北壁の死闘 (創元推理文庫) (創元ノヴェルズ ラ 1-6)

  • 東京創元社
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  • Amazon.co.jp ・本 (403ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784488800666

感想・レビュー・書評

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  • ボブ・ラングレー『北壁の死闘』創元推理文庫。

    言わずと知れた山岳冒険小説の大傑作。恥ずかしながら、今まで未読であった。1987年に刊行された作品である。

    アイガー北壁で繰り広げられる登攀と闘いの描写は迫力満点。ある程度は予想していたが、この手の冒険小説にしては珍しく感動を呼ぶ結末に拍手するしかなかった。

    プロローグに描かれたアイガー北壁で発見されたドイツ軍山岳歩兵師団兵士の遺体は何を意味するのか……ドイツ軍の軍曹・エーリッヒ・シュペングラーをはじめとする山のエキスパートたちが山岳歩兵師団に召集され、全員が少尉のだ。階級が与えられる。シュペングラーたちに課せられた過酷な任務とは……アイガー北壁での生死を賭けた登攀の結末は……


    個人的に日本の山岳冒険小説の一番の傑作は、夢枕獏の『神々の山嶺』だと思っている。これを原作にした谷口ジローの同名漫画も日本漫画史上に残る大傑作で、素晴らしかった。観ていないので内容に触れることは出来ないが、同名映画の方は余り良い評判は耳にしていない。

    海外の山岳冒険小説で言えば、一番面白かったのはハリー・ファージングの『汝、鉤十字を背負いて頂を奪え』である。無名作家による山岳冒険小説で、出版社が竹書房ということもあり、全く話題になっていないが、絶版になる前に読んでみて損は無い大傑作だと思う。キャロル・オコンネルのマロリー・シリーズを最初に刊行したのが、竹書房であることを思えば、たまにこのような当たり作品がある。『汝、鉤十字を背負いて頂を奪え』はエベレストの第一登を果たしたのは実はドイツ軍兵士だったという内容であり、奇しくも本作と共通するところがあるから面白い。

    本体価格580円(古本100円)
    ★★★★★

  • 山岳小説に関心を持っており、山岳小説の傑作という評判なのでチョイスしたが、文庫本のあらすじを読むと、戦闘アクションもののように感じられ、そうであれば個人的な嗜好から外れていると思ったが、読んでみると間違いなく、飛び切りの山岳小説であった。
    第二次世界大戦末期のドイツ軍と連合軍の間の機密事項に関する争いが背景にあり、特殊任務を担うために登山の専門家を集めた第五山岳歩兵師団に配属されたシュペングラーが主人公。同じ歩兵師団に配属された女医のレスナーがサブ主人公。二人の過去のトラウマと心の交流が物語のアクセントになっている。主要な登場人物は限られていて、それらの人物の性格設定・書き分けが巧い。
    タイトルの「死闘」は、読む前はドイツ軍と連合軍との間の戦闘のことだと思っていたが、読んでみると、厳しい気象条件と難ルートを併せ持つアイガー北壁との死闘という意味合いが強いことがわかった。
    前半はやや読みにくさを感じたが、展開がスリリングで、後半になればなるほど息を突かせない面白さを持った、手に汗握るエンタテイメント作品であった。
    訳者の海津正彦氏は、山岳雑誌「岳人」にインタビューや登山記録が載るようなクライマーであり、登山描写や山岳風景描写の訳の的確さが光っている。

  • またまた年代物の作品です。
    1987年初版となっています。北壁に惹かれ読んでみました。
    地元山岳ガイドが、アイガー北壁を登攀中、小さなテラスに座ったままの氷漬けの死体を発見します。
    詳しく調べてみると、ドイツ軍山岳歩兵師団のものと分かる。
    そして首元には、錆びた金属製のロケットと騎士十字章の勲章がかけられていた。
    これらに興味を抱いたBBC局員が、当時の重大な事実を探り出すことで物語が成り立っていく。
    原子爆弾の開発をめぐって、ナチ・ドイツ軍とアメリカ軍がアイガー北壁で繰り広げる、手に汗握る死闘。
    彼らは先鋭クライマーだとはいえ、すべて軍の命令によって、この死の壁に挑んでいるというのが普通の山岳とは違うところ。
    仲間がいても、心が通じ合った信頼できるものばかりではないし、ましてや任務を背負っている。
    彼らの心境はいかばかりか・・・
    最後に生き残った人たちを訪ね歩いて、残らずなぞ解きをしてくれて、ほっと肩の荷が下りた気がします。

