戦略の本質: 戦史に学ぶ逆転のリーダーシップ

著者 :
  • 日経BPマーケティング(日本経済新聞出版
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  • Amazon.co.jp ・本 (473ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784532194628

作品紹介・あらすじ

日本の組織が苦手とする、相手の強みを弱みに変える逆転の戦略。これを実現するには強力なリーダーシップが必要だ。著名な現代の戦史を戦略論、組織論のアプローチで分析し、何が勝利の条件かを明らかにする意欲作。

感想・レビュー・書評

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  • 非常に興味深く読めた。

    本書は旧日本軍の第二次世界大戦での失敗の原因を考察した名著『失敗の本質』の続編。
    本書は『失敗の本質』とは異なり、リーダーシップや戦略によって圧倒的不利な状況から逆転した過去の戦争を考察している。
    考察されているのは、毛沢東の反包囲網討伐、バトルオブブリテン(イギリス空軍によるドイツ軍爆撃作戦への対抗法)、スターリングラード攻防戦、朝鮮戦争の仁川上陸作戦、第四次中東戦争、ベトナム戦争の6つの戦場である。

    特に興味深かったのはバトルオブブリテン、スターリングラード攻防戦、ベトナム戦争だった。
    前記の2つは第二次世界大戦であるが、もっとも重要な要素は戦争を指揮した人間のリーダーシップだった。イギリスのチャーチル首相。ドイツのヒトラー。そしてソビエトのスターリン。
    いずれも長所短所のある指揮官であったが、最終的に戦争の勝敗を決する判断を下した者が勝者となったのだ。

    特にヒトラーとスターリンとの対比は面白い。
    いずれも完全な独裁者であり、自分に敵対するものをことごとく粛清していったのであるが、ヒトラーはそれを貫き、自滅した。しかしスターリンは最後に有能な軍の将軍の言葉を信じて、彼らに指揮を取らせた。ここでドイツとソビエトの差がでたのだ。

    また、ベトナム戦争の考察も興味深い。
    圧倒的な軍事力をもつアメリカはベトナムでも今までと同じような戦略(つまり第二次世界大戦のヨーロッパ戦線や沖縄戦)をもってベトナムで戦おうとした。しかし、北ベトナム軍は相手の長所をつぶし、完全なゲリラ戦でじわじわとアメリカ軍の兵士を殺していった。北ベトナム軍はアメリカ軍との戦争に勝とうとはしていなかったのだ、ただ負けないように戦い、世界中の世論やアメリカ国内での厭戦ムードが高まってくるのを待っていたのだ。

    プロイセンの鉄血宰相ビスマルクの言葉が思い出される。
    『賢者は歴史に学び、愚者は経験に学ぶ』
    まさに至言である。

  • 前作「失敗の本質」に比べると浅い気がする。

    戦略の事例としては第四次中東戦争の「大国は敗者の言うことになど耳を貸さない→自分たちで何とかするしかない→とはいえ全面戦争ではイスラエルに勝てない→局地戦なら勝ち逃げできるかも→そのためには...」の論理展開が面白かった(結果は大違いだが真珠湾攻撃も同じ思考法だったのか)。

    バトルオブブリテンとスターリングラードの事例はたしかに勝者側の戦略も重要だったが、それ以上にヒトラーの失策に救われた感が大きく、むしろ「失敗の本質」に入っていた方がしっくりくる。

    この世代の特徴なのか毛沢東賛美が少し鼻につく。文革前までならそれもありかもしれないが。

  • リーダー論が繰り広げられる思っていたら、思いっきり軍事オタクな話が展開していた。

  • 戦略とはいったい何か? 第二次世界大戦を日本が経験して学んだ事は、今現在に活かされているのか? 本質的に日本は戦略という意味を理解し、その戦争(第二次世界大戦)に戦略が無かったことが敗戦に結びつき、全ての戦争には欠くこと出来ないものとして理解しているのか? 戦略とは、義を持ったリーダーが広い認識と最大限の情熱を持って明確な目的に望むことである。

  • 「失敗の本質」が負けには負ける理由があり、日本の太平洋戦争の6つの失敗が失敗たる理由を示した本だったのに対し、この本は第二次世界大戦以降の6つの戦闘において、戦略がしっかりしていたからこそ勝利を得られたケースを上手く分析、紹介している。何をもって勝利とするか、自分達の資源の制約・条件下で、どこでどう戦うことによって勝利に結びつけるか、自軍にどのように徹底させるか、ということを中枢にいる人達が考え抜くこと、これが戦略だと思った。
    具体的事例の中では第四次中東戦争が最も印象深い。エジプト・イスラエル両者の動きを結果として分析している我々はもっともらしいことを言えるが、当事者は相手をどう読み、どれくらいの勝算を持っていたのか、非常に興味深い。
    勝者が勝者たり得た背景を分析した本なのだが、敗者側には敗ける理由がある訳で、そのことは忘れてはならない。

