LIFE SHIFT(ライフ・シフト)

  • 東洋経済新報社
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  • Amazon.co.jp ・本 (428ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784492533871

感想・レビュー・書評

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  • 本書は、今を生きる全ての人、特に年齢50歳以下の人にはぜひ読んでもらいたい本だ。

    先日、政府が「夫婦で老後は2,000万円が貯蓄として必要」と発表したことで大騒ぎになったが、こんなことはちょっと考えれば小学生でも分かることだ。そのことを野党が追及するのも的外れだし、与党も年金制度は破綻しないなどと言うのも全く逃げとしか言いようがない。

    ごくごく単純に考えて年金を積み立てる期間が20歳から60歳の40年間だとして、その後60歳から100歳まで生きるとしたら、その期間は同じく40年間。つまり、単純に自分達の払ってきた年金分しか受け取る資格がない訳だ。

    自分としては60歳からまったく40年間働かずに自分が積み立てた年金だけで暮らしていけるほどの金額を積み立てているとは到底思えない。だからと言って、その分、子供や孫の世代に自分を養って欲しいとも思わないので、自分で働けるうちにその分のお金を貯蓄しておくか、60歳以降も働く必要があるということは自明の理なのだ。
    なぜ、そんな単純なことを大騒ぎするのだろうか。

    年金制度ができた時に、将来、人々の多くが100歳まで生きるなどとはまったく考えられなかったし、若い人の人口が減少していくということも想定していない。
    今になってその仕組みを作った官僚や当時の政治家を非難しても何の意味もないし、現在の政府も「年金制度が設立当時とは全く想定が違っているので再考します。このままでは国全体が破産してしまうので、国民の皆様ご協力お願いします」と素直に言えばよいのだ。

    この本は、年金だけで生きていくことは不可能なので、その分若い時から将来の人生設計をして対応策をしておけということが分かりやすく書いてある。
    もちろん、世界中でこれだけベストセラーになっている本なのだから、ただ「貯蓄に努めましょう」などという、どこぞのファイナンシャルプランナーが小遣い稼ぎの為に書いたような本とはレベルが違う。
    「これからの未来を生き抜く為には、人々の意識を改革していく必要性がある」と説いているのが本書なのである。

    今、50代後半の人ならば、今までどおりに働き、何とか死ぬまで苦労せずに人生を全うできるかもしれない。
    しかし、僕らのように今40代以下の人間が生きていく未来の社会は誰も経験してこなかった社会が訪れる。もう100歳まで生きるのは当たり前となり、どうやって100歳まで生きていくかと言うことが本書で述べられていることなのである。

    もう、年金には頼ることはできない。子供や孫の世代にも頼れない。

    なら、頼ることができるのは、自らの身体と知力だけなのである。
    厳しいことを言えば、今、40代以下の世代の人々は

    60歳で仕事を辞め、その後、死ぬまで悠々自適の生活をすることなどあり得ない
    もう忘れるのだ。
    そんな世界はやってこない。
    働けるだけ働くのだ。70歳だろうが、80歳だろうが。

    この本が説いているのは、どうやったら70歳、80歳まで快適に働けるかということである。
    僕がこの本を読んで、まったくこの本の内容を知らない人に分かりやすく説明してくれと言われたら、僕の理解した範囲、とりあえず以下の例を示すのが一番分かりやすいかなと思うので記載してみる。

    例えば、いま45歳の会社員が定年の60歳まで、現在の職場で毎日残業をし、死ぬ思いをしてあと15年働いたとして、年収約600万円なら15年働けば約9,000万円だ。ここで仕事を引退したらこの約9,000万円から15年間の生活費を引いて、その残った金額で引退後の40年を生きながらえなければならない。
    生活費を1年200万円にしたとして、15年で使う金額は3,000万円。9,000万円から3,000万円を引いた6,000万円で残り40年を暮らしていけるかということだ。つまり、1年約150万円で暮らせるならばそれは可能だ。
    分かりやすく数式にすれば
      600万円×15年=9,000万円
      9,000万円-200万×15年=6,000万円
      6,000万円÷40年=150万円
    ということになる。

