事実に基づいた経営―なぜ「当たり前」ができないのか?

  • 東洋経済新報社
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  • Amazon.co.jp ・本 (365ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784492532508

作品紹介・あらすじ

ワークライフバランス、成果主義、戦略主義、組織変革、リーダーシップ…もうビジネス書やコンサルタントによる「成功の秘訣」や「通説」に惑わされるな!100年に1度の危機に立ち戻るべき経営の基本。

感想・レビュー・書評

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  • ▼福島大学附属図書館の貸出状況
    https://www.lib.fukushima-u.ac.jp/opac/opac_link/bibid/TB90206632

    (推薦者:経済経営学類 林 正先生)

  •  最後に、そして、おそらく最も重要なのは、シスコはその統合プロセスで、買収企業の社員がとどまり、「自分の家」のように感じ、その知識を生かしてくれることに細心の注意を払っていることである(社員こそ、シスコが本当に買収したものなのである)。問題が起きないよう、統合プロセスは注意深く計画され、スピーディーに進められる。そして、シスコはそうした統合プロセスばかりでなく、買収対象を見つける事業開発プロセスを常に向上させ、これまでM&Aを成功させてきた企業の力をさらに強固なものにしている。

    ■質の悪い意思決定方法
    ・うわべだけのベンチマーキング
     こうした例に見られる浅いベンチマーキングの失敗の根底には二つの大きな問題がある。一つ目は、目立ち、わかりやすく、そして往々にしてそれほど重要でないところだけが真似されることである。…
     この幹部が言ったことは、一面では正しいがまだ十分とはいえない。二つ目の問題は、企業というものは、おおむね戦略も競争環境もビジネスモデルも違うということだ。だから、他社で成功していたからといって、自社に当てはまるかどうかはわからない。他社でブラスだったことが、自社ではマイナスになるかもしれない。業界が違えばもちろんそうであるし、同じ業界の中でもこうしたことは起こる。
     本当の問題は、他社の真似をしようとしたとき(往々にしてミツバチが花から花へ飛び回るように、コンサルタントがある会社から次の会社に行ってそそのかしたりするわけだが)、「なぜその結果、業績が向上するのか?」といった基本的な質問をしないことにある。何も考えずにベンチマークをして努力と費用を浪費したり、最悪の場合、その結果として新たな問題を抱えてしまう前に、次のような質問をしてみるとよい。

    ・過去にうまくいったように見えることをする
    ・広く信じられているが、実はきちんと検証されていない考え方を鵜呑みにする

    ■アイディアや手法を試す前にするべき質問
    ・そのアイディアや手法は、社員や組織についてどのような前提を置いているのか?
    ・そのアイディアや手法がうまくいくためには、社員や組織はどうでなくてはならないのか?
    ・本当にこうした前提は理にかなっているか?何かおかしいところはないか?
    ・もし前提が間違っていたとき、そのアイディアや手法はうまくいくだろうか?
    ・その前提の正しさをテストするために、コストをそれほどかけずに、かつ簡単にデータを集める方法はないだろうか?
    ・自分が考える社員や組織の前提にもっと合った他のアイディアや手法はないだろうか?

    ■「事実に基づいた経営」を実践するための障害
    ・データを使うことで社内勢力図が変わる
    ・人間はあまり真実を聞きたくない
    ・世の中のビジネスのアイディアは玉石混交


     事実に基づいた経営を実践する際の最大の障害は、これまでそうだったから、みんながそうしているから、それなりの理由があるに違いないから、と思い込んで現状を変えようとしないことである。もし他にやり方があることを知らなかったり、そもそも他のやり方を考えてみる必要に迫られなかったりすれば、どんな証拠があっても、現状を変えようとはしないだろう。私たちが現場に出ることを勧める理由はそこにある。単に工場を回って見たり、社員が働いているのを見たり、顧客を観察したり、あるいは自分で自分の会社の商品を試してみたり(他社の商品もあわせて使えばなお良い)するだけで、いろいろなことが実感できる。実際、現場に行って何が起こっているのかを見れば、抽象的できれいなレポートやパワーポイントのプレゼンテーションを見るのに比べて、はるかに事実を受け入れやすくなるだろう。
     同様に、どうして今のやり方をしているのかといった経緯を知らなければ、理由や前提がわからないので(往々にして陳腐化していたり怪しげだったりするのだが)、なかなか変えにくい。本章で説明してきた「半分だけ正しい」常識を考えればよい。仕事は特別だという。なぜこんな考え方が生まれて、広まってきたのだろうか。リビー・サーティンの例で見たように、個人の価値観やスタイルに反するよう行動することには、意味があるのだろうか。こうした仕事とプライベートを分けるようになったのは、実はごく最近のことである。一五〇年ほど前までは、人々は農場やら、小さな店や仕事場で働くのが普通だった。仕事とプライベートは特段分かれていなかった。家族と働いたりして、仕事と暮らしは密接に関係し、仕事をコントロールできた。生活をしていくためには、今よりも頑張って長く働かなくてはならなかったため、生活はとても楽とはいえなかった。しかし、仕事と家庭はとても近かった。