  • 後半まで☆☆☆だが、ラスト100ページでアクセル全開だった。ラストは鳥肌が立つ。この寒い時期にこの作品を読むとさらに現実感が増す。宙づりになるシーンや滑落するシーンは手に汗握る。北壁を前にしては、敵味方に分かれて争うなど意味がない、という趣旨が書いてあるが、まさに、と思わされる。

  • スイス人山岳ガイドが40年程前のナチ軍人の氷漬け死体をアイガーで発見するところから物語は始まる。というわけでジャンルは山岳ミステリーらしい。
    ただ謎の解明というミステリー要素ではなく謎にまつわるドラマが本作の主体で、実際読んでいると登攀シーンの魅力と迫力に謎解きのことなど吹っ飛んでしまい、ひたすら物語に没入した。主人公もたいへん魅力的。エピローグは語りすぎの印象もあるけど結末は嫌いではない。訳も良いです。
    この本を読むまでは、登山といえばバラエティ番組で芸人が登っているのを見ているくらいで知識もなければとりたてて興味も無かったのに、困難な壁に挑む行為に魅せられてしまい、すっかり登山に興味を持ってあれこれ調べてしまった。
    それくらいこの小説には魅力がある。

  • 山屋さんじゃなくても、普通に面白いと思う。
    冬山を巡る攻防。
    ハラハラドキドキそしてラストにほっこり。

    映画になりそうなストーリー。
    (アクション的には地味になりそだが)

  • 冒険小説ベストセレクションにふさわしい名作。
    フィクションだけどノンフィクション?
    圧倒的スケールと緊迫感で描かれた山岳小説でした。

    舞台はアイガー北壁。時代は第二次世界大戦下。
    ドイツの兵士シュペングラーは、とある指令を与えられる。

    アイガー北壁といえばあの悲劇。
    トニークルツやヒンターシュトイサーも登場し、映画のラストシーンが頭に浮かぶ。

    死の壁アイガーの重量感溢れる岩壁、神々のトラバース、死のビバーク、蜘蛛。
    数々のドラマを生んだこの場所に、さらなるドラマがあったとは…。
    タイトル通り、北壁で繰り広げられる死闘に、息をするのも忘れてページをめくりました。

    完全な状態で登攀してもすごいのに、
    天気にも、仲間にも、情勢にも、身体的にも全く何も整ってない状況下での登攀。

    その中で打ち勝つ強さは、どこにあったのか。
    敵ながらあっぱれ。と言わざるを得ない登攀の数々にはため息が漏れます。

    マ、ジ、で!面白かった!!!
    現代から過去へ、過去から現代へ。という物語の運び方に感じるロマンよ。

    昨年の個人的ベスト小説「同志少女よ、敵を撃て」並みに引き込まれました。
    手放しでいっちゃダメだけど、第二次世界大戦の持つドラマってすごいな。

    アイガー、1度見に行きたい。
    そしてできることなら登ってみたい。

  • これはすごい。
    この読後感は、なかなか味わえない。

  • アイガー北壁での敵はただ一つ、この山だ。

    この言葉がこの本の言いたい事だ。

    お互いに気を奪われながらも敵味方になっているシュペングラーとへレーネだが、そんなことはアイガーを目の前にしたら吹っ飛ぶのだ。

  • アイガー、頂上3970m。
    その高みには暴力も獣性も寄せ付けない。神秘と威厳に満ちている。
    読み終えた後は、まるで頂上に到達したように気持ちいい。