    一方、年収400万円だが比較的身体的にも楽で時間的にも余裕のある仕事で定年が70歳の企業に45歳の時に転職したとしたらどうだろう。
    70歳まで25年間働けば1億円を稼ぐ計算になる。先ほどと同じように1年の生活費を200万円にすると、25年で使う金額は5,000万円となり、1億円から5,000万円を引いた5,000万円を残り引退後の30年間で使えるということになる、そうすると1年間で約166万円まで使えるということになる。
    同じく数式にすれば
      400万円×25年=1億円
      1億円-200万×25年=5,000万円
      5,000万円÷30年≒約166万円
    となる。

    身体や精神的負担、時間の自由度、引退後の生活など総合的に判断すると、どちらが自分にとって良い選択だろうか。
    つまり、この本に書いてあるのはこういうことなのだ。

    前者の例で言えば60歳で定年退職した後、再雇用や再就職をするというオプションもあるし、後者の例でも70歳の定年を75歳に延長することも可能かもしれない。
    もし働くことの可能なパートナーがいれば世帯収入は変わってくるし、子供やマイホームを持っていればまた違った計算が必要だろう。

    もう、自分の身や自分の家族は自分で守るしかないのである。

    70歳、80歳まで働くためにはどうすれば良いのか。
    もちろん健康であることは第一の条件だ。
    それから、働くことに必要なスキルや知識をその都度習得することも必要だろう。
    そして自分が好きな仕事、自分がやりたい仕事をその時に見つけるためにはどうすればよいのかを常に考えておく。

    こういったことを今から一人ひとりが考えていけば、その時に大騒ぎすることは全くないのである。
    本書は、こういったことを非常に分かりやすい例を引いて論じられている。
    さすが世界中でベストセラーになる本である、以前から漠然とは分かっていたが、ここまではっきりと記されると、もはや自ら生きる世界が既に変わってしまっているのだときっちりと認識させてくれる良書である。

  • 【はじめに】
    「人生100年時代」という言葉が初めて聞かれたのは、多くの人にとっては2016年に小泉進次郎らが主導して「2020年以降の経済財政構想小委員会」の中で今後の日本社会の状況を伝えるために使われたときだろう。本書『LIFE SHIFT』は、その「人生100年時代」という考え方のベースにもなった本である。

    日本で2007年に生まれた子供の半分は107歳まで生きることになるという。世界でも100歳の声を聞くことができる人の割合は半数を超えるだろうと言われている。1世紀前に生まれた人は100歳を迎えることができる割合が1%に満たないことを考えると長尺の進歩である。最近読んだ『LIFE SPAN』や医療未来学者の奥信也さんの本を合わせて読み、そこに書かれた技術革新の加速度性とバイオ・ナノテクといった領域での進歩の余地を考えると思ったよりも早くその世界は来るのだろうなと確信している。本書は、そういった「人生100年時代」を迎えたとき、われわれの人生をどう考えるべきかについて論じたものである。

    【概要】
    「人生100年時代」になったとき、大きく変わらざるを得ないのは、個人の人生設計である。これまでの寿命を70歳代くらいであることを前提とし、そこから就職と引退を区切りとした教育・仕事・引退、の三ステージの直線的な生き方は、これからは成立しない世の中になる。より長く働き、継続的に自らを再教育していくような「マルチステージ」の人生設計が必要な時代になる、というのがここで書かれていることだ。

    まずとにかく、長く生きるのだから、長く働くことが求められる。国の年金制度は破綻し、企業年金制度もおそらく先細る。したがって、貯蓄・資産運用・共働きなどもますます重要になる。また長く生きるとすると、有形の資産形成も重要だが、それ以上に友人関係・家族関係などの無形資産が大事になってくる。人生の最後の時間は単なる余暇を楽しむ時間(レクリエーション)ではなく、再創造(リ・クリエーション)の時間だと考えるべきである。マルチステージの人生をうまく歩んでいくために、著者は「オプション」を増やすべきだという。つまり、自分の幅を広げるということだ。そのための無形資産として、生産性資産(知識、ノウハウ)、活力資産(健康、家族・友人)、変身資産(自らを変えていく能力)が重要になってくると説く。
    重要なことのひとつ(重要なことはたくさんあるのだが)はエイジとステージが切り離され、そうであるがゆえに、これらの無形資産の重要性が増していくということだ。

