国際秩序

  • 日経BPマーケティング(日本経済新聞出版
3.92
  • (10)
  • (15)
  • (13)
  • (0)
  • (0)
本棚登録 : 245
感想 : 12
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (477ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784532169763

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  •  「ダーウィンの呪い(千葉聡著)」からの流れ読み、図書館で借りた。
     ヴェストファーレン和平条約(1648年)により世界秩序の基礎がつくられた。それは国家主権という概念を確立し、加盟国がそれぞれの国内体制と国教を選ぶ権利について内政干渉されないことも規定された。とは言え、それはヨーロッパでの話、その後、超大国アメリカ、ロシア(ソ連)、中国、イスラム世界、そしてアジア、和平条約から数世紀経た世界の枠組みは大きく広がるとともに大きく変わった。
     著者はニクソン政権とフォード政権で要職を務めた、いずれも共和党政権だ。まっそれはいいとして、政権のなかの様子をサラッと描いているところがむしろすごいと言いますか。たいしたものです。

  • 【貸出状況・配架場所はこちらから確認できます】
    https://lib-opac.bunri-u.ac.jp/opac/volume/673193

  • これまでに読んだ国際情勢に関するあらゆる本の中で群を抜いて素晴らしい。キッシンジャーはフォード政権で国務長官を努めた外交のプロであり、ベトナム和平を実現してノーベル平和賞を受賞したほどの大物である。その言葉は重く、優れた歴史観と洞察力を以って、国際情勢を地域別に開設している。

    1916年 サイクス・ピコ協定を以って、中東はイギリスとフランスによって分割されることとなった。それは、歴史的根拠が何もないものであり、その後の紛争や戦争の火種を内包したものとなった。

    イスラム世界にとっての世界は、ヴェストファーレン体制は世界秩序の考え方として対極にある。国家は世俗的なものであり。国際システムの出発点ではなく、宗教統一への道筋への通過点にすぎない。

    アラブの春は、広場に群衆を集めるのには成功したが、独裁政権を倒したその後にどういうものが来るかという考えが欠落していた。

  • これまでに読んだ国際情勢に関するあらゆる本の中で群を抜いて素晴らしい。キッシンジャーはフォード政権で国務長官を努めた外交のプロであり、ベトナム和平を実現してノーベル平和賞を受賞したほどの大物である。その言葉は重く、優れた歴史観と洞察力を以って、国際情勢を地域別に開設している。

    1916年 サイクス・ピコ協定を以って、中東はイギリスとフランスによって分割されることとなった。それは、歴史的根拠が何もないものであり、その後の紛争や戦争の火種を内包したものとなった。

    イスラム世界にとっての世界は、ヴェストファーレン体制は世界秩序の考え方として対極にある。国家は世俗的なものであり。国際システムの出発点ではなく、宗教統一への道筋への通過点にすぎない。

    アラブの春は、広場に群衆を集めるのには成功したが、独裁政権を倒したその後にどういうものが来るかという考えが欠落していた。

  • テクノロジーがいくら進歩しても、人類が発明した核兵器の威力の恐ろしさや、その使用を抑制している均衡がそれと比べて脆弱であることに、代わりないのだ。核兵器が通常の軍事的手段になるようなことを許していはならない。そのような重大な局面が訪れれば、国際秩序は既存の核保有国間に、不拡散を堅守する合意を求めるだろう、さもないと秩序は核戦争の惨禍を担うはめになる。歴史のほとんどを通じて、テクノロジーの変化は数十年、数隻という単位で、斬新的に進歩してきた。既存のテクノロジーを磨いたり、組み合わせたりして、それが進められた。急激なイノベーションもやがては、従来の戦術的・戦略的ドクトリンにあてはめられることがあった。現在が過去と大きく異なっているのは、コンピューターの処理能力の進歩の速さとITがあらゆる面にまで拡大しているという点だ。コンピューターは小さくなり、コストが下がり、指数的に処理速度が速くなって、先進的なCPUがほとんど全てのものに組み込まれた。革命的な影響は、人間の仕組みのあらゆるレベルにまで広がる。スマートフォンを駆使する個人は推定約10億人。人世代前の多くの情報機関の限界をしのぐ情報と分析を保有している。こうした個人がやりとりするデータを集めたり、モニターしたりする企業は、現代の国家の多くや、従来の勢力をはるかにしのぐ影響力と監視能力を発揮する。そして、国家は新分野を競合する国に割譲されることを懸念し、指針や自制もほとんどなしに、サイバーの領域に投げ込まれる。どんなテクノロジーのイノベーションでも同じだが、この領域もやはり、戦略的優位を手に入れるための戦場とみなされがちになるだろう。

