レジリエンスとは何か: 何があっても折れないこころ、暮らし、地域、社会をつくる

著者 :
  • 東洋経済新報社
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  • Amazon.co.jp ・本 (288ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784492045671

作品紹介・あらすじ

レジリエンスとは「しなやかな強さ」と訳します。
強い風にも重い雪にも、ぽきっと折れることなく、しなってまた元の姿に戻る竹のように、「何かあってもまた立ち直れる力」のことです。

いまの日本はこの「レジリエンス力」がとても弱くなっていると著者は言います。たとえば、効率やコストを重視するあまり、資材の調達先を一社に絞った結果、3・11のような大きな震災の場合、企業は立ちゆかなくなってしまう。
同じように効率重視で行われているのは企業経営だけにとどまらず、教育、子育て、地域社会、環境でも垣間見ることができます。
しかし、世界では、このレジリエンスの研究が進んでおり、上記のような様々な面でレジリエンスへの取り組みが積極的に行われています。
世界のレジリエンス研究家とともにレジリエンスの研究を深め、啓発活動を行ってきた著者が、レジリエンスがかつてないほど必要となっている日本と日本人にレジリエンスの考え方と取り組み方を世界の実例を交えながら解説します。

感想・レビュー・書評

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  • レジリエンスとは「しなやかな強さ」と訳します。
    強い風にも重い雪にも、ぽきっと折れることなく、しなってまた元の姿に戻る竹のように、
    「何かあってもまた立ち直れる力」のことです。

    いまの日本はこの「レジリエンス力」がとても弱くなっていると著者は言います。
    たとえば、効率やコストを重視するあまり、
    資材の調達先を一社に絞った結果、3・11のような大きな震災の場合、企業は立ちゆかなくなってしまう。
    同じように効率重視で行われているのは企業経営だけにとどまらず、
    教育、子育て、地域社会、環境でも垣間見ることができます。
    しかし、世界では、このレジリエンスの研究が進んでおり、
    上記のような様々な面でレジリエンスへの取り組みが積極的に行われています。
    世界のレジリエンス研究家とともにレジリエンスの研究を深め、
    啓発活動を行ってきた著者が、レジリエンスがかつてないほど必要となっている日本と
    日本人にレジリエンスの考え方と取り組み方を世界の実例を交えながら解説します。

    心理学者 イローナ・ボニウェル博士
    「レジリエンスには、思考の柔軟性が必要な事が分かってきました。
    つまり、厳しい状況でもネガティブな面だけではなくポジティブな面を見いだす事ができる人が、逆境を乗り越える事ができるのです。」

    埼玉学園大学 小玉正博教授
    「にこっと笑うでしょ。
    反応が強すぎる、一個一個(の結果)に対して。
    長持ちしない、いちいちリアクションするから。
    自分の感情出し過ぎる。
    一喜一憂するのはエネルギー消耗しますよ。」

    課題に対して最初から無理と決めつけていたり、自分の力を過小評価する傾向があったのです。

    レジリエンスには、状況に一喜一憂しない感情をコントロールする力や、
    自分の力を過小評価しない自尊感情が大きく関係する事が分かってきたのです。

    一方、1時間以上にわたって挑戦を諦めなかった人たちからも、一定の傾向が明らかになりました。
    課題の失敗を繰り返す中でも、少しずつ成長していると感じている人や、
    いつかできるだろうという気持ちを持つ人が多くいたのです。
    自分が成長前進していると感じる事ができる、自己効力感という要素。
    そして失敗の中でもいつかできると考える楽観性も、レジリエンスには重要な要素である事が分かってきました。

    埼玉学園大学 小玉正博教授
    「一般的に“心が強い”とイメージするのは、“鋼のような”、“跳ね返す”、“硬い”、“頑丈な”というイメージを持つが、
    レジリエンスというのは、楽観性のように自分のいる状況に対して前向きに、
    不安とかそういうものに打ち負けないでしなやかにこなしていく。
    そういう心の持ちようがレジリエンスだということが、研究の中でだんだんと明らかにされてますね。」

    ●心が折れにくくなるための一番大事な事とは?
    自分にとってそれが大切かどうかっていうのを客観的に考える力なんだと思うんですね。

     何が大切なのかっていうのをご自分の中で客観的にきちんと把握しておかれるという事ですね。
    そうすると、目の前の成功失敗に一喜一憂しないで済むという事があると思うんです。
    そしてその大事なもののために諦めないで頑張る。
    それ以外のところは上手に諦めるっていう、そういうふうな事がまず1つ大事だと思うんです。
    もう1つは、1人で頑張る力というのは限られてますので、
     ほかの人と一緒にそういう事ができる、そういう環境を作るというのも大事だと思うんですね。

