- Amazon.co.jp ・本 (215ページ)
- / ISBN・EAN: 9784532108885
作品紹介・あらすじ
経済史とは、理論と歴史が統合される場である。本書では、従来の経済史の発想に縛られずに、東洋、西洋の枠を超えたグローバルな視点から、経済の大きな流れを捉え、歴史観と精緻な分析手法を合わせ持ったシュンペーターの考え方を応用して、経済がダイナミックに発展する理由を解き明かす。「物産複合」「海洋史観」「アジア間競争」などのユニークな視点で、なぜ、日本とイギリスがいち早く工業化に成功したのかを興味深く解説する。
感想・レビュー・書評
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知事としての言動には疑問があるものの、著者独特の観点から語られる「経済史とは何か」については興味深い内容ではある。
逆に言えばニュートラルな内容ではないので、本書で納得するのではなく、色々と読み比べる必要はあるだろう。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
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課題として読んだ。
大学でやっている経済史が、学問の中でどんな位置づけをしていて、なんで学ぶ必要があるのか。また、経済史的観点から日本の発展、イギリスの発展をみるとなにが要因だったのかといったことに関して筆者の意見が記されている。
参考になる。 -
『文明の海洋史観』(中公叢書)で知られ、現在は静岡県知事を務める著者自身の見解が濃厚に反映している経済史の入門書です。
本書の約半分は、経済史が取り組むべき課題や方法論についての考察に当てられています。著者は、マルクス主義の影響のもとで支配的となった単線的発展段階説に基づく日本経済史を批判します。著者は、唯物論の経済的決定論を批判し、風土とそこに暮らす人びとの「物産複合」という見方を打ち出します。さらに著者は、資本家のもとでの本源的蓄積によって資本主義が立ち上がるとしたマルクスを批判し、資本主義における企業家の役割を重視するシュンペーターの考えに高い評価を与えています。
後半になってようやく経済史の中身についての議論に入っていきますが、梅棹忠夫の『文明の生体史観』を継承しながら近代化への条件を探ろうとする著者は、とくに江戸時代の日本とイギリスの文明論的な平行関係を論じることに力を注いでいます。その上で、イギリスが開放経済体制に基づく新しい物産複合を立ち上げることに成功したのに対して、いわゆる鎖国政策を取っていた日本は封鎖経済体制のもとでの物産複合の高度化を成し遂げ、そのことが明治期以降の日本がアジアでいち早く近代化に成功した背景をなしていたという主張が展開されます。
スケールの大きな著者の文明史への入門書としては、読みやすくて有益だと思います。ただし、日経文庫の「経済学入門シリーズ」の1冊であることを鑑みると、ここまで著者自身の独自の主張を押し出すスタイルで書かれていることにとまどいを覚える読者もいるのではないかという気もします。 -
大学入学時に買ったけど、結局まだ読んで無かった(笑)
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「物産複合」の視点つまり、物に着目して社会の変化をみる視点の獲得に役立った。
考えてみれば、日本の歴史も物産複合の変化=社会の変化=文化の変化と見ることが可能である。
先に読んだ安部悦生氏の経営史の戦略商品とも結びつく。
企業の視点に立てば、戦略商品をいかに上手く握り、社会の物産複合の変化を生み出していくかまたは対応していくかということになろう。
ここでも経路依存性の考え方は忘れるべからずである。