  • 締め括りの最終章の「戦略とは」の命題策定の部分で混乱した。途中のケーススタディから結論部への論理展開が難解だった。

  • #2450-211

  • 分析が難しすぎ

  • 心に残った一文として「戦略とは、コンテクストに応じて場を創造することである。」があります。
    その時々、無数の変数で構成される環境下に置いて、目的達成可能性を高めるシチュエーションを創り出すこと。これを説明するケーススタディが読み応えたっぷりに展開されます。
    戦争における戦略がテーマなので、人によってはケースが読みづらく感じるかもしれません。その場合、各章のアナリシスの項や8章以降のまとめだけ目を通しても良いかもしれません。

  • 中国国民党と闘う毛沢東、チャーチルのドイツとの戦い、朝鮮戦争、第四次中東戦争、ベトナム戦争、と、ひと固まりの戦争ごとに戦略を分析した書。

    いろいろな形のリーダーシップがある。

    ベトナム戦争のように、戦力の差は圧倒的なのに負けた米国は、一重に大義名分と責任をもったリーダーが不在だった、ということか。戦果=「ベトナム人の死体の数」も、ろくに確認もせず水増しして報告していた、そして、その水増し報告を元に、最新鋭のコンピュータが戦況を分析し、戦略を練っていた、というのも…。

    戦略には構造がある。もっと違う言い方ができるのかもしれないけど (カッコ内は自分の理解)
    ・ 大戦略―介入の正当性(大義名分、大目的(軍隊のみならず、国民にも訴えかける、説得材料))
    ・ 軍事戦略-制空権の維持、マッカーサーによる一元的指揮(組織・指揮系統づくり、権限の付与)
    ・ 作戦戦略―釜山の維持(クリティカルポイントの見極め、それをどう有利に持ってくるか)
    ・ 戦術 -奇襲(個々の場面での動き方)

    こう考えると、プロジェクト進めるにあたっても、失敗したものは、大戦略がうまくいってなかったり、軍事戦略がうまくいってなかったり、構造の上の方がダメな例も多いかも。。
    というか、戦術とかは、個々の失敗は挽回できるからなぁ。。

    以下は、抜粋。

    命題1 戦略は「弁証法」である
    正反のダイナミックな相互作戦略の把握をし、大戦略、軍事戦略…の十三関係の矛盾を総合するのが戦略
    「戦争は彼我双方の活動の不断の交互作用」

    命題2 戦略は真の「目的」の明確化

    命題3 戦略は時間・空間・パワーの「場」の創造

    命題4 戦略は「人」である

    命題5 戦略は「信頼」である

    命題6 戦略は「言葉ーレトリック」

    命題7 戦略は「本質的洞察」

    命題8 戦略は「社会的に創造される」

    命題9 戦略は「義―justice」

    命題10 戦略は「賢慮」
     1他者とコンテクストを共有して共通感覚を醸成する能力
     2コンテクストの特質を察知する能力
     3コンテクストを言語・概念で再構成する能力
     4概念を公共善(判断基準)に向かってあらゆる手段を巧みに使って実現する能力
     5賢慮を育成する能力

    チャーチルは、ルーズベルトと個人的な書簡を2000に渡ってやり取りするなど他のリーダーともよくコミュニケーションをとっていた。
    チャーチル自身も軍事的戦略には通じている自負はあったが、任せるべきところ(実戦)は任せていた。現場にもよく行っていた(対してヒトラーは任せられない、現場にあまり行かない、などの特徴もあったらしい)

    後付け的な面もあり、全てが正しいと言えるかわからないけど、参考になる。
    オムニバス形式でもあり、若干、一つ一つが浅く難しくてしまっている気もするけど…

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著者プロフィール

野中郁次郎
一九三五(昭和一〇)年、東京に生まれる。早稲田大学政治経済学部卒業。富士電機製造株式会社勤務ののち、カリフォルニア大学経営大学院(バークレー校)にてPh.D.取得。南山大学経営学部教授、防衛大学校社会科学教室教授、北陸先端科学技術大学院大学教授、一橋大学大学院国際企業戦略研究科教授などを歴任。一橋大学名誉教授。著書に『組織と市場』、『失敗の本質』(共著)『知識創造の経営』『アメリカ海兵隊』『戦略論の名著』(編著)などがある。

「2023年 『知的機動力の本質』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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