鉄塔家族

著者 :
  • 日経BPマーケティング(日本経済新聞出版
3.40
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本棚登録 : 47
感想 : 12
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  • Amazon.co.jp ・本 (548ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784532170653

作品紹介・あらすじ

東北のある地方都市で暮らす小説家・斎木、草木染作家・奈穂と、街のシンボル「鉄塔」の麓で暮らす人たちの平穏な日常には過去の暗い影がつきまとう。しかし、自然に抱かれた生活に見出すささやかな歓びと、お互い引かれ合う人たちが、彼らの疵を癒し、新たな家族をつくる。細密な描写で人間の勁さに迫る待望の長編小説。

感想・レビュー・書評

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  • 今年読んだ中で一番の小説になると思う。心の底から、感動した。
    覚えている範囲だけれど、確か377の章であまりの壮絶さに涙を流してから、心の中に抱えていた憑き物がすべて落ちた。僕は近頃疲れやすかったのだ。そして気の晴らし方もろくに分からず、じっと耐えていることしかできなかった。
    台風の過ぎた翌朝の青い空みたいにすっきりとしたのは、いつ振りだろうか----。また別の雲はやってきて心は重くなるのだろうけれど、今はこの晴れ晴れとした心の広がりを目一杯味わっていよう。

    今まで読んできた小説の中で十冊選べといわれたら入れるくらいよかった。同作者の「渡良瀬」もそのうちの一冊。






  • 様々な過去を積み重ねて現在を生きる人々。四季の移ろいにあわせて生々流転する鳥や草木。鉄塔建設がすすむ「山」の周りの寄木細工のような物語。

    前妻のところにいる末息子が登場するあたりからのトーンの変化とラストに向かっての収束が印象的。疎遠であるが故にそう映るのであろう、息子のステレオタイプな描き方が、先妻も含め、理解を深めていく過程で、「山」の周りでふれあう人々と似た描き方に落ち着いてゆくのがおもしろい。斎木の優しさを感じる次の吐露が好き。滂沱。
    ”ある人にとっては、現実だけではなく、願望も、あったこととして生きることで、過去の悔恨を心で清算しているのかもしれない、と気付かされたのだった。自分の母親や先妻、暖かくなってまたバス停に立ち出した老婆の姿も浮かんだ。”

    関係が萌した対象に関心を持ち、否定することなく理解しようとすることの大切さを強く感じた。そういう営為が、ひとの繋がりを強くするということなのだろう。

  • 仙台市民なら誰でも知っている大年寺山の放送アンテナ。その建ち始めから完成までの時間、人々の生活と四季を温かく綴った私小説。エンターテイメントではないが、読後隣の人に優しく声を掛けたくなる本です。

    http://www.lib.miyakyo-u.ac.jp/mylimedio/search/book.do?target=local&bibid=130224

  • 新たに建設される鉄塔を中心として、様々な人物が登場し互いに心を通わせあう。
    バスの停留所でいつも佇んでいる老婆、かつて起きた殺人事件、などサスペンス小説を思わせるような要素も出てくるが、それらが主要プロットに絡むことはない。
    後半、ある事件によって小さな山場を迎える以外は、淡々と進む物語である。
    主人公の妻の職業や登場人物が嗜む趣味の影響で、草木や野鳥に関する描写が多く展開される。
    やや過剰にも思われたが、豊かな自然の風景が目前で繰り広げられているようで、暖かい気持ちになった。
    佐伯氏の実話が盛り込まれた私小説ということだが、この街の暮らしは彼の理想が投影されたものなのかもしれない。

  • (2003.11.15読了)(新聞連載)
    (「BOOK」データベースより)amazon
    東北のある地方都市で暮らす小説家・斎木、草木染作家・奈穂と、街のシンボル「鉄塔」の麓で暮らす人たちの平穏な日常には過去の暗い影がつきまとう。しかし、自然に抱かれた生活に見出すささやかな歓びと、お互い引かれ合う人たちが、彼らの疵を癒し、新たな家族をつくる。細密な描写で人間の勁さに迫る待望の長編小説。

  • 仙台などを舞台とした作品です。

  • 書評で取り上げられていたので読んでみる。
    良い小説だった。

  •  東北?の山上の集合住宅に住む斎木と奈穂。自然や人々に囲まれた生活を静かに描く。

     長編ですが、あまり起伏はない。新聞連載だったそうで、一話がとても短く読みやすい。出てくる人は、斎木の周りの人間は穏やか。しかし、なんかみんな暗いというか、少し不幸というか。例えば病気持ちや、家族の問題を抱えている人が結構いたりで。現実には確かに完璧な生活ってなかなかないけど。あと、途中から出てきた、斎木の前妻ってのがちょっと本作で浮くぐらいの人物で…。静かなこの物語に波風を立てているよ。

  • 2009.1
    東北の町に住む夫婦と町の人々との生活。
    過去を乗り越え穏やかな日々を過ごす。
    季節の移り変わりを感じながらの暮らしぶりに、とても穏やかな気持ちになれた。

  • 静かで淡々とした日常。私小説ってこういう作品のことをいうのかな。

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著者プロフィール

1959年、宮城県生まれ。84年、「木を接ぐ」により海燕新人文学賞、91年、「ア・ルース・ボーイ」で三島由紀夫賞、「遠き山に日は落ちて」で木山捷平文学賞、『鉄塔家族』で大佛次郎賞、『山海記』で芸術選奨・文部科学大臣賞文学部門を受賞。ノンフィクションに『アスベストス』、エッセイに『Nさんの机で ものをめぐる文学的自叙伝』などがある。

「2023年 『川端康成の話をしようじゃないか』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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