2020年の産業: 事業環境の変化と成長機会を読み解く

  • 東洋経済新報社
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  • Amazon.co.jp ・本 (335ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784492395837

作品紹介・あらすじ

低迷が続き閉塞感が漂ってきた日本の産業界に、近い将来のV字回復はあるのか。野村総合研究所の独自調査から、日本企業を取り巻く環境変化と、主要7産業の強さ・弱さを分析。リーマンショック、欧州通貨危機、東日本大震災など、外部要因だけではなく、日本産業界と日本企業に内在する変化を独自の視点から浮かび上がらせ、どこにチャンスと希望が存するのかを体系的に説明する。

◎特に今後も大きな変化が予想され、まだまだ拡大が期待できる自動車、電機、エネルギー、ICT、運輸、金融、ヘルスケアの7つの産業にフォーカス
◎日々クライアントの業績向上に奮闘している各セクターの専門コンサルタントが、コンサルティング活動を通じて蓄積してきた業界に対する洞察を、2020年頃までの業界の見通しと、そこに見られる変化の中に生まれてくるビジネスチャンスを提示
◎厳しい環境の中にも、成長のための機会やヒントがどこにあるのかを具体的に指摘

2020年、日本の産業の復活のシナリオが見えてくる!

感想・レビュー・書評

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  • [読んだ理由]==================


    [読んだ後の感想]==============


    [内容纏め]====================


    ■第一章:2020年の事業環境============================================
    ■日本の環境
    ・高齢者比率が高まり、日本全体の就労所得、消費支出が減少
     ・社会福祉など所得の世代間移転のウェイトが高まる
    ・「持てる者と持たざる者」「使わない者と使いたい者」との不整合が拡大

    ・国際収支の傾向
     ・経常収支
      ・貿易収支:赤字(←震災、円高、不況)
      ・所得収支:黒字(←海外資産(からの収益)が増加)
     ・資本収支 :赤字(←海外企業/海外株式/債権などへの投資増加)
     ⇒日本は海外資産保有大国。
      資産収益率を高めて日本経済に取り込むことが重要。

    ・国ではなく個人の資産保有は、高齢者が主。
     ⇒所得収支黒字(海外資産からの収益)も、多くは高齢者に向かう。
      ⇒「持てる者と持たざる者」「使わない者と使いたい者」との不整合が拡大

    ■世界の環境
    ・人口:世界の人口増加率は鈍化し、先進国や東アジア中心に高齢化が進む。
    ・所得:各国の国内での所得格差が拡大又は固定化。
        クズネッツ・カーブ(国の発展段階では1人辺りGDPと所得格差は逆U字型の関係)

    ■日本政府の方針
     ・「経済社会ビジョン」
      ・課題解決産業群、クリエイティブ産業群、先端産業群
     ・産業競争力会議が取りまとめる成長戦略

    ■技術動向
    ・技術開発の重点がシフト
     ・加工・組立技術 ⇒ 川上(素材開発)や川下(全体システム開発)へ。
      ・川下:多様な業種・バリューチェーンにまたがる最適化
      ・川上:新素材、プロセスイノベーション(革新的な性能向上、希少資源代替)

    ■日本企業に求められるブレークスルー
    ①地域軸でのブレークスルー
     ・日本市場の回復に期待するのではなく、拡大する海外市場へ経営の軸足をシフト。
    ②ビジネス軸でのブレークスルー
     ・国内市場や価格での競争が難しい日本企業にとっては、イノベーションが活路。
      海外含む競合企業が真似の出来ない画期的な商品/サービス/モデルの提案。
    ③経営資源面でのブレークスルー
     ・自社リソースの限界を制約条件として捉えるのではなく、
      外部のリソースを持ってきてでも成し遂げるという経営への転換が求められる。
     ・積極的な提携・M&Aの推進。




    ■第二章:2020年の自動車産業==========================================
    ・市場拡大をけん引するのは中国・インドなどの新興国。
     日本の自動車産業の浮沈を左右するのは新興国での勝利を勝ち取れるか次第。

    ・新興国への市場シフトが自動車産業に与える影響
     ①新興プレーヤーの成長⇒競争の激化
     ②地域ごとの取引関係の再構築⇒「ケイレツ」のオープン化
     ③戦線拡大に伴うリソース逼迫⇒補完関係構築のための提携の加速

    ・xEV(HEV,PHEV,EV)の成長(2020年には1400万台に)
     ・原油価格上昇と燃費既成の強化が牽引
     ・パワートレインの電動化により、クルマの電子化が加速
      ・EVでは、エンジン部品など既存部品の約4割が車両から消える
     ・電子化の加速により、自動車産業の水平分業化が促進
      ・分業化には3段階
       1.新製品の登場による競争ルールの変化(技術のオープン化、部品の外注化)
       2.専業メーカーによる中核部品の標準化
       3.中核部品の標準化が浸透し、新規参入が活発化
     ・電動化によるクルマのコアバリューのシフト
      ・安全/環境性能/利便性へ。

