賊軍の昭和史

  • 東洋経済新報社
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  • Amazon.co.jp ・本 (224ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784492061961

作品紹介・あらすじ

薩長(さっちょう)史観に隠された歴史の真実!

“官軍(かんぐん)”が始めた昭和の戦争を“賊軍(ぞくぐん)”が終わらせた!!

鈴木貫太郎(関宿)、石原莞爾(庄内)、米内光政(盛岡)、山本五十六(長岡)、井上成美(仙台)……など、幕末維新で“賊軍”とされた藩の出身者たちの苦闘を通して「もう一つの昭和史」を浮かび上がらせた異色の対談。
奥羽越列藩同盟など、幕府方につき新政府軍(官軍)抵抗した藩は、維新後「賊軍」としてさまざまな差別を受けた。その藩士の子息たちは、陸軍、海軍で薩長閥によって非主流派に追いやられ、辛酸をなめることになる。
やがて昭和に入り、日独伊三国同盟に反対した海軍の米内、山本、井上の賊軍トリオは、主流派である薩長閥に抗しきれず開戦を迎える。
そして、“官軍”が始めた無謀な戦争により滅亡の瀬戸際まで追い込まれた日本を救ったのは、鈴木貫太郎、米内光政ら賊軍出身者だった――。

新視点からあの戦争の真相を読み解き、いまに続く“官軍”的なるものの正体を明らかにする。



★著者の言葉

半藤一利
「あの戦争で、この国を滅ぼそうとしたのは、官軍の連中です。もっとも、近代日本を作ったのも官軍ですが……。
この国が滅びようとしたとき、どうにもならないほどに破壊される一歩手前で、何とか国を救ったのは、全部、賊軍の人たちだったのです」

保阪正康
太平洋戦争を批判するとき、実は薩長政権のゆがみが継続していた点は見逃せないのではないでしょうか……。
薩長閥の延長にある軍部を(賊軍の官軍的体質といったものまで含めて)批判するという視点がそのまま持ち込めるように思います。

感想・レビュー・書評

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  • 司馬遼太郎が書かなかった、書けなかった?昭和史。迫りくる欧米列強と対峙し、明治維新後、日清・日露を官軍の側から描けた司馬史観。
    官軍・賊軍の確執、そして、統制派、皇道派と続く、昭和の軍閥の混乱。司馬史観では取り上げられない史実だ。
    昭和史に詳しい、半藤、保坂コンビが、官軍・賊軍がどう昭和の戦争に突き進んだのかを解明しようとした著作だ。
    基本的には、吉田松陰の思い描いた東アジア構想を具体化しようとした永田鉄山、石原莞爾。
    そして、長州の天皇の権威を利用した、錦の御旗が、統帥権干犯へと繋がっているとの考え方が示されていた。
    敗戦処理に携わったのは賊軍を出自とする軍人だ。
    明治憲法下の最後の首相鈴木貫太郎が居なかったらポツダム宣言の受諾がおくれ、国民不在の戦い方をした官軍的体質で、日本という国はもっとひどく焦土と化していただろうちうのが二人の見立てでありました。

  • 毎度お世話になっております、半藤さんと保阪さんの対談形式で、
    昭和史を官軍、賊軍の視点で描く一冊。
    お二方の著書をよく読ませてもらうのは、
    複雑な昭和史をわかりわすくまとめているからなのですが、今回もわかりやすかった。

    鈴木貫太郎って何でこんな評価分かれるんだろうなとずっと思ってたけど、
    「ニ・ニ六事件で殺されかけて、とにかく生きることを優先し、戦争を終わらせるために生き延びた。だから戦争賛成側にも恨まれないようにどっちつかずの態度をとった」という
    本書での視点はなるほどだなぁと。
    斬新な視点だなと思いました。

    今だからこそ、そんな昔の出身地で官軍賊軍なんて…と思うけど、それがアイデンティティであり、自分を構成する一部だったんだもんな。
    特に海軍は人数が少ない分、それが顕著だったそうで、鈴木も、三羽烏の米内、井上、山本五十六も冷遇されている。
    逆に陸軍は永田鉄山、東條英機あたりから「反長州閥」の流れが出てくるんだけど、
    それにより皇道派や統制派の戦いが生まれるという…。
    いずれにせよ官軍賊軍が昭和にまで影響を及ぼしたことを実感する一冊でした。

