なぜ、企業は不祥事を繰り返すのか-有名事件13の原因メカニズムに迫る- (B&Tブックス)

著者 :
  • 日刊工業新聞社
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感想 : 7
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  • Amazon.co.jp ・本 (208ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784526074547

作品紹介・あらすじ

危機管理のスペシャリストが重大事件・事故を分析・検証、不祥事を引き起こした因果関係のメカニズムを解説する。アクリフーズの農薬混入事件、ベネッセの顧客情報漏えい事件、オリンパスの不正会計事件など13件を収録。

感想・レビュー・書評

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  • 有名不祥事の原因とメカニズムを説明している
    あり得ないと思うことが色々な要因があいまって起きてしまう怖さを感じた

  • 仕事の勉強のため購入。内部の実情が詳しく書かれているため大変参考になった。

  • 「アクリフーズの農薬混入事件」「オリンパスの不正会計事件」などの13事例を題材に、不祥事の発生に至る因果関係の連鎖を詳細に分析し、それを予防するための経営実践上の含意を解説した意欲作。企業が不祥事を繰り返す理由の一端を垣間見れた感がある。企業不正に関わることがある方は必読の書。
    P114
    新銀行東京の巨額損失事件
    経営上の含意として、企業統治については制度設計の面だけを議論しても意味がなく、その制度が実際に機能するための運用上のポイントについて考える必要がある。当該企業の業務を全く理解していない者や、学者や弁護士のように管理者としての経験を持ち合わせていない者を寄せ集めただけでは、経営の監督などできるわけがないのである。

    P148
    オリンパスの不正会計事件
    「毒を喰らわば皿まで」という諺がある。売上欲しさに契約を結んでしまった以上、新日本監査法人としては、オリンパスの言いなりにならざるを得なかったのだろう。
    オリンパスは世界のシェアの7割を握る内視鏡事業という「孝行息子」を有しているが、その潤沢な利益が経営者を甘やかして「放蕩親父」にしたとは皮肉な話である。
    近年、多くの日本企業が膨大な内部留保を蓄積している状況は、放漫経営を容易にしているという点で重大なリスクと考えられる。こうして使い道のない巨額の資金を遊ばせていられるのも、やはり企業統治の形骸化により経営に緊張感が失われているためであろう。

    P190
    東京ドーム遊戯施設「舞姫」の死亡事故
    社内教育を個別に見直して、OJTに適した事項と、それ以外の教育手法が必要な事項に分類すべきである。特に安全管理の基本教育に関しては、抜け落ちがないようにするために、テキストを使った座学の方が望ましい。さらに、OJTで教える事項についても、伝承の過程で内容が変容していないかどうかを定期的にチェックする仕組みを設ける必要がある。
    正社員や契約社員と比較して、アルバイトは仕事に対する意欲や責任感が低く、専門知識の蓄積も不十分となりがちである。この問題は、非正規労働の中でも特に不安定なアルバイトという雇用形態に起因し、教育だけで完全に解決できるものではない。

  • 非常にためになった。法務の研修テキストとしてもピッタリと思う。アクリフーズの事件,メルシャンの循環取引などなど非常によく分析されていて分かりやすかった。不祥事の発生原因を視覚的にまとめてあるところなどは,仕事にも応用できると思った。
    ベネッセの情報漏洩事件で引用されていた情報漏洩の危険のあるモデルがとても興味深かった。

  • 新聞でも話題になった、さまざまな企業の不祥事。それぞれ、短いが、その時系列、背景を解説して、問題点を構造的に説明。わかりやすい。



    目次
    第1章 生かせなかった教訓(アクリフーズの農薬混入事件―「日本ならば大丈夫」という希望的観測に陥って問題点を放置
    NHK職員によるインサイダー取引事件―過去の不祥事の再発防止にこだわり、別種の不祥事への備えが欠落
    東海テレビの「ぴーかんテレビ」放送事故―経費削減のためアウトソーシングを進めたことで現場の負担が拡大
    中国電力島根原子力発電所の点検時期超過事件―負担が重くても黙々と努力する「現場解決型の組織文化」が仇に)
    第2章 従業員が不正を犯すとき(メルシャン水産飼料事業部の循環取引事件―非常に特殊な事業内容であったために不審点の追及がおろそかに
    ベネッセの顧客情報漏えい事件―顧客情報を積極活用する経営方針がセキュリティの不備を招く
    東海ゴム工業の労働安全衛生法違反事件―顧客への供給責任を果たすために犠牲にされたコンプライアンス)
    第3章 ガバナンスの機能不全(新銀行東京の巨額損失事件―実現不可能なビジネスモデルに固執して経営方針の転換が遅延
    大王製紙会長による特別背任事件―創業家出身の経営者の暴走に対して内部統制や会計監査は沈黙
    オリンパスの不正会計事件―「インセンティブのねじれ」にむしばまれて不正を見逃した外部専門家)
    第4章 重大事故が起きる現場(中日本高速道路の笹子トンネル事故―落下物対策を優先した関係で長期にわたり打音点検を未実施
    上尾保育所における児童死亡事故―リーダーシップの不在によりモンスターペアレントが増長
    東京ドーム遊戯施設「舞姫」の死亡事故―現場をアルバイトまかせにして、安全確認が変質したことに気付かず)

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著者プロフィール

1961年生まれ。1984年に東京大学経済学部卒業。警察庁へ。

内閣安全保障室参事官補、愛知県警察本部警備部長、四国管区警察局首席監察官などを経て、現在は警察大学校警察政策研究センター教授。これまでオウム真理教事件、ペルー大使公邸人質事件、東海大水害対策などの危機管理に従事。

企業不祥事の分析を通じて組織のリスク管理及び危機管理を研究。1994年にダートマス大学 Tuck School で MBA,2012年に千葉商科大学大学院政策研究科で博士(政策研究)取得。

著書に、『組織不祥事研究』(白桃書房)、『続・なぜ、企業は不祥事を繰り返すのか』『なぜ,企業は不祥事を繰り返すのか』(日刊工業新聞社),『組織行動の「まずい!!」学』(祥伝社),『組織の失敗学』(中央労働災害防止協会)など多数。

「2019年 『企業組織の発展段階を知ろう! ベンチャーの経営変革の障害』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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