属国民主主義論

著者 :
  • 東洋経済新報社
3.69
  • (7)
  • (12)
  • (15)
  • (0)
  • (1)
本棚登録 : 140
感想 : 15
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (356ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784492212271

作品紹介・あらすじ

尊皇攘夷ならぬ尊米攘夷の「永続敗戦」レジームで対米従属を強化する日本。
いつ主権を回復できるのか?
本当の民主主義は、どのようなかたちで実現できるのか?
「コスパ化」「消費者化」「数値化」「幼稚化」「階級化」などをキーワードに日本を代表する2人の知性が徹底討議。
自発的隷従の論理と心理を抉り出す。

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 白井聡「武器としての資本論」が面白かったのでこちらも。永続敗戦論で書かれていた対米追従”永続敗戦レジーム”の話を縦軸に、日本の様々な問題に触れていく構成。

    先日見た「三島由紀夫vs東大全共闘」で、両者は右翼と左翼で水と油かと思いきや実は共通の敵(嘘だらけの日本)がいたという展開があったが、ここでも、本来的に今の”愛国”は本当にそうなのか?という話が見られた。

    あと、老害を生み出さないための昔の知恵として、昔はある程度の社会的地位に達した人は50歳くらいになると何か旦那芸を習ったものという話が面白かった。謡をやったり浄瑠璃をやったり俳句をひねったり参禅したり、元気の良い人は武芸をやったり。こういうお稽古事の1番いいところは初心者はとにかくシステマティックに師匠に叱られること。それなりの年齢になってある程度社会的立場に達するともう上の人から叱られるということがなくなる。これは知性にとっても感受性にとってもいいことではなく、人間は定期的に叱られて自分の「ダメさ」を自覚することが必要だ...みたいな話は納得すると同時に新たなことをはじめたいなと思うようになった。

    かなり全面的に日本がダメダメなので暗い気持ちにもなるが、農業の話には少し希望が見えた。というのも、日本では国土の制約から大規模化ができず、降雨量も多く、素人の帰農を歓待する自治体さえあるため素人でも農業に参入できるという点において、これはアメリカでもフランスでもありえない日本だけの特徴なのではないか?という話。

  • 内田樹、白井聡による日本の政治社会についての対談。
    前半は2016年当時の政治について、後半は日本社会の状況について語る。
    日本は政治的には米国の属国であり、安部政権になって益々米国追従の立場が強くなった。そういう意味では、日本はまだ独立国とは言えない。また社会は幼稚化が進んで、物事を深く考えなくなっている。マネー信仰が強くなり、金軸で人を評価する風潮により階級意識が発生。マスコミやメディアのマネー情報に流されてしまう。金が全てなので、それが無いと精神的に参ってしまう。高齢者も若年層も考え方が幼稚化し、精神的な貧困化が進んでいる。今後の日本社会では、経済的な発展が期待できないのだから、経済発展しないことを前提に
    どのような社会にすべきか考えるべきと言う。
    様々な事例を取り上げていて、議論の内容は面白かった。日本の社会の問題点を指摘しているように思うけれど、昔から似たような識者による議論や指摘はあって、
    その繰り返しのような印象もあった。(どこかの本で読んだことがあるような、、という感じ)
    識者が理想を掲げても、政治の当事者ではないので影響力はほとんど無い。いくら過激な言葉で議論しても、理想を実現させるのは難しいと思う。
    読んでいて、なんだかそういうもどかしさを感じた。

  • 白井さんの本は読みにくくて苦手だったが、対談なので、白井の世界になってなくて良かった!!日米関係とか、歴史の話も深いし、この二人の会話についていけたら頭よくなりそう。最後の方は暴走ぎみ?ネトウヨも70代多そう、とか精力減退したらネトウヨになるとか、そこまで言うと反感かって終わってもったいないな。。。

