ストーリーとしての競争戦略 ―優れた戦略の条件 (Hitotsubashi Business Review Books)

著者 :
  • 東洋経済新報社
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  • Amazon.co.jp ・本 (544ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784492532706

作品紹介・あらすじ

戦略の神髄は、思わず人に話したくなるような面白いストーリーにある。多くの事例をもとに「ストーリー」という視点から究極の競争優位をもたらす論理を解明。

感想・レビュー・書評

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  • 今さらだが年末休みに再度通読。
    考え抜いた末の最後のスパイスとして「業界の常識から見れば不合理」な打ち手が全体の要となる、という論の立て方は秀逸。

    しかしこの本もやはり実務の指南書ではない。端的に言って、運転資金が回るのか、についての分析がないのでこれを読んでも事業が回るようにはならない。そこら辺は本書終盤で「撤退基準を定めよ」という形でさらっと触れるのみ。

    もちろん本書は「戦略」についての本なので、日々のオペレーションは経営管理の領域として別書を当たるべきだろう。
    本書の意義として、コンサルの綺麗なプレゼンよりもまずは考え抜こう、ストーリーを立てよう、というメッセージには大いに共感を覚える。
    同じコンテクストでの失敗論、撤退論も読んでみたい。

  • 題名と評価の高さから読んでみましたが、私には合わなかったです。
    以下のように、次から次へと様々な事例が羅列され、内容が薄いと感じてしまいました。

    ------------------------------------
    茶道→レストラン→松井証券→ 液晶モニター→松井秀喜選手
    ------------------------------------

    茶道の例では、
    「種類の違いを重視するのが『表千家』、程度の違いや組織能力が『裏千家』。組織能力の方が暗黙知なので真似されにくい。」と記載がされていましたが、
    具体的にどういうところか私にはわからず、消化不良で終わってしまいました。

  • 楠木建を知ったのはラジオ文化放送の早朝の番組で、週に1回ゲストととして出演していたとき。話が面白く魅力溢れる人。

    社会に左右されずに自分の考えに重きを置き、思い描いた人生のストーリーに忠実に生きる

    競争戦略の第一の本質は他者との違いをつくること。何をやり、何をやらないか、を決める。ひたすら回し続けていると、少しずつ勢いがついていき、やがて考えられないほど回転が速くなる。

    なぜを考えることを惜しんではいけません。抽象化は汎用的な知見を手に入れる可能性が高まる。抽象的な論理こそ実用的。

    よくないのは、情報を集めて調査して、面白いストーリーのネタが見つかるという発想。情報のインプットが多くなるほど、常識が強化する。ストーリーを書く知識は十分、まずは書いてみること。

    まずは自分の頭を使って、自分の言葉で、自分だけのストーリーをつくることが先決。自信を持てるだけのストーリーの原型をつくることが大切。ストーリーの原型ができてしまえば、振り回されることなく、試行錯誤を重ねながらストーリーがより強く、太く、長くなるように磨きかけることが大切。抽象化で本質をつかむ。

    自分で面白いと思えるストーリーをつくることに尽きるというのが私の意見。思わず人に伝えたくなる話。これが優れたストーリーです。逆にいえば、誰かに話したくてたまらなくなるようなストーリーでなければ、自分でも本当のところは面白いと思っていないわけ。話がとにかく面白い。ストーリーを構想し、組み立てるということは、そもそも創造的で楽しい仕事のはず。何よりも話している本人が面白がって話をしている。

    どんな情報に接するときでも、その背後にどういう論理があるのか、whyを考える癖をつけることが大切。簡単にアクセスできる情報には、肝心なwhyが欠落。アクションの背後にある論理は、あくまでも自分の頭で読解。ファクトを漠然と眺めるだけでは、木を見て森を見ず。

    戦略思考を豊かにするためには、歴史的方法が最も有効で過去に生まれたストーリーを数多く読み、背後にある論理を読解するということ。ファクトのつながりにまで踏み込んだストーリーを理解し、そこから戦略思考の考えとなる重要な論理をつかむ。