    ■知恵の姿勢ー基本要素と反対要素
    知恵ー反対
    知識に基づいて行動する(しかし、知識を盲信はしない)

    知識に基づいて行動しない、または知識を盲信する
    分析し続けるだけで行動に移さない
    どうしたらよいか学ぼうと努力しない

    自分の知識の限界を理解している

    自分の知識の限界を理解せず、受け止めたり、認識したりせず、何でも知っているかのように振る舞う

    自分の知識に対して謙虚である

    知っている以上に知っていると思ったり(慢心)、知っているのに知らないと思ったりする(自信の欠如)

    他人に助けを求め、それを受け入れる

    助けも求めないし、差し出された助けも拒否する

    他人を助ける

    他人が明らかに自分の知識やスキルを必要としているときでも、助けようとしない

    好奇心を持つー
    質問をし、耳を傾け、いろいろな出来事、情報、人々から常に学ぼうと心がける

    人、出来事、アイディアに対する好奇心がない質問に答えたり話をしたりするのは、自分のスマートさを誇示するためで学ぼうとする気持ちはない


     本当に社員にやる気を出させるためには、金のためだけに働くような人を高額の成果報酬で釣るのではなく、例えば、助けあうチームの一員にするとか、仕事を通じて他の人を助ける、といった仕事の他の価値や良い点を経験させるのがよい。


     (こうした問題に対して会社が取ったのは)チームとしての連帯感を高めるために、スタッフ同士でスポーツや食事に行くのを奨励するだけでなく、店ごとの月末のシュリンク、つまり、なくなったり盗まれた商品の額によって、ゼロ、二〇ドル、四〇ドルのいずれか現金をもらえるブログラムであった。この金額がたいした額ではないことについて、創業者CEOのジョージ・ジマーはインセンティブの心理と、正しい額を決めることの難しさについて、大変面白い意見を述べている。報奨というのは正しい額でなくてはならない。なぜなら報奨によってある程度盛り上がらなくてはならないのだが、多すぎると行動がおかしくなったり、別のことを考えたりするから、と彼は言う。大切なのは、店としての達成感と仲間意識を常に保つことであって、金額ではない。その裏返しで、金額はある程度の意味がなくてはならないし、その意味づけのためにも、会社はわざわざ現金で支払っている。ジマーの洞察は、高額な経営者向けインセンティブシステムによって行動が歪んだり、ビジネス、社員、顧客から注意が離れたりするのを見るにつけ、深いものがあると言わざるをえない。

    ■変革に時間をかけない理由
    ・締め切り効果
    ・緊急性効果
    ・「難しいと思い込む」効果

    ■良いリーダーは何をするべきか?
    1 実際のインパクトは限られていても、誰もがリーダーは重要だと思っている。リーダーは大きな影響力を持ち、自信満々で行動しているようなふりをしながら未来について語り、一方で組織の現実と、自分の限界についても認識していなくてはならない。
    2 リーダーも他の人と同様に、自分のことを良く思いたいという傾向はあり、それは取り巻きに助長されるので、やってはいけないことをしたり、とんでもないやり方をしがちである。リーダーはこうしたワナにはまらないように、知恵の姿勢を保ち、謙虚さを忘れないようにする必要がある。
    3 完全に(組織を)コントロールすることが望ましいというのは「半分だけ本当」にすぎないので、優秀なリーダーはいつ、どのようにしてコントロールを手放し、他の人にやらせるかを学ばなくてはならない。最高のリーダーシップとは、時にはリードしないことなのである。
    4 リーダーが最高のインパクトを与えるのは、権力と卓越したスキルを持った少数の人々が、あまり重要でなくなる仕組みを作るときである。おそらくリーダーシップの最も良い見方は、組織の仕組み、チーム、企業文化の設計者、つまり、他の人々が成功するための土台を作る仕事と考えることだろう。