    以下引用
    ポツダム宣言には占領軍が日本領土を占領できる期限が「新たな秩序が打ち立てられ」「日本の交戦力が破壊された確証が得られた」ときまでと明記されている。1951年の旧安保条約の前文には「日本国は、武装を解除されているので、平和条約の効力発生の時において固有の自衛権を行使する有効な手段をもたない。無責任な軍国主義がまだ世界から駆逐されていないので、前期の状態にある日本国には危険がある。(中略)日本国はその防衛のための暫定措置として、日本国に対する武力攻撃を阻止するため日本国内及びその付近にアメリカ合衆国がその軍隊を維持することを希望する」とある。日本に戦力があればそれを破壊するために米軍は駐留する、なければそれを補完するために駐留する。日本がそれを「希望する」と。

    日露戦争のとき、ニューヨークの銀行家ジェイコブ・シフは日本の戦時国債を引き受け、一方ユダヤ人ネットワークでロシア戦時公債を買わない指令を出した。そのおかげで日本は軍事費調達戦でロシアに勝利し、明治天皇はしふに勲章を贈っている。どれだけジャパンハンドラーが偉いかわかる。アーミテージも日本から勲章をもらっている。アーミテージは南ベトナムの軍事顧問でサイゴン陥落の現場指揮者。属国の傀儡政権をコントロールするプロ。アーミテージレポートも上から目線。「日本は一流国になる気があるのか、二流国で良いのか」と恫喝で始まる。よその国に恫喝されて「一流でありたいです」何ていう国が一流であるわけない。

    坂本竜馬は勝海舟を斬りに行って勝の話を聞いているうちに子分になってしまった。5・15事件の時、青年将校は「話せばわかる」という犬養毅を即射殺した。将校たちは「犬養と言葉を交わしたらダメだ。丸めこまれてしまう」と分かっていた。かつての大人たちは若者を説得する自信があった。田中角栄が左翼青年を受け入れたのは、革命の大義よりもっと大きな大義を説いて納得させる自信があったからこそ包容力があった。

    このところ、現代もポストも70、80になってもセックス現役をずっとやっているけど、中身は中学生程度の老人が増えている。ネトウヨも70代高齢者とか多いのではないか。右翼的な言説を好む高齢男性が多いのは、男性機能の衰えと深く関係しているのではないか。その反動で勇ましい言動を好み、己の情けなさを集団の力、国家によって補ってもらいたいと言う気持ちが強いのでは。怒るだろうね、右翼老人にこんなこと言ったら(当り前だよ!)

    供述の矛盾を突かれて落ちるのは知識人だけ。自分の言っていることに首尾一貫性があり、論理性が維持できていることが知識人のアイデンティティだから、矛盾を突かれたらウソを重ねて支離滅裂なことを言い出すよりは自供する。安倍や橋下は恥ずかしげもなく「あのときと今では状況が違う」何ていう。

    日本の農業の例外はふと思い立って始められるところ。アメリカは機械化されて大型化していきない経験も資本もない人が農業始められない。まずはセスナ買って飛行機の免許取らないといけない。

    デフレからの脱却と言うスローガンがそもそもおかしい。景気を良くするためにデフレを退治する、というのは現象と本質を取り違えている。「現象を変えれば本質が変わる」と言っているのと同じ。

    2%程度の経済の伸びでは富の集中しか起こらない。バブル期の日本が一番良いと思っているのか。シールズの若い人たちまで「持続可能な経済成長」と言ってた。「成長しなくても大丈夫」という国家戦略が大事。世界の中で成長率がトップクラスの国はどこも政情が不安定。2012年リビア、2013年南スーダン、2014年エチオピア。トップ10はどこも内戦かクーデターか軍事独裁か。

  • 買ってから一年くらいになってしまったけど、ようやく読めた。面白かった。いろいろなことを考えるね。頭の中が活性化されるというか。政治状況については、この本が出た当時とあまり変化はないと思う。シールズって、その後どうなっているんだろう。

