ケンブリッジ式 経済学ユーザーズガイド: 経済学の95%はただの常識にすぎない

  • 東洋経済新報社
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  • Amazon.co.jp ・本 (467ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784492314609

作品紹介・あらすじ

ケンブリッジの鬼才ハジュン・チャンによる、
初心者のための経済学入門。

「世界経済を破綻させる23の嘘」で経済学の通説をめったぎりにした
著者が、世界の全人々のために本腰を入れて書いた、経済学の正しい取扱説明書。

経済学を賢く使い倒すための本。

経済学者が決していわない経済学の5つの真実。

1 経済学の95%はただの常識にすぎない
2 経済学は科学などではない
3 経済学は、政治である
4 経済学者を信じてはいけない
5 経済学はあまりに重要だから、専門家の手に委ねるわけにはいかない

こんな信念に従って、資本主義の歴史と経済の現実をリズミカルに解説していきます。

グローバリゼーションってほんとにいいの?
資本主義って、どんなふうに発展したの?
格差と貧困は、どうすればいいの?
イノベーションって、どれくらい大事なの?

などなど、タイムリーな話題も満載。

おもしろくてためになる経済学入門。

感想・レビュー・書評

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  • この内容で、1800円プラス税はお買い得です。
    経済学の入門書としてもバランスよく、簡潔明瞭にまとめる筆さばきには、筆者の学識の高さがうかがえます。
    特に、第1部の「習うより慣れろ」では経済学を9つに分けた比較一覧表は必見です。また、あえて多数の経済学派を紹介した目的の1つとして、一般人が「他に選択の余地はない」という権力者に、きちんと反論できるためだそうですが、世の中に唯一正しい経済理論が存在しない以上、その判断はかなり困難を伴いそうです。むしろあとがきでも触れていますが、「ハンマーを持つ者には何でも釘に見える=特定の理論的視点から物事を見ようとすると視野狭窄になる」ようにならないための教養の1つとして学ぶべきものなのでしょう。
    第2部「使ってみよう経済学」も経済用語の定義と背景と問題点などが網羅されているので実戦的です。
    例えば問題点として、「金融分野は強力であるがゆえに、厳しい規制が必要」(P288)、「(日本も)トリクルダウンを信じて、大企業や親富裕層向け政策を採用した結果、確かに彼らは稼ぎやすくなったし、内部留保(貯蓄)は増えたが、庶民の懐は潤わなかったし、経済格差は拡大した」(P294)、「平等の最大化は、むしろ勤労意欲をそぎ、進取の気性が損なわれかねない」(P298)、「ILOの失業者の定義は、求職活動をして無職の人が統計対象だが、実は働いている人の定義も週1時間以上であればカウントされている」(P341)、「公正であるべき政府も、彼らも個々人としては一般人同様、利己的であるわけで、その集合体である政府が自分たちの利益よりも公益を優先すると過剰に期待してはいけない」(P361)、「税法を巧みに活用し税金を払わないグローバル企業は、展開国のインフラ、教育、R&D助成などにただ乗りしている」(P395)、「技術革新をもろ手を挙げて支持してきたのは、鼻息荒いビジネスエリート、売れっ子経営グル、富裕国の政治家、賢いエコノミストたちで、彼らは世界規模のグローバリゼーションの推進に貢献したが、その結果、国家間の格差は広がり金融危機も誘発した」(P412)、「ウソには3種類ある、単純な嘘、大嘘、そして統計だ。by英国政治家」(P418)など物事を多角的にみる必要性を説く。
    最後は、筆者の言葉「案ずるより産むがやすし、経済学は多くのエコノミストがあなたを誤解させてきたよりもずっと平易なものだ」という本書執筆の動機で締めくくられる。
    一読をお勧めします。