    具体的事象の背後にある論理を汲み取って、抽象化することが大切。具体的事象をいったん抽象化することによって、初めて汎用的な知識ベースができる。汎用的な論理であれば、それを自分の文脈で具体化することによって、ストーリーに応用できる。抽象化と具体化を往復することで、物事の本質が見えてくる。ここで大切なことは、思考の推進力はあくまでも抽象化のほうにあるということ。意識的に抽象化しなければ本質はつかめない。

    戦略は嫌々考えるものではありません。まず寝食を忘れてしまうほど心底面白いことであれば、いくらでもエネルギーを投入できます。努力が苦痛になりません。

  • 読みごたえがありましたが、非常に面白くスラスラ読み切れました。

    事業戦略策定と聞くと、MBAやコンサルが使うフレームワークや堅苦しいワードで難しく捉えられがちですが、手触り感のある言葉で分かり易く、本の題名通りストーリー立てて説明してありスッと腹に落ちました。

    著者の楠木さんが敢えて長く書かれているのに短く要約するのは気が引けますが、端的に纏めると、「事業戦略であろうが起承転結が大事。起はConcept(コンセプト)。承はComponents(構成要素)。転はCritical Core(クリティカル・コア)。結がCompetitive Advantage(競争優位)でそれらの要素をConsistency(一貫性をもって)繋いでいく(戦略策定の5C)。その一連の戦略ストーリーそのものが競合他社との競争力の源泉となる。5Cの中でもクリティカル・コアが重要で一見非合理に見える打ち手が全体の文脈の中で合理的に働く様なキラーパスとなる策を講じられれば、競合他社にとって模倣の動機はなくなり、むしろ意識的な回避を誘発し、更に強力な競争優位となる」という事と解釈しました。

    纏めるのが下手くそですが、上記内容が具体的な企業(スターバックス・サウスウェスト航空・マブチモーターやガリバーインターナショナル等)の戦略ストーリーを交えながら分かり易く説明されてます。

    間違いなく良書。おすすめです。

  • 競争戦略におけるストーリーの重要性について、
    丁寧に語られた良書です。

    ボリュームはそこそこありますが、
    本書で語られるストーリー自体がおもしろいということもあって、
    一気に読めました。



    最近、ストーリーが大事だ、物語が大事だ、
    と言われますが、競争戦略におけるストーリーの意義を、論理的に説明していて、単なる成功事例の紹介ではないのがよいです。



    本書を読むと、戦略なき経営がいかに多いかを考えさせられるのではないでしょうか。

    単なるポジショニングや、自社の強みに特化した経営ではなく、
    その根底にストーリーがあるか。



    最初から完璧なストーリーなんてありえませんが、
    ゴールから逆算して、いかにストーリーをつくりあげていったらよいか。
    そして、他社と違いをつくるために、どんなことに気をつけていったらよいか。
    優れたストーリーの構造とはどのようなものか。

    示唆に富みます。



    “なぜかといえば、戦略ストーリーの優劣の基準が「一貫性」にあるからです。一貫性こそが戦略ストーリーがもたらす持続的な競争優位の源泉です。先に競争優位とコンセプトを固め、一つひとつの構成要素が強い因果論理でエンディングにつながるようにしてあげれば、自然とストーリーがシンプルで骨太になり、一貫性が確保されます。”



  • ・ブラックスワンでいう「講釈の誤り」感。
     "評論家"が書いたビジネス本の限界を感じる。

    ・ケース紹介がほとんど、文書構成もわかりにくく総じて全部読みたいとは思えなかった。最後は各段落の先頭を適当に拾いながら流し読み。
    ・ケーススタディ多すぎ。



    ・コンサルティング職の人がこの本を取り上げる理由がわかる。ここに書いていることを実際のケースで再現すればそれっぽく仕事した感になるからな。

    ・ビジネスのような複雑な社会科学の分野には法則はないけど理論はある。
    ・優れた結果は複数の構成要素の組み合わせで後付け説明可能。(事前予測できるとは言っていない )
    ・戦略の本質は「違いを作って、繋がる」こと
    ・違いは「程度」(OC )の違い、「種類」(SP )の違い
     繋げるは構成要素同士の論理的、時系列的なつながり。
    ・企業のゴールは持続的な利益。
    ・優れた戦略にストーリーが付与されるのは後付け、細かく読むと当時の現場の試行錯誤が偶々その要素を生み出している。分別あるいじくり回しが大事。
    ・しかし、あらかじめストーリーの原型、もっというとざっくりとした方向性がないといけない。(後付けで説明できる構成要素とその論理関係はその原型に倣いがち ) 意思決定者が大事なのはこの最初の原型、持続的な利益をもたらす鍵の設定。

