アメリカの世界戦略に乗って、日本経済は大復活する!

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  • 東洋経済新報社
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  • Amazon.co.jp ・本 (237ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784492395851

作品紹介・あらすじ

米国住宅バブル崩壊、欧州債務危機を的確に予見したカリスマ経済評論家による次なる大予測とは。

感想・レビュー・書評

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  • 内容はあまり深くないが、読みやすい本だと思います。

    ドル円を中心とした為替の話とアメリカでのシェールガス革命、そしてデジタル家電産業の衰退と自動車産業について語られてます。

    とりわけ、トヨタ絶賛本のようにも読み取れますが、背景としては納得できる内容と思います。

  • アメリカで現在起きているシェールガス革命の好影響を受けるのは、日本で素晴らしい技術を開発している日本企業で、アメリカの発展と共に日本経済も復活するというのがこの本の趣旨です。

    シェールガス革命が進行しているという本は昨年末頃から、少しずつ目にするようになりましたが、それに伴って日本企業(主に製造業)が発展するという内容を書かれているのは、私が知る限りでは長谷川氏に続いて、この本の著者である中原氏のように思います。

    彼は、この革命を今の「石油社会」から「ガス社会」に変えるという意味で、18世紀の英国で起きた産業革命に次ぐ、「第二次産業革命」(p6)としています。またシェールガス採掘にあたり環境面での懸念が指摘されているなかで、それらが軽減されている(p65)と言っている本には初めてであったような気がしました。

    彼が本で述べているポイントについて、シェールガス革命がデフレ時代をもたらす、円安は日本にとって良くない、米国と組むことは日本にとって将来も有利というのは理解できますが、TPPの恩恵が日本が享受できるという点については、今後とも注意する必要があると思いました。

    また、個人的に強い衝撃を受けたのは、現政権は、消費税増税の根拠として、2013.4-6月度のGDPで判断するそうです。7月には参議院選挙もあすので、少なくともこの3か月だけは景気が良くなったように見えることでしょうね。

    以下は気になったポイントです。

    ・FRBは 2012.9から量的緩和(Q3)で住宅ローン担保証券(400)に加え、2013.1から国債(450)の合計850億ドルを毎月購入(無期限)することを決めた(p26)

    ・量的緩和がもたらしているのは、ドル安・株高・低金利・物価高(p27)

    ・韓国で通貨安の恩恵が及んだのは、大企業に勤める8%の人のみで残りの人は通貨安からの弊害に逃れられなかった(p36)

    ・日本では輸出に占めるドル建て取引は50%、輸入では70%を超えているので、円安の影響はドル建て取引が高い輸入よりも強くでるので、貿易赤字はかつてより円安によって膨らみやすい(p47)

    ・円安へとトレンド変換する理由は、1)アメリカ経済の経常収支赤字が縮小・経済復活、2)エネルギー・医薬品の輸入の増加(p61、66)

    ・シェールガス開発における水圧破砕は環境リスクが懸念されているが、水質検査や水の再利用により問題が軽減されてきている(p65)

    ・日本の歴史が示すように、バランスシート不況が沈静化するには10年単位の時間が必要、アメリカのバブル崩壊は2007なので、2013年は7年目、あと4年程度は難しい(p76)

    ・シェールガス革命によるエネルギー価格の低下は、アメリカ製造業の生産コストを下げるだけでなく、海外へ移転した工場を国内へ呼び戻す効果もある(p85)

    ・石油からつくられる化学品の生産をシェールガスを使った生産方法に切り替えようとする動きがある、ダウ・ケミカルやシェル・旭化成・クラレはエチレン工場を建設する方針、これは石油化学がガス化学に転換することを意味する(p86、93)

    ・エネルギーコストの低下は、アメリカの競争力を高めると言う点で、通貨安と同じ効果をもたらすが、その効果の大きさは比べ物にならないほど大きい(p99)

    ・シェールガスを使用した天然ガス複合発電の発電コスト(2017)は、水力よりも低く、最も低い(p108)

    ・アメリカは将来的には、アメリカ主導のTPPとEUのFTAがタッグを組むことで、東西両方から中国を包囲する狙いがある(p123)

    ・2011年のアメリカの個人消費は9.5兆ドル、中国はまだ2兆ドル程度、アメリカの成長なしに中国の成長はない(p135)

    ・湾岸戦争当時で両者の戦車の性能には差がないと言われていたが、決定的に違っていたのは、戦車が備えていた日本製のスコープ、暗闇でもはっきりと捉えられた、米軍は当時自衛隊しかもっていなかった特殊スコープを提供してくれたことに感謝した(p150)

    ・日本の農業総生産額は2010年で世界5位だが、半分は税金や補助金で救済されている(p164)

    ・阿倍首相は、消費税引き上げ判断を、2013.4-6月のGDPですると明言している、それ以降にGDPが悪くなっても増税される(p174)

    ・世界最大規模のEMS企業は台湾にある、Honhai精密工業、そのグループ売上は10兆円、製品販売ではなく、組み立て費の積み上げ(p187)

    ・日立、東芝、三菱電機といった総合電機メーカは、社会インフラ事業で新興国の成長に伴う需要を取り込んで好調、家電メーカ(シャープ、ソニーパナソニック)とは異なる(p197)

    ・電気自動車のシェアは10年後でも1%程度、しかしハイブリッドは30%にはなってディーゼルエンジン車のシェアを奪うだろう(p210)

    ・トヨタはフォードと共同して、大型車向けのハイブリッドエンジンを開発す
    る、それはピックアップトラックに搭載予定(p212)

    ・燃料電池車はトヨタから2015年目途に市販車で、500万円程度で日米欧で売り出す見通しが立ってきた、あと10年もすれば本格的に量産可能で、電気自動車よりも安くなるだろう、電気と違って、石油会社が製油所で水素を生産しているので割安に水素供給可能(p222)

    ・トヨタは2017年に液化石油ガスで走るタクシー生産を中止して、すべてハイブリッド車にするが、この技術は燃料電池車に生かされるだろう(p224)

    ・将来はシェールガスを使った火力発電が主力になるだそう、そのため発電プラント、タービンの受注が増える、その主役は三菱重工や東芝(p225)

    2013年4月14日作成

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著者プロフィール

1970年生まれ。慶應義塾大学卒業後、金融機関や官公庁を経て、現在は経営・金融のコンサルティング会社「アセットベストパートナーズ株式会社」の経営アドバイザー・経済アナリストとして活動。大手企業・金融機関、地方公共団体等への助言・提案を行う傍ら、執筆・セミナーなどで経営教育・経済教育の普及に務めている。「総合科学研究機構」の特任研究員も兼ねる。実質賃金、実質成長率など、名目数値よりも実体経済に近い数値推移で市場を把握する。著書に『AI×人口減少』(東洋経済新報社)、『日本の国難』(講談社現代新書)など。

「2021年 『マンガでわかる その後の日本の国難 稼ぐ力の高め方』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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