人工知能が金融を支配する日

著者 :
  • 東洋経済新報社
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  • Amazon.co.jp ・本 (226ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784492581087

作品紹介・あらすじ

今、IBMやGoogleの人工知能研究者が、次々とヘッジファンドに引き抜かれている。彼らは最新の人工知能のテクノロジーを駆使し、驚異的な分析能力と取引速度を有するロボ・トレーダーの開発することで、富を独占しようとしているのだ。また、人工知能の進歩は、大規模に、急速に、金融業界の雇用を奪おうとし始めている。
 本書では、あまり報道されることのない金融業界と人工知能の「裏舞台」を喝破する。

感想・レビュー・書評

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  • ヘッジファンド業界で人工知能を使いこなすファンドが優勢になっている。従来の経験と勘に頼るカリスマ投資家の時代は終わりを告げようとしている。
    人工知能は急速な進歩を遂げつつあり、チェスは10の120乗、将棋は10の220乗、囲碁は10の360乗のパターン数があるが、人工知能は次々と人類を打ち破っている。
    また、人工知能やビッグデータの分析技術の進歩により702の職種のうち47%が90%以上の確率でロボット化の可能性があるという。
    ニューラルネットワークによる機械学習の特徴は、なぜ人工知能がそのような結果をアウトプットするのかわからないという。つまり、それを作った製作者でさえ、その理由がわからないのだ。
    日本はアシモやペッパーのようなヒト型ロボットには強いが、目に見えないロボットには関心がなく遅れている。これから金融業界で必要とされるのは目に見えないロボットであり、日本はこのままでは世界に取り残されてしまうだろう。

  • 櫻井豊『人工知能が金融を支配する日』(東洋経済新報社、2016年)は人工知能が金融業界で利用される未来を論じる書籍である。株式などの金融商品を売買するトレーダーは人工知能に取って代わる未来が現実化しつつある。さらに多くの仕事が人工知能の対象になると予測されている。
    本書はタイトルからして「人工知能が金融を支配」であり、このことに悲観的なイメージを持ってしまうが、人脈コネが物を言った社会からの解放というプラス面がある。人工知能トレーダーの登場も金融取引が人間のブローカーを通じてではなく、電子取引で行われるようになったためである。ブローカーを介するとブローカーの不正問題を考えなければならなくなる。それよりは電子の方がまだ消費者にとって正直なのではないか。
    好むと好まざるとにかかわらず、人工知能の発達と普及は現実である。ところが、日本社会は遅れている。日本では経験と勘に頼りがちである。また、旧大蔵省の旗振りの護送船団方式によって、横並びの行動に慣れてしまい、イノベーションを起こせなくなっている。ロボットや人工知能を人間的に考えるところが日本の強みと考えられていたが、それが弱みになっている。
    本書は悲観的な将来予想として、人工知能技術が一握りの人や企業に独占されることとする。この懸念は既に多くの指摘がある。人工知能だけでなく、GAFAのような巨大IT企業への批判として存在する。しかし、古代から現代に至るまで市民の人権を侵害する最大の主体は国家であった。巨大ファンドやIT企業の登場は、国家を相対化するという面がある。巨大ファンドやIT企業への批判は、権力を独占していた国家の側の既得権擁護の側面があり、消費者がそれに乗せられないようにしたい。
    別の未来予測として優れた技術が広く共有化されるケースがあるとする。そこでは個々の金融機関による競争の意味が薄れ、公共的なサービスという側面が強くなるとする。しかし、キャピタルゲインの投資は儲かる人と損する人の出るゲームであり、勝ち負けが存在する。新たなアルゴリズムの開発などイノベーションも存在する。競争はなくならないのではないか。

  • ロボ・トレーダーについて
    ロボ・アドバイザーについて
    その他の人工知能による金融サービスの代替

    市場のランダムウォークというモダン金融ポートフォリオ理論は、当時の分析技術では市場の動向に規則性が見いだせなかったことに基づくが、現代のビッグデータ分析技術をもってすれば、何らかの法則性が見いだせる可能性を否定できない

  • チェス、将棋、囲碁とAIができる領域はどんどん広がっている。日本の金融機関が遅れないようにリテラシーを高めることが必要。今後はプログラムを書くことすら不要となり、AIが学習プロセスによって勝手に習得を続けるようになるかも。

  • 人工知能が 様々なところで、言われるようになってきたこのごろ。
    将棋において、棋士が人工知能に負けて、
    囲碁においても、アルファ碁に同じように 負けた。
    少なくとも、おおきな変化が起こっているな
    と思っていたが、あまり深く 考えていなかった。

