三鬼 三島屋変調百物語四之続

著者 :
  • 日本経済新聞出版
4.19
  • (231)
  • (264)
  • (89)
  • (10)
  • (2)
本棚登録 : 1749
感想 : 242
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (572ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784532171414

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 不可思議な体験を語ってもらう三島屋の代わり百物語。三島屋変調百物語の4巻目です。だいぶ後追いで入り、新刊本の横目で見ながら、4巻目。好きなシリーズなので、じっくりというのと、ちょっと前なので、いつでも借りられるかという油断で、やっとです。

    「迷いの旅籠」「食客ひだる神」「三鬼」「おくらさま」の4編。安定してきた面子に、三島屋の次男富次郎、古本屋瓢箪古堂の勘一が入ってくる。おちかさんの進め方も安定してきたところですが、やはりそこにちょっと変わった話が入り、1巻目を思い出させるようなところがありました。

    話としては、「迷いの旅籠」が好みでした。領主の不幸のため、豊作祈願の祭りを自粛することになった村。その代替案を行おうとしたところで、旅の絵師による企みに巻き込まれていく。亡くなった人への想いと、それを乗り越えていく展開がよいのですが、それだけでは終わらせないところが、なおよいです。

    繁盛する弁当屋が、夏の期間休むことが気になったことから話が進む「食客ひだる神」は、明るい感じで進むのですが、他3編は怖めの話です。「三鬼」はちょっと嫌な怖さですが、それでも、登場する武士二人の話など、少し救いを入れてあるのが、よいです。「おしらさま」は、怪異部分は、けっこう嫌な話なところを新面子でそうでもなくしていると思うのですが、逆に新面子やおちかの心象のための話でもあるかもと思ったり。最後のまとめ方もよかったです。

    どの話も語る人語られる人たちの想いが汲み取られることで、全てが幸せとはいえないかもしれないけど、落ち着くところに落ち着いたのでしょう。一筋縄ではいかない語りですが、救いがあるのが、やはり好きなシリーズである由縁です。

  • と言う事で先にあやかし草子を読んでしまい、慌てて三鬼を読んだ。
    なるほど、青野先生はこんな唐突に去っていったのね……
    富次郎登場の経緯もわかりました。

    お話しは「食客ひだる神」がとても面白くて心が温まる話だった。神様をダイエットさせるとは、さすが宮部さん!
    このだるま屋の夫婦がおおらかで欲が無く本当に気持ちがいい。そして出てくるお弁当がいちいち美味しそうで食べたくなって困る。そりゃ神様も太る訳だ(笑)

    「迷いの旅籠」はよくある話かなぁと思ったが、亡者と旅籠に現れた人影とは違うという事が気になる。そして迷う事なくあちらに行ってしまった貫太郎はどうなったんだろうか?
    「三鬼」は一番悲しい話だった。貧しさ故に鬼を呼ばざるを得ない境遇。そしてそれを変えようともしない上役。知ろうともしない殿様。胸が塞がれる。
    「おくらさま」恐ろしい。守り神と崇めていたと思ったモノがむしろ呪いであったと。そもそもの原因が中途半端にかけた温情がむしろ残酷な仕打ちだった事にあるとは、人生って難しい。色々考えさせられた。

  • シリーズ物、初めて読んだので4の巻きから 笑。大部な本だけど中編4本立てで皆よく出来ていて厭きないですね。さすがにずっと続いているシリーズだけのことはあります♪
    話し捨て聞き捨て がお約束の百物語、聞き役の おちか そもそもが曰く付きらしいけど、初めから読んでいないので後日判るのだろうけど。
    さて4編それぞれが面白いけど、なかではタイトルになっている「三鬼」と「おくらさま」が印象的だった。これは初めから読まなくては(^^)
    さすがの宮部みゆき ですね♪

  • シリーズ4作目。今回はひだる神に本当に癒された。普通なら恐ろしい存在であるのに、取り憑く相手によってこうまで印象が変わるものなのかと、いい意味で驚いた。そして社会生活を営むうえで、自分たちの立場や境遇に見合った行動を否応なくとらねばならない登場人物たちがやるせなく、現代において何不自由なくとまではいかずとも多少は好きに動ける余地のある自分がどれほど幸せかと思うと、身につまされる。

