知らなきゃヤバイ!電気自動車は新たな市場をつくれるか (B&Tブックス)
- 日刊工業新聞社 (2010年2月1日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (149ページ)
- / ISBN・EAN: 9784526064043
作品紹介・あらすじ
電気自動車の本格的普及には、これまでのクルマに対する常識を超えた発想が必要です。単に「動力の電動化」という捉え方では、電気自動車は決して究極のエコカーとは言い切れません。電気自動車を取り巻くエネルギーをトータルで考える必要性も求められるのです。新たな市場をもたらすクルマの"新常識"とは…。
感想・レビュー・書評
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最近住んでいるところの駐車場を良く見てみると”プリウス”が目につくようになりました。プリウスはハイブリッド車ですが、プラグイン型のものも販売される予定で、近い将来に電気自動車が主流になっているかも知れません。
個人的には今使用している車を丁寧に使って、あまり車を使わない生活をすれば(主に自転車利用です)環境に優しいとは思っていますが、どうしても車を使わなくてはならない人にとっては、今後は電気自動車を買換時に検討することになる可能性もあります。
2回目とも3回目とも言われている電気自動車ブームは今度は本当なのでしょうか、インターネットもネットワーク構築がされて急速に発展したように、電気自動車も前提が整えば飛躍的に拡大する可能性もあります。電気自動車の業界に興味のある私にとっては参考になる一冊でした。
以下は気になったポイントです。
・エジソンが1879年に白熱電球を発明すると、明かりは電気でとなり石油産業は大打撃を受けるはずであったが、ガソリンエンジンの発明により救われた(p7)
・エネルギー密度の低さというバッテリーが抱える特性が、巡航距離の延長を妨げている(p34)
・リチウムイオンバッテリーのエネルギー密度は、200Wh/L,100Wh/kgであり、ガソリン:16000Wh/L,12000Wh/kgで比較すると容積で80倍、重量で120倍の差がある(p36)
・電力供給側のコイルを地中に埋め込めば、その場所へ電気自動車を停車するだけで、充電ケーブルをつながずに充電可能(p39)
・新しいJC08モードは、エンジンが冷えた状態を含めて燃費と排出ガス性能を計測するもの(p47)
・ガソリンエンジン車に比べると、電気自動車は部品点数が約10分の1の数千点に減少する(p63)
・モーターは永久磁石式同期型であるが、材料としてネオジム磁石(一般的フェライトの10倍の磁力)、材料は殆どが中国に偏在している(p67)
・2009年10月末現在の日本国内の自動車保有台数は7560万台、軽自動車は2660万台(商用車:1000万台)、軽自動車が電気自動車に変わるのが現実的(p104)
・現在のガソリンスタンド件数は全国4万件、その5倍のコンビニ全店に充電設備が必要なわけでない(p119) -
まとまっていてわかりやすい。
EVがCO2を排出しないのは、走行時のみの話であって、
トータルのライフサイクル(クルマの製造から廃棄まで)で考えると、各段階でCO2が発生する。
また、充電するための電力が何によって発電されたかによって、CO2排出量が変化する。
日本国内の発電電力構成比
・火力発電 65% 内訳(石炭28% 石油11% 天然ガス23%)
・原子力発電 28%
・新エネルギー 1%
フランス国内の発電電力構成比
・原子力発電 80%
・水力発電 10%
→フランスで電気自動車が普及すれば、CO2排出量はかなり抑えられる
このように、全ての車をEVにすれば良いというわけではなく、
そもそも国ごとによって最適な車は違うはず。
レアメタルなどの資源問題
発電電力構成比
国土の広さ
などを考慮し、車の最適なあり方を考えるべき -
結構いろんな電気自動車関連の本を読んできてこれで5冊目。要約、この業界の現状、そして方向性がおぼろげながら分ってきた感じ。あと、会社に頼んで15万円の電気自動車マーケットレポートを買ってもらって、読み込んで基礎情報はだいたい獲得できるかな。
御堀直嗣著「知らなきゃヤバイ!電気自動車は新たな市場をつくれるか」日刊工業新聞社(2010)
* ガソリンエンジン自動車よりも先に誕生していた電気自動車がいった市場から消えたわけ→「バッテリーの革新が為されなかったことで、航続距離という壁を乗り越えられなかったことが要因」
* 今後の自動車普及と二酸化炭素削減を両立させるための電気自動車の役割→「増え続ける世界的な自動車市場を維持しながら地球環境問題を解決するには電気自動車の活躍が必須である」
* 市販された電気自動車が軽自動車をベースにしている意味→「日常生活の足、として活躍している軽自動車の商品性の中に、実は電気自動車普及のヒントがある。」
* 日本では、2020年までに1990年比で25%の二酸化炭素削減を民主党政権が世界に公約している。しかし、90年代以降、国内の二酸化炭素排出量が増加しているため、実質30%以上の削減を行う必要がある。2050年までに60%以上の削減、2050年までに先進国全体で80%削減である。二酸化炭素を排出しない発電の普及と電気自動車への転換が進まなければ、40年後の二酸化炭素80%削減は難しいといわれている。
* 三菱のi-MiEVの資料によれば、ガソリン車のiと比較した場合、二酸化炭素削減量は約70%である。走行中に排出ガスを全く出さない電気自動車だが、日本の発電がまだ6割以上を火力発電に依存しているためである。ただし、ライフサイクルベースでいえば電気自動車はガソリン車に比べて二酸化炭素削減量は40%である。これは車の製造から廃棄までを含めた環境性能である。バッテリの充電するための電力が何によって発電されたかによって、二酸化炭素排出量が変化する。
* 電気自動車は、故障が少ない、消耗品が少ない。エンジン自動車に比べて、部品点数の少なさもあいまってメンテナンスに手間がかからない。
* これまでの4年単位のモデルチェンジは考えにくい。環境対応という意味において、既存の自動車に求められたモデルチェンジによる性能向上の意味は薄れる。
* 2009年10月現在の統計で、日本国内の自動車保有台数は約7560万台で、このうち軽自動車数は2660万台です(そおぬち1000万台ほどは貨物などの商用車です。)以上の視点からすれば、第一段階としてはこの軽自動車の2660万台が電気自動車に順次切り替わっていくことが現実的だと考えます。
* 急速充電設備はどれくらい必要とされているのか?本格的な急速充電設備の充実にこしたことはないが、それによりもちょっとした補充伝拠点でも十分に安心感が持てる。現在コンビニエンスストアは、全国20万件あるが、これらは、充電のために立ち寄り先となる可能性が高いといえる。現在のガソリンスタンドの件数が全国4万件ほどで用が済んでいるため、その5倍近いコンビニエンスストア全店に必要であるとはいえない。
* ライフサイクル二酸化炭素を考えれば、原子力発電は無視できない。自然エネルギーを推進してきた海外でも、安定したエネルギーの確保を見越した場合の選択肢として原子力発電を見ている。
* 風力発電でもし世界で消費されるすべてのエネルギーを補おうと計算すると、地球上の陸地全てに、直径100mの風車を1km間隔で設置しなければならない。太陽電池の場合は、地球上の砂漠7%に敷き詰めれば、世界で消費されているエネルギーを電力関さんした分のエネルギーは賄えるとの試算結果がある。風力発電と太陽光発電では潜在能力にだいぶ差がある。