    ・多くの領域を自社や系列内に囲い込む戦略は限界を迎える。
     自社が注力すべき領域を見極め、それ以外は他社提携により補完する戦略へ。

    ・事業機会(完成車メーカ)
     ・規模の経済を効率的に追求
     ・自社のアイデンティティと収益力の両立
     ・海外工場におけるモノづくりの再定義
      ・現地での仕様変更を可能にする開発・生産の取り入れ
     ・マーケティングの再定義
      ・モノづくりは長期目線のまま、マーケティングを短期目標に。

    ・事業機会(部品メーカ)
     ・新興国完成車メーカの取り込み
      ・「自社競争力の源泉」の定義とマーケティング強化
       ・技術の内部化とスピード経営の両立
        ・電機メーカが国内に多数存在する利点を活かし、異業種間での連携を。
       ・経営の現地化(現地リスクを織り込んだ事業計画づくり)
     ・モジュール化に対する自社ポジション見極め


    ■第三章:2020年の電機産業============================================
    ・イノベーションとコモディティ化の戦いの継続
     ・短いライフサイクルの過当競争に常に直面
    ・ソフトウェア&システム化の進展により、付加価値の囲い込みが困難に。
    ・事業構造の変化
     ・独立系の電子部品産業は拡大
      ・村田製作所、京セラなど
       汎用的な単機能を量産技術力において世界を圧倒
     ・社会インフラの拡大と、海外展開の活性化
     ・医療ヘルスケア、産業機器など固有H/Wビジネスへのシフト

    ・高速鉄道
     ・世界の高速鉄道網は、05年の8000kmから、20年には3万kmに拡大
     ・車両だけでなく、運行管理システム、発券システム等にもチャンス有り

    ・テーラーメイド医療・ヘルスケアサービス
     ・医療現場に受けるモニタリング技術の高度化が不可欠

    ・戦略課題:
     ・M&Aを活用した事業ポートフォリオの組み換えと事業構造改革
     ・マーケティング開発機能の強化
      ・エレクトロニクスの価値連鎖ごとのROIは、
       製造⇒開発⇒マーケティング/販売と、収益性の高い領域が変化。
      ・欧米企業は、水平分業モデル/ファブレス化によりROIの高井開発に特化。
       その後、エコシステムの重要性向上に伴い、マーケティングへリソースシフト。
     ・事業構造改革
      ・マーケティング⇒開発⇒製造⇒販売のサイクルを1/2位下に短縮し、
       市場への対応力を高めつつ、開発を高速回転させる事で、ヒットの確率を高める。


    ■第四章:2020年のエネルギー産業======================================
    ・日本はLNGを代替する天然ガスが無いため、LNG価格交渉力を持たない。
     結果、日本の輸入価格は米国の3倍、欧州の1.5倍。
     LNG価格を如何に引き下げるかが今後の大きな課題。
    ・欧州の例を見ると、電力自由化は電気料金の低下に繋がっていない。
     これはエネルギー価格自体の上昇や、温暖化対策税、
     再生可能エネルギー導入のためのFIT(ドイツの例)の上乗せなどが影響。
    ・デマンドレスポンスの導入:
     ・電気料金ベース(時間帯別料金)と、インセンティブベース(需給調整契約)。
    ・上流事業の超過利潤は巨額。
     ・原油開発/生産コストは、数ドル~40ドル程度だが、
      販売価格は、100ドル程度になることもある(=高利益率)。
     ・資源上流事業への参入が活発になっている。
    ・PPS事業者(「新電力」)の増加


    ■第五章:2020年のICT環境=============================================
    ・ICT産業の構造を見る際に重要となるのは、
     レイヤー(N/W、PF、コンテンツ、端末)間のパワーバランス
    ・OTT(Over the top)サービスの急速な普及
    ・スマート化の促進(M2M):
     ・EVやPHV車両の充電状況や充電スタンドの状況提供サービスなど。
     ・業界を通じた大きなプレイヤーはまだ存在していない。
      (M2Mの適用市場が、エネルギーやインフラ、医療などの産業分野であり、
       新規サービス開始までに長時間必要なことなどが影響)
    ・リアルとバーチャルの融合(O2O:online to offline)
    ・新興国での可能性
     ・携帯電話が人々の生活に与えているインパクトは、新興国のほうが大きい
      新興国ではあらゆる分野において、携帯電話が活用される可能性がある