  • 内田センセーの第五章の身体性の回復についてだけはオモロかった。
    ※つまりあとはいつものお話なので…/(^^ゞ

  • 刺激的な二人の対談。の第2弾。今の日本の立ち位置がよく分かる。真の意味での対米自立はいつの日か。

  • 宗主国の大統領がトランプになって、日本はどうなるのだろう。



    "白井 自らの生業や日常生活を実は愛していないというのは、まさに不幸な状態ですね。だったらそんな不幸な状態を我慢せずに打破すればいいのですが、日本では不幸な状態に甘んじること、それに耐えることが美徳だとされている。さらに悪いことには、不幸を我慢するのが大好きだという人はかってに何時までもそうしていればいいのですが、その人たちはやっかむのです。自分たちが我慢している不幸にさらされていない人をやっかむ気持ちが湧いてくる。(略)自らが置かれている不幸な状態に対して当然不満はあるから、日常生活をちっとも愛していないのだけど、不幸を感受するのが美徳だとされているためにそれに対して文句が言えず、変えることもできない。だから、外的な理由で状況が変化するとなると、抑圧されていた不満が表面化してきて破壊衝動が現れてくる(略)" 270ページ

  • 1章 さらに属国化する日本の民主主義
    2章 帝国化する国民国家と霊性
    3章 コスパ化する民主主義と消費社会
    4章 進行する日本社会の幼稚化
    5章 劣化する日本への処方箋

    当たり前のことを言ってるのに,当たり前ではなくなっている日本社会では,希少な意見である.

  • 過激

  •  属国というのはもちろんアメリカの属国である。
     尊皇攘夷ならぬ,尊米攘夷化する日本の現状を,二人が鋭く語っている。
     日本を大切にするはずの右翼が,我が日本の国土を放射能で汚染し,住めないようにした原発の再稼働に賛成したり,日本のあちこちにある米軍基地に賛成したりしている。これを持って右翼というのならば,右翼とは,我が祖国日本を,大企業やアメリカに売り渡すことを主張している団体ではないか。そんな気もしてくる。

    アレックス・カーさんが,「日本人は自分たちは伝統と自然を愛する民族だと言っているけれど,本当はまったく愛していないですよね,それは街並みを見ればわかる」という趣旨のことを書いておられますが,そのとおりだと認めざるを得ません。(本書271ペ)

     上の白井の言葉のあとで展開される「神社本庁と自民党の癒着」の話は,まさに,今話題になっている「旧統一教会と自民党との深い癒着」と似ている。
     神社本庁が,日本古来の神々を大切にしているとは到底思えないもん。跡継ぎ争いで生々しい血を流しながら地位に昇ったある大王(まだ天皇とは言っていない)が作らせた「日本書紀」「古事記」による似非神々を大切にすることが,我が祖国日本を大切にすることとは違うんだけどなあ…。このわたしを立たせてくれている土地は,日本という国ができる前からあったわけだしね。わたしたちのまわりには,自然の力があってそれこそ畏敬の念を持って感謝すべきものだし,人間の振る舞いを反省すべきものでしょう。そこに鳥居が立っているとかどうとかは,どうでもいいことのハズなんだけど,どうも明治政府以来の尊皇攘夷が払拭できていないんでしょうね。それがそのまま尊米攘夷となっているのでは,呆れてものもいえない!(By Kiyoshiro)
     

全15件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

1950年東京生まれ。東京大学文学部仏文科卒業。神戸女学院大学を2011年3月に退官、同大学名誉教授。専門はフランス現代思想、武道論、教育論、映画論など。著書に、『街場の教育論』『増補版 街場の中国論』『街場の文体論』『街場の戦争論』『日本習合論』(以上、ミシマ社)、『私家版・ユダヤ文化論』『日本辺境論』など多数。現在、神戸市で武道と哲学のための学塾「凱風館」を主宰している。

「2023年 『日本宗教のクセ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

内田樹の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×