    本書の中で、ジャック(1945年生まれ)、ジミー(1971年生まれ)、ジェーン(1998年生まれ)の三世代がどのように異なった世界を生きていくことになるのかが描かれている。この寸劇的描写には好き嫌いがあるのかもしれないが(自分は、なくてもいいんではと思う方)、とにかくこの三世代で大きく家族観や仕事観が変わるであろうことが明確に示されている。
    もちろん、これらは想像上の事例に過ぎないが、ひとつの傾向性を示していると言える。そして、あなたが何歳であっても、変化に備えることが必要だということは言えるのではないだろうか。

    【所感】
    寿命が伸びる話はもちろん個人に関しては長生きできるというのはおおよそよいことではあるのだけれども、社会面では高齢化社会の進展とそれによる社会保障制度の崩壊のイメージと強く結びついているのが実情だ。「人生100年」と言われた場合にも、そういった負の側面をイメージする人が多いのではないだろうか。先般、老後の資金が引退時に2,000万円必要という数字だけが独り歩きしたニュースがあった。あれ自体はとても受け取る側のリテラシーの問題を強く感じたものだったが、一方で世の中でその不安が根底に根強く渦巻いているのがあるからだろうというのは容易に想像がついた。

    この件でもっとも大事なことは、平均寿命が伸びることと、健康寿命が伸びることは大きく違うことを意味しているということを理解し、区別することだ。そして、その理解の下で初めて長寿化の問題は個人の人生設計の選択の問題として正しく目の前に現れるということだ。

    著者はこれからの生き方として、「エクスプローラ」「インディペンデント・プロデューサー」「ポートフォリオ・ワーカー」といった新しい働き方のカテゴリーを提唱しているが、そんなに難しく考えることはないだろう。いずれにせよ、学習をし続けて、人間の幅を広げようということだと思う。それはそれで楽しいことだと思う。もはや20代で付けた知識が引退するまで通用することはほぼないというのは、情報通信産業で働いているとよくわかる。例えば自分はISDNが主流であったときに入社したのだが、そのときに言われたのが、ISDNを勉強していればしばらくは飯のタネになる、というものだった。ISDNはもはや過去のものとなり、サービスの完全終了もあと数年だ。固定電話も早晩無用の長物になりそうだ。

    本書では日本語版への序文が付されるとともに、本文の中でも日本を長寿化の先進国として、ある種の期待をもって語られている。個人も社会も変わらないといけない。個人的に期待しているのは、変わらなければならないということが明らかになったとき、日本という国はこれまでかなりうまくそのことを受け入れてきたことだ。

    健康寿命への社会的地位や経済力の影響は、平均寿命への影響よりも大きいかもしれない。社会格差・経済格差が世代で固着化する傾向が進んでいると言われる中、情報へのアクセス含めて新たな不平等への懸念も生じる。かなり射程の広い本。現代社会の基礎本と呼べるかもしれない。

    ----
    『LIFE SPAN: 老いなき世界』(デビッド・A・シンクレア)のレビュー
    https://booklog.jp/users/sawataku/archives/1/4492046747
    『未来の医療年表 10年後の病気と健康のこと』(奥信也)のレビュー
    https://booklog.jp/users/sawataku/archives/1/4065211379


