- Amazon.co.jp ・本 (244ページ)
- / ISBN・EAN: 9784532112240
作品紹介・あらすじ
世界のGDPの約3割を占める経済力をもち、リスボン条約の発効で統合を深めるEUの全体像を解説。ヨーロと域内市場統合を揺るがす世界金融危機にEUとしてどう対応するか。巨大経済圏の展望とその問題点を分析。欧州統合の歴史的な背景や、主要機関の役割やしくみについても解説。会社法、税制、分野ごとの政策まで、実務家に役立つ内容も網羅。
感想・レビュー・書評
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▼欧州統合のモーメントは今日から遡ること百数十年、第一次大戦の終結時には起こっていた。西(アメリカ)からの経済的脅威、あるいは東(ロシア)からの政治的脅威が、彼らの危機意識を高めていたのである。しかしながら、「誰が主導権を握るのか」という一点についての了解が得られないまま、欧州は再び戦争の時代へと突入していくこととなるのであった。
▼そう言った意味では、二度と戦争を繰り返さない、そのために(地域)経済の立て直しが必要である――と、第二次大戦後、地域機構の構想が具現化されていったことは「ケガの光明」であったと言えるのかもしれない。だが、その流れを止めずに推進していくことは、並大抵の努力とちっぽけな理想では成し遂げられることはなかっただろう。
▼現在のEU[欧州連合]の出発点は独仏間の石炭鉄鋼共同体[ECSC]である。理念高き「欧州共同体」も経済分野から始まったのだ。そしてその《始まり》は、機能分野の深化が政治分野にまでスピル・オーバーした現在でさえも、なお、取り組むべき課題の中心で在り続けている。
▼従来の国家主権の前提に立った現実利益の認識に対して、ローマ法以来の「団結」という理念、社会意識は、新たな国益を定義することができるのだろうか。ギリシャ危機以後、悲観論の強くなるEUを、見誤らずに展望する――そんな時にこそ、本書はコンパクトな参考書として有益であると思う。詳細をみるコメント0件をすべて表示