    参考までに公式な作品紹介も掲載しておきます。

    ケンブリッジの鬼才ハジュン・チャンによる、初心者のための経済学入門。
    「世界経済を破綻させる23の嘘」で経済学の通説をめったぎりにした著者が、世界の全人々のために本腰を入れて書いた、経済学の正しい取扱説明書。
    経済学を賢く使い倒すための本。
    経済学者が決していわない経済学の5つの真実。
    1 経済学の95%はただの常識にすぎない
    2 経済学は科学などではない
    3 経済学は、政治である
    4 経済学者を信じてはいけない
    5 経済学はあまりに重要だから、専門家の手に委ねるわけにはいかない
    こんな信念に従って、資本主義の歴史と経済の現実をリズミカルに解説していきます。
    グローバリゼーションってほんとにいいの?
    資本主義って、どんなふうに発展したの?
    格差と貧困は、どうすればいいの?
    イノベーションって、どれくらい大事なの?
    などなど、タイムリーな話題も満載。
    おもしろくてためになる経済学入門。

  • リーマンショックによる大恐慌を改善方向にした国々で何が起きていたかというと,反緊縮財政を唱える政党を国民が勝利させていたという事実。つまり,国民が政治を変えた国。政治家が政治を担うのだけど,国民が任せっぱなしにしない国。


    *****
    歴史を学べばそんな失敗を絶対に避けられるとは言わないが,暮らしに関わるような政策を立案する前に,そこから教訓を汲む努力をするべきである。(p.45)

    経済学の議論に臨む際には,古の政治家/雄弁家キケロが残した問い―「誰が得をするのか」―を考えなければならない。(pp.415-416)

     時には,あからさまに一部の集団を利するような疑わしい仮定に基づいているため,経済的主張が持つ政治的性格が露わなこともある。例えばトリクルダウン説は,金持ちにより手厚く所得配分すれば,彼らはそれを投資に用いるという仮説に基づいている。実際,そうなることはなかった。(p.416)

  •  経済の話というと何となくとっつきにくく、専門家(エコノミスト)の言っていることが唯一の正解と認識してしまうことが多々あった。
     本書を読み、そもそも学派がいくつもある(新古典主義派、マルクス学派、行動経済学…)時点で、考え方次第で何とでも言えるし、政治的なものだということがよく理解できた(これも、何となく今までそういう認識がなかった。自分は建物の耐震に関する研究を仕事にしているが、例えば地震による建物の損傷過程について、人によって考え方が違うということはないし、そもそも学派など存在しない)。
     経済の話は難しいと敬遠せず、専門家の意見がどういう考え方に基づく理論なのか、よく吟味する癖をつけていきたい。

  • ・歴史、学説、理論
    ・良くも悪くもコンパクトかつストレート
    ・学派を扱ってるのは稀有?

  • 経済学の入門本だが、理論だけでなく経済学もカバーしている
    初学者が誰しも思う疑問に焦点が当てられており、内容自体も読みやすいと思う

  • 比較優位論は、その前提が正しい限り正しい。
    すべての国の能力が等しく、労働と資本の移動が容易でコストがかからない、といいう前提がある。

    補償原理が正しく行使されることはない。

    ただし、国際貿易が発展途上国にも必要であることは変わりはない。ただし自由貿易が最善ではない。

    豊かな国ほど貿易依存度は少ない。アメリカ、日本、ブラジルが低い。

    経常赤字は通常、貿易赤字より小さい。
    経常黒字は通常、貿易黒字より大きい。

    経済学は政治的議論。誰が得をする議論なのかを考えるべき。

  • 非常に身にならない書籍でした。これが、大学のサブテキストになっているなら、ダメです。
    今の時代に即した日本の経済事情を教えるテキストが必要でしょう。

  • 経済学理論は得手不得手があるから、使い分けが必要。カクテルのように混ぜて使えというのはなるほど!という感じ。経済学史を概説して、それぞれの流派の得手不得手を紹介する第一部はとくに秀逸。