     リーダーは、いつ一歩下がり、いつ口出しして、質問したり、アドバイスやフィードバックを与えたらよいか、どうやってわかるのだろうか。それには、二つの基本的なルールがある。一つ目は、自分より部下のほうが仕事をよく知っているときは、彼らから何かを学びたいとき以外は、一歩下がっていたほうがよいということ。二つ目は、多くの研究によると、グループが創造的な仕事をしているときは、偉い人がつきまとっていろいろと質問したり、特にフィードバックすると、創造性が下がる。なぜか?創造的な仕事をするということは、始終失敗したり壁にぶち当たることを意味するが、部下は上司が見ていると成功したいと思ってしまう。結果としてより成功しやすいが創造性の低いアウトプットを求めてしまうのだ。だからこそ、一〇年以上にわたって3Mの研究開発部門を率いるウィリアム・コインが、自分の仕事は部下に任せて自由にやらせ、他の経営陣も口出ししないすることだと言っているのである。「種をまいたら、毎週掘り返して育っているかを確からいけないんだ」と彼は言う。

    ■実践の原則
    1 自分の会社は、未完成の原型だと思う
     事実に基づいた経営で成功している会社は、正しい心構え(right mind-set)を共有している。社具は自分の知っていることに基づいて行動することもわかっている。本書では、こうした「知恵の態度」について何度も触れてきた。哲学者や心理学者は知恵を「何を知っており、何を知らないか」を知っていること、そして自信過剰と不安の中間だという。心理学者のジョン・ミーカムはこう書いている。「知恵の本質とは知識の危うさを知り、知ることと疑うことのバランスを求めることである」。
     知恵の姿勢を実践するリーダーは、自分の組織が未完成の原型であると捉え、そのように行動し、「壊れていないから、直さない」という態度はとらない。組織は、危険な新しいアイディアで壊滅させるものではなく、滅茶苦茶で直せないものでもなく、抵抗がありすぎて変えられないものでもない。
    2 誇張しない、事実だけ
    3 当たり前の基本をマスターする
    4 自分や自分の会社を第三者が見るように見る
    5 権力、名声、好業績は、人を頑固で、無能で、意味のある証拠に抵抗するように変える
    6 事実に基づいた経営とは、経営陣だけの仕事ではない
    7 何でもそうであるように、「事実に基づいた経営」も売り込まなくてはならない
    8 もし実行原則がすべて失敗したら、間違った経営手法が広まるのを遅らせる
    9 診断のための最も良い質問ー失敗した人はどうなるか?

  • 中途半端な事実に基づいた経営が一番ダメだということを言っている本だと読んだ。

  • 経営者や管理者とりわけHRは、新しいことをぶち上げる前に、これ読んで我が身を振り返ると良いと思う。分かっているができないし、中途半端にいいとこ取りするのがいかん。

    とりわけインセンティブ設計をするHRの人はここにでてくる要素は考慮しているかをチェックした方がいい。

  • 根拠のあるデータやロジックに基づいた経営を、という主張かなあと思ったが違いました。本著の主題は経営における「中庸」の大切さだと思います。全部わかっているという過信と、何も知らないという臆病の中間(知恵の態度)持ちながら、謙虚に学び続ける姿勢が大事。
    特に面白かったのは、p203からの戦力の話、p246からの変革の話。


    ◯事実に基づいていない経営
    ・業績改善の本質ではなく表面的な部分を真似する
    ・ストックオプションは短期的業績を優先するようになる(業績でなく市場の期待をあげるよインセンティブ)

    ◯実践のためには
    ・人は真実を聞きたくないことを理解した上で意識的に反対の立場を取ること。
    ・成功した会社だけを見てはならない。失敗原因も重要。
    ・小さく実験をしながら効果を測定
    ・知恵のある人の姿勢(知っていることを知っていると思い込む慢心と知っていることを知らないと感じてしまう臆病の中間

    ◯仕事とプライベートは違うのか?
    ・会社は最初社員から如何に搾取するか、コントロールするか、を考えていた
    ・厚生資本主義: 社員の幸福まで会社が責任を持つ(生活を依存)
    ・労組の反発、プライベートの分離と労働時間の制限
    ・プライベートな人間関係を尊重すふことは、社員の忠誠心や愛着を高めるだけでなく、販売対象やタダ働き要員になる。
    ・社員がどうあるべきかよりも、どうしたら社員の力を生かせるか。創造性は個人が自らが何を知っていて、どんな人間ですどう感じるかを素直に言うことから生まれる。