    それにしてもお恥ずかしながら、今村均という人に関しては全然知らなかった。
    こんな清々しい軍人がいたとは。
    また別著で読もう。

  • 「勝てば官軍、負ければ賊軍」の「賊軍」、です。
    戊辰戦争で賊軍になった藩出身の軍人さんを取り上げて話し合う対談形式の本。
    いやー面白かった!
    どんだけ薩長嫌いなんだ。

    鈴木貫太郎、東条英機、石原莞爾、米内光政、山本五十六…と超有名人なお方ばかりなのですが、薩長閥以外の人たちいう視点で見るとまた違って見えるというか。
    つくづく、人を動かすのは理論ではなく感情なんだなあ、と。

  • 東洋経済新報社出版局の発案で対談。父が賊軍長岡藩出身の半藤氏、札幌出身の保坂氏。

    半藤メモ
    幕末、薩長方についた三条実美が「南北朝の昔は、錦の御旗というものが立ったものだ」といい古文献をみながら、長州の桂小五郎の愛妾の幾松が京都で反物を買い、品川弥二郎がそれを長州に持って行き、文献を見本に偽の「錦の御旗」を三旗作った、そう言われています。御旗をみた慶喜は戦意を喪失した。水戸では光圀の頃から天皇を崇拝する思想があった。

    靖国神社は戊辰戦争の官軍側の戦死者を慰霊する招魂社。長州の大村益次郎がつくった。奥羽列藩同盟の人々は祀られていない。西郷も西南戦争で賊軍になったので祀られていない。だが、幕末の禁門の変で死んだ長州兵は入っている。禁門の変では長州は賊軍だったのに。A級戦犯は官軍になるので祀られている。

    2015.8.20第1刷 2015.11.3第3刷 図書館

  • また新しい視点に触れることが出来て良かった

  • 明治維新から太平洋戦争までが官軍・賊軍という視点で語られる。

    全てが全てその対立軸で説明ができると思わないが、歴史を学ぶ上で、また現代社会を考える上で、育った環境が権力側か否かでメンタリティが異なる、ということは一つの重要な要素であることは間違いない(ということに気がつくことができた)。

    いまいち腑に落ちていなかった開戦〜敗戦に至るパワーバランスや意思決定のあり方に関して、本書を読んだことで、理解が進んだ。読んでよかった。

  • 2018.01.17 東洋経済より。「敗軍は簡単には水に流さない」
    2018.02.04 2018年1月の読めなかった本

  • 最近、太平洋戦争についての本をよく読む。

    半藤氏の本が面白いというのもあるんだろうけど、歴史のようでいて、今を考える示唆が多々あると感じるからね。現代社会なんて大きな話じゃなく、今、自分の属する職場であったり、人間関係であったり、さ。

    いろいろ考えられて、刺激になった。

  • 大河ドラマ「花燃ゆ」を見て感じた、「吉田松陰の思想が、日本を太平洋戦争に引きずり込んだのではいか」との疑問が裏付けられた。
    「靖国神社は薩長歴史観の空間」。靖国神社は今も日本を敗戦に追い込んだ薩長思想をひとめようとしている。
    安倍晋太郎も使用する「知行合一」。法治国家を否定する危うさがある。
    石原莞爾のことも目からうろこです。
    ラバウル司令官今村均の韮崎の「謹慎小屋」にも行ってみたい。

  • 勝てば官軍、負ければ賊軍

    太平洋戦争の本質、官軍が始めた戦争を賊軍が納めた

    ヒトラーのハニートラップ、海軍の親ドイツ派、ドイツ留学、

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著者プロフィール

半藤 一利(はんどう・かずとし):1930年生まれ。作家。東京大学文学部卒業後、文藝春秋社入社。「文藝春秋」「週刊文春」の編集長を経て専務取締役。同社を退社後、昭和史を中心とした歴史関係、夏目漱石関連の著書を多数出版。主な著書に『昭和史』(平凡社 毎日出版文化賞特別賞受賞)、『漱石先生ぞな、もし』(文春文庫新田次郎文学賞受賞)、『聖断』(PHP文庫)、『決定版 日本のいちばん長い日』(文春文庫)、『幕末史』(新潮文庫)、『それからの海舟』(ちくま文庫)等がある。2015年、菊池寛賞受賞。2021年没。

「2024年 『安吾さんの太平洋戦争』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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