  • [大画の大河]シンプルな題名そのままに,国際社会を形作る世界秩序について語り尽くした作品。歴史的にどのような秩序が作られ,現代はその秩序がいったいどこへ向かおうとしているのか......。著者は,『外交』,『回復された世界平和』等の著作を有する元米国務長官のヘンリー・キッシンジャー。訳者は,幅広い分野の翻訳を手がける伏見威蕃。原題は,『World Order』。


    国際政治界における「横綱」による一冊だけあり,どっしりと構えて外交の世界について考えるためにはうってつけの作品。世界史や外交史だけでなく,軍事や哲学も援用しながら導き出されるキッシンジャー氏の慧眼ぶりは,やはり読書後の満足感の違いに感じられるかと。

    〜自由のない秩序は,つかのま隆盛になって,しばらくつづいたとしても,やがてそれと均衡するものを生み出す。しかしながら自由は,平和を維持する秩序の枠組みなしでは,護ることも維持することもできない。秩序と自由は,表面的な知識では両極端のようにいわれることがあるが,ほんとうはたがいに依存していると解釈されるべきなのだ。〜

    老舗の一品を味わった気分☆5つ

  • 内容は、やや読み取るに難しい。
    翻訳がヒドイと感じたので、ネットの評判を調べてみたところ、同じような批評が多数見受けられたので、やはりヒドイのだろう。特に、前半戦は、"直訳しました"という文章が多すぎて、読みづらい。しかしこれを、原文で読むとなると、相当な英語力を、要求されるであろうから、改定翻訳版を望む。

  • 著者はニクソン大統領の大統領補佐官、レーガン大統領の国務長官を務めたキッシンジャー。本書は古代ローマ時代から現代まで世界秩序どのように形作られてきたのかキッシンジャーによる壮大な歴史書である。

    本書からはキッシンジャーの徹底的なリアリズムがうかがえる。現在の国際法はヴェストファーレン的な原則が基礎となっているが、ヴェストファーレン体制は戦争の抑止力とはならない。ここで矛盾が生じてくる。第二次大戦後の冷戦は長期化し、国連は無力であった。アメリカは中東など世界の警察の役割を果たしてきたが、さらなる混乱を生むだけであった。アメリカの正義を世界に売り込む時代は終焉したのである。

    新たな国際秩序の枠組みが必要に時代に於いて、まさに中国が世界の覇権を握ろうと拡大主義をとろうとしている。地政学的に日本の果たす役割は大きくなってきているのだ。

  • キッシンジャーの広範に及ぶ視点から見た壮大な世界史観。ヴェストファーレン(ウェストファリア)条約が現在の国際法の基盤となっているという点、さらにドイツが強くならないように周辺国による力の均衡が組まれていたなどの描写は実に興味深い。

  • 著者の博識ぶりがすごくよくわかる本です。
    終盤近くまでは覇権を軸にした世界史で、国際秩序と銘打った本でここまで書かなければならないのか、ちょっとどうかと思いました。
    というのも、結論部分はいいことを言っていると思うのですが今まで述べてきた歴史上の事項とうまくリンクして読み取ることが難しいので、少々論理的ではない記述が見られます。

    ということで、もう少し構成を改めて、歴史上言えることと、現在のテクノロジーが及ぼす結果を峻別しながら、今後の世界秩序について論じた方がよかったのでは?と思いました。

全12件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

元国家安全保障問題担当大統領補佐官、元国務長官、国際政治学者。キッシンジャー・アソシエイツ会長。
1923年生まれ。ドイツ出身。ナチスの迫害を逃れて米国に亡命。第二次世界大戦では米陸軍に所属し、ヨーロッパ戦線で戦った。復員後にハーバード大学に進学。68年にはニクソン政権の国家安全保障問題担当大統領補佐官に就任。フォード政権では国務長官を務める。ベトナム和平を実現したパリ協定の締結によって、73年ノーベル平和賞受賞。今日に至るまで米国の外交・安全保障政策に多大なる影響を及ぼしてきた人物。

「2023年 『リーダーシップ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

ヘンリー・キッシンジャーの作品

この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。

有効な左矢印 無効な左矢印
リンダ グラット...
マシュー・サイド
ジャレド・ダイア...
リチャード・ドー...
カルロ・ロヴェッ...
有効な右矢印 無効な右矢印
  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×