ワイドレンズ―イノベーションを成功に導くエコシステム戦略

  • 東洋経済新報社
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  • Amazon.co.jp ・本 (251ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784492502457

作品紹介・あらすじ

革新的なはずの製品やサービスがなぜ成功しないのか?スマートフォン、電子書籍、電気自動車などの最新のトピックを取り上げながら、エコシステム(生態系)全体でビジネスを捉えるための手法を紹介。

感想・レビュー・書評

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  • 2020年4月12日(日)

    書名:ワイドレンズ 
    著者:ロン・アドナー
    ジャンル:ビジネス(ストラテジー)

    【内容】
    イノベーションは自社のみの技術、システムでは完結することは出来ず、協業者を巻き込んだ価値創造のストーリーが必要なのは周知されてきていると思います。

    本書はエンドユーザーまでの価値創造の設計図作成において、その協業者まで視点を広げよ、という主張を終始展開しています。主に以下の2点をイノベーションの歯止めとなる「リスク」として説明しています。

    ・コーイノベーションリスク
    →協業者が自社のイノベーションに応じるシステム技術を持っているか?

    ・アダプションチェーンリスク
    →価値創造にあたり、協業者もwinになる仕組みになっているか?

    ビジネス展開で様々な制約がある中、上記2点のリスクを上手にマネジメントした者が現在のイノベーターになっている。開発したエコシステムを他のサービスに転用し、ゲームのルールを変えている、というのが筆者の主張でした。

    当たり前っちゃ当たり前なんですけど、見落としがちですし、コーイノベーションリスクがあるので、何でもかんでも先手必勝というわけではないのですね。

    エコシステム構築を検討されている経営関係の方におすすめです。

  • チャールズ・ダーウィンいわく、「最も強い者が生き残るのではなく、最も賢い者が生き延びるでもない。唯一生き残るのは、変化できる者である。」しかし企業にあてはめるとこれでは不十分。自社だけでなく、エコシステム全体で変化に対応に対応できないとイノベーションは失敗する。iPhoneはなぜ最初から強かったか?それは次世代のiPodという位置づけで誕生したから。Apple社だけでなく、サプライチェーンに属するエコシステム、さらにはユーザーまでも変化に巻き込んだ歴史的好例と言える。

  • 今日の経営環境においてイノベーションを実現するためには、自社のコアコンピタンスだけでなく、ビジネスモデルを共に構成する各パートナーとのコラボレーションが不可欠となったことをふまえ、気鋭のMBA教授が、イノベーションを持続的成功に導くための新たなフレームワークを提唱した経営戦略書。

    著者は、革新的なサービスや製品が成功するには、自社の技術やマーケティングなどの戦略課題に加え、ビジネスが価値を生むための「エコシステム」全体を明確に描き、鳥瞰した上で、パートナーが行うイノベーションへの依存度や、パートナーによる自社のイノベーションの許容度を評価することにより、エコシステム内での役割分担や参入タイミングなどを含めたリスクの回避が可能になると主張する。

    iPhone/iPadやデジタルシネマ、吸入インスリン等、"お馴染みの"成功/失敗事例の検証に加え、現在進行形の電気自動車ビジネスを本理論に沿って分析するなど、豊富なケーススタディが本書の説得力を高めており、また社外との関係だけでなく、社内プロジェクトの推進においても有効な示唆が得られる。「相互依存の時代」における戦略実行フレームワークの一つとして、押さえておきたい一冊。

  • 久しぶりにツボに嵌ったビジネス書だった。

    ビジネス・エコシステムを成功させるために考えるべきことについて、具体的な事例を上げて論じている本である。
    単独の製品やサービスで成功するのが難しくなってきている昨今では、自社以外と同調したエコシステムを上手く軌道に乗せることが必須の条件となってきている。
    しかしながらエコシステムを軌道に乗せるには、通常のビジネス運営だけでは済まない別の視点からの打ち手がとても重要になってくるのだ。
    ワイドレンズというタイトルは、それを明確にするためのシステマチックなアプローチを提供するための理論の力を示している。

