会社で心を病むということ

著者 :
  • 東洋経済新報社
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感想 : 8
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  • Amazon.co.jp ・本 (222ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784492042823

作品紹介・あらすじ

いま会社が変わらなければ社員の心の病は減らせない!精神科産業医として企業のメンタルヘルス不全対策の現場にかかわってきた著者が、職場に蔓延している心の病、心が病むメカニズム、理想の職場などについて訴える渾身の医療エッセイ。

感想・レビュー・書評

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  • 予防が最重要という視点に納得

  • 筑波大学社会医学系准教授。精神科産業医。
    日本での年間自殺者数が3万人を超えているというのは衝撃的。でも実はこのことは聞いたことがあった。むしろ年間3万人もの人が自殺してるという事実を、自分も含めてほとんどの人が問題視していない現代社会が何かおかしい。
    心を病む人が多い。たしかに多い。
    本書では、特に会社で心を病む人を早期にケアする方法を、中間管理職をターゲットに解説してある。
    いくつかの例は会社でも自分の周りでも、まさしくありそうだし、一方いくつかの例ではこんな新入社員が本当に自分の部下として配属され、心を病んでしまったら正しく対処できるのか、とても不安に感じた。
    職場不適応のサイン: 心気症。心身症。行動面でのサイン。精神面でのサイン。
    ビッグ・ピクチャー・スモール・ウィン。やっぱりほめてあげることが大事なんですね。でも実際には照れくさかったりしてほめるのは難しい。
    未熟型うつへの対応法「一緒に考えてみよう。」
    カウンセリングのポイントは「受容」「傾聴」「共感」

  • すごい面白かった。アマゾンで注文した。
    理想が書かれたものだけど、自分が現実に近づけていけるよう考えたらいいんじゃないのかな。

  • ダイヤモンド・オンラインに載っていた松崎さんの「うつ」に関する連載に、「パワハラ上司は、未熟な人格者だ」という説明があり、興味を惹かれて、本書を購入してみた。

    「会社員のうつ」に特化した本だ。
    なるべく重度になる前にメンタルヘルスの問題に気づき、職場にきちんと復帰できるようにするにはどうすればいいか、説明してくれている。

    すばらしいのは、そのノウハウが松崎さんの個人技に終わらず、「メンタルヘルスマネジメントシステム」としてパッケージ化し、企業や保険組合に提供している点だ。
    今後、メンタルヘルスに問題を抱える会社員はどんどん増えるだろう。
    社会に必要とされるビジネスモデルではないかな。

    【読書メモ:本書から引用させていただきます】
    ・ ストレスを回避する3つのメカニズム
    ①欲求不満耐性
    ストレスを受けたとき、最初に無意識に働く。新品のゴムボールを押すと押し返されるように、心もストレスを受けたとき、無意識にそれを跳ね返そうとがんばる。
    ②自我防衛機制
    自分の心の形をうまく変形させて、正面から来た100のストレスをすべて受け止めるのではなく、身をかわして半分を逃してしまう。
    今、多忙なビジネスマンに必要なのは、無意識な自我防衛機制の能力。欲求不満耐性ばかりを使い、ストレスを真正面から受けていると、ゴムボールの弾力がなくなるように人の心も疲れてしまう。
    ③カタルシス
    心に小さな穴を開けて、たまった感情を発散させる。やけ酒、愚痴など。

    ・ ストレスで最も負担となるのは、やらされ感。同じ労働時間でも、やらされ仕事は自主的な仕事に対して、約3倍の負荷があるといわれている。
    「やらされ感」から「達成感」へと部下の認知の変容を即すことが、「実際の仕事量を減らさずに、主観的ストレス感を減らしてメンタルヘルスを予防する」こと。

    ・ 子どもは、欲求不満耐性でしかストレスを処理できない。心が成熟しないと、柔軟に認知を変容させる自我防衛機制が働かない。我慢の限界がくると、めまいや頭痛などの身体症状が現れる。

    ・ 最もストレスに強いのは、自己効力感が高く(自信がある)、自己統制傾向が外向き(物事は自分ががんばればうまくいくはず、ではなく、物事には時の運も左右する、と感じている)の人。
    このタイプは、自分を正しく評価できる適度な自信があり、他者の評価をあまり気にせずマイペースで仕事ができる。