    ●ネガティブな時に誰かに声をかけるのは大変では?
     だけど人にとって一番幸せな事って、人のために何かできる事なんですね。
    ですから思い切って声をかけて頂くと、ご自分にとっても楽になりますし、
     その人もその方に対して何かができるっていう幸せ感を感じられると思いますので、やはり両方が幸せになれる。
    そういう第一歩だと思うんですけどね。
    (思い切って何かお願いしたりするという事も大事?)
    そうですね。
    そうするとお互いに幸せになれるという事だと思います。

    ■目次

    レジリエンスとは何か

    第1部 レジリエンスの基礎を知る
    (生態系のレジリエンス 折れないこころをつくる―レジリエンスの心理学)

    第2部 折れないこころ、暮らし、地域、社会をつくる
    (折れない子どもをはぐくむ学校―レジリエンスを高める教育
     折れない子どもを育てる―家庭で高めるレジリエンス
     温暖化にも折れない暮らしをつくる
     災害にも折れない暮らし・地域をつくる
     折れない自治体や都市をつくる
     住民の力で、何があっても折れない地域をつくる)

    第3部 自分と家族のレジリエンスを高めるには
    (折れない人生・折れない暮らしをつくる)

  • 個人がしなやかに強くなるだけではなく、個人を取り巻く集団や環境も、どんな事が起きても挫けないものならなくてはならない、また、困っている個人を救わなくてはならないという考えは勉強になった。

  • 近年、地震、津波、台風、大雨、伝染病などの、思いもかけない災害が頻発するようになったこともあり、「何があってもまた立ち直れる力」を意味するレジリエンスという言葉は、耳目に触れることも多くなった。
    本書は、序章の「レジリエンスとは何か」に続く、「レジリエンスの基礎を知る」「折れないこころ、暮らし、地域、社会をつくる」「自分と家族のレジリエンスを高める」の三部構成からなり、生態系、教育、家庭、地域、自治体、企業、国家など、多岐にわたってレジリエンスを高めるためのヒントを紹介している。「「レジリエンス」に出会って日本に広く伝えたい! と思ってから10年、やとこの入門書をお届けで、とてもうれしく思います。一人ひとりの人生や暮らし、組織や地域、社会のレジリエンスを高めるために少しでも役に立てれば、これ以上の喜びはありません」というあとがきの言葉が、本当に強く伝わってくる1冊だ。

  • 自己啓発

  • レジリエンスとは、個々の要素の特性ではなく、様々な要素がつながりあってできているシステムの特性。”ここを強化すればよい”という単発の取り組みではなく、様々な側面から考え取り組むことが重要(あとがきより)
    わかりやすく実践的に説く良書。

    レジリエンスのある世界が大事にするもの
    ?多様性を促進し、維持する
    ?生態的なばらつきを受け入れ、活用する
    ?モジュール性;(つながっているがつながり過ぎていない)
    ?ゆっくりと変化する管理変数に注目する
    ?緊密な、しかし緊密過ぎないフィードバックがある
    ?信頼とよく構築されたソーシャルネットワーク、リーダーシップ
    ?イノベーション;変化を受け入れることを重視する
    ?ガバナンスの重複;変化の時期には、ごちゃごちゃした構造のほうがうまく機能する
    ?生態系サービス;金銭では評価でいない生態系サービスのすべても含めて開発の提案や評価を行う


    [more]<blockquote>P33 閾値を超えると、非線形的な性質によって、「それまでとはまったく異なる状態」に変わり、その後も元に戻ることなく、変わった後の状態で安定してしまうことがあります。これを『レジーム・シフト』と呼びます。

    P61 ハーディネス=頑健さ… 3つの”C”=コミットメント・コントロール・チャレンジ プラス、2つのスキル=問題解決型の対処と支えの交流
    ハーディネス=ストレッサーに挑戦する強さ レジリエンス=ストレスによる苦痛から立ち直る強さ

    P75 バウンス・バック!プログラム

    P107 楽観志向の本質は、前向きな言葉や勝利をイメージすることになるのではなく、出来事に対する「原因」をどう考えるかにあります。「時間的広がり(これは一時的なことだ)」「影響が及ぶ範囲(限定的な影響にすぎない)」「自分化(状況のせいだ)」