  • 114経済学の95%はただの常識に過ぎない
    ・資本主義:自家消費や政治的義務(社会主義)のためにではなく、利潤を追求して生産が整う経済
    ・様々な経済理論を正しく理解するためには、資本主義がどう発展してきたかを知る必要がある←経済理論の有効性は時と場合による
    @cpa_1992
    ・先進資本主義経済が最も急成長していたのは、規制が多く重税が課されていた1950年代から1970年代だった→経済成長のために減税と行政改革は必要?
    →事実は空想よりも強し
    @cpa_1992
    ・19世紀の西欧諸国による資本主義の発展とその派生物は、自由貿易と自由市場の拡大のおかげではない、保護主義政策のおかげ?
    ・トリクルダウン理論
    @cpa_1992
    学派一覧
    1古典学派:市場では全供給者が常に注意を怠らないので放っておけば良い。18世紀後半〜。労働価値説
    2新古典主義派:個人は自分の行動を理解しているので放っておけば良い、ただし市場が機能不全を起こしている時は別だ。1870年代〜。個人は快楽機械
    @cpa_1992
    3マルクス経済学:資本主義は経済の進歩の強力な手段だが、私有財産制度が一層の発展を阻害するようになるため、いずれ崩壊する。1867〜。仕事を消費に回す金を稼ぐための非効用としてではなく、労働者に生来の創造性を発揮せしめるもの
    @cpa_1992
    4デベロップメンタリストの伝統:後進的経済は、もっっぱら市場任せでは発展できない。16世紀後半〜。生産能力の向上によって経済的後進性を克服する。
    →TPPは、日本における自動車産業等による日本の旨味と、日本よりも経済後進国における諸産業の旨味とではどちら?
    @cpa_1992
    5オーストリア学派:十分に分かっている人などいないのだから、みんな放っておけば良い。1920年代〜計算論争。
    6(ネオ)シュンペーター派:資本主義は経済発展の強力な手段である。だが企業がより大型に、そして官僚的になるにつれ萎縮していく。
    @cpa_1992
    →技術革新に注目し、マクロ経済学などを相対的に無視
    7ケインズ学派:個人にとって良いことが経済全体にとって良いこととは限らない。20世紀〜。貯蓄者と投資家が構造的に分離している。
    @cpa_1992
    8制度学派:個人はその社会の産物である。たとえ彼らがその社会のルールを変えることがあっても。19世紀後半〜。⇆制度は制約である一方、授権性も持つ
    @cpa_1992
    9行動経済学派:人間はそれほど賢くない。だからルールによって自らの選択の自由に意識的に制約を加えなければならない。1940年代〜

    ・諸経済学の種類を知り、個々の強みと弱みを知ると、「他に選択肢はない」という権力者に騙されない
    @cpa_1992
    ・経済的アクター
    1個人ー分裂する、型にはまる、影響を受けやすい、ヘマをする
    2組織ー企業、協同組合、政府

    ・習うより慣れろ:問題は、まずやってみること
    @cpa_1992
    第一部で様々な経済学派について見て、第2部で現実の様々な経済問題について見ている

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著者プロフィール

ハジュン・チャン
ケンブリッジ大学の経済学者。1963年ソウル生まれ。1992年にケンブリッジ大学で博士号を取得。1990年より同大学で開発経済学を教える。2003年に著書『はしごを外せ』でグンナー・ミュルダール賞を受賞。また2005年には、経済学のフロンティアを切り開いた若手に贈られる賞である「ワシリー・レオンチェフ賞」を41歳の最年少で受賞した。ノーベル経済学賞を受賞したアマルティア・センやダニエル・カーネマンも同賞を受賞している。いま最も注目される経済学者のひとり。
著書(邦訳書)に、『世界経済を破綻させる23の嘘』(徳間書店、2010年)、『はしごを外せ――蹴落とされる発展途上国』(日本評論社、2009年)

「2015年 『ケンブリッジ式 経済学ユーザーズガイド』 で使われていた紹介文から引用しています。」

ハジュン・チャンの作品

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