも、登場人物たちは人間か?足が再生してくるんだぞ?子どもは子宮をアダプターみたいにとりつけることで産むらしいし、いわゆる普通の「人間」だと思って読むと、つじつまが合わないところが出てくる。だから、この本はムカデやトカゲのような爬虫類を想像しながら読んでもよい。何を想像して読んでもいいのだ。

    ステーションにせよ、カルルの慈にせよ、AIが創造主の手を離れ、独自の力でやっていこうとするとろくなことにならないのが小説のお決まりの展開なのだが、この本は逆にAIが独立した方がうまくいく展開になっている。そこもおもしろかった。

  • 三部作完結編。派手な戦闘はないが、心理的な描写で、どきどきしながら読み進められる。一度読み始めると、心を掴んで離さない。

  • 人間と化したAIなのだから、他の艦船と同化して艦隊戦をやるとか、皇帝のリンクを妨害してただの人にするとか、そんなストーリーを期待してた。

  • 三部作の最終巻。完結編。社会学的なことに興味がありジェンダー関係について考える上で、面白い体験が出来る。そのせいで最初はひどく読みにくい。が、人間それにも慣れてくるから不思議。それならそうという景色を生きることが出来る。この時、特定のあるべき姿から逆算した皮肉めいた設定としていないところにこの作品の素晴らしさと力がある。今とは違う別の景色を体験する。順応する、という不思議な経験をすることになる。これもたしかにSFしてるんだけどこの別の景色を生きてみることは様々な差異を考える上でとても有意義な経験だと思う。話としても面白いしオススメ。

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