  • 三島屋シリーズ第四作。
    相変わらず前置きが長いけれど、その前置きもドラマがあって入り込める。本題に入ると益々目が離せない。
    「迷いの旅籠」死者に再会できる代わりに…。
    「食客ひだる神」飢える神様を食わせれば商売は上手く行くがその代わり…。
    「三鬼」極貧の村で生きていくためにはその代わりに…。
    「おくらさま」商売繁盛、お店を守ってくれる神様は代わりに…。

    何かを得るために何かを失わなければならない。。何かを増やすためには何かを減らさなければならない。
    どちらかを選ぶことが幸せに繋がるなら良いのだが、それが難しい場合は…。

    唯一ほのぼのしたのは「食客ひだる神」。こちらは良いバランスを最終的に得られて良かった、
    他の話は切なかったり苦かったり。
    そのことが主人公おちかにまた一つ新たな思いや決意をもたらしたのは良かった。
    シリーズとしても転機の回。一つの別れと新たな出会い。
    どのような展開を見せるのか楽しみ。

  • 図書館より。

    ヤバイ、面白すぎて一気読み。やっぱり宮部みゆき先生の本は読みやすいし面白いなぁ。
    そういえば、ちょっぴりコイバナもあったかな?と思いつつ(笑)、ラストでは別離。この人は本命じゃなかったと言うことか。あまり恋愛要素は求めていないんだけど、あったらあったでいいスパイスになるから、やっぱり面白い!(笑)
    続きも読めることを楽しみにしています。

  • 三島屋変調百物語シリーズ。

    いつもながら、安定の面白さ。
    軽々に人に語れぬ話を語る百物語だけに、今回も人のむごさ、哀しさ、やるせなさ、そして暖かさ、思いやりがぎっしり詰まっている。

    胸のうちを隠さず語るだけで、心が軽くなること。
    人の悩みを聴くことで、思いがけず自分の悩みにも光が見えること。
    あるある。

    本作から、三島屋の次男でおちかには従兄にあたる富次郎、瓢箪古堂の若旦那の勘一さんが登場。
    まだまだ、おちかの心の傷は癒えきってはいないけれど、淡い恋心を育てられるまで、そして恋が破れて泣けるまでになった。

    瓢箪古堂さんの語る、『読み物の効用』は、もちろんこの本にもあって、読後爽やか。
    読書の楽しみを堪能させてもらいました。

  • 三島屋おちかちゃんの4冊目。「迷いの旅籠」「食客ひだる神」「三鬼」「おくらさま」相変わらず面白いですが、今作の挿絵がちょっと興ざめ。このシリーズはまったく挿絵がないか、抽象的な図みたいなものだけでおいてほしい。主観的に好きなのは「ひだる神」。「おくらさま」はまずまずだが、この話で三島屋次男富次郎と瓢箪古堂の勘一が出てくるのがええねぇ。ちょっと謎解きというかミステリ色が強くなってだるんでいた目先が変わって面白かった。

  • 三島屋百物語第四弾。「迷いの旅籠」では死んだ人一人一人に言い聞かせるやさしさに胸が打たれた。「食客ひだる神」ではひだる神のために夏の商いを休むという面白い話。表題の「三鬼」は貧しい洞ヶ森村での出来事が息もつかせないくらい迫力でせまってきて人間の醜さ、おろかさを痛感した。「おくらさま」も呪いと引き換えに受けていた守護も消えてしまう最後にどきどきした。最後に聞き手のおちかは時を止め、悔恨に打ちひしがれ昔を恋うて懐かしむだけの老女になってしまう。さもなきゃおくらさまになると言われることから次回の聞き手はおちかではなくなるのか?趣向がかわるのかと思ってしまった。このシリーズは続いてほしい。

  • 三島屋シリーズ4冊目。
    ますます面白くなってます。

著者プロフィール

1960年東京都生まれ。87年『我らが隣人の犯罪』で、「オール讀物推理小説新人賞」を受賞し、デビュー。92年『龍は眠る』で「日本推理作家協会賞」、『本所深川ふしぎ草紙』で「吉川英治文学新人賞」を受賞。93年『火車』で「山本周五郎賞」、99年『理由』で「直木賞」を受賞する。その他著書に、『おそろし』『あんじゅう』『泣き童子』『三鬼』『あやかし草紙』『黒武御神火御殿』「三島屋」シリーズ等がある。

宮部みゆきの作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×