粉飾資本主義―エンロンとライブドア

著者 :
  • 東洋経済新報社
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感想 : 11
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  • Amazon.co.jp ・本 (247ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784492394618

作品紹介・あらすじ

粉飾決算が繰り返される株式会社、資本主義に明日はあるのか?株式会社研究一筋40年の著者による渾身の論考。

感想・レビュー・書評

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  • エンロン事件、ワールドコム事件、ライブドア事件、プリンシパルエージェンシー問題、村上ファンド事件、利益相反など、近年の資本主義市場において起こった問題の理論的/歴史的背景を概観できる良書である。ある程度知識があった状態で、知識の体系化として読むのが良い。

    主な論点は以下の通りである。

    【エンロン/ワールドコムを粉飾へ駆り立てた構造】
    ・所有と経営の分離→プリンシパルエージェンシー問題→ストックオプションの導入による投資家と経営者の利害関係の一致(背景にはインベスターキャピタリズムによる株価上昇圧力の問題)→時価総額経営→粉飾へのインセンティブ増大

    【各社の粉飾スキーム】
    エンロン→SPEを通じた自社株評価益還流
    ライブドア→投資事業組合を通じた自社株売却益還流
    ワールドコム→オンバランス化を通じたコストの過少計上
    山一証券→損失の飛ばし

    【会計士事務所がコンサルティング部門をもつことによる利益相反】
    アーサーアンダーセンの第2位顧客はエンロンだった。

    【ライブドアによる需給逼迫を利用した株価吊り上げスキームの源流は1970年代にもあった】
    ・(安定株主政策がもとから存在→)株式の時価発行が解禁→プレミアムで第三者割り当て増資することによって需給関係を悪化させず資金調達+調達資金の一部を既存株主に割り当て+安定株主工作による需給逼迫で株価吊り上げ、を組み合わせたスキームが横行。最たるものが三光汽船。証券会社もディーラー部門で多額の利益を得た。

    【日本式買い占め(グリーンメーラー)】
    株式を買い占めて脅迫して高値で会社に買い取らせるスキーム→1970年代に横行。代表例は豊田自動織機株の買い占め→ライブドア、村上ファンド、楽天で復活。

    【アメリカのコングロマリット化からLBOまでの流れ】
    コングロマリット(買収により低PERの会社を買っても高PER会社側のマルチプルが適応される歪み)による企業価値増大の拡大→反トラスト法によるコングロマリットの解体→新たに登場したジャンクボンドを活用したLBOスキーム(背景にはジャンクボンド発行による証券会社の利益)→会社の資産を食い物にしてTOBの原資を返済する悪徳な方法

    【アナリストとの馴れ合い】
    ITバブルのときはアナリストが会社側と馴れ合ってBUY推奨を出し続けた。背景には、IBD部門やディーラー部門との共謀による利益相反関係。

  • レポート資料として読む。
    読みやすい。時価会計など、実際使われた手法に関する情報は多く、また、新たに知った問題点もあり、非常に参考になった。ただし、エンロン、ライブドア事件についてを詳しく知りたいのなら、他の本にあたるのが良いだろう。

  • とても分かりやすくまとめられている。
    エンロン事件への解説から、ライブドア事件の解説や、その他日米の比較やハゲタカファンドなど、
    扱う項目は多岐に渡るが、そのどれもが分かりやすい。
    ただ、逆に言えば浅く書いてあるので、深い知識は得られないかもしれない。
    ライブドア嫌いなんだろうな。。。

  •   エンロンとライブドアを中心に、なぜ会計不祥事が起きたのかを丁寧に解説してくれています。結局のところ、昔からあった手法が形を変えて出てきている。現在の経済実態に合わせてでてきたというところでしょうか。
      ライブドアも正直うさんくさいと思ってましたし、自社の決算書も把握していないような社長が、よくもまあ経営できるものだと思ってましたけど、結局、虚業というか、自分が儲かればそれでよい。そんな経営であることがよく分かります。それが、世界的に似たような傾向にあるというのが悲しい話ですが。

  • 時価総額主義など、これまでの株価操縦経営の手法が類型別にまとめられており、わかりやすい一書である。
    但し、一定程度金融(会計知識)がないと細かな理解にはたどり着かないと思われる。
    本書と合わせて、金融関係の基本書の一読をお奨めする。

  • 最後の章でまとめられているので、そこを読むだけでも十分かも知れない。株式会社の仕組みが「大株主資本主義」「経営者資本主義」「機関投資家資本主義」と来た第3段階にある現在、つぎの方向性は模索中だという主張で本書は終わる。奥村 宏氏は株式会社研究家だそうだが、後の歴史家というか、やや実学向きではない印象を持った。

  • 論文でMSCBについて調べて、ついでに読んでみた。
    ホリエモンが話題に上がってたのって高校生の時だから、ファイナンスのこととかよくわからずって感じだったけど、今少しファイナンスの勉強した上で読むけっこう面白いなぁと思ったり。客観的に事実だけが書かれてるわけじゃなく、ある程度結論ありきな本だから、そういう点では期待と違ったけど、それでも当時のことを思い出しながら読むのは楽しかったです。

  • 担当:Shioyama
    対象レベル:初級
    内容:
    第一章 事件は何を意味するのか
    第二章 高株価経営
    第三章 不正会計
    第四章 M&Aと「日本的買占め」
    第五章 株式投機の構造
    第六章 規制緩和に乗る
    第七章 壊し屋
    第八章 「金儲け主義」経営者
    第九章 株式会社の危機


    日本を良い意味でも悪い意味でも揺るがせたライブドア事件をアメリカで起きたエンロン事件と比較しながら斬っていく趣旨の本。
    株式会社の目指すべきものはなんなのかを考えさせられる本。
    著者はこの世界(株式会社とはなんたるか)で高名な方なので参考になる面も多いです。
    ファイナンスの知識あったらより理解できるけど、なくても十分楽しいです。
    個人的には高校時代のことを思い出しながら読んだりしてました笑

  • すごくわかりやすく株価操作の仕組みや時価会計・粉飾のからくりが書かれています。ぜひ。

  • 『二つの事件は何を意味するのか』というテーマよりも背景やメディアの反応等の説明がかなり多くなってしまったので今の時期に読むよりも発売当初か、十年後に概要を知るために読むのに読む方が価値が高い本になってしまったかもしれません。ニュース本の宿命で変な時期に読んでしまった私が悪いのですが二つの事件の関連性の考察に割かれてページが増えたらもっと楽しめたかも知れないと思うと大変残念です。

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著者プロフィール

奥村 宏(オクムラ ヒロシ)
会社学研究家
1930年生まれ。新聞記者、研究所員、大学教授を経て、現在は会社学研究家。
著書に、『日本の株式会社』『法人資本主義の運命』『無責任資本主義』『東電解体』『パナソニックは終わるのか』『会社の哲学』(以上、東洋経済新報社)、『会社本位主義は崩れるか』『株式会社に社会的責任はあるか』(以上、岩波書店)、『エンロンの衝撃』『会社はどこへ行く』(以上、NTT出版)、『三菱とは何か』(太田出版)、『会社をどう変えるか』(筑摩書房)、『株のからくり』『経済学は死んだのか』(以上、平凡社)、『会社学入門』『徹底検証 日本の電力会社』(以上、七つ森書館)などがある。

「2015年 『資本主義という病』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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