1940年体制(増補版) ―さらば戦時経済

著者 :
  • 東洋経済新報社
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  • Amazon.co.jp ・本 (247ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784492395462

作品紹介・あらすじ

戦前期に生まれた「日本型経済システム」が今、我々を蝕んでいる。

感想・レビュー・書評

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  • 1940年体制(増補版) ―さらば戦時経済 単行本 – 2010/12/10

    日本的なるものと思い込んでいるものは実は比較的新しい
    2011年2月19日記述

    1995年に出版された1940年体制の改訂版。
    2002年にも出されているので3つ目の増補版になる。

    11章の内容を新たにしている。
    日本的なるものと戦後思ってきたものは、実は太平洋戦争への準備で出来た体制の影響が随分と大きいという事実に驚いた。
    現在の世界経済の流れの中で高度成長期には良かったそのシステムでは対応しきれない。
    新しい経済体制を作る必要がある。

    本書が初めて世に出たのは1995年。
    それから15年経つが、大きく日本は変化した。
    しかし企業の分野で40年体制が変化していないことが問題であると指摘する。
    特に労働者の企業間移動は殆ど無く、それは日本経済にとってマイナスに働いていると。

    また経営者層も大半の企業でいわゆる上がりのポストになっていることがダイナミズムを産まなくなっている原因のひとつであるとも。

  • 分析については わかるものの、具体的処方箋の記述について触れてほしかった。

  • NY2a

  • 3/13 丸善セミナー

    ライフネット 出口治明氏推奨

  • 日本型経済システムは、戦前期(1940年頃)に生まれたという話。

  • 1995年に初版が出た後、2002年に一度改訂され、2010年に再改訂された。2010年版では、リーマンショック後を踏まえ、第十一章が加えられている。1940年体制とは、おおよそ1940年ごろ、戦時体制突入のために政治・行政・企業・金融・土地などが自由体制から統制体制へと組み込まれていったことを指す。そして、戦後、一部GHQにより解体されるものの、朝鮮戦争へ突入したため、そのまま温存されることとなった。

    そして最新の2010年版では、1990年代後半以降、行政面の改革が進行したことに対し、企業こそが1940年体制を温存させてはいないか、それが経済のダイナミズム・経済成長への手かせ足かせになってはいないか?と警鐘をならす。

    <目次>
    まえがき
    新版 まえがき
    旧版 まえがき
    第一章 われらが出生の秘密
     1 残存する戦時体制
     2 総力戦遂行のための1940年体制
     3 連続説対不連続説
    第二章 四十年体制の確立(1)企業と金融
     1 日本型企業の形成
     2 統制的金融制度の確立
    第三章 四十年体制の確立(2)官僚体制
     1 官僚統制の導入
     2 完了の思想的基盤の形成
     3 直接税中心の中央集権的税制度の確立
    第四章 四十年体制の確立(3)土地改革
     1 「借地法・借家法」の強化
     2 農地改革を準備した四十年体制
    第五章 終戦時における連続性 戦後改革とその評価
     1 戦後改革
     2 なぜ四十年体制が生き残ったか
     3 逆コース
    第六章 高度成長と四十年体制(1)企業と金融
     1 成長のエンジンとなった「日本型企業」
     2 金優等生による資源配分
     3 産業政策は有効だったか
     4 財政 小さな政府へ
     5 高度成長のメカニズム
    第七章 高度成長と四十年体制(2)摩擦調整
     1 官僚の役割 摩擦の調整
     2 財政の役割 低生産性部門への補助
     3 戦後日本の土地制度
     4 戦後日本の政治と土地制度
    第八章 四十年体制の基本的理念
     1 生産者優先主義
     2 競争否定
     3 経済政策を変えられるか
    第九章 変化した環境・変わらぬ体制
     1 高度成長後も残った四十年体制
     2 九十年代の条件変化と改革の必要性
     3 経済改革の方向付け
     4 改革への桎梏(しっこく)となる四十年体制
    第十章 未来に向けての選択
     1 政策理念不在の政治
     2 四十年体制へと逆行する政治
     3 求められる理念の対決
     4 福祉についての政策理念の対決
    第十一章 経済危機後の1940年体制
     1 二つの経済危機と1940年体制
     2 戦時体制が有利である時代は終わった
     3 最後に残った四十年体制:日本型企業
     4 未来を開くために何が必要か

    <1940年体制と呼ばれるもの>
    企業と金融
     株主の権利制限
     年功序列賃金体系
     企業別労働組合の原型ー産業報国会
     下請制度
     金融系列
     銀行の整理統合
    官僚体制
     官僚による統制
     直接税・源泉徴収
     中央集権的財政
     社会保険制度
    土地改革
     借地法・借家法の強化
     食糧管理法


    12.07.17 東洋経済の記事で見つける。
    13.02.09 ライフネット出口社長に薦められる。
    13.05.20 読了

    『円はなぜ強いのか』榊原英資著より
    1940年体制の三点の特徴
    ・金融統制
    ・官僚体制の確立
    ・土地改革

    1938年 国民健康保険法
    1939年 小作料統制令
    1940年 法人税が独立、源泉徴収制度
    1942年 食糧管理法
    1944年 厚生年金制定