    「本当のところ、誰に何を打っているのか」

    -------
    無価値な主張は無意味か嘘
    はしにも棒にもかからないこと当たり前のことしか言わないビジネス本。再現性のない嘘を書き散らすビジネス本。

    これからは先の見えない、時代今までのやり方は通用しない、過去の成功体験を一旦白紙に戻す。これは50年以上前にも言われていたこと。

    優れた戦略に対する法則は無いけど理論は存在する。

    違いを作って、つなげる。これが戦略の本質らしい。
    違いとは差別化要因。つなげるとは複数の差別化要因の相互作用、因果理論。
    違いには2つの種類がある。赤と青のような種類の違い。10と100のような数量の違い。

    短絡的な因果論は筋の悪い話になりがちなのかもしれない。みんなが思いつく、みんなが実践できる、何か裏がある、何か壁がある。など。

    賽の河原→無駄な努力

    戦略ストーリーは時間展開を含んだ因果理論
    一般に言われるビジネスモデルは構成要素の空間的な配置形態に焦点を当てている

    "筋の良いストーリーを作り、それを組織に浸透させ、戦略の実行に関わる人々を鼓舞させる力は、リーダーシップの最重要の条件としてもっと注目されてしかるべきだというのが私の意見です。"

    競争戦略は会社名同士の比較では出てこない具体的な事業例えばパナソニックの液晶テレビとソニーの液晶テレビのような視点で初めて競争戦略が必要となる

    会社は唯一目指すべきものは持続的な利益。これ投資先を選ぶのでも全く同じだな

    製薬外車は五つ星業界。

    競争とは放っておいたら利益が出ない状況。何もしなくても給料が出る勤め人には競争がないのかもしれない

    経路依存性

    ターゲットを決めると言う事は何がターゲットではないかを決めることでもある


    一見すると非合理的なものが全体に合理的な結果をもたらすことがある。またそれが競争における各構成要素へのキラーパスになり得る

  • 読了。2度目。物事の考え方の基本に自分だけの面白いストーリー性をつくり実行していく事で世の中に価値を提供出来る、といった話。今後も少なくても1年に1回は読み返す事になるだろう1冊。話していてワクワクするようなストーリー、聞いていて続きが気になるストーリーを作り実行できたら圧倒的な成長を狙える。ウチの会社の皆さまも是非時間があったら読んでみてください。

  • 戦略とは、アクションリストではなくストーリーである。その構成要素一つ一つが交互的に作用し、全体としてのフィットが高まったものが本当に優れた戦略になる。

    経営戦略を「ストーリー」とする独特な視点から捉える楠木さんの名著。実例も豊富で読みやすい。
    経営学の知識が一通りあれば深く理解でき、より面白く読めると感じる。

  • 戦略をストーリーとして、面白く、長く、因果をもって語れるか。
    戦略、と呼んでいるもの、考えていることが、分析であったり、ただの目標値だったり、聞こえの良いバズワードだったり、他でしたことの寄せ集めだったり、そんなことになっていることを正し、ストーリーとして繋がりをもって話せるか?
    面白い本である。

  • 内容は悪くないが8割が具体例

    具体例から抽出したエッセンスを筆者なりに述べている本だから仕方ないのかも

    今後は経営者本人が書いた本や人間の本性に関する本辺りを読んでいきたいと思った
    それに気づかせてもらったというのはこの本の良いところ

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著者プロフィール

経営学者。一橋ビジネススクール特任教授。専攻は競争戦略。主な著書に『ストーリーとしての競争戦略:優れた戦略の条件』(東洋経済新報社)、『絶対悲観主義』(講談社)などがある。

「2023年 『すらすら読める新訳 フランクリン自伝』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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