  • 他方面で影響をもたらした本書を改めて読み直しました。

    日本のみならず先進国である程度共通する諸問題を正確に捉えており、その中でも日本が急速に進んでいる、そのために危惧すべきという論調です。

    従来の社会制度そのものが変動する中、私たちの価値観、生き方、お金に関する形成方法などに自分自身で考えるヒントをくれます。

  • 多くの国で長寿化が進む中、「2007年に日本で生まれた子供の半分は、107年以上生きることが予想される。」
    本書では、100年生きるためには、現在の「教育→仕事→引退」という3ステージの生き方では暮らしていけないため、年齢による形式的なステージではなく、個々人の選択によって、必要なときに教育を受けたり、育児をしたり、職を変えたりといったマルチステージな生き方が求められることが指摘されている。

    日本でも引退後の生活費として2000万円の貯蓄が必要だという発言が話題になったりしたが、100年生きることが普通になれば、現行制度では破綻するのは目に見えている。これまでは50歳の人は、そろそろ退職を視野に考えていたと思うが、実はまだやっと人生の半分。何かスキルを身につけなければ、生きてはいても質の面で満足のいく生活を続けることは難しいということを再認識した。

    本書では、1945年生まれのジャック、1971年生まれのジミー、1998年生まれのジェーンのライフスタイルを収入・支出の状況と育児分担、人との付き合いなどのパターンを変えた形で示しているが、いずれも結婚して子供がいるパターン。お一人様であれば、より厳しい状況になる。

    技術革新等により、いくつになっても働ける場は増えるかもしれないが、企業側の受け入れ体制や年齢にかかわらず学べるシステム、公的補助制度など、社会全体が変わる必要性があるという指摘には全く共感する。加えて、各人の意識の差、能力の差によって、高齢になったときの生きやすさ、幸福感を得られるかなどの差はますます大きくなると思われる。
    そうした世界を生きていかなければならない、今の子供たちは大変だ・・。

  • この本によれば、今のまま平均寿命が伸び続ければ、我々は長く伸びた人生に充分な収入を確保するために、人生の様々な段階で、自己への再投資が必要になる、らしい。

    漠然と、歳を取ったら漫画の「いじわるばあさん」のような老婆になりたいと思っていたけれど、実際にそれが何歳の自分なのかは、考えたこともなかったなあ。

    この本で書かれている方向に政治や企業が変わるのには、まだだいぶ時間がかかりそうだな、と思いつつ、自分の周りを見渡してみると、ちらほら色んな選択をする人もいて。
    どれが正解、じゃなくて、自由に選べるようになったら、やっぱりいいよね。
    面白かったから、そのうち続編も読もう。

  • 「人生100年時代」を迎えると、教育→仕事→引退、という3ステージで構成される人生モデルが崩壊する。
    なぜなら、引退生活が長すぎて、貯金が足りなくなるから、所得を得るために仕事する期間が長くなる。
    →仕事する期間が長引くと、若い頃に受けた教育内容だけでは必要なスキルがまかなえなくなり、仕事人生の中でスキルへの再投資や「変身」を複数回こなさないといけなくなる。

    「変身」のために重要なのは、
    ・新しさに開かれた姿勢
    ・主体的に作り上げるアイデンティティ
    ・多様な人的ネットワーク

    「人生100年時代」ってこういう本だったのね。周りを見ると若い子達は結構上手に変身資産を貯めてる気がする。本を読んでいて私の心のうちにも変身欲があることに気づきました。

  • 【感想】
    はじめの数ページで最早名作!!
    かと思いきや、前半100ページで失速…
    論文風なのは大いに結構だが、如何せん蛇足が多い。ページのカサ増しか??
    正直なところ、後半ほとんどのページがあまり参考にはならなかった。

    今後医療技術の発達によって、寿命が更に延びてくる。
    「高齢化」について、これまでネガティブなイメージが先行していたけど何のその!
    言われてみれば、確かに大きなパラダイムだと思う!
    定年や寿命の概念が、今後大きく変わってくるなんて、誠に面白い!!
    どうせ何年後には死ぬんだから、この人生は目一杯楽しくチャレンジしていこう!!
    「生涯現役」。そんな気持ちで生きて行きたいものですな。

    ただ、長く現役でいるって事は本当に大変だと思う。
    「レクリエーションではなくリ・クリエーション」とは本当によく言ったものだな。
    今までの経験やOJTのみでは取り残されていく混沌とした時代になっていく事はもはや避けられない。
    これは気持ちを締め直して、新しいスキルとかについても積極的にチャレンジしていかないとねー。
    大なり小なり、自分にも変化を恐れているところがあるしね・・・

    長々と書かれていたが、この本の重点は「長い人生をどのように生きるのか」この一言に尽きる。
    俺も他人事ではないねんから、しっかりと向き合って自身のバージョンアップに余念をなくそうではないか!