    ・ 自己効力感の低さ(自信のなさ)を、他人からの評価を受けることで穴埋めするタイプの人間は、自分を大きく見せようと見栄をはり、部下を叱り飛ばすこともある。

    ・ 自我は、子どもの頃の親子関係や対人関係、人とのふれ合い、挫折や葛藤を乗り越えた経験の積み重ねなどにより成熟し形成されていく。
    自我がきちんと成熟していない心は、最初から空気の抜けたゴムボールの状態と言っていい。

    ・ 現代はかなり許容度の低い社会。バブルの頃は許容度が高かったため、仕事のできない社員がいても「こっちの作業をやってもらおうか」と、その人の能力に見合った仕事を与える余裕があった。

    ・ 「僕なんか、もう辞めたほうがいいですよね?」と聞かれたら、どうするか。まず、イエス、ノーには応えず、「うんうん」と頷きながら話を聞く。相手が「イエス・ノー」を求める質問をしてきても、決して返事をしてはいけない。「そうか、君はそう考えていたのか、なるほどなるほど」と、頷き、耳を傾け続ける。
    相手が「答えてくれないんですか」と聞いてきても、根負けして白黒つけてはいけない。「君は必要な人間だよ」と答えても、「でも・・・」と話が続いてしまうだけだからだ。
    そこで次にやるのが「オウム返しのテクニック」。「僕は会社に必要でしょうか」と聞かれたら、「うーん、君は会社に必要なんだろうか。どうなのかんぁ・・・」とオウム返しに答える。
    逃げているように見えるがそうではない。時間を確保して受容し、話を聞き、一緒に考えることが非常に重要。そうすることで、「この人は親身になってくれている」と、共感の気持ちへつながる。

    ・ ストレスを緩和させるためには、仕事量を減らせばいいと思われがちだが、単純にノルマを減らすよりも、達成感と時間的裁量権をえら得るような労働管理をするほうが、うつ病予防には効果がある。

  • 【要旨】
     現代では年間3万にも自殺者が出ており、これもストレス社会の弊害である。
     ストレスの回避には「欲求不満耐性」「自我防衛機制」「カタルシス」といった3つのメカニズムがある。しかしながら、これを超えるストレスが続くと、身体面、行動面、精神面にうつ病の前兆が現れる。
     ストレス許容度は人によって異なり、「自己効力感」(どれだけ自分を肯定的に見ているか)と「自己統制傾向」(視野が内向きか、外向きか)によって、傾向は掴める。しかしながら、うつ病になるのは個人の責任ではなく、環境(会社)の責任である。
     また、うつ病から社会復帰する際に、いきなり元の状態に戻るのではなく、職場復帰プログラム(時間・仕事量を考慮したもの)により、リハビリ期間を設け、スムーズに会社復帰できるようにするべきである。しかしながら、元の状況に戻っても再発するだけなので、環境を変える必要性がある。その中で重要なのが、中間管理職である。セミナーでは、特に中間管理職の意識を変えるよう工夫している。
     今後は治療型のメンタルヘルスではなく、予防型のメンタルヘルスを目指している。産業精神科医(場合によっては人事)が、中間管理職、外部精神科クリニックなどをマネージ、早期の治療し、メンタル不全を予防できる体制を整えることが理想である。

    【感想】
     自分自身、辛い時は心を擦り減らして働いているように思うことがある。うつ病や精神的な問題について、正確な知識を得、セルフマネジメントを行う必要性があると感じている(環境が変えられない場合)。この本を読んでいて思ったのは、自分を追い詰めすぎない、追い込みすぎないこと。常に余裕を残しておかないと、精神的にいっぱい(×2)になってしまう。本書では、「環境」を主に述べているので、セルフケアに近い本も読んでみようと思う。

    【目次】
    序 章 会社で心を病む人たち
    第1章 心のメカニズム
    第2章 なぜ会社で心を病むのか
    第3章 現実とのミスマッチ
    第4章 精神科産業医の処方箋
    第5章 心のホットライン
    第5章 もう会社で心を病ませない

  • 本人や家族ではなく、職場の周囲の人に。

  • 精神科産業医である著者が推奨するメンタルヘルス対策について書いた本。メールでの対応も積極的に実施されているようですが、行間を読むのは難しい気がします。図書館予約数は2(07/08/29現在)です。

  • 精神科産業医としての経験をもとに書かれた本。うつ病に関する本は多いけれども、(会社に限らず)組織の中での対処法など具体的なケースに基づいて書かれた本は寡聞にして他に知らない。管理者必読。(NT07年9月号で紹介)

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著者プロフィール

医学博士、筑波大学医学医療系教授

「2017年 『クラッシャー上司』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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