そういうものだろ、仕事っていうのは
- 日経BPマーケティング(日本経済新聞出版 (2011年2月1日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (318ページ)
- / ISBN・EAN: 9784532171049
作品紹介・あらすじ
人気作家がワンテーマで短篇競作!働くことは生きること。世界とつながること。日経新聞「電子版」小説シリーズ、第一弾。
感想・レビュー・書評
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タイトルに惹かれて手に取った。
こういう話をじっくり時間をかけてしてくれる先輩がほしいかもしれない。
先輩の話を聞いて、なるほど、そういうものですか、とか言ってみたいかも。
でも聞くだけじゃ身にならないということも薄々感づいてはいて、やっぱり自分で見つけなくちゃいけないんだろうとも思う。
なのでこの本もいつも通り小説として楽しんだ。
特に良かったのは、大崎善生さんの「バルセロナの窓」と津村記久子さんの「職場の作法」。
「バルセロナの窓」は主人公とお父さんの関係が素敵。
父親に近づくために働くという意識は私にはないけれど、父親に認められようと頑張っていた時期はあったように思う。
今も少しはそうなのか、また違う目標があるのか…。
「職場の作法」は職場の人間関係の描写がうまいし、面白い。
タイトル通り職場の作法が楽しく覚えられると思うので、新入社員や人間関係が何故かうまくいかない人にオススメしたい。
特に社内にインフルエンザウイルスが蔓延する「小規模なパンデミック」が好き。
具合が悪い時は無理せず休むのが周りの人のためでもある。
基本ですよね。私も気をつけなきゃ。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
仕事がテーマのアンソロジー。
いずれも2010年に書かれたものなので、リーマンショック後の状況を匂わせるものが多いですが、仕事、会社については普遍的な問題もあり、今の時代に読む価値もあると思いました。
普段読まない作家さん、あまり好きではないと思っていた作家さんも含まれていましたが、異なる雰囲気の作品はどれも読みやすく、まさに世の中にはいろいろな仕事があるものだ、と思いました。
いわゆる「就職氷河期」世代の私は会社員らしい仕事の経験は少ないので、石田衣良さんの『ハート・オブ・ゴールド』のぐなぁさんの
「ぼくには先輩も後輩もいない。入社式も、新歓コンパも、研修も受けたことがない。ぼくは思うんだけど、富はただの金だけじゃなくて、社会のなかで積んでいく経験でもあるんだよ。人といっしょに働ける。たくさんの人と関係を続けられる。そういう社会的な富っていうのがあるんだ」
という言葉が心に響きました。
津村記久子さんの『職場の作法』の中の『小規模なパンデミック』は、2010年の作品とは思えず、2020年3月ごろを思い出しました。
その他気になった言葉―
重松清さんの『ホームにて、蕎麦。』の
「休む元気」
盛田隆二さんの作品のタイトル
『きみがつらいのは、まだあきらめていないから』
そして、津村記久子さんの『職場の作法』の中の
・どんな扱いを受けても自尊心は失わないこと。
またそれを保ってると自分が納得できるように
振る舞うこと。
・不誠実さには適度な不誠実さで応えてもいいけ
れど、誠実さに対しては全力を尽くすこと。
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そうです。そういうものなんです。仕事は。という短編集でした。
仕事に縛られる人生もあれば、仕事をすることで失恋も忘れられるし、あくせく働かなくても株で一儲け出来れば、お金も稼げるし、仕事以上に家庭で大変なことがあれば、仕事の辛さも緩和されるし、そして、職場にはいろんな人がいるんです。
明日から仕事頑張るぞーとは思わなかったし、かと言って、仕事辞めたいなーとも思わず、やっぱり、仕事ってそういうもんなんだよね、と思ったのでした。 -
津村さんが読みたくて手にとったのだが、どの作品も良かった。仕事がテーマでありつつ、野中柊さんの「あの日。この日。そして。」が収められてるのが、楽しい。アンソロジーの良さを感じる。仕事と自分の関係性、仕事は単純に人生に占める時間の割合では測れない存在。濃淡とでも言うのか、仕事は常にそこにありながら、自分にとって近くに感じたり遠くに感じたりもするし、時には完全なる支配者でもあったりして、その関わりの度合いは自分が選んだ結果であったり、有無を言わさずそうなってしまった結果だったりする。