    【この本から何を実践する?】
    ・人生プランの見直し。大きくで良いから、絵を描いてみよう。
    ・保守的はNG!「食わず嫌い」をなくして、新しい知識にも勇猛果敢にチャレンジしましょう!


    【内容まとめ】
    1.「長寿化を厄災(マイナス)ではなく恩恵(プラス)に変えるための生き方」とはどういうものか?
    2.医療技術の発達により、楽しく過ごせる時間、働ける時間など、割合も総和も増えてくる事が予想される。
     そうした中で、「人生をどのように過ごすか」というプランニングは非常に大事になってくる!
    3.これまでの「ロールモデル」が通用しなくなってくる。自分でプランニングする事が重要!
     20代でスキルと知識を身につけて、その後は再投資なしでキャリアを生き抜く事が難しくなる。
     移り変わりの激しい時代になると、その時代に適応するための自己投資が生涯必要となってくる。
     勉強が若いうちだけやれば良いという時代ではなくなってくる!
    4.「消費とレクリエーション(娯楽)」→「投資とリ・クリエーション(再創造)」に


    【引用】
    本書は、「長寿化を厄災ではなく恩恵に変えるための生き方」に関する手引き。
    キャリアを中断し、長い期間を得て、スキルの再習得と活力を取り戻す事に充てる。


    ・長寿化はマイナスではない!
    日本では高齢者問題として長寿化を「厄災」と捉えがちだが、決してそうではない。

    働き方や働く時間、結婚の価値観や出産のタイミング、余暇の長さや過ごし方。
    ありとあらゆる場面で大きな変革を生み出すであろう。

    そして、過去のモデルは通用しなくなる。
    長く生きる事に対するライフモデルは、これからの日本、ならびに一人一人の肩にかかっている。



    ・寿命が長くなる=老後が長くなるではない
    今後の医療技術発達により、楽しく過ごせる時間、働ける時間など、割合も総和も増えてくる事が予想される。
    そうした中で、「人生をどのように過ごすか」というプランニングは非常に大事になってくる!

    →言われてみれば、確かに大きなパラダイムだと思う!定年や寿命の概念が、今後大きく変わってくるなんて、誠に面白い!!


    p7
    給料の良い職だけではなく、じっくり時間を取って様々なキャリアの選択肢を検討する。
    未来の夫、妻とのパートナーシップの在り方についても考える。
    人的ネットワークも広げる。
    自分について、人生についてしっかり考える。

    人生のロールモデルを自身で設計する!
    これから更に長寿化が進むであろうこの世界で、その恩恵を最大限浴するにはどうすればいいのか??
    将来を見通してしっかり準備すれば、長寿を厄災ではなく恩恵にできる!!


    p21
    ・オンディーヌの呪い
    不貞を働いた夫バレモンに対し、妖精オンディーヌが「起きている間は生きられるが、眠ればその瞬間に死ぬ」という呪いをかけ、バレモンは一瞬の休みもなしに働き続ける羽目になったという。

    既存の3ステージ、「教育」「仕事」「引退」だけで寿命が伸びれば、それは厄災以外の何物でもない…
    色々な人生を経験するマルチステージこそが、オンディーヌの呪いから逃れる方法!


