等伯 上

著者 :
  • 日経BPマーケティング(日本経済新聞出版
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  • Amazon.co.jp ・本 (350ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784532171131

作品紹介・あらすじ

「あなたの絵には真心がある」。養父母の非業の死により故郷を追われ、戦のただなかへ。激動の戦国の世と法華の教えが、画境を高みに誘う。長谷川「等伯」の誕生を骨太に描く傑作長篇。

感想・レビュー・書評

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  • 安土桃山時代の絵師・長谷川等伯を描いた小説。
    直木賞を受賞したばかり。
    読みやすく、ドラマチックで、面白いですよ!

    長谷川信春(後の等伯)は、絵の才能を見込まれ、染物師の長谷川家に、11歳で養子に入った。
    染物の修行をしつつ、日蓮宗の絵仏師として、認められていく。
    実家は、能登の畠山氏に仕えた武家。
    下克上が始まった時代で、畠山父子は家来に城を追われていた。
    信春は長兄の奥村武之丞の依頼で、復権を目指す畠山のため、ある使いを引き受けることになるが‥

    妻の静子は、ふっくりした顔の優しい女で、信春の仏画のモデルともなっていた。
    息子の久蔵も生まれて、穏やかに暮らしながら、信春の胸には都に出て絵師として認められたいという願いもくすぶっていた。

    思いがけない成り行きで妻子と家を出て、都へ向かおうとするが、折りしも信長の軍勢が周りを取り巻いていた。
    信春はひとり、山越えして都へ向かうことに。
    窮乏しつつも、絵仏師として有名な信春は、各地の寺で世話になることが出来る。
    後に残った静子だが、寺で近所の子供達に手習いを教えて慕われていた。

    信春は比叡山焼き討ちに遭遇、子を抱いている僧をとっさにかばって闘ったため、信長に追われる身となってしまう。
    本法寺で日堯上人の尊像を依頼され、「後の修行者のため、修行がどこまで進み、何が足りなかったかわかるように描いてくれ」と言われる。
    困難な仕事に全身全霊で打ち込み、この絵は評判になった。

    畠山家の夕姫が京の三条西家に嫁いでいて、信春を本願寺に連れて行き、近衛前久に紹介してくれる。
    藤原北家しか関白になれないという家系の頂点に立つ前久は、19歳で関白になった。13代将軍・足利義輝とはいとこ同士、公家には珍しく、共に武芸にも秀でていたという。
    この前久という男、魅力的に描かれていて、面白いです。上杉謙信と行動を共にしたこともあった。15代将軍・義昭とは仲が悪く、信長とは会ってみたら気が合ったという。
    信長より一つ年下だとか。
    信長の行動が次第に常軌を逸してきたため、本能寺の変を画策したという可能性も。

    戦乱の行方と信春の人生行路が交錯し、動乱に巻き込まれ振り回されつつも、懸命に生き延びていく。
    芸術家としての物事の本質を見極めたいという志と葛藤、妻子への愛情、縁ある人への思いがありありと描かれ、引き込まれました。
    狩野派との競争は後半ですね。

  • 常に己の信念に忠実に生きてきた長谷川信春(後の等伯)。
    十一歳で武家から染物屋に養子に出されて以降、戦国の激流に翻弄され続けて不遇な時を過ごすも、その都度自身の絵に境地を救われる。
    このままでは終わりたくない。
    いつかあの狩野永徳を越える絵師になる!と常に永徳を意識しながら。

    山本兼一氏の『花鳥の夢』を読んでから俄然興味が湧いた今作品。
    等伯がこんなにも追い詰められながら絵を描き続けてきたことに驚いた。
    次々に不遇に見舞われても切り抜ける根性。
    故に気迫と気高さが込められた等伯の絵。
    特に長年等伯を支えてきた妻のために描いた故郷の山水図はどんなにか素晴らしいことだろう。
    そしていよいよライバル永徳との対決が楽しみな下巻へ!

  • 戦国時代の絵師の話。最近読んだ『黒牢城』『塞王の楯』と時代、舞台が重なるところが多く、また絵師ということで『星落ちて、なお』とも通じるところがあり興味深かった。

  • 長谷川等伯。能登の大名畠山氏に仕える奥村氏の末っ子として生まれ、11歳の時に染物屋の長谷川家に養子として出される。養家が熱心な日蓮宗信者のため、法華関係の仏画や肖像画などを描き始める。
    上洛した等伯は、信長による日蓮宗弾圧下、近衛前久や前田玄以との交流を重ね、激動する時代に翻弄されながらも、絵画の技法を学び、道を極めていく。
    上巻では、信長亡き後、新しい時代へと動いていく。

  • 稀代の天才画家「長谷川等伯」の一代記。松林図を描くまでの禅的修行のありよう、宗教と絵画の関係にこころ躍った。

  • 戦国末の絵師、長谷川等伯の伝記的小説。

    とはいっても、養父母の死などのプライベート部分は物語になっていて絵師として成長していくバックボーンとしています。
    上巻は信長の死で、いよいよ中央デビューというところまでです。
    歴史の教科書では文化面は時代の作風と作者と作品しか出てこないので、物語となると時間はかかるが記憶に残りますね。

  • 第148回(平成24年度上半期) 直木賞受賞作 本の装丁も重々しくって、内容にふさわしく、流石 直木賞と感動。久々に歴史小説をじっくり読了。感想は下巻にて。

  • 安土桃山時代に活躍した絵師、長谷川等伯。その波乱と苦難に満ちた、しかし充実した人生を、迫力ある文体で描く小説です。
    上下巻の大作ですが、森本キャスターも「一気に読んでしまった」というぐらい、等伯の人物像に引き込まれます。

    等伯について語る安部龍太郎さんのウェブ限定インタビュー映像など、詳しくはこちらをご覧ください。
    annex ~『直木賞作家が薦める本』 ~:スミスの本棚:ワールドビジネスサテライト:テレビ東京
    http://www.tv-tokyo.co.jp/wbs/blog/smith/2013/02/post143381.html

  • 桃山学院大学附属図書館蔵書検索OPACへ↓
    https://indus.andrew.ac.jp/opac/volume/786706

  • ▼福岡県立大学附属図書館の所蔵はこちらです
    https://library.fukuoka-pu.ac.jp/opac/volume/163132

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著者プロフィール

作家。1955年福岡県生まれ。久留米工業高等専門学校卒。東京の図書館司書を経て本格的な執筆活動に入る。1990年、『血の日本史』(新潮社)で単行本デビュー。『彷徨える帝』『関ヶ原連判状』『下天を謀る』(いずれも新潮社)、『信長燃ゆ』(日本経済新聞社)、『レオン氏郷』(PHP研究所)、『おんなの城』(文藝春秋)等、歴史小説の大作を次々に発表。2015年から徳川家康の一代記となる長編『家康』を連載開始。2005年に『天馬、翔ける』(新潮社)で中山義秀文学賞、2013年に『等伯』(日本経済新聞社)で直木賞を受賞。

「2023年 『司馬遼太郎『覇王の家』 2023年8月』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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