    P116 失敗力・我慢力は、実は大人にこそ必要なのかもしれません。子供が失敗することを見守っていられるか、子供によい顔をされなくても時には我慢することを強いているか

    P117 子供たちに伝えたいメッセージ;物事はだいたいはよくなっていくもの。いつも同じものが怖いわけじゃない。自分の恐怖心に向き合うことで強くなれる。自滅的な言い方や助けにならない言い方をしたら、優しく『そうかしら?』と異議を唱える。

    P142 「温暖化対策に取り組みつつも、不可避の温暖化の影響に備える」=適応策も重要という国からのメッセージが見えてこない。

    P178 キューバのハリケーン対策 活力のバックには、たとえどんな災害が来ようとも人命だけは救われ、政府や地域コミュニティがきっと復旧を応援してくれるという安心感と希望がある=レジリエンスの重要な要素

    P184 応急対策が中心となって異常に特化しているのが日本の特徴 応急対策だけでは災害は減らせません。応急対策=防災だと思い込まされているのです。被害想定をきちんと行い、シビアなハザードマップを作ることが前提です。

    P215 レジリエンスのあるシステム
    ?継続的な学習
    ?迅速な立ち直り
    ?限度のある失敗
    ?柔軟性
    ?予備能力

    P220 温暖化対策やリサイクルをするだけではなく同時にレジリエンスを高めることを考えないと「石油のない明日」に対する脆弱性は変わらない。

    P229 マネー資本主義の経済システムの横に、こっそりと、お金に依存しないサブシステムを再構築しておこうという考え方

    P241 地域経済の自立度を高めるためには、地域経済にどのくらいお金を呼び込めるかと同時に、一度その地域に入ったお金がどのくらい地域に残り循環するかという視点が重要

    P269  幸せの貨幣依存度を下げていく</blockquote>

  • 「レジリエンス」という生物学(生態学)という言葉が、心理学などに派生し、いまや国土強靱化などにその言葉は応用されるようになった。

  • 少なくとも、読むのに足かけ3年かかりました。
    読みやすい部分と、読みにくい部分が混在していて、スムーズに読めませんでした。
    何なんだろう、この感覚…。

    とりあえず、「レジリエンス」の概念はよくわかりました。
    また、その方向性は、自分の考えとも一致します。
    が、行動に移すとなると、ちょっと壁がありそうなので、自分に合ったやり方を考えます。
    まずは、この本にも書かれているように、何らかのアクションを起こすときに「レジリエンス的な視点でも考えてみる」からスタートですね。

  • 久しぶりに読みたいと思った本がこれ。
    最初はすごくわかりやすかったんだけど
    途中から分かりづらかったなあ。
    ただ、予期していたように、
    自分にはレジリエンス力はまったくない。。。
    だから、そのような力をもっている人は
    そういう考え方をするんだ~というのが
    勉強になった。

  • 何があっても折れない、しなやかな強さを示すレジリエンスに関する入門書。
    こころや地域社会まで色んな考え方が紹介されています。

  • 498.39-エダ 300438595

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著者プロフィール

大学院大学至善館教授、有限会社イーズ代表取締役、株式会社未来創造部代表取締役社長、幸せ経済社会研究所所長、環境ジャーナリスト、翻訳家
東京大学大学院教育心理学専攻修士課程修了。『不都合な真実』(アル・ゴア著)の翻訳をはじめ、環境・エネルギー問題に関する講演、執筆、企業のCSRコンサルティングや異業種勉強会等の活動を通じて、地球環境の現状や国内外の動きを発信。持続可能な未来に向けて新しい経済や社会のあり方、幸福度、レジリエンスを高めるための考え方や事例を研究。「伝えること」で変化を創り、「つながり」と「対話」でしなやかに強く、幸せな未来の共創をめざす。
心理学を基にしたビジョン作りやセルフマネジメント術で一人々々の自己実現を手伝うと共に、システム思考やシナリオプランニングを生かした合意形成に向けての場作り・ファシリテーターを、企業や自治体で数多く務める。教育機関で次世代の育成に力を注ぐと共に、島根県隠岐諸島の海士町や徳島県上勝町、宮城県気仙沼市、熊本県南小国町、北海道の下川町等、意志ある未来を描く地方創生と地元経済を創り直すプロジェクトにアドバイザーとして関わる。

「2023年 『答えを急がない勇気 ネガティブ・ケイパビリティのススメ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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