    ◯良い業績の会社には優秀な人材?
    ・人以上に重要なのはシステム(全米最悪の工場をトヨタ方式で再生、同じ事故を繰り返したNASAの官僚的組織)
    ・才能は誰にでもあり、それを活かせる場が大事
    ・知性より大事なのは知恵
    ・割合で評価するような仕組みは害悪、できるだけ多くの人を評価して不公平を減らすことが大事、それでも組織にフィットせず問題を起こす人には去ってもらう。

    ◯金銭インセンティブが業績を上げる?
    ・一般的な金銭インセンティブの効果
    1. 努力の動機付け(成果主義)、これは努力量が成果に比例する(外部要因がない)前提である。
    2. 組織が何に価値を置くかを示すこと
    3. 正しい人材を引きつける。年功序列、成果型
    ・何が大事か知らせることが行動を促す肝で金銭的インセンティブではない。組織には複数の目標があることが多いので、必ず無理が生じる。
    ・給料で選んで入ってくる人は、さらに高給の話があれば辞める、そして不正を働くインセンティブが働きやすい。
    ・プラスに考えたい人間の本能から、自分は平均以上だと思う。そのため上司のフィードバックに対する良い悪いの問題は必ず起こる。
    ・報酬は大きなメッセージを出す、その差がもたらす人間関係の悪化は無視できない。業績は個人の力ではなくみんなで協力した結果であるというシグナルを送ることで、多様な意見、想像的アイデア、努力を引き出している会社もあるら(アマゾン、SW航空シスコ)

    ◯戦略が全て?
    ・ 戦略経営とは、環境変化の中で合理的な分析に基づいて企業の戦略的方向性を考えること。
    ・戦略論の前提は、ある企業は別の企業より上手くやれるら時間金銭注意という資源は有限。
    ・どの事業を選択し、どう競争するかを考える(コストベースor付加価値ベース)

    ・戦略がどのくらい貢献しているのか実際よくわからない。インテルのマイクロプロセッサーへの注力は成功事例として名高いが、技術ベースがあった上で、IBMが自社PCのプロセッサーの外注をしてきたのがきっかけであり、自社の戦略では無かった。
    ・重要なのは真似できないこと。何をするか(戦力の決定)ではなく実行力。
    ・プランニングに費やされる資源と、トップが戦略ばかりに目が行き、オペレーションが無視されるコストが大きい。分析して答えが出やすいものばかりに注意が行き、根本的な問題の解決に手が回らない。
    ・ビジネスモデルの変更を考える前に、そもそもそれが実行さへてるのか見るべき。
    ・シンプルに考えよう。大事なのは顧客と従業員の声。
    ・戦略的アプローチの中では、やりながら学ぶ、ということが採用されない。優先順位が明らかになる前に決断し、間違ったら後から直すしかない。

    ◯change or die?
    ・変革は非常に難しいしほとんど上手くいかない、しかししなければいずれ滅んでしまう。
    ・変革に時間がかかるというのは、緊急では無いというメッセージを出しているようなもの。
    ・変革が起こる条件、リーダーが揃えるべき要素
    1. 現状への不満(危機感)
    2. 方向性がはっきりしている
    3. 成功への自社(過信)、自分とチームを心から支持しつつ、自分が全てを知っている、正しいと思わないこと。
    4. 混乱や不安に耐える必要があることへの理解。

    ◯リーダーは組織を掌握してる?
    ・我々は、業績の良い会社には良い経営者が悪い会社には悪い経営者がいると思いがち。
    ・最高のグループは最高の個人よりも常に上。
    ・良いリーダーがすべきこと
    1. 実際のインパクトは限られているが、誰もがリーダーは重要だと考えている。自信を持って行動するふりをしながら、未来について語り、一方で組織の現実と自分の限界を認識する。
    2. 自分のことを良く思いたい傾向は皆と変わらずあり、取り巻きにより助長されるので、とんでもないことをやりがち。知恵の姿勢と謙虚さを忘れない。
    3. 組織のコントロールし過ぎはよくない。どのように、いつコントロールを手放しら他の人にやらせるかを学ぶ。最高のリーダーシップは時にリードしないこと。
    4. リーダーの最高の仕事は、組織の仕組み、チーム、企業文化を設計し、他の人が成功する土台を作ること。
    ・優れたリーダーは、weを主語として使い、必要以上に手柄を他人に譲る。
    ・リーダーは自分が何をすべきか、よりも自分がいることによるマイナスを意識する。時に優れた選手に、何も言わずやらせることが、アドバイスをしたり激励するのと同じくらい重要。
    ・基本的なルールは、自分より部下の方が仕事をよく知っている時は、学びたい時以外一歩下がる。グループが創造的な仕事をしてる時は、偉い人がつきまとったり、フィードバックをすると創造性が下がる。

