翻訳ものを読んでいて、原文を読んでいなくても「こなれているなあ」と思ったことはありませんか。
本作は、そんな金融英語についての「こなれた」感が強くにじみ出ている英語本だと思います。
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内容は全4編で金融の内容について章だてが分かれています。2章が株式、3章が債券とかそういう形です。その扱う内容は非常に基礎的で金融業界で働く我が身からすれば初歩に近い極々簡単な内容。
でも出色はその例題。和訳と英訳の練習問題がついているのですが、この模範解答が実に「こなれている」
例えば第1章の例題と模範解答はこんな感じ:
In the late 1990s, many banks and security firms poured resources into investment banking area. When the bull-run slowed down after the dotcom boom, most of them found themselves trapped between the overheads of a global network and the revenue of second-tier players.
「1990年代の後期には、多くの銀行や証券会社が投資銀小部門に資源をつぎ込んだ。相場の上昇局面がITブームの後減速した時、彼らのほどんどは、世界註に張った拠点の間接非常がかさむ反面、準大手程度の収益しか得られないといった板挟み状態にはまっていた」(P21-P.22)
とりわけsecond-tierを準大手と訳した点とbetweenを副詞句として訳すのではなく「板挟み状態」と訳した点に脱帽です。この訳がどれほど素晴らしいかは、近年よく耳にするAIを使った翻訳マシンのDeepLなどで試して頂きますと非常によく分かります。
これ以外にも付録には多くの金融用語の訳例が載っており、英語で金融欄を読みたい方などには非常に役に立つと思いました。
惜しむらくは、このような「こなれた」感をどうすれば身に付けられるかはどこにも書いていないこと。出来ることと言えばこういうのをまねて英文をかく、あるいは英文から和文に訳すくらいか。
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処分しようと思って、その前に確認がてらの再読でしたが、結局迷って本棚に戻しました。ここまでの英語力はまだまだありません。なお、金融やマーケットの世界は上げ下げなど表現する内容は単純ですが、表現バラエティは数多くあります(grow, rise, hike, skyrocketとかそういうやつ)。そうした点ではIELTSなどで要求される語彙のバラエティを鍛える上でも使える可能性を秘めた本であると感じました。