封印される不平等

著者 :
制作 : 橘木 俊詔 
  • 東洋経済新報社
3.06
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本棚登録 : 79
感想 : 12
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  • Amazon.co.jp ・本 (232ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784492222515

作品紹介・あらすじ

日本の社会は今、大きく分断されつつある。1つは、アメリカ型の競争社会の到来を喜び、格差の大きい社会こそ効率的な社会だと信じるグループ、いわゆる勝ち組であり、もう1つは、繰り広げられる競争から知らぬ間に締め出されつつあることに気づかないまま、「自己責任」の言葉で負け組としての生活を強いられるグループである。どちらのグループからもひろがりつつある日本の「機会不平等」は目を背けられ、「封印」されている。本書では、この不平等をめぐる奇妙な真空状態、「封印されている」状態を白日の下にさらす。第1部の座談会では、橘木俊詔(編著者)と苅谷剛彦、斎藤貴男、佐藤俊樹という各分野における「不平等」の第一人者が、不平等をめぐる今の日本社会の奇妙な「真空状態」、「さわりたくなさ」の正体を探る。そして第2部では、橘木俊詔によって不平等に関して理論的・実証的な分析がなされ、どのようにすれば公平と効率を両立させることができるのか、その政策を探る。

感想・レビュー・書評

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  • 編集者時代

    自分がいま格差を広げる側にいないか、常に気にしてる自分がいる。2021年記載

  • 525円購入2011-01-02

  • 2004年刊行。編著者橘木は京都大学大学院経済学研究科教授。日本の平等神話の虚構を暴き、不平等の実相と、平等概念はどういう対象(例えば、結果の完全な平等×な一方、単なる機会の平等でも不十分)に関して実現されるべきか、その実現のための方法論は何かを論じる。第一部は座談会。二部は橘木の論考である。座談会参加者は、苅谷剛彦が東京大学大学院教育学研究科教授、斎藤貴男が日本工業新聞記者、佐藤俊樹が東京大学総合文化研究科教授。

  • (2008/7/26読了)amazonレビューにあった通り、橘木さんの2部はオマケみたいなもの(笑)、1部の座談会が秀逸。苅谷さんの著書はこないだ読んだが、斎藤貴男さんの本も是非読んでみたいと思った。スウェーデンの断種政策なんて初めて知った・・・。

  • 前半の対談部分だけ読了。自分たちが業績主義的ではなく、実のところ属性主義的に有利であったことを認めたくない学者や政治家を批判し、それを単行本で真正面から指摘しているところがこの本の画期的な部分であるが、それを踏まえたうえでの不平等の再生産を乗り越える方法や具体的な議論には及んでいない。また、若者や女性の捉え方に橘木の時代診断の鈍さが見て取れる。そのほかにもこれが日本屈指の経済学者なのか、という残念な箇所が多々あるが、彼の学問に対する誠実さには異論を挟む余地はない。後輩の学者に対しても、分からないことを「分からない」と正直に言える大御所の学者が彼の他にいるだろうか。謙虚であることこそ“一流”の学者の証明なのだと感じた。本論の内容からは離れた問いになってしまうが、一体どれだけの学者が橘木のように誠実だといえるのだろうか?この世界には自分の専門性に固執し、他の学問を馬鹿にする学者が多すぎる。

  • 教育社会学者・苅谷剛彦、経済学者・橘木俊詔、社会学者・佐藤俊樹、ジャーナリスト・斎藤貴雄の共著で、本文は橘木俊詔が中心となって書き、四人の討論が間に挟まれている。
     格差は教育と密接に関係があることが、従来はタブーとしてあまり語られないできた。
     ところが現実には高所得世帯の子どもは高学歴になり、低所得世帯の子どもは低い学歴にとどまるケースが多い。また高所得世帯の子どもは難関大学に入り、低所得世帯の子どもはランクの低い大学にしか入れないことが多い。また苅谷剛彦の研究によれば、所得の高低によって子どもの学習意欲にも大きい差が見られるという。
     こういう格差を語ることがタブーとされてきたのは、「努力すれば経済的格差や出自に関わりなく報われるのだ」という考え方が否定されると立身出世主義と抵触するからだろう。高度成長期には、努力すれば報われたが、現在は努力しても必ずしも報われるばかりではないというケースも多い。
    この「封印された不平等」にメスを入れた本であり、四人の著者がそれぞれの立場から論じているが、共通するのは将来の見通しが立たない不安を解消し、希望の持てる社会にすべきだということである。