自分は、主婦時代がありブランクがあって仕事復帰したのだが(ついでにリストラからの必死の転職活動まで経験)、今では大黒柱として今後も定年まで(或いはそれより長く)働き続ける事前提の身。
主婦時代は、会社仕事をしてないことへの引け目も若干ありつつ、仕事するって大変だよね、の価値観が見え隠れしてたようで、そんな私に学生時代からの友達が、呼吸と一緒だよ、と言って(慰めて?)くれたのを思い出す。呼吸と一緒かぁ…呼吸に関して文学することはあまり想像できないけど、人生について文学することは無限に可能だと感じる。仕事って人生と重なったり、重ならなかったりしながら、そこにあるものなのかもしれない。仕事と自分(の人生)の関係性に着目すると、より仕事を(言ってしまえば)愛せるようになるのかもしれない。だって、自分や自分の人生、自分が愛さなくて誰が愛してくれんねん!笑
愛するが言い過ぎなら、大切にする、とか、自分の一部と思うって言い方だろうか。
働くって悪くないな、と思える一冊。オススメ。
ところで、最後にある津村さんの「小規模なパンデミック」は、コロナ前に書かれたものなのだが、今読むと、(津村さんの他作品のいくつかで感じる)ありそうでない、現実に根差したフィクションを小気味よく楽しむという感じにならず、この話にはリアリティを感じるし(現実の職場状況は作品よりも更に変化が大きく大規模なパンデミックなのだが)ソワソワしちゃった。コロナ禍の職場を舞台にした津村さんの作品プリーズ!!って思っちゃう。あるのかな? -
4月から新社会人になる身として、
仕事ってどんなものかを感じたかったので読みました。
仕事にやりがい持ってる人、好きなことを仕事にする人もいれば、お金のためと完全に割り切る人、仕事に狂わされてる人と、ほんとにいろんな人がいて、どんなものか逆にわからなくなりました。でも、こうだ、と定義づけられず、人によってどんなものか違うから面白く多様な働き方や仕事があるんだなと思いました。
仕事というものに対して価値観が未だに私はしょっちゅうころころと変わっています。仕事に結構意欲だとか希望だとか夢を抱いていたたちですがそういうばかりではなさそうです。就活中から感じてきました。働いてみてからはもっと現実を見るんだろうなと感じました。
テーマが「仕事」なだけあって、社会人を間近に控えた私にとってはどの作家さんの作品も興味関心を持って読めたし、初めて読む作家さんも多く短編集の良さを改めて感じました。 -
偶然再読。
津村記久子の田上さんの話で完全に思い出す。
不誠実には不誠実で返し、誠実には誠実で返す。人のジャッジが上手い人。的確で格好いいので記憶に残っていた。
大崎善生の紆余曲折を経て成熟した文学部出身の男の話は、年月が詰まっていて短編なのに重みを感じられた。仕事ってなんだろうなぁ。 -
『そういうものだろ、仕事っていうのは』。こんな風に面と向かって言われたら、何も言い返せなくなるのは私だけだろうか。とても便利な科白ですよね。"サラリーマン語講座"のスキットのようです。その捨て科白にどう答えるのか?その例文がこのアンソロジーに六つ用意されていたのではと読了後に考え至りました。働いた日々はいつか大いなる遺産になるはずです。私は汗水垂らして働く人々に敬意と尊敬の念を持っています。疎かに『そういうものだろ、仕事っていうのは』で片付けたくはありません。働く意義を今一度、思い出してみようと思います。
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作家6人による仕事をテーマにしたアンソロジー。
「ホームにて、蕎麦。」重松清
「あの日。この日。そして。」野中柊
「ハート・オブ・ゴールド」石田衣良
「バルセロナの窓」大崎善生
「きみがつらいのは、まだあきらめていないから」盛田隆二
「職場の作法」津村記久子
この中で印象が良かったのが 「職場の作法」かな。
日常の仕事場でのちょっとしたできごとが「あるある」的な存在感でした。
あとはやはり重松清氏には胸をさされた。
あいかわらずのヒューマンストーリーは良かった。 -
仕事がテーマのアンソロジー。9月で仕事を辞めた私が、今これを読むか?って感じだけど、仕事に対する姿勢や思いって、人それぞれなんだなと思いました。「ホームにて、蕎麦。」は、重松清さんらしくてよかった。大崎善生さんの「バルセロナの窓」は、50代男性が主人公なんだけど、一番感情移入し、うるっときた。やっぱり私の中には、おっさんが住んでるのかも(^^;;
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津村記久子『職場の作法』は、クセになる文章で引き込まれた。
残念ながら、他の作品はどうやら私とは合わず。
本のタイトル的に展開が絞られてしまったのかなぁ。