EUの知識 第16版

著者 :
  • 日経BPマーケティング(日本経済新聞出版
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  • Amazon.co.jp ・本 (247ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784532112905

作品紹介・あらすじ

解体の危機は克服できるか?ソブリン・リスクが浮上、構造的な金融経済危機に直面したEU。その現状と歴史、国際公共財としての価値、主要機関や諸制度のしくみまで網羅的に解説。

感想・レビュー・書評

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  • 今日の書評は「EUの知識」藤井良弘著。ギリシャ問題で今何かと噂になっているEUについての広範的な知識を教授してくれる書籍である。

    最初に「ヨーロッパ」の呼び名は、ギリシャ神話に出てくる、フェニキアの王アゲノ-ルの娘オイロペに由来するそうだ。オイロペの美しさに一目ぼれしたゼウスがオイロペを誘拐し、クレタ島に連れ去るのだが、その際欧州各地を駆け回ったことから、それらの地域がオイロペ=ヨーロッパになったとのこと。

    まず、著者はEUの理念は、「EUの政治的寛容さ」であるとする。欧州人はドイツへの憎悪よりも、政治的寛容さを発揮して「ドイツを欧州に取り込む」ことを優先し、ドイツを欧州復興の柱に位置づけたとする。

    そして著者は欧州債務危機がこれほど激化したのは2つの理由があるという。1つは、拡大と深化の統合市場に、自国の社会・経済をうまく適応しきれなかった国々が、従来型の一国ベースの財政政策でで自ら調節を図ったものの、リスクの方が大きく克服できなかった点。もう1つはEUとしての危機対応の公共財機能が整っていなかったため、影響が伝染病のように各国に広まり、EUの屋台骨が揺らぐ事態に陥ったという点だそうです。

    しかしユーロ導入にはメリットも大きかったのです。ユーロ導入により、
    1、価格の透明化
    2、通貨の安定と低インフレ
    3、利子率の低下
    4、為替手数料の削減
    5、金融市場の統合促進
    6、経済パフォーマンスの向上
    7、財政収支の改善
    8、国際的な基軸通貨としてのユーロの確立
    9、国境を越えた貿易の促進
    10、欧州の象徴としてのユーロの誕生(多様性の中での統一)
    などのメリットがあるという。

    実際ユーロはEU域内だけでなく、グローバル取引でドルと代替可能な「第二の基軸通貨」として扱われ、現在世界の外為取引の約2割のシェアを占めているとのことです。(ドルは4割強、円は1割弱)

    そのような多様なメリットがある、ユーロ導入について厳しい要件がある。インフレ率、財政赤字、為替変動、長期金利などで審査されるようだ。また導入後の参加国についても財政規律(SGP)の義務を負うそうだ。

    このようなEUの金融政策を一手に担うのがECB(欧州中央銀行)。そんなECBが金融危機の時、実施したのが、公開市場操作でのオペの弾力化。通常金融機関から買い入れる国債等の適格担保基準を通常AマイナスからBBBマイナスまで下げたとのことです。

    そんな数あるECBの緊急策のうちでも、もっとも効果があったとされるのが、12年9月の「国債買い入れ計画(OMT)」だったそう。従来のオペとは違ってOMTは、ECBが国債流通市場から満期1~3年の国債を買いきるものです。

    OMT発表時、ECBドラギ総裁は「ユーロを守るなら何でもする。信じて欲しい」と発言しました。この発言は、ご存知の通り”ドラギ・マジック”として市場に好感されたそう。「いざとなればECBが対応する」との信頼感からか、13年10月時点でOMTの発動はありません。ユーロの相場も、欧州の金融市場も、一応の落ち着きが続いています。

    書評はこの辺で終わり。ユーロを中心に書いてきましたが、本著はEU全般について広範的に詳述されています。このブログを見て興味を持たれた方、是非購読してください。

  • ■一橋大学所在情報(HERMES-catalogへのリンク)
    【書籍】
    https://opac.lib.hit-u.ac.jp/opac/opac_link/bibid/1001018343

  • 第1章 岐路に立つEU 課題と活路
    第2章 EUの機関と機能
    第3章 EUの歴史と発展
    第4章 分野ごとの政策展開
    第5章 EUと世界・日本

  • Brexitの大混乱。ここでEUの理念・歴史・課題を知るために読む。多くの改版から教科書としての立ち位置が定まっている本か。この版はギリシャ危機直後のものなのでユーロの課題と財政規律を中心にしている。次の改版は当然Brexitの背景、人の移動の自由・EUの理念vs.加盟国の自治に絞られるだろう。次を待ちたい。

  • EUの現状について学ぶことができました。組織やその下の機関が述べられています。
    そこまで詳しくまとめられていなくても良かったかもしれません。
    EUについて初めて知る人には問題ないと思います。

  • EU 結びは金融、ECB 決定は独仏英伊29票 キッカケは米国マーシャル国務長官

  • 333.7||F95||Eu=16e

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著者プロフィール

大阪市立大学卒。日本経済新聞経済部編集委員を経て、上智大学地球環境学研究科教授。現在、一般社団法人環境金融研究機構代表理事、CBIアドバイザー等を兼務。
主な著書に『環境金融論』(2013年、青土社)、『EUの知識 第16版(日経文庫)』(2013年、日本経済新聞出版社)、『金融NPO(岩波新書)』(2007年、岩波書店)等多数。神戸市出身。

「2021年 『サステナブルファイナンス攻防』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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