    エコシステムとしてビジネスを捉えた時、システム内の必要な要素すべてが実現できないと成功はおぼつかない。
    それを妨げるものの一つが、コイノベーション・リスクである。
    これは、自身のイノベーションの成功が他社のイノベーションの成功にかかっているというリスクである。

    もう一つがアダプション・チェーン・リスクである。
    エンドユーザーへの価値提供に必要なパートナーが、イノベーションを受け入れないこともある、つまりエコシステムに必要な企業の中でも必ずしもシステム参加から効果を得られるとは限らない場合には参加を見送ることもあるというリスクだ。

    これらリスクの取り方に応じて、エコシステムのイノベーションを成功・失敗させた例を解説しているのだが、それがまた極めて分り易い。

    ・ミシュラン
    パンクしないタイヤシステムPAXの導入に際して殆どの関係者を巻き込むことが出来たが、唯一、あまり力を入れなかった修理工場がエコシステムへの参加を躊躇ったために、最終的にシステムを軌道に乗せることが出来なかった。

    ・ソニーとAmazonの電子書籍戦略
    ソニーは自身がメーカーだったこともあるのだろうが、電子書籍を提供する仕組みを他社に頼ってしまい、コンテンツプロバイダ施策よりも高精細、長時間駆動の読書リーダー開発に重きを置いてしまった。
    反対にAmazonは端末のKindleにはそこそこの手間しかかけず、自身の持つOnline Shoppingの仕組みを核に据えて、そこからエコシステムを拡張していく手段で成功を収めた。

    ・デジタルシネマ
    映画のデジタル化を推し進めようとした映画会社は、多くのパートナーが積極的に推進するにも関わらず、なかなか広がらない原因となった映画館の装置購入を促進するための金融支援策を打ち出した。
    この例などはエコシステムのアダプション・チェーン・リスクの重要なポイントを特定して、そこに有効な対策をぶつけた典型的な例である。

    ・ベタープレイス
    この例における分析は秀逸である。
    電気自動車のバッテリーをCRG型にして、スタンドで待たせずに交換するための仕組みを提供する企業であり、私自身、成功できるのか極めて疑問に思っていた。
    しかし本書の分析によれば彼等の戦略は圧巻であり、ここまで綿密にエコシステム発展の肝を捉えた手を打っている会社だとは思わなかった。
    ここまでエコシステムの難しさを納得しながら読んできた身にとっては、この分析結果は素晴らしいの一言である。
    まだ実際の成果が実際に出るところまでは行っていないので、今後は要注目である。

    ・アップル
    最後の例として出てくるアップルは、言わずと知れたエコシステム立ち上げの最大の成功者である。
    MVE→段階的な拡張→エコシステムの継承と活用、発展のさせ方が殆ど教科書通りなのである。

    MP3プレーヤーが流行った時にもネットでの配信が常識的になるまで参加を躊躇っていた。
    それが一般的になると、すぐにiTunes、Music StoreとiPodを要素にしたエコシステムをMVEとして発進させるが、その後はWindowsへの拡張、スマフォへの拡張と過去を継承しながらシステムの価値を段階的に上げていく理想的な戦略を取ってきている。

    これ以外にも幾つかの具体例があるのだが、本書の理論とピッタリと嵌っており分かりやすく、すんなりとロジックを理解できてしまうのである。
    そしてこれらリクスを回避して、エコシステムを成功に導くための方法論についても論じている。

    ・Minimum Viable Ecosystem
    MVEの考え方で最小限要素から成るエコシステムの成功を目指すのが第一歩。その後は新しい価値を付け加えて拡張していくべき。
    小規模実験から大規模展開する通常の考え方は、エコシステムのパートナーが規模が増大するときに各リスクへの適切な対応を難しくして、返ってリスク増大に繋がってしまうのだという。

    ・Smart Mover Advantage
    先行者は必ずしも成功せず、タイミングをしっかりと捉えた者が成功する。
    First Mover AdvantageではなくSMAである。

    ・価値設計図
    これらリスクの所在を明らかにして、対策を打つポイントを明確にするためのツールが価値設計図の考え方である。
    二つのリスクの在り処を明確にするためにも、このツールを使ったシステム分析が外せない。

