- Amazon.co.jp ・本 (248ページ)
- / ISBN・EAN: 9784532176785
作品紹介・あらすじ
起立礼着席青葉風過ぎた/寂しいと言い私を蔦にせよ/光る水か濡れた光か燕か/青嵐ピカソを見つけたのは誰/ここもまた誰かの故郷氷水/コンビニのおでんが好きで星きれい/カニ缶で蕪炊いて帰りを待つよ/細胞の全部が私さくら咲く/道が野にひらけて兎いま光/闇濡れる菫直径一光年
以上、著者の自選十句。
著者は2019年で第22回目を迎える「俳句甲子園」(NPOと愛媛県、松山市共催)の第4回大会で団体総合優勝、自作が最優秀句に選ばれ華々しく俳壇デビュー。NHKテレビ・ラジオの俳句番組で、学生時代から司会や選者にも抜擢された。
「俳句甲子園」は、2018年8月の全国大会に32チーム295人が出場、スタッフや審査員は700人、という俳句では類を見ない一大イベントに成長した。
この高校生の俳句熱、俳句部・同好会の数の増加に大きな影響を与えているのが著者の存在といっても過言ではない。自選句の一句目「起立礼着席青葉風過ぎた」は俳句甲子園世代の代表句。
その著者の待望の第一エッセイ集の3分の2は、20代の独身女性の実感、30代の結婚・出産後の子育ての実感を必ず一篇に一句引用して綴るという体裁。原稿用紙3枚から4枚の短いエッセイが大半だが、日常から俳句がどのようにして生まれるか、というエッセイとしても読むことができ、思わぬ実用的な入門書だとの感想を抱く読者もいるだろう。
また、著者は正岡子規が卒業し、夏目漱石が教鞭を執った(「坊っちゃん」の舞台として知られる)旧制松山中学=現・松山東高校出身。彼らが青春をどのように過ごし、俳句がどのように近代文学になっていったか、を書物だけでなく肌身で吸収できる環境で育ったため、俳論風の随想にも目を開かされる。
感想・レビュー・書評
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大学で学んだ俳人の名前が何人か出てきて楽しかった
私が短歌より俳句を好ましいと思う理由が、神野さんの言葉で少し具体化した感じがする
【引用】
言葉にできない何かを、言葉にしないという方法で、なおかつ言葉で記述するすべが、この世界にあったなんて。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
春夏秋冬、その季節にそって書かれたエッセイは、ともに生活を繰り返していると気づかせてくれた。
俳人としての、季節の受け止めかたと、母になって感じる、暮らしの移りかわりが、心地よく伝わる文章だった。
著者の俳句が、すうーっと身体にしみて浄化された。
檸檬切る記憶の輪郭はひかり 神野紗希 -
日経新聞に連載されたエッセイなどをまとめたもの。当時読むのが楽しみで、電車の中でじんじん感動していたことを思い出した。
俳句には、詠み手が切り取った世界の切り口やアングルを味わう楽しさがあると思う。著者が詠んだ句、先人が読んだ句にまつわるエッセイはそのガイドとなってくれる。