  • ここでも出てきた。
    無知を知ること

  • Hard facts, Dangerous Half-Truths, and Total Nonsense
    Profiting from Evidence-Based Management ― http://www.toyokeizai.net/shop/books/detail/BI/005ff98209a830cd76a733d7c834b4d2/

  • 企業は「半分だけ正しい」常識に左右される。だからこそ事実に基づいた経営が必要である。
    アイディアや手法を試す前にするべき質問、大きな企業改革を行う前に自問すべきことの質問集がためになる。
    ウェルズファーゴ銀行 コバセヴィッチ 戦略のコンセプトは眠っていてもいえるぐらいに成って欲しい。「アウトローカル、アウトナショナル」。
    リーダーは一歩下がり部下に実践させることも重要である。また自らの限界を知っている。
    行動に移す上で、「失敗したらどうなるか」という質問を投げかける。

  • ビジネスにおける通説に疑問を向け、反例を挙げて否定する。それら通説に惑わされずに、事実に基づいた経営をするよう推奨するものである。対処法として原則を最後に挙げているが、基本的には基礎の徹底である。

    コンセプトは非常に良いと思う。「新しいことなどないに等しい」「人材の能力は変動する」などの視角も基本に忠実でよい。
    ただ、反例のチョイスは恣意的で部分的であり、ビジネスにおける通説がどういう時に事実で、どういう時に事実でないのか、という部分はあまり見えてこない。「BPRは多くの場合失敗する」と言われ軽く事例を挙げられても、成功事例と失敗事例のコンテクストの差は分からない。
    その意味では、基本的なアイディアは提供するが、実用的な本ではないように思える。

    それに、「半分だけ正しい事実」に疑問を向けるという体をとっているが、そのような通説を盲信している人がそれほどいるとも思えない。そのようなケースももちろんあるだろうが、多くのケースは盲信しているから失敗するのではなく、自分たちは大丈夫(成功ケースとなる)と思いながら皆失敗するのではないか。
    目を向けるべきギャップが少しずれているように感じる。
    通説に疑問を持ったからと言って、「事実に基づいた経営」ができるとは限らない。その間の距離はまだまだ遠い。経営上の判断が主観とコンテクストに依存する以上、事実を正しく認識するのは簡単ではない。
    原著は確認していないが、もしかすると訳に問題があるのかもしれない。

    参考文献は充実していて非常に好感が持てるが、論の進め方が雑に見える。言いたいことを言うために引用する、という感じがする。
    事実でないことが事実とされてしまう、そのメカニズムにクローズアップしてくれたらもっとよかった。

  • 新聞記事や学術研究結果をもとに、巷にあふれる経営に関する定説を真っ向から反論。参考文献リストが豊富で◎。

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著者プロフィール

スタンフォード大学ビジネススクール教授(トーマス・D・ディー2世記念講座)。
専門は組織行動学。資源依存理論の提唱者として知られる。スタンフォード大学でPhDを取得後、イリノイ大学アーバナ・シャンペーン校、カリフォルニア大学バークレー校で教鞭を執り、1979年にスタンフォード大学の正教授に就任。これまで16冊の著作を持ち、150本以上の論文を発表。オランダのティルブルフ大学から授与された名誉博士号のほか、数多くの受賞歴がある。スタンフォード大学で教える傍ら、ハーバード・ビジネススクール、ロンドン・ビジネススクール、シンガポール経営大学、IESEなどで客員教授や講師も務める。主な著書に『「権力」を握る人の法則』『悪いヤツほど出世する』『社員が病む職場、幸せになる職場』などがある。カリフォルニア州ヒルズボロー在住。

「2023年 『出世 7つの法則』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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