    よく考えたら、お金と言う数字を扱っている分野である
    金融に 人工知能が 有効ではないかと思って、
    この本を 読んでみた。
    想像を超えて、人工知能が 金融の分野に浸透して
    活躍している様を見て、驚いたのである。
    株式、為替などの分野において ロボトレーダーが
    人間の勘と経験をもったトレーダーを追い出していた。
    疲れを知らず、感情に溺れない ロボトレーダーが、
    粛々と活躍していた。なんとも言えない 情景である。
    人工知能って、ロボットのイメージがまとわりつくが、
    みえない 人工知能が 株式と為替などを黙々と 活躍していた。
    人工知能は 1万分の1秒の時間で 高いものを売り、安いものを買うと言う
    シンプルな作業で、利益を上げ続けているのである。
    いまは、人間のトレーダーの闘いではなく、
    ロボトレーダーの 品質と機能における闘いになっているのだ。
    人間が 購入を決めて、送金している間に、行なわれている。

    ヘッジファンドが、積極的に 人工知能の研究者を
    ヘッドハンティングしている様は スゴイものがある。
    いやはや、金融業は 人工知能が 支配し、
    人間は 駆逐されてしまう。
    三菱UFJ銀行の職員 3万人は、まったくいらなくなるのかもしれない。
    銀行は、ロボバンカーによって、運営される日が来るのかもしれない。
    衝撃的な 本だった。

  • 遠くない未来にタイトル通りの世の中になりますね。そして、確かに日本の金融業界は猛烈に遅れている。僕らのようなベンダーの方がよっぽど危機感持ってるんだけど、伝わらないなぁ…

  • 日米の現状が分かった。

  • ロボットに代替される仕事の量が多い金融業。業務内容から人工知能との相性がいいからだろうけど。影響があるのは金融機関だけじゃなく他の業種もそうなんだろうけど。
    日本の金融機関は米英と比べて人工知能への対応が遅れてるとのことだけど、いずれ対応しないといけないだろうな。その時どんな変化が起きるのかな。著者が言うように公共性が高くなるほうに変化したらいいんだけど‥

    日本では馴染みが薄いヘッジファンドに引き抜かれている人工知能の研究者。見えないところで人工知能の研究が進んでいるのは怖いよな。
    今の人工知能の機械学習の特徴が、【なぜ人工知能がそのような結果をアウトプットするのかがわかり難いということ。これはニューラルネットワークが人間の脳神経の働きを真似る手法から来ている特徴】
    アウトプットが分からない、っていうのが‥現時点はともかく将来的には、人工知能にとっては論理的であっても人間には暴走に見えることが起こるんじゃないか、っていう不安が。

  • ロボットが自ら学習する能力を身につけた時、金融に人の居場所は残されているのか? ファイナンスとテクノロジーを熟知した専門家が、あまり報道されることのない金融業界と人工知能の「裏舞台」を明かす。

    00 金融とテクノロジーの表舞台と裏舞台
    01 金融市場はロボ・トレーダーだらけ
    02 今、ヘッジファンドは何を考えているのか?
    03 資産運用では人はロボットに勝てない
    04 世界を変える人工知能の進化
    05 ロボットに奪われる金融の仕事
    06 金融ロボット後進国、日本の危機
    Conclusion 表舞台と裏舞台の両方から変わる金融界

  • 人工知能がこれから金融の分野に進出してくるという話し。あまり聞き馴染みのないヘッジファンドで世界最高レベルの科学者が集められてるという話しは興味深かった。

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著者プロフィール

櫻井 豊(サクライ ユタカ)
リサーチアンドプライシングテクノロジー株式会社 取締役
金融市場と金融商品、及び金融技術の専門家。1986年に早稲田大学理工学部数学科を卒業し東京銀行(現三菱東京UFJ銀行)入行。2000年にソニーのネット銀行設立メンバーに加わり、ソニー銀行執行役員市場運用部長などを経て2010年よりリサーチアンドプライシングテクノロジー株式会社(RPテック)取締役。入行以来ほぼ一貫して金融市場におけるさまざまな金融商品を用いたトレーディング、資産運用などの業務に従事し、金融市場の実態、理論とそこで使われる技術を熟知する。主な著書に『数理ファイナンスの歴史』(金融財政事情研究会)がある。

「2016年 『人工知能が金融を支配する日』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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