    p24
    ・70~80代まで働く場合
    労働市場に存在する職種は大きく入れ替わり、オフィス労働職のほぼ全てがロボットや人工知能によって代替・補完される。
    20代でスキルと知識を身につけて、その後は再投資なしでキャリアを生き抜く事が難しくなる。


    p25
    長寿化するにあたって、どうしても仕事のステージは長くなってしまう。
    しかし、それはあまりにも消費が多く、あまりにも退屈だ。
    そこで、複数のキャリアを持とうとする「マルチステージ」という考え方が登場する。

    金銭面、家族、社会的など、色んなものに軸を置き換えて働く。
    寿命が伸びることの恩恵の一つとして、キャリア面で二者択一を迫られない事がある。

    メリットだけではない。
    移り変わりの激しい時代になると、その時代に適応するための自己投資が生涯必要となってくる。
    勉強が若いうちだけやれば良いという時代ではなくなってくる!

    余暇は、新しいステージに向けて自分を再構築するための再投資の時間に充てる事が今後必要となってくる。
    人生が短かった頃は、余暇をもっぱらリラックスのために用いるのが理にかなっていたが、人生が長くなれば、余暇は新しいステージに向けて自分を再創造するための投資の時間にもなる。

    消費とレクリエーション(娯楽)
    →投資とリ・クリエーション(再創造)に


    p97
    なぜ多くの人が都市に住みたがるのか?
    質の高いアイデアと、高度なスキルの持ち主のそばに身を置くことの重要性が高まっている。
    都市には質の高いアイデアと高度なスキルを持ち、自分と同様の高スキル層の多い街に住みたいと考える人たちが集まってくる。

    そのような土地でこそイノベーションが急速に進むことを知っていて、他の聡明な人たちのそばで暮らし、互いに刺激し、支援し合いたいと考えるからだ。


    p109
    ・仕事の未来はどうなるのか?
    未来を予測することは簡単でないが、長寿化時代を生きる人は、早い段階から将来のキャリアについて考えておかなくてはならない。


    p119
    ・見えない「資産」
    お金と仕事の面だけを見ていては、人間の本質を無視することになる。
    お金に換算できない要素、つまり無形の資産に光を当てること。
    →家族、友人、スキル、知識、健康

    無形の資産はそれ自体として価値があり、また有形資産の形成も助ける。
    良い人生を歩むためには、有形と無形両方の資産を充実させ、両者のバランスを取って相乗効果を生み出す必要がある。


    p145
    加齢に伴い、脳は小さく軽くなり、機能は衰える一方。
    50歳を過ぎると脳の萎縮が始まり、80歳を超えるとそれが一挙に加速する。
    しかし、筋肉を鍛えるように脳を繰り返し使用して訓練を積めば、機能を高めたりダメージからの回復を後押しできる。


    p156
    ・変身予算
    人生の途中で変化と新しいステージへの変更を成功させる意思と能力。
    テクノロジー変化の加速を考慮し、マルチステージの人生を生きるためにスキルを学び直す期間を設ける必要性が高まる。


    p170
    人生が長くなれば、以前とは大きく異なり、不確実性と予測不能さが拡大する。
    →VUCA
    未来への道筋として、まっすぐの一本道を描くことができなくなっていく。
    また、人の性質として、誰もが現状維持を好みがちで既知のものを彫らず傾向が強い。


    p198
    そもそも職場の研修だけで、スキルが古びることを避けられるだろうか?
    おそらくそれは不可能だ。
    自由に使える時間の一部を、レクリエーション(娯楽)ではなく、リ・クリエーション(再創造)するために振り分ける必要が出てくる。


    p219
    【第6章 新しいステージ】選択肢の多様化
    長寿化がもたらす恩恵は、煎じ詰めれば「時間」という贈り物。
    人生が長くなれば、目的を持って有意義な人生を形づくるチャンスが生まれる。


    p232
    ・エクスプローラー(探検者)
    「私にとって何が重要なのか?」
    「私が大切にするものは何か?」
    「私はどういう人間なのか?」
    エクスプローラー達は、こうした問いに答える事を目的としている。