    1921年/1941年/1950年の税収割合
    地租    09/01/00
    所得税   25/33/49
    法人税   00/13/19
    営業収益税 09/02/00
    相続税   01/02/01
    酒税    22/08/24
    砂糖消費税 07/03/00
    関税    13/02/00
    揮発油税  00/00/02
    1931年/1941年/1951年/1961年の地方財政の財源構成
    地方税     26.4/20.8/39.3/35.0
    中央からの移転 08.0/25.1/35.5/39.6
     地方譲与税・地方交付税・国庫支出金

  • 【由来】
    ・本の「使い方」P145

    【期待したもの】

    ※「それは何か」を意識する、つまり、とりあえずの速読用か、テーマに関連していて、何を掴みたいのか、などを明確にする習慣を身につける訓練。

    【要約】


    【ノート】


    【目次】

  • 日本では終戦を期に全てが刷新され、戦後に再構築された経済体制によって高度経済成長が成し遂げられたと考えられてきた。野口氏はこれを否定し、日本の経済体制は1940年頃に総力戦に向けて構築されたものが、かなりの程度戦後も継続して生き残っていると主張する。総力戦に最適化された体制で有るが故に、大量生産時代には効果的にこの体制は機能した。高度成長を成し遂げ、石油ショックからもいち早く立ち直り、世界経済を席巻するほどの発展につながった。

    しかしながら、グローバル化、IT化が進み、異なる経済環境となった今、「1940年体制」は一刻も早く解体、刷新されねばならない障害である。さもなければ、高齢化が進み没落しつつある日本の衰退を止めることはできない。本書からは野口氏の強い危機意識と焦燥感、あるいは絶望感すら滲み出しているように感じられる。

    経済体制、革新官僚の作った官僚機構が生き残ってきた経緯に対する野口氏の分析については、異なる意見もあるようで、本書は典拠や異論についても随時言及しながら書かれている。(『戦後経済史』は出展や異論への言及が省かれていて、本書と同様の主張が一般の人にもより読みやすく表現されている)。

    細かな議論についての是非は素人には判断が難しいが、
    大蔵省の中の人であった野口氏ゆえに説得力が感じられた。

    カレル・ヴァン・ウォルフレンが出展として所々出てくる。明治期に作られた官僚体制が、戦後も生き残り政治から超然として動くあり様は日本に特有の「政治的中枢の欠如」である。日本は私的領域と公的領域の境界がない「高度に政治化された社会」である。といったウォルフレンの指摘は日本の抱える問題の根幹を鋭く浮彫にしていると1990年頃には思えたが、その後日本の政治体制はゆるやかに変化が起こり、2017年の今となっては野口氏の指摘する「1940年体制」のほうがより深刻で重要な問題のように思われる。

    これから日本はこの「1940年体制」を打ち壊して先に進めるのであろうか?

    遅々として進まない雇用規制の緩和や年金制度の改革。企業に賃金を上げるようプレッシャーをかける安倍政権。こうした動きを見ると、絶望的な気持ちにならざるを得ない。

  • 経済大国として80年代にピークに達した日本、その原動力である所謂日本的企業経営や生産方式、産業育成の源流は、戦時の総力戦体制にあったとする内容。戦後の驚異的な復興は、何も国内に突然変異が起こったわけではなく、そもそもの土台があったからこそという主旨は、至極自然な説明だと納得がいく。また「兵器生産」から「製品生産」へのシフトこそ上手くハマったものの、情報産業の発展とグローバル化が進んだ90年代には、従来の会社組織と成功体験が逆に足枷になり、成長の妨げになったという流れは、日本の現代史そのままをよく表している。1995年発刊の本だが、ここで既に述べられている、日本的会社が持つ様々な硬直性、何より高齢化社会に向けての社会保障制度の抜本的見直しは、20年後の現在もほとんど手を付けられておらず、恐ろしさを感じさせる。その意味で20年前の著作でも古さを感じさせないのは、良いことなのかどうか。タイトルの1940年という年には厳密な意味はなく、30年代からの重化学工業の発達や、戦争の為の産業体制、会社の"社会共同体"化、法整備から教育に至るまでのあらゆる方策を纏めた言葉として考えて良いが、それは戦後の日本の繁栄を支えたのと同時に、情勢が変わった"現在"、呪縛でもあり続けている点、戦前のDNAは脈々と息づき、我々にも影響を与え続けている、そんな事を考えさせられた。

  • 1940年体制 革新官僚 企画院 岸信介と高橋是清 
    小さな政府 日本企業に必要なのは、海外に真似されるのを防ぐのではなく、差別化・イノベーション もっと先へ進むこと

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著者プロフィール

1940年東京生まれ。63年東京大学工学部卒業。64年大蔵省入省。72年エール大学Ph.D.(経済学博士号)を取得。一橋大学教授、東京大学教授(先端経済工学研究センター長)、スタンフォード大学客員教授、早稲田大学大学院ファイナンス研究科教授などを経て2017年9月より早稲田大学ビジネスファイナンス研究センター顧問。専攻はファイナンス理論、日本経済論。ベストセラー多数。Twitterアカウント:@yukionoguchi10

「2023年 『「超」整理手帳 スケジュール・シート スタンダード2024』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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