- Amazon.co.jp ・本 (225ページ)
- / ISBN・EAN: 9784492762004
作品紹介・あらすじ
発送配電分離は真の解決ではない。新しい「エネルギー基本計画」を策定する総合資源エネルギー調査会・基本問題委員会の委員を務める電力業研究の第一人者による書き下ろし。
感想・レビュー・書評
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2011年9月の原発事故直後に上梓された電力経営史家による原発事故と対策を歴史的コンテクストを踏まえて述べた本。
発送電分離の問題点や日本電力会社の強みなど電力会社を是とするものは是とし、東電破綻も含めて非とすべき点は非と的確に整理されており参考になる。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
筆者の橘川先生は、10電力中7電力の社史編纂に関わったことがあるとそうですが、確かに歴史的経緯や各社の社員の雰囲気についてはそうなのだろうな、という記述が多いです。
ただ、技術的な理解や説明が曖昧であったり、提示される改革案(原子力を一般電気事業者から切り離して国営化、その他は垂直統合のまま民営)には電力制度全体や今後のエネルギー需要を見極めた視点がなく、競争が起こらないのも「暗黙の了解があるのではないか」といった曖昧な原因を指摘するにとどまり、何故地域独占が守られ相互地域への参入が少ないのかについてアクセスチャージ(託送料)という本質的な経済性を左右する点に全く触れていないのは片手落ちどころでは言えないかと思います。
なお、個人的には、東京電力企画部だけが経済学的な合理性を問う論争・理論武装をなしていたという記述を興味深く、東京電力には、おそらく記者会見とかでは出てこないようなミドル層や企画部は大変(学問的に)優秀な方がいるのだと推測しますが、彼らの力が活かせているかと思うと、ある種「垂直統合絶対」に縛られているので残念ではあります。 -
必読書、といっても過言ではない。
橘川さんといえば、エネルギーについてはもちろんですが
「電力会社」の研究においては他の追随をゆるさないくらい
かなり詳しく研究されている方。
経営史の編纂を行うほど
電力業界の現状をよく知る学者の一人。
かといって、御用学者ではなく、非常に客観的に業界を研究している。
東電の震災後の一連の対応と
その問題点の「本質」がどこにあるのかを丁寧に解説してある
・原子力発電の問題の本質
・電力会社の構造の本質
・アンバンドリングを含めた今後のありかたの提唱
まとめれば
「電力会社のマネジメント力の貧弱さと、現場力の素晴らしさの招く歪み」
であろうか。
指摘はどれもそのとおりと思う。
どれも、橘川さんだからこそできる、ニュートラルな内容。
電力事業というものを理解する上で、これ以上は無い。
深すぎず、浅すぎず。
電力会社寄りのしょうもない議論でもなく
再生可能エネルギーに寄り過ぎた近視眼的議論でもなく。
かなりホンネの部分での理解ができると思います。
正直、この業界にいる人間には必ず読んで欲しいと思う。
一般の人にも読んで欲しい。 -
題名がやや衝撃的ですが、内容は東電に限らず日本の電力業界に関する考察です。歴史的、実証的な内容でフェアな内容で、読みやすい内容でした。新聞などで取上げられている事象がより理解しやすくなりました。
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展示期間終了後の配架場所は、開架図書(3階) 請求記号:540.921//Ki22
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東電そのものと言うより、戦後日本の電力会社のたどってきた歴史を概観できる。