    日々時間の流れに押し流されているとき、生と死を強く体験することはめったにないと思う。地獄だと思うような戦争ですら、いつしか慣れて無感動に。
    そんな自分の分身のような兵士シュペングラーが、登山訓練で研がれ、人間関係を修復し、極秘任務を任された。困難だと理解しながらも、最善の選択だと信じてアイガー北壁に立ち向かう。

    人間の魅力も、山の迫力にも圧倒された。

  • 雪混じりの天気となり、山も真っ白。冬がきたね〜。こういう時にこそ読むべき山岳アドベンチャー。最高!

    氷と突風、落石、雪崩なんでもありのアイガー北壁を突破しなければならなくなった第2次大戦末期のナチスドイツ軍精鋭部隊。この追い込まれ方が凄まじい。

    年末の忙しさと寒さに震えながら読めば臨場感抜群!冬山行きたいなぁ、いや行きたくないなぁ。

  • ガチガチの山岳小説を読みたく、手に取った本書。山岳小説というよりは戦争アクション×山岳 というか、普通の山岳小説だと、“山男たちがどう山に挑むか、その精神性”みたいなものが描かれることが多い。

    そこに、戦争という背景を加えて、敵国からの襲来、科学者の強奪というハリウッド映画さながらの設定が加えられていく。。

    ただ最後には、やっぱり山物語になっていきます。気象条件の過酷さ、削られていく精神と身体、そのなかでも結束を強めていくチーム、仲間のために自己を犠牲にする昔の仇敵。

    結末は出来すぎな気もしましたが、全体のまとまりとしては読み応えのある一冊でした。

  • 最難関と言われる雪山で見つかった遭難遺体。何故そんな場所に遺体があったのか?いつこんな場所を登ったのか?
    ミステリー文庫となっていますが、登山あり、アクションあり、お色気あり、の大人向けエンターテイメント小説です。

  • 北壁の死闘 (創元ノヴェルズ)

  • 鷲は舞い降りたテイストを放ちつつ、このご時世にこのスタイルの冒険小説が読めるとはということで驚喜した作品。マストリードでしょ。これが気に入ったら「Uボート最後の潜航」も!

  • 評判通りの優秀なサスペンスだと思う。ただ私が山岳小説に求めているのはサスペンスではないということがよく分かった。

  • ハヤカワ文庫「冒険・スパイ小説ハンドブック」のベスト10に輝いた作品。当時は、冒険小説にはまりだし、このハンドブックの上位ランキングに入っている本を順々に読んでいった。その中でも、この作品が私にとってのNo.1!最後のどんでん返しとハッピーエンドが私の好みだ。同時に、著者ボブ・ラングレーにも興味を持ち、数冊の著作を読んだが、その中でもこの作品は、1、2を争う出来だ。

  • 冒険小説の秀作です。登山経験のある人なら、私以上に楽しめることでしょう。内容はフィクションながら史実を織り交ぜるという形でリアリティーを補強しています。特に、ラストの収束のさせ方は私好みです。

  • うん十年ぶりに再読。やはり面白し。

  •  第二次世界大戦、ドイツ陸軍がスイス、アイガーで行った起死回生の作戦。原子力研究の第一人者ラッサー博士を研究所から拉致すること。
     そのために集められた、ドイツ人クライマー達の、アイガー北壁で繰り広げられた死闘を記録した冒険小説です。

     イモトアヤコさんがアイガーを登ったのをきっかけに、久々に読んでみたくなって、引っ張り出してきました。
     およそ30年前の小説です。20年くらい前には渡辺いっけいさん主演で、NHK-FMの「青春アドベンチャー」でも放送してましたね。

     私は山は登らないので、この本が何処まで正確に、詳細に登山の描写をしているのかはわかりませんが、その筋の人が見ると、絶賛なんだそう。
     私はアイガー北壁を登ることはないでしょうが、アイガーの他の小説を読んでみたいと思うくらいにはワクワクさせてくれます。

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