昨日までの世界 上: 文明の源流と人類の未来

  • 日経BPマーケティング(日本経済新聞出版
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  • Amazon.co.jp ・本 (414ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784532168605

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    ジャレドダイアモンド 「昨日までの世界」

    伝統的社会(狩猟や牧畜を生業とする社会)を西洋社会(国家が支配する工業化社会)と対比して研究した本。上巻のテーマは戦争、子供、高齢者

    高齢者の有用性と社会の処遇についての論述は 人類史というより社会
    学に近いが、かなり切り込んでいる。この章のサブタイトルが「敬うか、遺棄するか、殺すか」

    高齢者を敬う社会の例
    *若者に対してタブーを設けた伝統的社会
    *儒教の影響を受けた家父長制社会

    高齢者を遺棄、殺す社会の例
    *高齢者が移動狩猟生活の足手まといとなる社会
    *食糧不足時に多数が生き残るためには高齢者が犠牲となる社会
    *アメリカはじめ現代社会

    アメリカはじめ現代社会において、高齢者の地位が低い理由
    *労働しない高齢者は 社会的地位が低い
    *個人主義のアメリカは 自分を頼りに生きる社会であり、自分で自分の面倒を見れなくなり、他者に依存する高齢者を忌み嫌う
    *若さやスピードの礼賛


    著者は提案として、孫の面倒、知見や人間関係能力の高さを活かす仕事 を上げているが、高齢者は知見がある、人間関係能力が高いことに根拠はないように思う


    本書の仮説は「伝統的社会から西洋社会へ移行する際に淘汰された伝統的社会の思考や慣習の中に 残すべきものがある」


    伝統的社会の人間関係を重視する仕組みは、個人の自由より集団の規律を重視しているように感じる

  • 「日本語版への序文」を読み始めたら、「伝統的社会とは、人口が疎密で、数十人から数千人の小集団で構成される…(中略)…社会のことである。」という文に出くわして困惑した。読み進めるうちに、「人口が疎密」とは、人口密度が低いという意味かと見当をつけたが、これは誤用だろう。内容は、原著の副題「我々は伝統的社会から何を学べるか」に端的に表されている。例えば子育てに話を限っても、いろいろなやり方があるものだと感心した。もっと早く知っていればと残念に思うやり方もあるし、恐ろしいとしか思えないやり方もある。人類には10万年の歴史があり、1万1000年前に農耕が始まり、5400年前に人が国家社会で暮らすようになるまでは、誰もが狩猟採集民だった。狩猟採集民の生活習慣は、その歴史に耐え抜いている。

  • 著者のニューギニアでの体験を通じて伝統的社会のあり方を振り返るとともに、現代社会との対比を説明した書籍。切り口は、戦争、子供、高齢者。(生活への余裕が生まれ)文明の成熟とともに司法が発達し、当事者間に委ねない仲裁手段が発達した。高齢者は経験、知識、技術が若年者より優れていたため重宝されていた。子供・高齢者ともに、集団にとって負担になる場合口減らしをすることもあった。

    伝統的社会は、生きることが最重要課題であり、食糧に余裕が無い時代のことである。人間も生物として、種の存続に必至であった時代のことだ。意図的な口減らし、当事者による報復合戦など、現代社会と比較して、酷な一面もある。一方で、現代社会は、食糧供給安定、文明の発達、平均寿命向上・技術革新を経て、資産を持たない高齢者への社会の関与の仕方、環境汚染などの別の面で問題が発生している。総じて、社会は改善してきているが、何をするにも副次的な影響があり、そこから発生する課題を予見しながら対処することが望まれるのは、これまでも、これからも変わらないのであろう。この普遍的な考え方を理解出来た点はよかった。

    現代の高齢者の価値が、保有資産に比例するのは些か寂しい面があり、著者提示の、孫世代の育児への参加、知識経験の若年層への提供、管理者監督者としての指導は高齢者とともにある有用な選択肢であろう。