    一方、特定の問いを持たないエクスプローラーもいる。
    新しいものを発見する喜びを味わうために旅に出る「冒険者」たちだ。
    多様なものに触れ、真の実験を行う。
    他の人たちの生き方を目の当たりにし、自分の価値観と物事の優先順位を改めて深く考える。


    p240
    ・インディペンデント プロデューサー
    =独立生産者
    永続的な企業を作ろうと思っていない。
    一時的なビジネスで、ときには目の前のチャンスを活かすための1回限りのビジネスの場合もある。
    素早く実験をかさねて、何がうまくいかないかをチャレンジを重ねて学んでいく。


    p273
    ・お金に関する自己効力感
    お金の面で人生の計画を立てるために不可欠なのが金融リテラシー(お金に関する知識や判断力)。
    仕事関係の知識と同じように、金融に関する知識も本腰を入れて学ぶべき。


    p276
    ・投資の落とし穴にはまらない人
    1.リスク分散のために投資対象を分散させる
    2.高齢になると損失取り返しの時間がないことを承知の上で、引退が近づくとポートフォリオのリスクを減らし始める。
    3.資産の市場価値を最大化させる事より、引退後に安定した収入を確保することを重んじる。


    p291~
    【第8章 新しい時間の使い方】
    昔と比べて労働時間が減っているのに、どうしてこれほど多くの人が時間貧乏だと感じているのか?
    →余暇時間=仕事をしていない時間ではないから。
    通勤時間や仕事にまつわる時間、プレッシャーなどを含めると、「リフレッシュしている時間」という概念からは余暇時間とはいえない状況となっている。

    やはり、余暇時間がレクリエーション(娯楽)ではなくリ・クリエーション(再創造)の時間へと変わることは間違いない。


    p355
    最も切実なのはお金の問題だが、金額に換算できない無形の資産に目を向けると、本当に重要なことが見えてきた。
    経済学と心理学の研究によれば、長寿化時代には人生設計と時間の使い方を根本から見直す必要があるのだ。
    そうすることで初めて、長寿を厄災ではなく恩恵にできる。

  • 長寿化による100年ライフは間違いないとは思いますが、この本のシナリオには適応するにしても適応できないにしても楽な老後にはなりそうもないですね。

    リ・クリエーションや変身と言われてもどうすれば良いのやら…と言う感じはありますが、私自身もいわゆる就職氷河期で新卒入社が叶わず第二新卒でのキャリアスタートで、その後に何回か転職も経験しましたが、それなりの生活になっていると思います。
    この本の提案とは違うかもしれませんが、典型的な3ステージの生き方とは多少なりとも違った生き方を実践してきたのかもしれません。

    子供たちの世代には、私が経験したような人生が特に珍しいものではなく、色々な選択肢の中から自分で選ぶ事が大事だと言う事を伝えたいです。

    私自身は家と職場の往復だけでなく、本を読んだり、趣味や仕事を通して人と会ったり、これからも少しづつ自分の世界を広げていこうと思います。

  • 3ステージの人生を計画していたので、寿命が伸びる100年時代の到来には驚きと不安を覚えた。

    社会に出て10年近く経過したが、学んだ知識の陳腐化を感じ始めていたので、本書が提唱するリクリエーションは心に響いた。

    伸びた人生を謳歌するには経済的な見通しや無形資産の構築に若いうちから取り組むことが重要だと思う。
    本書を読んで再認識できたのは良かった。

  • 寿命が長いから計画しよう!ということはよくわかったが、具体的な対策についてはいまいち参考にならなかった気もする。しかし、考慮すべき項目、有形資産、無形資産で教育や自分探しの価値が高まることなどは確認できてよかった。

著者プロフィール

リンダ・グラットン
ロンドン・ビジネス・スクール経営学教授。世界経済フォーラムの「新しい教育と仕事のアジェンダに関する評議会」責任者。世界で最も権威ある経営思想家ランキングであるThinkers50のトップ15にランクイン。「人生100年時代」の提唱者として2018年には「人生100年時代構想会議」のメンバーに任命された。


「2022年 『まんがでわかる LIFE SHIFT 2(ライフ・シフト2)』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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