アフリカ 苦悩する大陸

  • 東洋経済新報社
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  • Amazon.co.jp ・本 (340ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784492211779

作品紹介・あらすじ

アフリカの希望を誰が奪っているのか!腐敗した政府、民族対立、貧困、HIV…、停滞するアフリカの現実と問題の核心。

感想・レビュー・書評

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  • なぜアフリカは支援を続けても貧しいままなのかという疑問対する回答

    『エコノミスト』誌の特派員によるアフリカルポ。
    「アフリカが貧しいのは、政府に問題があるからだ」という主張を中心とし、ジンバブエ、南アフリカ、ナイジェリアなど各国の現状を分析していく。資源があるのに貧しくなってしまった国と豊かになれた国の違いなど大変興味深かった。

    内容は2008年のものなので本文で「これからどうなるか注目していきたい」といった話を最新の視点で答え合わせできるのも、今読むときの魅力の一つとなりそうだ。白人経営者を逆差別で淘汰した南アフリカは、GDPでナイジェリアに抜かれ、優秀な人材イーロン・マスクはアメリカで世界一のお金持ちになっている。

  • ふむ

  • 【貸出状況・配架場所はこちらから確認できます】
    https://lib-opac.bunri-u.ac.jp/opac/volume/49159

  • 読了

  • 「ヒトラーのようだ」「ナチスの時と同じだ」という言葉は時の政敵への非難として使い古された表現だが、
    「ムガペのようだ」「ルワンダの時と同じだ」みたいなバリエーションがないのは、他の事例を調べるほどには社会に関心がないからだろうか。

    「今この瞬間にもアフリカの子どもたちは苦しんでいる」という説教も古くからある言葉ではあるが、これは残念ながら現時点でも色褪せていない。
    例えば1994年にルワンダで虐殺された市民は6週間で約80万人。2001年のボツワナでは3人に1人がエイズに感染している。

    アフリカの困窮について一般的に挙げられるのは、かつての植民地政策による傷跡や海外貿易におけるモノカルチャーの押し付けなどのマクロな視点であるが、実際にアフリカの人々はどのような壁に直面しているのか。
    『幸福の形はいつも同じだが、不幸の形はそれぞれ違う』
    エコノミストの現地特派員である著者がミクロ経済の視点から見えた政治は、国の数、いや、人の数だけの苦悩だった。

    例えばジンバブエドル。ハイパーインフレになったときには「支払いは1億ジンバブエドルで」みたいな冗談を見かけたものだが、
    当事国においてはムガペによる親族経営のための経営権の奪取、搾取のための公営化、無策な価格操作、借金と紙幣の乱造、保身のための出兵といった混迷の表象の一つであり、この政権の間で平均余命は10年短くなり、平均年収は半分以下になった。

    例えばナイジェリア。250の部族が36の州に分かれ、さらにキリスト教とイスラム教とが複雑に絡み合うこの国では、油田のような地域限定的な資産を活用するのは難しく、30年間で2800億ドルの収入を使い果たし、さらに300億ドルの負債を背負うことになった。

    唯一貧困から脱しつつある南アフリカであっても、アパルトヘイトの反動のアファーマティブ・アクションは、労働市場において自由市場原理にそぐわない歪みを生じさせ、94年に160万人だった失業者は2001年には360万人に増え、大学進学者は8万8千人から6万8千人に減った。

    レンガの組み方も知らない先進国の人間が安全できれいな家に住み、自分の手で家を建てられるアフリカの人たちがボロ家に住む。
    この非効率的な社会は個人の力で覆されるものではなく、政治の力なくしては立ち直れない。

    過去の混迷が深い傷跡を残していることは間違いないが、東南アジア、インド、中国が貧困を抜け出しつつある中で、なぜアフリカだけが立ち遅れているのか。なぜ惨状を招いたムガペが今も大統領としていられるのか。

    本書にその答えはないが、無思慮な資金援助が当事国に悪影響を及ぼす事例は多数取り上げられる。
    『効果的、効率的な援助』という言葉に違和感を感じる人には、得られることが多い一冊となるだろう。

  • アフリカの経済、歴史、政治について 全く知らなかった。アフリカに初めて触れた気がする。「コンゴジャーニー」即購入

    なぜ アフリカは富まないのか。生きることが こんなに 大変でいいのだろうか。政治と大衆教育の重要性を知った

    著者は アフリカの成長の 潜在能力を信じているように感じた

  • 2008年刊。
    著者は「エコノミスト」の元アフリカ特派員。

     いわゆる第三世界成立後から十分な発展を遂げずに推移するアフリカ諸国につき、本書は、主として90年代以降の代表的諸国の模様を活写する。

     全体の印象としては
    ① 成程、民主的普通選挙制を採用するが、権力分立制の採用は殆どなし。
    ② ①と関連するが、大統領の任期制の明記は皆無で、長期独裁制と評し得る。
    ③ 憲法遵守をうたわず、現実にそれを無視し嫌うことが多い。
    ④ 寛容が肝である平和=治安維持を軽視。
    というところか。

     実際、重要なのは、大統領の任期制と権力分立制というのが判る。結局、中ロのダメなところもここに起因するし。
     加え、憲法に種々の規制(権力分立や任期制、あるいは各種人権)が規定されることを独裁者側は嫌悪しているのだ。けだし、憲法の硬性性、すなわち法律と違い変更が容易でないことを熟知している故だろう。
     当然、政治家・公務員の憲法尊重遵守姿勢はなく、その義務化なんぞはもってのほかのようだ。

     経済的支援につき、ĪMFや世界銀行のダメさが伝わる一方、人材育成(教員養成プログラム)とインフラ整備(とはいえ、例えば発電所だけ作ってもダメで、送電網の整備までは要)、医療保健と衛生環境の重要性を看取可能か。

     平和維持については、武器を売る奴らの問題が浮かび上がる。

     実際、解決困難な問題山積だが、まずは人材育成と衛生環境整備にモノと人を派遣するあたりから何とかならんかな…。

     取材可能な国なので、ソマリアはなし。とはいえ、アンゴラ、コンゴ、あるいはルワンダなど厳しい地域のレポートが殆どである。

  • アフリカの動きの早さを考えると、書籍で今を見ることは難しいのかもしれない。
    先進国が落としていった争いのタネをアフリカの人々が育てているように感じる。
    上から目線の援助や開発ではなく、同じヒトとして一緒にやっていくことはできないものだろうか?

  • 150630読了

  • 多くの支援を受け取り貴重な資源も多数有していながら、未だアフリカが貧困から抜け出せない現実をこれ以上なく明晰に表した良書。民主主義の欠片もない独裁体制や腐敗や汚職のはびこる政治組織の実情も恐ろしいのだが、問題が根深いのはこれらの実態がかつての植民地支配に抵抗する民族主義の原理によって正当化されてしまっている点なのだ。著者がこうした現実への改善案として自由経済とグローバリゼーションを提起しているのは21世紀おいて皮肉以外の何物でもないが、それでも希望を捨てることのない姿勢には本当に頭が下がる思いになる。

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