    製品にフォーカスを置く今までの考え方は、多角化に際してコアコンピタンスを開発せよというものだった。
    キヤノンが良い例だが、光学技術、画像技術のようなコアコンピタンスに狭くフォーカスを絞りこむことで、成長戦略の重要な部分を見逃してしまっているという痛烈な批判を投げかけてもいる。
    元々日本企業が苦手とするシステム的なアプローチであるエコシステムの考え方を解説した本である。
    コアコンピタンスの追求というある一点を突き詰めていくことこそが勝利への道筋としていた日本の製造業にとっては、今までの成功のシナリオを否定して今後の勝ち方を明確に示した大切な論考を示した本であるとも言えよう。

    その意味でも、あとがきで監訳者が述べている次の一節は耳に痛い。

    「『単独のイノベーション』つまり『イノベーション=技術』という時代は終わったのだということです。もちろん、技術なしのイノベーションというものは考えられないでしょう。しかし、高い技術さえあれば成功するはずだという発想は、残念がら時代遅れになっていると言わざるをえません。」

    製造業で戦略立案に携わるものにとっては、必読の本であると断言する。

  • ■一橋大学所在情報(HERMES-catalogへのリンク)
    【書籍】
    https://opac.lib.hit-u.ac.jp/opac/opac_link/bibid/1001125904

  • 現代のイノベーションは1社によるものではなく、エコシステム全体によるものと説く。エコシステムに潜むコーイノベーションとアダプションチェーンの2つのリスクを認識し、打破するためのツール類を定義しており、わかりやすい。

  • あるコンサルの勧めで読んでみた。ビジネスアイデアを深考するにあたり有効と感じました。まずは実行あるのみ。

  • 面白く読めたが、いわゆる「ワイドなレンズ」を必要とするのが、サプライチェーン全体で見れているか?という視点のみなのがいささか残念。

    事例は豊富。ミシュランのランフラットタイヤ、ソニーのmp3、Office2007、などなど。

  • 貸し出し状況等、詳細情報の確認は下記URLへ
    http://libsrv02.iamas.ac.jp/jhkweb_JPN/service/open_search_ex.asp?ISBN=9784492502457

  • 『ワイドレンズ―イノベーションを成功に導くエコシステム戦略』読了。★4つ(5点満点)

    http://www.amazon.co.jp/dp/4492502459/



    近年自社単体だけではなくパートナーも含めたエコシステムをどう作っていくかというところが重視され始めている。

    新規事業・新サービスを「エコシステム」の観点から整理した本。

    近年のアップルがんぜ成功の分析は、飽きるほど多くの本や記事でいろんな視点から分析されているが、今まで読んだ中でこの本の説明が一番しっくりきました。

    (「クールな製品を作ればいい」って感じの説明にはいつも共感できないでいる。

    この本を読むと、SonyがiPhoneと同等なものを先に発売しても勝てないだろうということがわかる)



    視点的には非常に参考になるが、惜しむらくは、使う場面が難しい点。

    なんといっても、自社で見た場合の道程は全部成功している前提ですからね。。いや、そこまでいくのはかなり大変ですよ。。

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著者プロフィール

ロン・アドナー
ダートマス大学タックビジネススクール教授
ダートマス大学タックビジネススクール教授。1993年クーパーユニオン大学工学部にて修士号、1998年ペンシルバニア大学ウォートンスクールにてPh.D.を取得。INSEAD(欧州経営大学院)准教授などを経て、2012年より現職。専門は経営戦略。INSEADとタックの両校で計7回のベストティーチャー賞を受賞。ストラテジー・インサイト・グループの創業者兼CEOでもあり、スタートアップからフォーチュン500企業まで、戦略コンサルティングを行っている。主な著書にThe Wide Lens: What Successful Innovators See That Others Miss(邦題『ワイドレンズ』)のほか、Harvard Business Review、Forbes、Financial Timesなどの著名ビジネスメディアや学術誌への寄稿も多数。また、Academy of Management Review、Management Scienceなどの編集委員も務める。

「2022年 『エコシステム・ディスラプション』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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