「学び」の構造

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  • 東洋館出版社
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  • Amazon.co.jp ・本 (220ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784491002774

感想・レビュー・書評

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  • 学ぶ、とはどういう事か、を本質の部分から考えさせてくれた。特に学ぶ人、学ばない人やおぼえることと、わかること、についてはわかりやすい表現で書かれていて頭にすっと入り込めて、何となくの学びの理解にかかっていたもやが少し開けた感じがした。学ぶ事は問い続ける事、そのプロセスにおいても人間としての成長の可能性を感じた。

  • 「わかる」とは「絶えざる問いかけを行うこと」であり「無関係だったもの同士が関連づいてくること」(p.62,63)
    わかるというと理解し切った状態ではなくて、
    何がわかって何がわかっていないかを把握できている状態という点が発見だった。
    何かを学ぶとき、対象を知るほどわからないことが増えていく。そのため、何もわからないのでは?少しも理解できないのでは?と不安(どうしようもない気持ち、楽しくない)になっていたけれど、わからないことがなんであるかを把握できれば、1部は学べていると言えるのであれば、もう少し前向きにわからない状態を受け入れられそうに感じた。

  • 今年読んだ本の中で最も示唆に富んだ本となった。お勉強の啓蒙書や自己啓発書を10冊読むのなら、本書1冊を読んだ方がきっと充実した時間となるはずだ。幼児期の「学び」から研究者による「科学」までを、平易な言葉で説明している。その論のダイナミズムにはただただ敬服するばかり。一部のビジネス書にある胡散臭さに辟易している方は、この本を読むとよい。

    冒頭に著者は村井実からの進めで本書の執筆に入ったとある。村井といえば、「善さキン」を提唱した先生として有名だ。耳にした方もいるだろう。ちなみにそれは、人は本来「善くなろうとする」という性質を持っていることに立脚して捉える考え方だ。本書では善さ、道徳、マナーを同義として扱っている。

    「わかる」ことについては、次の4つを説明している。わからないところがわかること、絶えざる問いかけを行うこと、無関係であったもの同士が関連づいてくること、自らが死に至るまでわかりつづけていくことである。日々の学習や生活の場面場面でわかることに対して邁進し続けるのが人間ということなのだと理解した。

    肝心の「学び」とは、と思われるだろうが、ここに引用した言説以外にも重要な指摘がたくさんある。一言いえるとすれば、本書の未読者は先ず一読し、著者から「教わる」必要がある。たいへん分かりやすい本だから「学び」やすい。ゆえにすぐに読み終えられ、また「次の本に」移ることができる。これが「学び」のプロセスの一例ともいえる。

    学びの段階メモ・学びの構え
    (3)知的好奇心:目標自体を探す→(4)他者からみても矛盾の無い形でより深く納得→(5)疑問を自らの「新しい一貫性」で解消→(6)あらゆる可能な他人の目を次々と自分で「想定」できるようになる段階。現象・問題から新しい視点を発見したり、自らも視点を生みだしたりして、現存する視点との矛盾を超え得る「新しい一貫性」をつくりだす。

    問いなおしの方法 研究の構え
    (1)前提(2)当たり前(3)特定の科学内での名義や定義における意味を枠を超えて考える(4)関連(5)役割

  • PLATの吉川さんよりお借りした一冊。
    タイトルからして重たい一冊だなぁと感じてしまったのですが、
    そんな安直な反応をした自分を恥じた一冊。

    学ぶということは、こうした考察ができるし、
    わかるとできるは違うのね!などの気づきをもらえた一冊。

    学び続けていく人に、
    そして個人的には、自己啓発などが好きな人に、
    ぜひ一度読んでこの視点を持ってみては?と提案したい一冊。

  • 積んであって読めなかった本。

    実にエキサイティング。いいこと書いてありますね。これが昭和50年の本かあ。ということは、それから日本の教育界とか科学観って本質的には全然進歩していないのですね。

  • ただ知識を得る、やり方を知るだけでなく、本当の意味での学びを知りたくて

    ティーチングマシンの話は、聞いたことがなくて、ちょっとまどろっこしかった。

    1940年に書かれたのに、勉強って何?っていう子供、親、社会人等の具体例などは今も完全に当てはまるもので、
    進歩してないのか、あるいはもうこれは普遍的なテーマなのか、、

    事あるごとに部分的に読み返したい

  • 初版は昭和50年!学び続ける存在として提案された5つの問い直し ①前提を問う②アタリマエを問う③意味を問う④関係を問う⑤役割を問う 今の時代に必要な問いについて書かれています。

  • 古い本ではありますが、学ぶということの姿勢、学ぶということの意味、そういった、普遍的なものについて語られた本。
    濃厚な内容だったので、繰り返し読んで理解したいです。

  • 学習科学について論じられているが、どちらかというとエッセイか論考に近い。ティーチングマシンなど、時代の変化により色褪せたトピックもあるが、研究や学び、科学についての重要な視点から再度見つめ直すことを助けてくれる本であった。

  • 本書は人間の「学び」について、従来(とはいってもだいぶ昔)の研究をふまえながら全く新しい視点を提供し、それについて考察を重ねたものである。初版は昭和50年。なんと私が生まれる前である。しかしながら内容については色あせることなく、今を持ってなお輝き続けるものである。この人の研究には心がある。愛情がある。学術書を読んで涙が出るのは佐伯胖の著作だけだ。学ぶとは何か?なぜ学べないのか?学べなくしているのは誰か?素朴な疑問から展開される「学び」に関する哲学的・心理学的考察。このようなプロセスを経て人間とは?科学とは?と展開し、科学における「人間くささ」の必要性について論じる。目から鱗が落ちる思いがする一冊だった。内容は一般成人であれば理解できる。ほとんど専門知識は必要ない。なので、あらゆる人にお勧めできる一冊。

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著者プロフィール

佐伯 胖(さえき ゆたか)
1939年生まれ。専門は認知心理学。ワシントン大学大学院心理学専攻博士課程修了。東京大学・青山学院大学名誉教授。日本認知科学会フェロー、日本教育工学会名誉会員。おもな著書に、『「学び」の構造』、『「きめ方」の論理』、『「わかる」ということの意味』など。訳書にレイヴ+ウェンガー『状況に埋め込まれた学習』などがある。

「2022年 『人を賢くする道具』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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