  • ただの感想文



    ○封印される不平等
     橘木俊詔(編著) 刈谷剛彦+斉藤貴男+佐藤俊樹 東洋経済新報社





    読了。



    すぐに思い出せた範囲で、個人的に面白かった箇所を挙げてみた。



    その1)
    今まで知らなかったけれど、いろいろな種類の機会の不平等があるのかと初めて知ることが出来た。こういうのも機会の不平等なのか、とはじめて知った。



    その2)
    (ほとんどその1に含まれる内容なのだが、)インセンティブディバイド(意欲格差)という存在。

    いやぁ、知らなかったです。




    その3)
    以下の記述。
     『第2に、論争の種になるのは、所得分配の不平等化の流れを止めないほうがよいか、という点である。効率性と公平性のトレードオフを信じるならば、この説は正しいのであるが、わが国に関する限りこのトレードオフは存在していない、というのが私の理解である。なぜ存在していないかといえば、高い所得税や社会保障負担は労働者の勤労意欲や貯蓄意欲を阻害するので、経済成長率にマイナス効果を与えるというのがトレードオフ説の根拠であるが、少なくともわが国には労働供給や貯蓄に負の効果はない。
     わが国で所得税や社会保障負担が労働供給に与えた効果は、一部の既婚女性や高齢者には確かに負の効果があったが、大半の労働者にとってはどこにもそれを示す証拠はない。単なる反税キャンペーンにすぎないと判断している。貯蓄への効果についていえば、現今貯蓄率の低下が見られることによって、負の効果がありとの声もあるが、貯蓄率の低下は主として労働から引退した高齢者に見られる貯蓄の取り崩し現象であり、所得税・社会保障負担をしている現役の労働者とは無縁のことである。』




    これなんかへぇ〜と感じてしまいました。




    その4)
    例えばスウェーデンで断種政策が進められていたらしい。ノルウェーでもフィンランドでもデンマークでも同じことをしていたとか。他にも、シンガポールでも高学歴女性の結婚と出産を優遇したことがあるとか。



    なるほど確かにこれはショッキングなことだ。



    その5)
    以下の記述。
     『座談会の中でおもしろい指摘があった。高い教育を受け、よい職業に就き、しかも高い所得を稼いでいる人が、自分の成功は自分が頑張ったからであると誤解している場合が多い、というものである。その人の親は教育・職業ともに上層階級にあり、しかも親の所得も高かったことを忘れて、あたかも自分の成功は、自分の努力が競争に打ち勝ったことでもたらされたと思い込んでいるのである。親子間で不平等が連鎖していることに気がつかないか、見たくない、あるいはさわりたくないという気持ちがある。』




    これなんかもへぇ〜と感じてしまいました。

    自分もいつの間にか気がつかない状態にいてその部分を判断していなかったような気が言われてみればしないでもない、と考えるようになった。





    他にもいろいろへぇとおもう部分があったように思うのだが、該当箇所を探すのが面倒なので今回はこれくらいで。

  • 「努力すれば何とかなる社会」から「努力してもしかたがない社会」へ。日本は今そういう変化の中にいる。その変化は最近始まったもので、人々はまだ認識が薄いようだ。それともわざと見てみぬ振りをしているのか・・・。

    “家庭環境”でその子の将来が決まってしまう。その子の個性は生産性があるかないかで評価される。かえって格差社会の影響を強く受けてしまったゆとり教育。最低賃金額のほうが生活保護の支給額よりも低い、そんな国、日本。

    モデルは、
    アメリカの競争社会か?
    それとも、
    北欧の福祉社会か?

    日本国民はどこまで貧富の差を認めるのか?日本はどこへ向かうのか?

  • 総中流が崩れてから日本の社会の機会不平等が知らぬ間に進んでいる。親の収入と子供の学歴にははっきりした関係がある。収入格差も広がってきており、結果として貧乏人の子供はいつまでも貧乏という階級が作られてしまう・・・4人の専門家の座談会。

    ・良い階層にいる人は自分の努力のせいだと思いたい、低い階層にいる人は運のせいだと思いたいという心理が不平等から目をそらさせてしまう。
    ・機会不平等な社会は結果として非効率である。
    ・アメリカの学歴社会化、北欧の断種による均質化(良く知らないので調べてみたいと思います)など

  • 分類=教育・経済格差。04年7月。

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著者プロフィール

オックスフォード大学教授

「2023年 『新・教育の社会学』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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