    ■第六章:2020年の運輸業==============================================


    ■第七章:2020年の金融業==============================================


    ■第八章:2020年のヘルスケア産業======================================


    [メモ]========================


    ■第一章:2020年の事業環境

    「持てるものともたざるもの」および「使わないものと使いたいもの」の不整合が拡大さうれば、それがボトルネックとなり内需が収縮してしまうおそれがある。
    解決の方向性としては、資産の世代間移転(生産年齢層に対して)を加速させることで、まさに2013年度税制改正大綱では、子や孫への贈与に対する非課税枠の拡大などの措置が盛り込まれている。

    ブラジルはまさに後半の「所得格差の縮小を伴いながらの経済成長」をし、中国やインド、ベトナムなどは前半の「所得格差の拡大を伴いながらの経済成長」をしていると解釈できる。

    所得格差が固定していくというのは日本企業にとってはどのような意味があるのだろうか。所得格差の拡大過程においては、富裕層や新興アッパーミドル層とでも言うべき所得層が増加し、日本製品も問題なく購買でいる人の絶対数が増え、ライフスタイルもめまぐるしく変化する、という混沌とした状況の中でビジネスチャンスを捕まえる必要があったが、所得格差がある程度大きくなり固定化傾向に入ると、現在のラテンアメリカ諸国に見られるように消費やライフスタイルの固定化が進む可能性がある。

    今後政府が重点的に支援すべき領域として「国民の健康寿命の延伸」「グリーンデ経済的なエネルギー受給の実現」「安全、便利で経済的な次世代インフラの構築」「世界を惹きつける地域資源」という4つの分野を戦略目標として設定した。

    米国のビジネス誌「フォーブス」は世界で最もイノベーティブな企業のランキングを毎年公表しているが、2012年のランキングを見ると4位のセールスフォース・ドットコム以外トップ4社を米国企業が独占し、100社までを見ても43社を米国企業が占める結果となっている。内訳を見ると、セールスフォース・ドットコムやamazon、GoogleなどのIT企業に加え、P&Gやコルゲート、クラフトなどの古くからお馴染みの食品、消費財メーカーなども含まれており、米国企業においては、ハイテク分野は勿論、相対的に変化がとぼしそうに思われがちな企業においても、成長に向けた積極的な取り組みがなされていることが伺える

    日本企業生き残りに求められる3つのブレークスルー
    1つ目は地域軸でのブレークするー。即ち、不透明さは残るものの、以前高い成長が期待される新興国市場の確実な取り込みによる成長力の獲得である。
    2つ目はビジネス軸でのブレークスルー。イノベーションを通じた新たなビジネスの創造である。
    3つ目のブレークスルーは経営資源面でのブレークスルー。即ち、外部ソリューションの積極活用による、自前主義、自社のリソース制約からの脱却である。

    先述したイノベーティブ企業のランキングで見ても日本は米国に大きく水を開けられているが、国内市場も基本的には伸びず、且つ海外に出るにしてもkakakuで勝負するのが難しい日本企業にとっては、イノベーションに活路を見出すことが重要である。そのためには経営のリーダーシップが不可欠であり、CEO自らが、CINO(Chief Innovation Officer)という意識で社員の先頭に立ち、海外も含む競合企業が真似の出来ない画期的な新商品、サービス、ビジネスモデルの開発に取り組むことg求められる。


    ■第二章:2020年の自動車産業


    ■第三章:2020年の電機産業


    ■第四章:2020年のエネルギー産業


    ■第五章:2020年のICT環境


    ■第六章:2020年の運輸業


    ■第七章:2020年の金融業


    ■第八章:2020年のヘルスケア産業


  • 自動車やIT, 金融、医療など7つの分野について、
    どういったことが2020年までの対処すべき課題なのか、
    といった視点が述べられていた。
    基本的には、どのようにグローバル対応するべきか、
    ということが述べられているが、どうやら
    著者グループの所属している野村総研自体が
    グローバルな体制ではないらしく、著者グループは
    日本人だけで構成されており、この本を読むと
    「問題は山積しているが、解決方法を考えることはしていない」
    ということのようでもあった。
    単純にメーカーなどの企業だけでなく、
    野村総研などの企業もグローバル化することが
    日本企業にとって大事だ、ということが
    一番感じるところであった。

  • 自動車、電機、エネルギー、ICT、運輸、金融、ヘルスケアの7つの産業にフォーカス。
    自動車、エネルギー。一体どうなっていくかなあ。

  • 602.1||No

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著者プロフィール

サステナビリティ事業コンサルティング部カーボンニュートラル戦略グループマネージャーの稲垣彰徳氏を中心に執筆。

「2022年 『カーボンニュートラル』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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