  • 【要約】


    【ノート】

  • ニューギニアなどの伝統的社会のあり方を類例に、現代社会の価値判断を問いかけていく。
    「文明崩壊」「銃・病原菌・鉄」に比べると落ちるが、それなり以上に面白い。
    上巻のラストは高齢者が大切にされない米国社会への愚痴で締め。ウザい。

  • 「銃・病原菌・鉄」で著名な生物学者が、研究のために定期的に訪れるニューギニアでの生活をもとに、伝統的社会と工業化社会との広範囲かつ詳細な比較を通して、現代社会が抱える課題と解決策を提示した大作。

    著者は、我々が常識として受け容れている文化や生活様式が、実は人類の長い歴史からすれば「つい最近」作られたものであり、 人類が圧倒的に長い時間を過ごしてきた「昨日までの世界」における人間関係、紛争解決、リスク回避、宗教、子育て、高齢者対策の中に、「今日の世界」が物質的豊かさと引き換えに抱えた新たな社会問題を解決するためのヒントがあると主張する。

    ともすれば産業化が遅れた「未開の地」として片付けられがちな伝統的社会に光を当てつつ、それらを手放しで賞賛するような単なる懐古主義に終わらない点は、著者の非常に幅広く学際的な研究領域によるところが大きいと思われる。やや冗長な表現も多いが、時空を超えて視野を広げることができるスケールの大きな作品。

  • 昨日までの文化人類学。何を活かせばよいのだろうか。

  • 子どもと高齢者だけじっくり読み。今の生活に生かす気づきを得られたかっていうと微妙だけども、子育てについて、直感も大事にしよう、と感じた。情報に振り回されやすいけど、親子ともに、心穏やかに安らかに過ごしたいし、そのためには常識と思われることでも息苦しそうだったらとっぱらっていいんだな、と。本の感想なのか、って感じだが。

  • 文化人類学の観点から書かれた本。

  • 著者のフィールドであるニューギニアの暮らしはいわゆる「未開」の社会(伝統的社会)ではあるが、我々が暮らす現代社会は10万年近い人類史から見るとほんの一瞬に過ぎない。農耕が始まる1万1000年前までは狩猟採取の生活であったし、国家の成立もたかだか5400年前。必ずしも伝統的社会はよいことばかりではないが、と断りつつも全体に伝統的社会に対するノスタルジアを感じさせる内容。

    ・西洋社会は個人主義であり、他人との競争が中心になっている。伝統的社会は個よりも集団としての振る舞いが重要になる。個人がおこした不祥事の後始末もコミュニティ全体でけりをつけるし、その際はこれまでのコミュニティ同士の貸し借りの精算も行なわれる。

    ・食料などが十分にはない社会では高齢者の口減らしが行なわれることも多い。口伝に頼らなくとも知識が伝えられるようになった現代社会でも「老人の知恵」はさほど必要とされてはいないが孫を育てる手伝いなどをする。

    ・子育てなどは親以外の人々(アロペアレント)が介入し、子育ての責任は社会全般で共有される。
    体罰はしない社会とする社会とがある。一般的に、狩猟民族は子供に対する体罰を行わないが、牧畜民族などでは行なわれる。これは家畜のように希少な共有在を持つ社会では子供の間違った行動によって大きな損失を招く可能性があるからなのだろう。
    授乳期は長く、両親と行動を共にすることも多く、アロペアレントによって多くの社会モデルを目にし、スキンシップも多い。こうしたことがよりよい人間に育つ原因である、とややノスタルジックな見方がされる
    復讐心や戦争は人類のDNAに刻み込まれているのだろう

著者プロフィール

1937年生まれ。カリフォルニア大学ロサンゼルス校。専門は進化生物学、生理学、生物地理学。1961年にケンブリッジ大学でPh.D.取得。著書に『銃・病原菌・鉄:一万三〇〇〇年にわたる人類史の謎』でピュリッツァー賞。『文明崩壊:滅亡と存続の命運をわけるもの』(以上、草思社)など著書多数。

「2018年 『歴史は実験できるのか』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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